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長崎の美しい田園風景を背景に、被爆した祖母と4人の孫、ハワイの甥との心の交流を描く―――。 いくら巨匠といえども、晩年の頃になると、魅力が薄れていくのは仕方がないのか、この頃の数作品は、今までなかなか触手が動かなかった。遺作『まあだだよ』の一つ前に撮られたこちらは、監督すでに80歳を越えての作品。迫力のようなものは随分薄れて、反核・反戦のメッセージが多少鼻に付いても、想像した以上に真摯な作品だった。孫を演じた大寶智子や吉岡秀隆の演技が確かなのもよく、なによりも被爆した祖母・鉦を熱演する村瀬幸子が素晴らしい!歳をとってもなお、役者の魅力を引き出す才能は衰えないのだなぁ。ノスタルジックに、そして真摯に、原爆投下された長崎の歴史を、孫の世代が学んでいく姿を描く。それと同時に、ハワイで暮すおばあちゃんの兄だという人物と、その息子との交流を織り交ぜて、今なお残る戦争の傷跡と再生を浮き彫りにしていく。兄の息子を演じたのはリチャード・ギア。監督を慕って自ら志願したとか。山深い田舎のおばあちゃんの家はとてもいい感じだ。真夏の長崎、田舎の情景に心を和ませながら、さりげないユーモアもきいている。だけど、原爆について触れる時には胸が痛い。4人の子どもたちの元気に救われながら、長崎の歴史を学んでいく、そんな物語だった。おばあちゃんが語る兄弟の思い出話は、ちょっと幻想的でちょっぴり怖くておもしろかった。特殊効果のせいか、不思議な雰囲気が度々でていて、色使いには黒澤監督らしさを感じる。原爆の目はほんとうに怖ろしい演出となっている。ラストで、発狂寸前のおばあちゃんが、土砂降りの嵐の中をひたすら歩んでいくシーンが印象深い。それを追いかける親や孫たちの、必死の形相も。誰一人おばあちゃんを助けられなくて、あまりに強い雨風は容赦なくみんなの体に襲いかかる・・・。戦後何十年経った今もなお消えない原爆の恐怖を描いているようだった。● ● ● ● ● ● 監督・脚本 黒澤明 原作 村田喜代子 『鍋の中』 音楽 池辺晋一郎 出演 村瀬幸子 井川比佐志 大寶智子 吉岡秀隆 リチャード・ギア (カラー/98分)
2008.12.30
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(あらすじ)財産家の妻に推理作家の愛人ができたことを知った元テニスプレイヤーの夫は、前科のある友人に妻殺害を頼むが、逆に友人が妻の抵抗によりハサミで殺されてしまい―――。 ヒッチコック作品は、以前有名どころを7本ほど観ただけで、久しぶりの鑑賞。その名の轟きとはうらはらに、『サイコ』『鳥』以外の作品は存外楽しむことができなかった記憶があるけれど、本作はとても面白い映画だった。決して失敗しないように思われる周到な殺人計画が、いざ実行される段になると予定通りにはいかないハラハラ。友人を脅し殺人の計画を企てるシーンでは、多くの時間を割いて、顔に似合わずねちねちとした夫の性格をうまく露にしていておもしろい。そして、美しい淑女の妻(グレイス・ケリー)が浮気をしているのも、なんだかチグハグな感じでいい。 後半。襲われた妻が、夫の友人を殺してしまったことで、予想しえない事態を迎える。夫は彼女を陥れるように仕向け、愛人への恋文で強請られていたことを理由とする殺人だとして、死刑へと追いやるのだ。美しい無力な妻が翻弄されるばかりなのは、ヒッチコックの趣味の範疇かしらんと思いつつ。しかし、推理作家である愛人と事件を追う刑事は、次第にことの真相を見抜き始めるのだった・・・。飄々とした刑事、鍵や手紙といった小道具、ほとんどが室内で展開されるところも、これぞサスペンスという感じで楽しめる。原作があり、もとは舞台劇だった緻密な脚本が良いのかもしれない。この有名なタイトル、『ダイヤルM』として、1998年にマイケル・ダグラスとグウィネス・パルトロー主演でリメイクされている。一言で表せば「これでもか!」という感想だ(笑)オリジナルはとても楽しめる作品だった。 監督/アルフレッド・ヒッチコック 原作・脚本/フレデリック・ノット 音楽/ディミトリ・ティオムキン 出演/レイ・ミランド グレイス・ケリー ロバート・カミングス (カラー/105分)
2008.12.27
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現代の台北を舞台に、映画「好男好女」で抗日戦に参加した情熱の女を演じる女優が、自分の恋を蘇らせるラブ・ストーリー。主人公の女優・梁静(伊能静)は、見知らぬ者に日記を盗まれ、その内容をファックスで送りつけるイタズラにあっている。銃殺された恋人・阿威と過ごした時・・・過去の日記は辛い記憶を思い出させ、次第に彼女は映画の主人公・蒋碧玉と同化してゆくのだった―――。ホウ・シャオシェン監督は有名な名匠だけれども、初鑑賞。台湾近代史3部作といわれる『非情城市』『戯夢人生』に次ぐ完結編となっている。評価の高い一作目から見るのが良かったかもしれない。とにかくわかりにくい構成となっていた。以前どこかでも書いたとおり、香港・台湾・日本の最近の恋愛映画からは、似たような表情を感じることがある。それは豊かさゆえの遊び心や退廃。おしゃれさであったり、痛さであったりもする。主人公の痛々しい恋愛の記憶、遡る1950年代の情景、そして今。三つの時間の出来事が、さりげなくリンクしながら、最後にゆったりと終結する。だけどわかりにくさが残るのは、感情移入しきれなかったゆえだろうか。この気だるさと痛々しさは、胸に迫ることなく、正体不明の不快さだけが残ってしまった。性に関して率直に表現すれば、今風とされるような風潮がこの時代にはあったのだっけ。台湾の1995年はそんな時代だったのかもしれない。それが不快に感じるのなら仕方がない。すごい熱演を見せている伊能静も魅力的に見えず、それはたんに好みの役者ではないだけだけど、初鑑賞のホウ・シャオシェン監督に寄せていた期待がちょっとだけ薄れた。台湾は映画文化の進んでいる国という印象で『西瓜』『楽日』などのツァイ・ミンリャン監督は好きだ。日本と台湾の合作をみかける機会が多いけれど、どんな経緯があるのだろう。監督 ホウ・シャオシェン 脚本 チュー・ティエンウェン 撮影 チェン・ホァイエン 音楽 ジャン・シャオウェン 出演 伊能静 カオ・ジエ リン・チャン ウェイ・シャホェイ(カラー・モノクロ/108分/台湾=日本)
2008.12.26
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ブロンクスを舞台に、経理の情報をFBIに売った一家が組織に惨殺され、生き残った少年フィルをたまたま託されたのが、母親の親友グロリアだった。二人のマフィアからの逃避行と、そして反撃がはじまる――― 『こわれゆく女』で惚れこんで以来、ずっと大好きなジーナ・ローランズの代表作。夫ジョンがメガフォンをとった骨太ハード・ボイルド。裏社会で生きてきた擦れたマフィアの元情婦グロリア。度胸の据わった、貫禄ありまくる彼女の姿にシビレる。同じ女としてほんとにたまらなく憧れる一面を持っつグロリアに魅せられっぱなしだった。内容は別物でも、形式は『レオン』の原型で、母性・父性などとは縁遠い生き方をしてきた中年の大人が、思いがけず他人の子どもを守るハメになり、いつしか膨らむ情に、自らの命を懸けてでも相手を守ることになる―――というもの。はじめは子どもの扱いなどわからないグロリアと、家族を失ったばかりのショックで心を閉ざしたフィルは、衝突してばかりいる。付いたり離れたりしながらも、諦めの中で逃避行を重ねるうち、いつしか深い信頼関係で結ばれていく件は、いまとなっては新しいものではないけれど、子ども+大人で描かれた作品はこれが初めてだったのなら、当時は相当斬新だったに違いない。 グロリアが煙草をふかすとき、マフィアに銃をぶっ放すとき、ガウン姿でくたびれた表情を見せるとき・・・・すべてに人間的な魅力がありすぎて、この映画の大半が女優としての彼女の才気に他ならないと思えてくる。もちろん、夫であるカサヴェテス監督の脚本もよく、冒頭の導入部なんか相当にカッコ良く、音楽もドラマティックで秀逸なのだけど、女優ジーナの存在があまりにも大き過ぎるのだ。たとえば好きな映画『レオン』では、当時12歳ほどだった子役ナタリー・ポートマンの強い目の魅力も、作品の評価に力を貸していたけれど、本作では子役の魅力によるところは少ないように思う。少年との間に芽生える感情が恋愛なのかはわからない。私的には母性愛であってほしいけど。フィルがベッドで眠っているシーンが妙に艶かしくて、「愛してる」という台詞がなぜが浮いて聞こえたのは、私だけだろうか。それでもシャロン・ストーン演じたリメイク版『グロリア』では、恋愛であるという感想を目にしたから、監督の狙いはそうだったのかもしれない。 『こわれゆく女』から6年後の作品。心の機微や細部の繊細さは、さすがに及ばない。けれど強い女の代名詞として、目立たなくてもいい映画として、ずっと残ってほしいな。最近、プライベートで映画の話をする機会が増えて、公開当時、この映画を観たという同僚の方にも出会った。主演女優が忘れられない味のある映画だったよ!と聞いて、無性に観たくなってレンタルした。思いがけず大好きなカサヴェテス・ファミリー映画だったのも嬉しくて。人との出会いも、映画との出会いも、本当にいいものだと、最近あらためて実感しながら過ごしているはる*です。監督・脚本 ジョン・カサヴェテス 製作 サム・ショウ スティーヴン・F・ケステン 撮影 フレッド・シュラー 音楽 ビル・コンティ 出演 ジーナ・ローランズ ジョン・アダムス バック・ヘンリー (カラー/121分)
2008.12.21
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なんとも不思議な世界だった。アル中でニコチン中毒という不健康な稲垣足穂の、エッセイと小説を9編収録。これが1920年代の作品だとは、にわかに信じがたい。現代語の文庫で読んでしまったのが、とてももったいなかった。「一千一秒物語」「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「星を売る店」「弥勒」「彼等」「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」一話目の「一千一秒物語」にまず驚く。一遍があまりに短い!ショートショートの神様・星新一も認める独創性と完成度。ペースに慣れるまで時間が掛かってしまって、後からじんわり懐かしさのように面白かったことを思い出してきた。ものすごくシュールな小説、次回は旧仮名遣いで読まなければと思った。あいだの「黄漠奇聞」~「弥勒」までは、なかなか楽しく読んだ。そして「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」でまた若干わからなくなった。(笑)このエッセイは難しい。A感覚V感覚も、真面目に論じられている内容を消化する頭脳は私にないけれど、澁澤龍彦やら三島由紀夫やらが出てくるだけで、ノーマルを逸したところにあるべきものなんだろうとは思われる。掴みどころのむつかしい作家さんだけど、なんとユーモラスな人だろう。この一冊に趣の違う顔が幾つもあって、人間としても興味を惹かれた。本文のなかには、目下気になっている人物の名が幾人も登場してきた。気になるこの当時の御仁たちは、類は友を呼び、交流していたんだなぁと思うと楽しい感じ。おすすめされてためしに読んでみた足穂作品、気に入りました。“エーテル”という言葉がみょうに懐かしいのだけれど、どこで聞いたのだろう。宮沢賢治?星新一?筒井康隆・・・・? タルホさんは、映画好きな方だったらしい。古書店で古典映画に関する面白そうな中身の本もみつけた。装丁がいい味だったので、いつか買ってきて読みたいと思った。
2008.12.19
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以前読んで好きになった三島由紀夫の『金閣寺』を、 敬愛する市川崑が映画化した必見の一本。お気に入りブログのMinicarさんからもおすすめいただきました。市川監督の手がけた文芸作品には、いまのところ外れがない。こちらも原作どおりで、だらだらとせず、見事な仕上がりになっている。吃音症で複雑な内面を持った主人公の溝口を演じたのは、8代目市川雷蔵。このたびの収穫は、市川雷蔵という役者を知ったことだけでも、大きいかも。往年の大映の大スターで、37歳で夭折。短い生涯で158本の映画に出演したという方。他の出演作がさらなる楽しみとなった。溝口の友人で内反足の男・戸刈は若き日の仲代達矢が演じている。彼が述べ立てる真理の数々は、原作よりも解りやすく端的に脚本化されていて、本当に巧いとしか言いようがなかった。原作の丹念で美しい文体や言葉が、たった1時間半の映像に化けるなんて、唸らざるをえないし、画の力は圧倒的だ!当時の役者が立派だからといえばそれまで。やはりこの年代、巨匠たちがいた時代は、日本映画の黄金期だったのだなぁ。ラストが本とちょっと違っている。原作では――一ト仕事を終へて一服してゐる人がよくさう思ふやうに、生きようと私は思つた。しかし映画では自ら命を絶ってしまうのだ。原作の完成度が高すぎて、完璧な映画化ができないと判断した監督は、寺の名前などを変えたオリジナル脚本で映像化することにしたのだという。タイトルが炎上なのもそのせい。この重厚な物語の最後の一節が、生きようとするものだったので、余韻はじゃっかん変わってくるけれど期待どおりの良作だった。監督 市川崑 原作 三島由紀夫 「金閣寺」 脚本 和田夏十 長谷部慶治 音楽 黛敏郎 出演 市川雷蔵 仲代達矢 中村鴈治郎 北林谷栄 (モノクロ/99分)
2008.12.16
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”チェコ” ”幻影師” この二語だけで漠然と期待してしまうが、なんのことはない、舞台はウィーンでもれっきとしたアメリカ映画なのだった。新人監督とは思えないクオリティーで贈るミステリアスな物語は、ラストのドンデン返しで完全に騙されてしまう巧妙な出来。しかし、いかんせん、アイゼンハイムの摩訶不思議な奇術がすべてCGで映像化されるという残念さがつきまとう。 (あらすじ) 19世紀末、ウィーン。イリュージョンが隆盛を誇る中、幻影師アイゼンハイム(ノートン)は絶大な人気を誇っていた。ある日、評判を聞きつけた皇太子レオポルド(シーウェル)が観覧に訪れ、アイゼンハイムは皇太子の婚約者を舞台上に招くが、なんと彼女は幼なじみのソフィ(ビール)で、2人はかつて互いに愛し合いながらも身分の差で引き離された仲だった。一度は諦めた初恋の女性を巡って、一人の天才幻影師が自らの奇術を駆使して時の皇太子に果敢に立ち向かう姿を、妖しく描き出す―。 皇太子は悪い男で、隣国の公爵令嬢ソフィを娶り、父を退位させ国王の座に就こうと企てている。アイゼンハイムは、そんな人でなしの皇太子から、ソフィを取り戻すべく、天才的な奇術の技で権力に立ち向かい、ソフィもまた、運命に身を任せるだけの生き方をやめて、彼と共に生きることを誓う。しかし、皇太子の魔の手は二人に迫っていた....。すべてに種がある、魅惑の舞台だからこそ、CGを使わずに映像化することはできなかったのだろうか。いかにも嘘っぽいCGがすべてを台無しにして、子供騙しの感が否めないのは残念すぎた。19世紀末のヨーロッパを見事に再現した手腕は見事なだけに、幻影を描いて幻影にぶち壊されてしまう皮肉をおもう。ラストの受け止め方さえ左右してしまう。主演のエドワード・ノートンとポール・ジアマッティの雰囲気はとてもいい。監督・脚本 ニール・バーガー 原作 スティーヴン・ミルハウザー 『幻影師、アイゼンハイム』 音楽 フィリップ・グラス 出演 エドワード・ノートン ポール・ジアマッティ ジェシカ・ビール ルーファス・シーウェル エドワード・マーサン (カラー/109分/アメリカ=チェコ合作)
2008.12.14
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一種のブームなのか若い世代に古いもの好きが増えているような気がする。 古民家を改築して住んだり、アンティーク家具を求めたり。他とひと味違う個性、それがあるからに違いないし、楽しい趣味だと思う。建築物に始まり雑貨にいたるまで、私も古いものが好だ。骨董品というと、きゅうに敷居が高く聞こえるけれど、ともかく味わいあるものということで、図書館で借りてみた。中身もとても読みやすい。東洋から西洋に至るまで、著者が惚れて手に入れた品々を、年代や出処の知識とともに語っている。真贋を見分けるには、とにかく一生勉強を続けていくしかない、それが骨董という趣味なのだそうだ。読みながらなんとなく想像していた額は、実際より一桁多いくらいだった。自慢の種に買うんじゃなくて、惚れ込んだ品を金額と相談して買う。なんだか、ささやかにならできそうな気がしてくる。これを読んでいる頃丁度、古雑貨の可愛い店が、狸小路にあると教えられて出掛けた時、偶然にも近くに骨董屋を見つけた。ドキドキしながら初めて骨董品屋さんに入ってみた。古いガラスの小物やランプや小皿なんか、すぐにでも欲しい手ごろなのがいっぱいあって、所狭しと並んだ品々が楽しくてわくわくした。長い時間店内を眺めて歩いた後、なにも買わずに出てきたけれど、次また出直して、なにか気に入ったものを求めてみようかなと思う。語り口がよい、写真の感じもいい、読みやすい本で、他の著作も手にとってみたくなった。
2008.12.12
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ジャズ・ミュージシャンのファッツ・ウォラーが生まれたという、小さな町のおんぼろレンタルビデオ店“ビー・カインド・リワインド”。時代に取り残された店に、取り壊しの危機が迫り、店主フレッチャー(グローヴァー )は真面目な青年マイク(デフ)に店を任せ、再建へむけてひとり旅に出た。翌日、マイクの幼なじみでトラブルメイカー、ジェリー(ブラック)が現れた。彼はある実験で強い電気を帯びて電気男と化していて、あろうことか商品のビデオを全てダメにしてしまう! あわてた2人は、ビデオカメラ片手にダンボールや廃材を使って、お客が予約した映画のリメイクを撮影して急場をしのぐのだったが・・・。 独創的な作品『エターナル・サンシャイン』『恋愛睡眠のすすめ』が印象深いミシェル・ゴンドリー監督の最新作。狸小路シアター・キノにて観てきました。これまたすごい!ゴンドリー監督の溢れ出るイマジネーションに、またも驚かされてしまう。フランス人である監督がアメリカで撮った本作には、自身の映画への愛情をいっぱいに詰め込んだ、メッセージ性の高いものになっていた。十八番ともいえる手作り小道具大道具が画面を埋め尽くし、CGに頼った最近のハリウッドはつまらないぞ!と暗黙の了解で作品全体が物語る。映画はもっと観客の身近にあるべきだ!そうアピールしながら、おバカで、かなり賑やかなコメディが進行していく。主人公のマイクとジェリーが、奇天烈な発想でリメイク映画を撮っていく一連のシーンが笑える。『ゴーストバスターズ』『2001年宇宙の旅』『ドライビング Miss デイジー』『ロボコップ』・・・・見慣れた往年の名作?を、たった二人で作って撮って演じている姿は笑いを禁じえない(笑)ハチャめちゃでも愛があるのだ。レンタルショップには、すべてVHSの店主のこだわりの名作珍作が並んでいる。アナログな常連客は、やはり映画を愛する人々で、いつしかリメイク版は評判となっていくのだった。クリーニング店で働く娘アルマ(メロニー・ディアス)を仲間に交え、次から次へと三人は新たなリメイクを撮り、売り上げは倍増に次ぐ倍増。始まりはどうあれ、いつしかスラムで暮らすお客の皆が、一丸となって映画作りに参加しはじめる頃、店主のフレッチャーがDVDという文明の機器を携え帰ってくるのだったが・・・・。そして同じ頃、著作権侵害だと弁護士が現れて、夢のようなひと時は終わりを告げてしまう・・・。ちなみに、この弁護士役にはシガーニー・ウィーヴァー。『ゴーストバスターズ』繋がりで出演しているので、登場しただけで笑えてしまうのだ。ジャズ・ミュージシャンのファッツが生まれ育った場所に建つ、小さなレンタルビデオ店“ビー・カインド・リワインド”。スラムに住む皆の唯一の誇りと、愛する映画を守るため、みんなが団結して繰り広げる、おバカで心温まる?コメディだった。相当ごちゃごちゃしているのに、これだけのリメイク映像を挟んでいるのに、コンパクトに仕上がっているのがすごい。編集も巧いのだろう。『恋愛睡眠のすすめ』と続けて観れば、この監督、どんなにハンドメイドが好きねん!と呆れちゃうかもしれない。それくらい視覚的肌触りのある、面白い作品になっていました。監督・脚本 ミシェル・ゴンドリー 製作 ジョルジュ・ベルマン 音楽 ジャン=ミシェル・ベルナール 出演 ジャック・ブラック モス・デフ ダニー・グローヴァー ミア・ファロー メロニー・ディアス シガーニー・ウィーヴァー (カラー/101分)
2008.12.11
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以前、レンタル落ちVHSを大量買いしたときの一本。キアロスタミ作品を幾つも購入して、その後なかなか観る気になれず、久しぶりのイラン映画となりました。 (あらすじ) サッカーが大好きな10歳の少年が、テヘランで行われる試合を観るために、両親をはじめたくさんの嘘をついて旅に出る、ささやかなロードムービー。 普段私たちが目にするイラン映画は、とにかく子どもたちが主人公のものが多い。日本人には健気さが受けるから、配給会社がその辺を中心に選んでいるからにすぎないのだそうだ。わたしも健気さに心打たれているひとりなのだけど。ただ思い出してみると、『私が女になった日』のなかの「アフー」や、『カンダハール』といった、大人たちが主役の素晴らしい作品もある。こちらは、キアロスタミ監督の第二作目。いつものことながら、大人は誰も助けてくれなくて、自分だけが頼りだ。ずる賢くなるのも、嘘をつくのも、この国で生きるには必要なこと。生き生きして見えるのは、本当に自分の人生を自分で生きているからなんだろう。日本の若者が全体に生気なく見える理由も、そんなところにあるんだろう。勉強は苦手で、母親には呆れられて、父親は当てにならない。いつしか大好きなサッカーの試合を、スタジアムで観ることだけが大きな希望となっている。詐欺同然で作ったお金を持ち、夜行バスに乗り込んだ彼は、生まれて初めて感じた自由を味わっているようだった。この一人立ちする感覚は、誰しもが経験したことのある、瑞々しいもの。無事到着して、されどもう一波乱。並んで求めたチケットは目の前で売り切れで、仕方なく、帰りのお金に手をつけてまでして、ダフ屋から高いチケットを買うのだ。そうしてようやく夢のスタジアムに入るけれど・・・・最後の最後に、やっぱりやるせない結末が待っている。ハッピーエンドはこない。少年は、興奮してまんじりともしなかった一夜が、きっと憎らしかっただろう。試験の結果や、両親の怒りを考えたら、胃がキューっとなりそうなものだけど、でもきっと彼はこんなことではくじけずに、どうにかして来た道を帰って行くのだろうし、もとの生活に戻っていくんだろう。イランの子どもたちのバイタリティはやはり良かった。ありきたりではない宝物だと大人にはわかるから、似たような試練物語が多いのだろうと、この度思う。イランの大人たちは、実はそんな子どもたちを相当認めていて、大きな愛で包んでいるのかもしれない。イラン人監督の視線が、いつも厳しくも温かいのはそのせい。監督・脚本 アッバス・キアロスタミ 出演 マスード・ザンベグレー ハッサン・ダラビ (モノクロ/72分)
2008.12.10
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CGの氾濫する昨今ではなかなか創ることのできなくなった、骨太なパニックムービー。大好きな映画、1972年の『ポセイドン・アドベンチャー』で製作をしていたアーウィン・アレンが共同監督を務めている。地上135階、シスコにそびえ立つ超高層ビル“グラス・タワー”落成式の日。工費削減のため規格外の製品を使ったために起きた出火は、やがて巨大な炎となり、最上階に大勢を閉じ込めたままビルを飲み込む―――9.11事件で崩れ落ちたNYのワールドトレードセンターは110階。目下建設中で世界一高い建物となる予定のブルジュ・ドバイは162階になる予想だという。製作から30年以上経った今も、高層ビルの増殖する社会に、同じように警鐘を鳴らしてくれる。もしも・・・を考えさせてくれる作品だ。現在のタワーは、当然ありとあらゆる非常事態を考えて、最新の設備を備えているはずだれど、9.11事件の時、運良く助かった人々の中には、何十階という高所から自分の足を使って地上へ降り、逃げ延びた人も多かったという。人生なにが起こるかわからない。 名優揃いで、骨太で、手抜きのない迫真の映像と演技の数々は、噂に聞くとおりの佳作でした。名優スティーヴ・マックィーン、色気と存在感抜群のフェイ・ダナウェイ、あのO・J・シンプソンや、フレッド・アステアも出演している。今年亡くなった名優ポール・ニューマンは、誠実な設計者を、さすがという熱演で演じていた。息を呑む恐怖の数々、よくぞこれだけの撮影ができたもの。 この手のパニックムービーはやはりアメリカが秀でている。一部の人間たちが犯した罪が、やがて小さな火を噴き、大きな炎へと姿を変えて、すべてを飲み込んでいく―――。巨大なタワーに、少しずつ少しずつ広がる火は、危機感に時差をうむ、怖いものだと思う。現代文明は間違ったほうへ進んではいまいか、そんな示唆も与えているようだ。監督 ジョン・ギラーミン アーウィン・アレン 製作 アーウィン・アレン 脚本 スターリング・シリファント 音楽 ジョン・ウィリアムズ 出演 スティーヴ・マックィーン ポール・ニューマンウィリアム・ホールデン フェイ・ダナウェイ (カラー/165分)
2008.12.09
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すべてセットで撮影されたという、ヴィスコンティの悲恋物語。原作はドストエフスキーの短編小説で、意外にも軽やかでさえあるメロドラマだった。主人公は夢想家らしいので、本編の青年マリオ(マストロヤンニ)は原作のイメージと違うのでしょう。夢想家に見えるのは、かえってナタリア(シェル)のほう。彼女の気性や不思議ちゃんな感じの行動が、良くも悪くも作品を左右している。名優マストロヤンニが哀愁漂う背中で、最後に魅せてくれなければ、違った映画になっていたはずです。ある夜、赴任先の港町で、マリオは橋に佇み泣いているナタリアと出会う。不慣れな町で孤独だったマリオは、いっぺんに恋に落ちるのだが、ナタリアはじつは帰らぬ恋人を一年も待ちわびて泣いていたのだった。それでも一途に愛するマリオに、彼女の心は傾くが・・・。残酷な結末が胸を痛くする。 舞台はほとんどが夜だ。彼女は「一年後の夜、この橋の上で会おう」という約束を守って、いつも待ちわびているから、マリオが彼女と会えるのも夜。深い別れの悲しみに耐え、狂わんばかりに恋しい思いをしているナタリアは、神経衰弱気味で心の浮き沈みが激しい。たんに、むかしのイタリア映画によく見られるオーバーな演出なのかもしれないけれど、そのテンションについていくことはできなくて、感情移入するのはマリオに対して。この作品の主人公は彼。すべてがセットだというモノクロの映像は、なかなかのものだった。‘物語’チックでとてもいい。(映画自体はそれほどでもないけど)後半部分に降る雪は文句なしに美しい!モノクロの映画の良さは、黒と白でごまかされた細部の認識を、美化されたまま受け入れられるところかもしれない。これがもしカラーだったら、雪はもっとニセモノに見えているだろうし、ここまで美しくはなかったはず。いままで観てきた映画のなかで一等というくらいに、素敵な雪のシーンだった。愛に破れたマリオに優しく寄り添うワンコが一匹。哀愁の背中がマストロヤンニの名優ぶりをみせつけていた。監督 ルキノ・ヴィスコンティ 原作 フョードル・ドストエフスキー 脚本 ルキノ・ヴィスコンティ スーゾ・チェッキ・ダミーコ 音楽 ニーノ・ロータ 出演 マルチェロ・マストロヤンニ マリア・シェル ジャン・マレー (モノクロ/107分)
2008.12.07
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北海道警察音楽隊のコンサートに行ってきた♪隊の歴史は古く、昭和26年編成、道内各地へ赴きコンサートを開いている。年間200本ものステージをこなしているそうだ。道警音楽隊の方の演奏を聴くのは、たぶん初めて。今回は子ども向けの演奏会だったので、曲目は親しみやすいものばかりだった。「クラリネットポルカ」「ジングルベル」「そりすべり」「崖の上のポニョ」「ドレミの歌」そしてドリル・・・etc.見所はなんといってもカラーガード隊と共に繰り広げられるマーチングドリル。真紅の制服に身を包んだガード隊は、とっても華やかだ。演奏するメンバーも、楽しめるようにと色んなパフォーマンスをしてくれて、笑いながら、リズムにノリながら、しっかり交通安全や防犯へのメッセージをアピール。犬の被り物までして(笑)気合の入ったSHOWが楽しい。なにより、演奏がうまいのが一番!すべての曲を安心して聞きほれることができました。むかしから大なり小なり吹奏楽コンサートは身近で、オーケストラとは一味違った感動をいつも感じる。無性にわけもなく音の懐かしさに涙が出そうになって、終始うるうるとしてしまった。音を合わせる歓びが思いだされるのか、単純に青春の音なのか、吹奏楽もいいなぁとひしと思ったのでした。
2008.12.06
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夏目漱石による晩年の傑作『こころ』を、敬愛する監督・市川崑が映画化したドラマ。市川作品は文芸ものがとくに好きで、原作の世界そのままの映像化がうれしい。本作も小説と変わらぬ展開となっていた。先生の過去の秘密とは、同じ女性を愛した親友・梶への裏切りだった。梶にとられることを恐れて、抜けがけのように結婚の約束をとりつけた矢先、梶は自殺し、親友を追い込んだ罪悪感に苦しむ先生は、愛する奥さんとのその後の人生までを台無しにしながら生きてきた。神経を病んだ先生が、唯一過去を告白する相手に選んだ“ぼく”を通して過ぎた真実が明かされるストーリーは、物憂く頽廃的な匂いがする。先生と梶、先生とぼく――ここに同性愛のごとき関係が絡むからこそ、奥さんの不幸が深くて悲しい。決心して逝った先生は最後まで利己的で、すべてを知ったうえ遺された“ぼく”のこれからは果たしてどうなるのだろう。原作を読んだ時のようにふと案じてしまった。 監督 市川崑 原作 夏目漱石 脚本 猪俣勝人 長谷部慶治 音楽 大木正夫 出演 森雅之 新珠三千代 三橋達也 安井昌二 (カラー/122分)
2008.12.05
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