仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2005.09.16
XML
カテゴリ: 仙台
 楽天をめぐるホットな話題として、2軍施設は昨日書きました。もう1つが、これです。

 今日(16日)の河北新報朝刊県内面には「仙台市は休戦ムード、県の廃止方針変わらず、新知事誕生後が好機」などと書かれている。
 ちょっと長いですが、この問題を新聞報道や議会での質疑答弁などから、私なりに整理すると次のようになります。
------------
1 昨年、楽天のプロ野球パリーグ参加に際して、楽天は自らの費用約30億円で県営宮城球場を改修、本年4月1日の本拠地開幕にこぎ着けた。楽天側は05年のシーズンオフにはさらに第二期工事を行うことで宮城県と合意していた。
(なおこの4月1日の試合は一番に起用された不振磯部のシーズン初ヒットが先制ホームラン、当時の主砲ロペスにも一発、投げては岩隈で快勝の試合だった。国分町のM中華料理店で見ていました。東北に球春を呼ぶ歴史的一日でしたね。)

2 本年7月下旬になって、宮城県は楽天球団にフルスタ隣接のテニスコート用地を室内練習場用地として有償貸与し、テニスコートは陸上競技場のサブトラック(条例上の位置づけを失っているので、正確には旧サブトラック)に移設する方針を決めた。球団側は2006年10月までの期限で東仙台球場施設を使用しているが、期限後は未定のため、フルスタ隣接地を利用したいとして県に用地確保を要請していたもの。
 これを受け、仙台市は消滅するサブトラック機能の維持を県に要請。市内の小中学校が陸上記録会や中総体で旧サブトラックを利用している実態を踏まえて必要だ、というもの。陸協などからも不満の声が上がる。(以上、7月23日河北新報、7月26日日本経済新聞、同日河北新報)
 仙台市は、サブトラック機能の存続を強く求める方針。県とのトップ級会談による決着も視野に入れ、英断を求める構え。市の内部には、サブトラックに続き陸上競技場も廃止されるのではないかとの危機感があり、移転費を9月補正予算に計上予定の県に対し、何とか要望活動で実行をストップさせたい考え。(以上、8月10日河北新報)


 8月30日、県と楽天球団は用地貸与の協定。これに先立ち8月26日に県は市に説明し一定の理解を得たとしている。

4 9月2日、仙台市は楽天のフルスタ拡張工事の建築許可申請を受理しなかった。理由は、室内練習場建設に伴い旧サブトラックが廃止される問題が解決されていない、というもの。しかし、この市の対応に市民から批判も多かった。
 9月9日、市は桜井副市長(助役)が加藤副知事と会談、サブトラック機能の存続を求める申入書を提出した。テニスコート移転先をサブトラックでなく近隣市有地3カ所を提供すること、など5項目だったが、副知事は、利府町の宮城スタジアムの施設との重複や楽天との合意などを理由に、移転先についてはサブトラック以外にないと、市の要請を拒否。ただし、サブトラック機能存続のための代替施設の検討、また宮城野原公園の将来構想についての協議再開については受け入れた。この将来構想とは、昨年まで県・市政策課題協議会で話題にされたが中断していたもの。
 仙台市は、建築許可申請について不受理の方針を転換し、14日に申請を受理。改修工事は予定通り9月下旬に着工の見通し。市は、状況変化があったと判断。
(9月10日河北新報)

5 仙台市議会では、宮城野原公園総合運動場について施設の市移管も含め県と話し合っていく、と市の方針が強調された(9月13日桜井副市長答弁)。また、テニスコートを公園内の宮城自転車競技場に移転する可能性も視野に県と協議する(14日企画局長答弁)。
 他方で、旧サブトラック廃止に反対する立場から、仙台市最大のスポーツ振興団体が14日要望書を県に提出。県はテニスコート移転先は旧サブトラックとの方針を改めて強調。
(9月15日河北新報)
 そして、冒頭の本日(9月16日)付け「休戦ムード」報道になる。
------------

 宮城県の姿勢の背景には、利府に総合運動公園を建設したこととの関連で、陸上競技場(本トラック)はいずれ廃止するという方針があり、これはどうしても譲れないものとみられる。


 これに対して仙台市役所の対応はどうだろうか。

 仙台市の対応の基本は、節目節目に市民世論に訴えるという手法に見える。県と楽天の協定の前、また県議会・市議会の前に、市民世論に「火を付ける」戦略と言えるのではないだろうか。宮城野原の施設管理権は県にあるから、それが精一杯だという事情も確かにあろう。そして、権限という意味で唯一のリソースであった「建築許可権」を振りかざして、不受理という選択をした、というより、してしまった。これは戦略的に仙台市役所にとってマイナスだったと思う。一定程度の抵抗をしてソフトに(非公然と)誘導するという範疇を越えて、刀を抜いてしまったからである。簡単に言えば、楽天イーグルスの定着発展よりも「サブトラック」の価値が高い、と判定した自らの公然たる行政姿勢に、今度は自分が縛られたからである。
 もっとも、入り口の不受理だからまだ軌道修正ができた。受理した上で実体審理を長引かせて工事を遅らせたり、不許可としたのでは、もっと深みにはまってしまうところだった。ここはある程度計算していたのかも知れない。しかし、不受理でも、市民の非難は市役所幹部の予想以上だっただろう。

 ところで、この仙台市のソフトな誘導戦略は、これまでも随分多用しているように思われる。そういう意味ではパブリシティが上手い。市議会や県議会の前に陳情攻勢や新聞記事を出して、有利な答弁を引き出す。特に県議会では仙台市選出県議はどうしてもレゾン・デートルをかけて、市民の立場に立って県執行部に迫ろうとするから、動かす価値がある。
 今日の朝刊の記事などは、知事選候補者に意識させようという意図かとも思われる。仙台市のPTA票は怖いよ、ということだ。


 はっきり言えば、「仙台市民が困った、仙台市役所は熱心に要望、でも相手(この場合県)が動かないから市民が困っているのよ」という図式つくりは、もうやめてくれ。正々堂々とやるべきだという意味は、互いに財政難だし(特に県職員は先生や警察官まで給与カットしているのだ)、無理なことをいうのでなく、何ができるか詰めるべきだ、
 今回の一連の市役所の対応は、戦略を過ったと思う。先ほどの不受理もだが、得意のソフト戦略にしても、戦略性があるようで実は長期的視点ないし市民的利益の視点に欠ける対応だと思う。挙げ句の果ては、知事選の争点にさせようとか、何とも人頼みで、本当に市民の立場を考えた対応とは思えず、市民もちょっとウンザリという感じではないか。
 市長交代期特有の、リーダーシップがないままに、組織的出力として従来の手法が出てしまった、というところか。不受理という選択も幹部間で十分練った対応ではないように思う。

 なんだか、学生時代の行政学や政治過程論のレポートのようになってしまった。意思決定モデルを用いて分析してみたくもなるような話だ。(このへん、得意?分野です。)

 問題の根本は宮城野原公園の在り方をどうするか、真剣に議論してきていないことにある、といえる。県としては、県総合運動公園(利府町)を建設したという大きな方向はあるものの、宮城野原をどうするか、施設管理者として主体的に調整していく立場にある。
 また、仙台市はまちづくりの責任をもつ立場から、スポーツ施設についての考え、宮城野原の将来構想、事業主体、財政負担など自ら考えて市民に提示すべきではないか。市は、貨物駅のJR宮城野駅の跡地活用も視野に入れているという報道も以前にあった。そもそも、宮城野原の将来構想を県・市政策課題研究会で議論しようと動いたのは仙台市側だと聞いている。
 市民の長期的利益を考えて欲しい。また、もっと真摯な議論を深めたい。例えば、市教委やPTAが困るというが、実態はいかほどなのか。サブトラック機能としてウォームアップ機能が必要らしいが、それなら公園内の競技場周辺のスペースを使うことで何とかなると体育関係者と調整している、と今日の県議会では答弁されているそうだ(報道)。
 体育大会はほとんどの場合バスや車で移動すると思うのだが、とすれば、グランディ21(県総合運動公園)も遠いわけではない。特に北部の住民は利府の方が時間的に近い。また施設の水準を考えれば、どっちが子供のためなのか、という点もある。
 だから、困る困るだけではなく、どれだけ困っていて、どう対応方法があるかないか、整理するのが、市民の欲しているところなのだ。

 あるいは、県から管理権を受けるとかも提案されているが、具体的検討はされていないだろう。県としては管理権だけでなく、施設の譲渡(当然有償)なら応じるという可能性もあるから、市は財源にも責任を持たねばならない。

 いま仙台市役所は、みずから主体的に市民に考え方を示す説明責任があると思う。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005.09.16 22:24:42
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

コメント新着

おだずまジャーナル @ Re[1]:荒巻地区の新町名と宅地開発史(12/14) 荒巻昭和人さんへ コメントありがとうご…
荒巻昭和人@ Re:荒巻地区の新町名と宅地開発史(12/14) 団地名なつかしいですね。広告に使われて…

プロフィール

おだずまジャーナル

おだずまジャーナル

サイド自由欄

071001ずっぱり特派員証

画像をクリックして下さい (ずっぱり岩手にリンク!)。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: