安倍晋三首相が日本で初となる緊急事態宣言を発令したことを受け東京都などの各自治体は一斉に緊急事態措置の実施に踏み切ったが、住民への徹底した外出自粛に加え事業者には施設使用の制限を要請するという。一方で建設現場に関しては根拠法に条文がなく工事の一律停止は要請できないが千葉県や熊本県内において建設現場の作業に従事する者に新型コロナウイルス感染症の感染者が出たこともあって、国土交通省が地方整備局などに出した直轄工事の一時中止に関する通知が建設業界の反発を招いている。通知では一時中止の判断を受注者に「丸投げ」しているからで、民間工事を含め建設現場が止まらない背景には国土交通省の「責任逃れ」の姿勢があるとの声が強まっているという。
緊急事態宣言の日にある建設会社の幹部は国交省のウエブサイトに掲載された通知の内容を見て「これじゃあ、民間発注者は工事を止めないだろう」と語ったそうだが、緊急事態宣言は対象 7 都府県の住民や事業者に外出や営業の自粛を求める内容だった。市民生活や企業活動の多くが制約を受けるなか建設業界でも工事を止めるべきかどうか判断に迷っている企業は多く、建設会社にとって現場で働く自社の従業員や下請けの作業員の感染を防ぎたいと思っても発注者が認めなければ工事を止められない。新型コロナウイルスは主に飛沫で感染するため屋外作業が多い建設現場は感染リスクが低いとみる向きもあって、建設業界では民間工事を中心に発注者に一時中止を言い出せない雰囲気が漂っている。
国土交通省が地方整備局などに出した通知は「緊急事態宣言を受けて、国交省が自ら工事を止めると言えば、民間発注者もそれに倣うかもしれない」そんな建設業界の期待を裏切るものだった。通知は従来通り受注者の希望に応じて一時中止措置を取るよう指示する内容だったのだが、民間発注者のなかには緊急事態宣言を重くみて今後の方針について受注者と協議する意向を示す事業者もいるというが、ある準大手建設会社の幹部は「社内で対応を検討中」としながら「もちろん、工事現場での感染は心配だ。でも、お客がいることだから。我々がいくら工事を止めたいと言っても、お客が認めてくれないことにはどうにもならない」と緊急事態宣言の後も工事を続ける考えを明かしたそうなのだ。
大手と準大手の建設会社 10 社に今後の対応を尋ねたところ、大半の企業は「我々だけで勝手に工事の中断を判断するわけにはいかない。工事の進め方は発注者と個別に協議していく」と慎重な姿勢を示したという。しかし内心では「コロナだからといって、工事はなかなか止められない」と考える企業が多いという。建設現場は新型インフルエンザ等対策特別措置法の範疇に含まれず都道府県知事の権限で民間発注分を含めた建設工事を一律停止することはできないため判断は各発注者に委ねられているとも言える。自治体からの強い要請で発注者が動かなければ安全対策に取り組みながら工事を継続する方針だ。各施工現場では入り口での検温や分散化するための少人数での朝礼などで対応しているという。
清水建設は東京都内の建設現場で働いていた社員3人が新型コロナウイルスに感染し、そのうち50歳代の男性1人が死亡したと発表した。感染防止を強化するため緊急事態宣言が発令された7都府県で施工中の500の現場で工事を停止することも明らかにしたそうなのだ。3密(密集・密閉・密接)を回避し作業員の安全対策を強化していたそうだが、工事を止める現場では下請けも含めると関連する作業員は約2万人に上り、発注者と協議し合意を得られた現場から緊急事態宣言期間中の5月6日まで停止するという。施工中止や現場閉所となれば完工の遅れや諸コストの増加に伴う契約変更に向けた協議が必要となるが、補償について発注者側との協議を求める方針だが一律のルールがない中で判断を迫られているという。
キーワードサーチ
コメント新着