一般的に多くの種類の酒を飲む「チャンポン」は酔いやすいと言われているが、酔いの程度は摂取した純アルコール量に比例するので、どういう組み合わせでお酒を飲んでも純アルコール量のトータルが同じであれば酔いの程度も同じになるはずなのだ。「チャンポン」は酔いやすいのはお酒の種類が変わると当たりが変わり、つい多めに飲んでしまいがちになるからだと言われてきた。いろいろな種類のお酒を飲むと自分がどれだけ飲んだか飲酒量の見当がつかなくなるせいもあるからでだというが、酒を飲んでどんな気分になるかは飲んだ酒の種類によって左右されるという興味深い研究結果が情報誌に掲載されたそうで、このことは英国の研究グループが 21 カ国の約 3 万人を対象とした調査データを分析した結果だという。
その研究成果によると赤ワインやビールはリラックスした気分をもたらす一方、蒸留酒は攻撃的な気分や涙もろさにつながりやすいことが分かったという。リラックス効果が最も高かったのは赤ワインで、この研究を実施したのはアルコールや薬物に関する世界的な調査である「世界ドラッグ調査」のデータを分析した結果だという。今回の結果を踏まえ研究者は「アルコールによる情緒への悪影響を知ることは重要だ」と話しているが、調査の対象である 21 カ国の 18 ~ 34 歳の男女のうち調査時点から遡って 1 年間にビール・赤および白ワイン・蒸留酒の 4 種類を全て飲んだことがあり、自宅および自宅外でよく飲む飲み物としてこれらの中から 1 種類を挙げた 2 万 9,836 人だというのだ。
調査ではこれらのアルコール飲料を飲んだ時に「活力がみなぎる」・「リラックスする」・「セクシーな気分になる」・「自信が増す」といったポジティブな気分だけでなく、「疲れる」・「攻撃的になる」・「気分が悪くなる」・「落ち着かない」・「涙もろくなる」といったネガティブな気分を経験するかどうかについて聞いたという。なお蒸留酒にはウイスキーやブランデーにジン・テキーラなどさまざまな種類があるが、蒸留酒の種類に関するデータは含まれていないそうなのだ。その結果「飲んだ時に攻撃的な気分になる」との回答率が 29.8 %と最も高かったのが蒸留酒で、蒸留酒は攻撃的な気分だけでなく、気分の悪さや落ち着きのなさだけでなく、涙もろさをもたらしやすいことも分かったという。
これに対し赤ワインを飲んで攻撃的な気分になると回答した人の割合は 7.1 %だったそうなのだが、リラックス効果が最も高かったのは赤ワインで回答者の 52.8 %が「赤ワインを飲んだ時にリラックスする」と回答しているという。ちなみにビールについても約半数の回答者が「リラックスする」としていた。ただし赤ワインにもネガティブな作用はあり、「飲んだ時、疲れた気分になる」と回答した人が最も多かったのは赤ワインだったという。研究者は「アルコール濃度の違いを考えれば、酒の種類によって脳や情緒への作用が異なるのは当然である」とした上で、酔い方に問題があると感じた場合は、飲む酒を蒸留酒からビールや赤ワインに変えるのも場合によっては有効であるアドバイスしている。
アルコールの作用には男女差もみられ男性よりも女性の方がアルコールによってポジティブあるいはネガティブな感情を抱きやすい傾向が認められた。しかし「攻撃的な気分」だけは例外で飲酒した時にこのような気分になる確率は女性よりも男性の方が高かったという。さらにアルコール依存症患者は飲酒によってポジティブな気分になる確率が高いことも示されており、例えば飲酒した時に活力がみなぎると回答した人の割合は依存症でない人の 5 倍であったそうなのだ。ただしアルコール依存症患者では飲酒した時に攻撃的な気分や疲れなどネガティブな気分を味わう確率も高かったそうで、アルコール依存症の人の場合は 1 杯飲めば抑制できなくなる可能性が高いため注意が必要だと専門家は呼び掛けている。
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