新型コロナウイルスの感染拡大が建設業にも多大な影響を与えているが、建設技術者や建設技能工に感染者が発生した場合には着工の遅れや工事の一時停止などで多大な影響を被ることになり、とくに中小の建設業各社にとっては存亡の危機に立たされる危険性があることも否定できないそうなのだ。このような状況の中で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにテレワークを活用した在宅勤務が多くの会社で導入されているが、飛島建設は対象 7 都府県にある本社や支店の従業員について「原則在宅勤務とし、テレワークを強化する」とウエブサイトで表明しテレワーク強化の方針としている。建設業界全体では他業界に比べてテレワークの実施率が低く政府や自治体の外出自粛要請に十分に応じられていないのが実情だという。
テレワークとは 情報通信技術を活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をすることであり、出勤しないで自宅を就業場所とする「在宅勤務」だけでなく移動中や建設現場などを就業場所とする「モバイルワーク」に固定されたオフィス以外の遠隔勤務用のオフィスを就業場所とする「サテライトオフィス勤務」の 3 つの形態に分けられる。総務省の「平成 30 年通信利用動向調査」でテレワークの導入率を産業別にみると、最も導入率が高いのは情報通信業の 39.9 %だが次いで金融・保険業が 37.6 %で建設業は 18.8 %になっている。建設業では時間外労働の多さや週休 2 日制導入の遅れなどからワークライフバランスの改善が大きな課題になっており、テレワーク活用による業務改善の必要性が高まったことがあるといわれている。
建設業の業務の特性に合わせ情報通信技術を活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を活用することで、建設業においても現場作業以外にも様々な業務があって日報の管理や現場写真の管理だけでなく図面の作成や修正に社員の勤怠管理など多数あるが、これらの作業を行うために現場作業で体力の低下した状態で公共交通機関を使って会社に戻っていると新型コロナウイルス感染のリスクも高まってしまうという。自宅または現場から会社情報にアクセスできる体制を整えれば移動を極力おさえることができ、移動の車や電車やバスを使う場合もラッシュの時間をさけて使用することが可能になるし、在宅勤務者同士で打ち合わせを実施したりすることで感染リスクを下げることが見込めるというのだ。
国土交通省においては熊本県と千葉県の建設現場で感染を確認しているそうだが、そこに新型コロナウイルス感染拡大といった緊急事態宣言が重なり、7割の従業員の出勤自粛が要請され、テレワークの利用が新型コロナウイルス感染のリスクを低下させることが可能であるという。例えば設計情報をクラウドで共有することにより設計技術者が在宅で設計業務を行うこともできるし、施工管理のような現場での作業が中心となる職種についても、日報の作成だけでなく現場写真や図面の管理といった事務仕事をオフィスに戻ることなく、建設現場や自宅で行うことにより移動による感染リスクを下げることができ、厳しい人手不足で生産性向上が必須となったこともテレワーク活用を後押ししているというのだ。
監理技術者講習について延期又は自宅学習の方法により実施するよう国土交通省も指示を出しているが、企業のテレワークシステム導入に詳しい専門家は「建設業のように現場での業務が多い業種ではテレワークを活用しにくいということもよく言われるが、設計・施工・検査・維持管理といった建設生産の各プロセスでもテレワークを活用して業務のやり方を改革する余地はまだまだあるのではないかと考えられる」という。また「今こそ新型コロナウイルス対策を契機として、バックオフィス業務だけではなく、設計や施工管理といった現場での業務にまでテレワークの適用範囲を拡大し、パンデミックをはじめとしたさまざまな危機に対応できる柔軟性の高い業務モデルを一気に構築する機会とすべきではないか」と提言している。
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