2004.01.10
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新潮文庫の「アンジェラの灰」上下巻

著者の、フランク・マコートさんは、
この一作だけしか書いていませんが、なんとこの一冊で
「ピューリツァー賞」を受賞しました。

まあ、賞を取ったからいい作品って言うわけではないですけどね。

作者の子供時代の(悲惨だけどなんか笑ってしまう)
話を、子供の目から書き綴ったものです。

何ていうんだろう・・・
とにかく、心の物凄く深いところに届く文章なのです。

物語は、ニューヨークで始まります。
ここでアイルランドからきた二人が出会い、
結婚し、著者(フランク)が生まれます。

そして、弟(マラキ)・双子の弟(オリバーとユージーン)・妹(マーガレット)と次々と兄弟が増えるのですが、
極貧のため、天使のような妹は生まれてまもなく死んでしまいます。

そして、一家はアイルランドに送り返されてしまいます。

そこでも、不幸は続き双子のうちの1人(オリバー)も
亡くなってしまいます・・・。

そのくだりを紹介すると・・・

「ぼくもマラキも、オリバーが死んだと知っている。
でも、ユージーンは小さすぎて、何もわからない。
朝、目を覚ますと、オリー、オリーと呼ぶ。
部屋の中をとことこと歩きまわり、ベッドの下をのぞく。

---中略---

そんなとき、ママはユージーンを抱き上げ、抱きしめて、
しくしくと泣く。
ユージーンは降りようともがく。
抱き上げられたり抱きしめられたりしたいんじゃない。
オリバーと遊びたいだけだから。」

 なんと、美しく、悲しく、ユーモアにあふれた文章でしょう・・・。

そして・・・

「オリバーは天国にいるんだよ、とパパとママがいう。
天使たちと遊んでる。いつか、また会える。
でも、ユージーンにはわからない。
まだ、2歳で言葉もよくしゃべれない。
しゃべれないのは、世界中で一番悲しいことだ。」

 そう、この双子はとても仲が良くて、
お兄ちゃんたちと遊ぶより、2人で遊ぶ方が楽しかったのです。
その片割れが、いきなりいなくなってしまい、ユージーンはオリーの姿かたちに似た子供がいると必死に目で追うのです。

そんな、弟の姿を見て、フランクは、

「しゃべれないのは、世界中で一番悲しいことだ。」 とおもうのです。

大人は、抱きしめれば子供の悲しみがうすれると思っているけど、
実はそうじゃないんだ!!ってことを、
言葉に出来ない弟の思いを代弁するのです。
が、自身も小さくてそれをうまく説明することができないのです。

そして、小さなユージーンは、ついには・・・

「オリバーみたいな金髪の子がいる。
ユージーンは指で指すけど、もうオリーとはいわない。」


小さいながらに、双子の弟がいなくなったことを理解するのです。
そして、このユージーンも、半年後には死んでしまうのです・・・。

でも、この物語は、悲しいだけの物語りではありません。


解説の土屋政雄さん曰く

「これは泣き笑いしながら読む本だ。
一生に一冊、これほどの本が書けるなら、極貧も大病も
アル中の父親も、決して悪いものじゃない。」


たしかにそうかも・・・












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最終更新日  2004.01.11 01:36:41
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