日本道路は健康貢献活動の一環として独自開発したランナー向け舗装歩行時の足腰への負担が少ない舗装を構築する工法「快適歩走」を開発したそうなのだ。適度な衝撃吸収性と反発性を兼ね備え長時間歩いたり走ったりしても疲れにくい。今年の 2 月から設計・施工一貫の受注体制で全国展開を図っているが、着地時の衝撃をやわらげ走りだす際に踏みしめやすくすることでランナーの走りやすさを向上させるという。新しく施工した舗装に適用できるが今後は既設舗装への展開も視野に技術改良を目指すという。開発の経緯について日本道路は「社会貢献のため、人の健康に貢献できるものはないかという発想から、3年前から開発に着手し翌年には1件目の試験施工を実施した」と説明している。
この「快適歩走」は陸上競技場でエンボス層として使用されているウレタン樹脂を透水性アスコンの表面空隙部に充てんし、エンボス仕上げにすることでランナーや歩行者の足腰に負担がかかりにくい構造にして透水性アスファルト舗装の表面に適用するという。施工方法はプライマーの塗布後にアスファルトの表面から 1cm 程度の深さまで陸上競技場の舗装などに採用しているウレタン樹脂を充填し、続いてその上に特殊な砂を添加した樹脂を施工し凹凸のあるエンボスに仕上げて、トップコートを塗布すれば完成だという。樹脂に砂を加えることで厚さ 2 ~ 3mm の薄い層でもエンボスの形成が可能になり、施工箇所と隣接する舗装面との段差はほとんど生じないし、ウレタン樹脂層が薄いため適度な柔らかさがありながら走りやすいという。
私の現役の時はいろいろな舗装工事の監督をしてきたのだが、一般的な景観舗装が適用できる個所であれば施工可能で、教育施設やスポーツ競技場周辺だけでなく、公園や駅周辺などを推奨例として挙げている。着地時はかかとへの衝撃をウレタン樹脂が吸収し蹴り出し時はつま先にかかる力を下層のアスファルト舗装が効率的に伝達するという。適度な柔らかさがある一方で踏みしめやすく走りやすい点が特長で、舗装後に隣接部との段差がほとんど生じないため隣接部の舗装構成を変えずに施工でき赤や青などさまざまな色に対応できるという。北海道士別市で行った試験舗装のほかに、これまでに順天堂大学さくらキャンパスや青山学院大学相模原キャンパスの2件で施工実績があるそうなのだ。
舗装表面のエンボス層は特殊砂を添加することで薄層での仕上げを可能としており、段差がほとんど発生せず隣接部との舗装構成を変える必要がないことも特長だというが、開発に当たっては元マラソン走者で解説者の金哲彦氏など約80人のランナーが実際に快適歩走を走って機能などを検証することで走りやすさを追求したそうなのだ。元マラソン走者でプロのランニングコーチを務める金哲彦氏は「着地時の衝撃が軽減され筋肉痛などランニングでの痛みが軽減される。土の上を歩いているような気持ち良さがある、公園の舗装に最適」と評価している。費用は透水性アスコンを舗装した上に300㎡を施工する場合に1㎡当たりの直接工事費が8300円程度で、ゴムチップ舗装などの一般的な弾性舗装よりも安価となっているそうなのだ。
私もランナーとして走るということはしないがウォーキンググループに所属しているが、日本でもランニングブームやウォーキングブームで中高年を含めた健康・体力維持や自然志向を背景にさまざまなコース等の普及が進んでいる。その一方でランナーや大会の急増に伴いハイカー等の従来の利用との軋轢が増加し植生破壊や事故等の安全管理面も懸念され、国土交通省は今年度予算案で 「まちなかウォーカブル推進事業」に1・5億円を新規計上しており、道路改修などを通じて歩きやすい街づくりに取り組む予定となっている。日本道路は「まちなかウォーカブル推進事業」を活用して「快適歩走」の適用拡大を目指すそうで、「この流れに乗り多くの都市で快適歩走を施工したい」と意欲を見せているという。
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