牛丼チェーン大手の吉野家ホールディングスが発表した今年の8月中間決算は売上高が前年同期比6・7%増の1070億円となり、純損益が18億円の黒字になったそうなのだ。前年同期は8億円の赤字だったのが牛丼の「超特盛」や期間限定メニューが好調で黒字に転換したという。吉野家は 3 月に看板商品の牛丼で 1991 年に「特盛」を始めて以来 28 年ぶりに新しいサイズとなる「超特盛」と「小盛」を導入したが、肉の量は「超特盛」が「大盛」の 2 倍で「小盛」は「並盛」の 4 分の 3 となっているという。「超特盛」は牛肉が「大盛」の 2 倍にご飯は「大盛」や「特盛」と同様のボリュームだし、。「小盛」は「並盛」のおよそ 4 分の 3 のボリュームでご飯は茶碗 1 杯分の量目だという。価格は「超特盛」が 780 円で小盛が 360 円となっているそうなのだ。
しかも本業のもうけを示す営業利益は29億円で前年の5500万円から大きく改善しているが通期の業績予想は据え置いた。消費増税の影響が見通せないことが一因だそうで、この「超特盛」は税込み価格で並盛より 400 円高い 780 円だが発売後 1 カ月で 100 万食を達成したという。吉野家の広報担当者は「創業 120 周年の目玉商品として投入したが、ここまでヒットすると思わなかった」と話しており、さらに 5 月から提供を始めた「ライザップ牛サラダ」も好調だという。食べ応えを求める若年層を狙った「超特盛」と健康志向の中高年層や女性らを狙った「ライザップ牛サラダ」や「小盛」を投入する二兎を追う戦略が奏功したそうだが、「超特盛」と「ライザップ牛サラダ」については顧客層の拡大に加え客単価の向上にも寄与したという。
そのうえ「超特盛」には現場のオペレーションが変わらないという利点もあって、メニューを増やせば新たな顧客を呼び込める可能性はあるが一方でオペレーションが複雑になる。人手不足による人件費上昇が外食企業の大きな問題になる中で、さらに従業員を増やすのは簡単ではない。その打開策がコメの量が「大盛」や「特盛」と同じで肉の量が「大盛」の 2 倍の「超特盛」だというわけなのだ。現場の従業員に大きな負担をかけずにメニューの幅を増やすことを実現し客単価もアップした。原材料費や人件費の高騰にいかに対応するかは外食業界に共通の悩みだが、対応策として値上げをする企業も増えられるが単純な値上げは客離れを引き起こしかねない。そこで客単価を上げることは大切だが値上げはその一手段にすぎないという。
さらに消費税率の 10 %への引き上げがある中で「超特盛」で業績回復を果たした吉野家の手法には他の企業が参考にできる部分もあるという。牛丼業界はその軽減税率への対応は牛丼大手 3 社で分かれるそうで、すき家本部は牛丼並盛の店内飲食時の税込み価格と持ち帰り時の税込み価格を統一すると発表している。吉野家は本体価格を表記し持ち帰り(税率 8 %)と店内飲食(同 10 %)の支払価格を別にしているそうなのだ。一方松屋を運営する松屋フーズホールディングスは「券売機精算では 1 円単位の計算が困難」という理由から客の利便性を考え 10 円単位の価格設定として、券売機は従来通り税込価格を表示し店内・持ち帰りを同一価格で提供しているが、一部メニューについては税込価格の変更を検討しているという。
吉野家は「本体価格を 2 つにしてしまえば、同じ商品なのに価格が異なる一物二価ということになってしまう」と、すき家や松屋の手法に異論を唱えているが、本体価格表示とする方針については「牛丼並盛の価値が変わらないことを伝えたい」と説明している。「分かりやすさ」を前面に出したすき家や松屋と「商品の価値は 1 つ」という思いを込めた吉野家では、軽減税率への対応によって牛丼各社の価格に対する思想の違いが浮かび上がった格好だが、消費者は果たしてどちらに軍配を上げるのだろうかといったところのようなのだ。さて「超特盛」 780 円と「並盛」 2 杯食べて 760 円だとどちらがお得かという点では、カロリーだけでみると「並盛」 2 杯食べたほうが安くてかつ高い栄養を得ることができるそうなのだ。
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