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head&neckの病院には職員食堂がありません。 一日のほとんどを病院内ですごす我々にとって、食堂がないということはなかなか辛いものがあります。先日健康診断を受けるときに、問診表の食事の部分には (1)1日3食食べていますか? (2)朝食は取っていますか? (3)夕食は7時より前に食べていますか? (4)間食を控えていますか?と、4つの項目がありました。もちろん、head&neckは全て「いいえ」です。理由というか、言い訳は以下の通りです。(1)1日3食決まった時間に食べていますか? 医師、とくに外科系勤務医には難関です。午後から手術、午前は外来の予定を組んでいると、外来が終わると手術室にそのまま走って、患者さんの入室時間にすべりこみセーフなんてこともしばしばですから、少なくとも週に2回は昼抜きです。仕方が無いので、手術の合間や外来の隙間を狙ってパンやおにぎりをかきこむことになります。余裕があれば昼は出前を取ったりしますが、どうも栄養に偏りが出ることは否めません。(2)朝食は取っていますか? 一人暮らしなので、朝はぎりぎりまで寝ています。「少し早めに起きて朝食をとって・・」なんて考えて目覚ましを早い時間にセットすると、必ずといっていいほど二度寝して遅刻してしまいます。これ以上遅れるとやばい!という時間にしないと起きられないのです。当然、朝ご飯ぬき・・(3)夕食は7時より前に食べていますか? これはまず不可能です。そんな時間に仕事が終わるのなんて年に数回です。(4)間食を控えていますか? 上に述べたような生活ですから、いきおい間食が増えます。時間のあるときに何かお腹に入れておかないと身体が持ちません。手っ取り早く血糖値を上げるには甘いものが効果的です。 せめて、職員食堂があれば、空いた時間を利用して不規則でも普通の食事が取れるのになあと思いますが、無いものは仕方ありません。それにしても、あらためて見直すと長生きは出来そうにないなあと思うのでした。 ←50位前後を行ったりきたりしながら参加中。一日一回クリックを。
2008.03.27
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どこの職場でも健康診断はありますが、head&neckの病院では半年に一度定期的に行われています。本日は春の定期健康診断を受けてきました。医師と言えど人間、身体は普通の人と同じです。健康診断の日は朝から食事を制限したりして悪あがきする風景も他の職場と変わりません。 現在では、健康診断受診率100%を求められるのですが、昔はそれほどうるさく無く、2年ほど受診していない人が居たりして、割とルーズな印象でした。厳しくなったのは、数年前に医師が結核に感染していることに気づかずに診療を続けて二次感染の危険を指摘された事件があってからだと記憶しています(実際は二次感染は無かったのですが)。 ともあれ、我々こそ健康には気を使うべきという考えは正しいことです。まずは採血、採尿をして、そのあと視力、聴力、心電図、レントゲン。34歳までは心電図は免除でしたが、悲しいかな年齢が上がるに従って項目が増えてゆきます。そういえば、若い頃は採血でも異常値など出ずに気にも留めなかったのに最近はコレステロールが上がり、中性脂肪も上限ぎりぎり。血圧は相変わらず低いのですが、身体の衰えを数値で認識したりして少し悲しいところです。そうして自分の値を見た後は、患者さんでデーターのいい人を妙に褒めたり、自分と同じく高脂血症だと「私といっしょですねえ」なんて共感したり。診察中もただの一般人に戻ってしまっています。 検査結果に反省するのはほんの数日で、時間がたつとまた不規則で不健康な生活に浸りきってゆくのですが、今日はともあれ、数年間サボっていたジョギングを再開したのでした。 ←50位以下に下降しつつ参加中。一日一回クリックを。
2008.03.24
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あちこちのブログでも取り上げられている大野事件の検察側からの求刑がありました。この事件は、少しアンテナの高い医療関係者ならばかなりの関心をもって注目しています。判決次第では、かなりの産婦人科医が産科医療から撤退すると思われますし、外科系医師、救急科の医師等、瞬時の判断が生命を左右する診療科の医師たちが、第一線から退く決意をするきっかけになるであろうと言われています。 比較的冷静な報道をしている読売新聞のサイトから、少し長くなりますが、全文引用いたします。上)医療ミスか難症例か (2006年3月11日)Yomiuri Online医療関係者「手術ができなくなる」 検察側「胎盤無理にはがした」 「地域医療を守る努力を重ねてきた加藤医師の尊厳を踏みにじる異例の事態」――。いわき市医師会の石井正三会長は8日、相馬郡、双葉郡医師会長とともにいわき市内で会見を開き、3医師会の連名で逮捕に抗議する声明を読み上げた。県内の医師約1500人で構成される「県保険医協会」(伊藤弦(ゆずる)理事長)も県警に「(逃亡や証拠隠滅の恐れがなく)逮捕は人権を無視した不当なもの」とする異例の抗議文を送付した。 県立大野病院で唯一の産婦人科医として年間約200件のお産を扱ってきた加藤容疑者の逮捕後、県内外の医師や関係団体が次々と反発する声を上げている。 神奈川県産科婦人科医会は「暴挙に対して強く抗議する」との声明を出し、産婦人科医を中心に県内外の医師19人が発起人となった「加藤医師を支援するグループ」は10日現在、全国の医師約800人の賛同を得て、逮捕に抗議するとともに募金活動を行っている。 こうした医師らの反応の背景には、医師不足による産婦人科医1人体制や緊急時の血液確保に時間を要する環境など、事故の要因として医師個人だけの責任に帰すべきではないと考えられる問題が指摘されている事情がある。また、子宮と胎盤が癒着する今回の症例は2万人に1人程度とされ、治療の難易度も高いことも「下手すると捕まると思うと、手術ができなくなる」(浜通りの産婦人科医)との心情を引き起こしているようだ。 一方、事故調査委員会が「癒着胎盤の無理なはく離」を事故の要因の一つとし、医療ミスと認定しているのは明白な事実。「医療事故情報センター」(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「あまり情報がないまま、医者の逮捕はけしからんという意識に基づく行動という気はする」と指摘する。 片岡康夫・福島地検次席検事は10日、逮捕や起訴の理由について説明し、「はがせない胎盤を無理にはがして大量出血した」とした上で、「いちかばちかでやってもらっては困る。加藤医師の判断ミス」と明言。手術前の準備についても「大量出血した場合の(血液の)準備もなされていなかった」と指摘した。 加藤容疑者の弁護人によると、加藤容疑者は調べに対して「最善を尽くした」と供述し、自己の過失について否認している。公判では、過失の有無について弁護士8人による弁護団と捜査当局の主張が真っ向から対立すると見られる。判決の内容次第では、医師の産婦人科離れに拍車がかかる可能性もはらんでおり、全国の医療関係者がその行方を見守っている。 すでに、あつカフェ先生のブログや、Drbamboo先生のブログで、検察や県警の行動や理屈がいかに的外れであるかが厳しく指摘されています.head&neck自身も、これが有罪になるならば日本の医療は一気に萎縮医療に向かい、激しい崩壊を来すだろうと予測しています。 この事件に対する報道機関のあり方も、世の中の状況を冷静に掴み切れているかどうかを評価する一つの試金石となります。検察、警察にへつらう報道や感情に流された報道は三流報道機関の証と言い切って差し支えないでしょう。 注意深く見守り、自分たちが信じるべき情報を見極めようとおもうのでした。 ←50位以下に下降しつつ参加中。一日一回クリックを。
2008.03.22
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M先生はうちの病院の耳手術専門部長と、同系列の姉妹病院の副院長を兼ねています。 耳鼻科の手技は、大きく耳の手術と、頸部の手術に分かれます。耳の手術は名人芸の部類に属し、それだけに耳鼻科の中でも耳科手術だけを専門にする先生も多いのです。 もともと、head&neckの医局にいたのですが、15年も前に関東の大学病院に移り、長く耳の手術を専門に研鑽され、助教授までされていました。大学人事や医療以外の事務処理が苦手なM先生は、50歳を超えたのをしおに、好きな手術だけに専念できる環境を求めて、古巣に舞い戻ってきたのです。 もうすぐ60歳になるM先生は、少し猫背で、笑顔がかわゆく、病棟ではナースたちに「じいじ」の愛称で慕われています。電子カルテは大の苦手、パソコンも機械もだめなアナログ世代のお医者さんを彷彿とさせます。お酒の席は大好きですが、head&neckと同じくらい酒に弱く、ビール半分も飲むとまぶたが下がって居眠りを始めます。 手術室では、別人のようなきらめきを放ちます。耳科手術はモニター画面を通して周りで見れるのですが、通常ではとても考えられないスピードで的確に術野が展開されます。単純に耳科手術件数だけで比較しても日本中で5指に入る存在であることを思い知らされます。 手術が終わると、じいじは若い連中と食事に行きます。焼肉が大好きなのですが、最近は尿酸値が上がって家で肉を出してくれないということですが、結局は外食で通常以上に食べてしまっているようです。眠そうな目をしながら気前よく研修医の分も支払いをするじいじは、長い医師生活のなかで、今が一番充実しているそうです。 じいじをみていると、head&neckも長く現役で手術を続けたいと思うのでした。 ←50位以下に下降しつつ参加中。一日一回クリックを。
2008.03.18
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大学に通っているとき、head&neckは授業では居眠り常習犯でした。この前、久々に大学時代のノートが出てきたので見直してみたら、前半はしっかりノートをとっているのですが、徐々に字が躍り始め、後半は意味不明。・・ああ、この辺から眠くなったんだな、とはっきり判ります。 そんな自分が、医師になってから看護学校の講義を受け持っていたことがありました。頭頸部の解剖や疾患について、看護師の卵たちに教えるのです。head&neckはもちろん女子大(正確には違いますが、看護学部は圧倒的に女性が多く、ほぼ似たような状態です)なぞ入ったこともありません。講義は1コマ80分の長丁場ですから、最初はそれなりにしっかりと教材の準備をしつつ、8割の真面目さと2割のときめきを覚えながら講義室に行きました。 教壇に立つと、100名のはずの学生さんたちの出席率はおよそ4割。学会発表と違って教室全体はけだるい雰囲気に包まれています。慣れないなりにも何とか初回の講義をしていくのですが、教室のなかで話しているのは自分一人。30分もたつと居眠りする学生さんたちがちらほらと目立ち始めます。うーむ・・ よく考えてみると、自分たちが大学生のときに、講義は退屈なことこの上もなかったのです。チンプンカンプンな話をされ、さらに時間が長いとくれば居眠りするのは当たり前、真面目なやつに後でノートを見せてもらおうとたかをくくっていたものでした。あの頃、「大学の先生ってのは授業が下手だね」なんて仲間と言い合っていたにもかかわらず、いざ自分がその立場になってみると、まさに話し下手でわかり難い講義をしてしまったのです。 こりゃ負けてられん!と考えたhead&neckは、2回目の講義から方向性を変えることにしました。1回目の時はまめに教材としてプリントを作り、学生に配布して、自分もそれを見ながら講義していましたが、次からはプリントは授業の最後に配るようにして、講義はすべて黒板に書き、適宜スライドを使用しました。おおよそ10分に1回ほどの割合で、このブログでも書いたような救急外来での患者さんの話などを出して笑いをとります。エグい術中写真のスライドを見せたり、現物を拝ませようと前日摘出した癌を、病理の先生と患者さんに了解を得て持っていったこともあります。おじさん意地になってきました。もっと笑わせてやる。ビデオも持ち込みました。笑いと驚愕で居眠りしている学生を起こすんだ! だんだんと、講義の出席率が上がって参ります。最初は半分に満たなかった出席率は、3回目には7割になりました。翌年、うわさが立ったのか、初回の講義から満席です。あれ?この教室たしか120席あるはず・・・ 嬉しいことに、昨年の講義を聞き逃した2年生が再び聞きにきてくれていたのでした。 ←苦戦しつつ参加中。一日一回クリックを。
2008.03.15
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先日、手術手技研究会で動画を供覧して発表してきました。昔は、動画の発表というともっぱらVHSのビデオを持ち込んで再生していましたが、今はpowerpointの上でパソコンで動かせるため随分と手間が省けるようになりました。 通常の学会発表だと、スライドが勝手に進んでいってしまうことはないので、自分のペースでしゃべって、原稿が終われば次のスライドに行くといった流れでしゃべりますが、動画だと原稿を読んでいると、ともすれば画面と全く別の説明になってしまったり、追いつかなかったりするので、内容はある程度暗記しておかねばなりません。つまりアドリブでしゃべらざるを得ないことも多く、やや緊張度はあがりますが、何回かやるとコツは飲み込めます。head&neckの発表は最近はほとんど動画が入りますので、原稿を作らずに画面を見ながら話すことが多くなりました。 学会では、発表時間は大体6分から10分と決められており、それに収まるようにスライドを編集してありますが、静止スライドで時間をとりすぎるとタイムオーバーになってしまいます。このあたりは感覚がものをいうようで、head&neckはおおむね時間内に終わらせるのが得意です。体内時計が染み付いているのかもしれません。 苦労して作ったスライドも、学会がおわるとパソコンの中に眠ってしまい、何かない限りは見返すことは少なくなります。head&neckのパソコンにも使わなくなったプレゼンテーションが30以上眠っています。余分なファイルとして削除する気にもなれず、そのままにしてありますが、さらには昔のフィルムの時代のスライドや、ビデオも膨大にあり、こうしたものが病院の医局の机を占拠しているのでした。 ←30位から40位くらいで参加中。一日一回クリックを。
2008.03.13
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毎日新聞社【2008年3月7日】の記事より。 医療過誤:2医師を書類送検 のど手術で男性死亡--柏崎署 /新潟 柏崎署は6日、医療過誤で患者を死なせた業務上過失致死の疑いで、いずれも十日町市在住の耳鼻咽喉(いんこう)科の男性医師(39)と麻酔担当の男性医師(31)を地検長岡支部に書類送検した。 調べでは、医師2人は刈羽郡総合病院に勤務していた04年3月3日、のどを手術した柏崎市の男性会社員(当時28歳)を、誤って肺水腫による呼吸不全で死亡させた疑い。 患者はへんとう腺の摘出手術を受けたが、血が止まらず、止血手術を受けた。しかし、患者の胃の中に血液がたまっている恐れがあったにもかかわらず、医師が確認を怠り、吐いた血を肺に吸いこんだという。【根本太一】 耳鼻科の分野では、扁桃摘出術はおそらく耳鼻科医になって最初にやる手術のうちの一つです。つまりそれほど数が多いということでもありますが、head&neckが初めてやったのもこの手術でした。ちなみにうちの病院では年間160件の扁桃摘出術があります。 どんなに上手な先生がどんなに上手くやっても、ある一定の確率で術後出血が起きます。以前5年間の統計を取ったら、術後出血で止血術となる確率は0.5%くらいでした。つまり、約200人に一人の割合で術後出血が起きることになります。head&neck自身もこれまでに数件の止血術の経験がありますが、現場では相当ドタバタします。 術後出血の知らせが来て病棟に行くと、たいがいは患者さんは口からぼたぼた血を流しながら容器を抱えて唾と共に血を吐き出しています。結構飲み込んでいる患者さんも居て、その場合に不用意にのどをのぞくと反射が起きて嘔吐し、時に意識不明になることもあります。出血が舌根といって舌の付け根の場合や患者さんの反射が強い場合は、病棟で処置することは不可能なので、手術室で止めようという話になります。 全身麻酔をする際には、胃の中に食物などがある場合、格段に危険度が上がります。呼吸の管理をするために筋弛緩剤を使って息をとめるのですが、のどから出血しているので息を止めると肺に血液が流れ込みます。おぼれているのと同じことです。場合によっては嘔吐し、更に血液は固まりますから、吸引しにくいといった面もあります。そんなことから、扁桃術後出血の麻酔は、ベテランの麻酔科医でもかなり緊張する症例です。 術後出血については、我々が手術の説明をするときに必ず患者さんに説明します。head&neckがいま居る病院では麻酔科医が複数いて、皆非常に気道確保に高いスキルを持っていて常に協力していただけるので比較的安心して手術をしていますが、かつて居た病院で麻酔科の常勤の先生がいないところもありました。そう考えると、同じような状況になったかもしれません。 扁桃腺の手術の適応になる患者さんは、おおむね年に5~6回以上咽頭痛、発熱を繰り返し、日常の仕事を何度も休まざるを得ない状況になった人たちです。この記事の医師も、こういった患者さんを助けるために手術をしたのでしょう。結果が結果だけに、何らかの保障や償いはするべきだとはおもいます。しかし、書類送検というのはこの医師を犯罪者扱いすることです。犯罪者扱いとは、悪意のある行為に罪を課すことです。その適応にはもっと慎重になるべきであろうと思うのでした。 ←30位から40位くらいで参加中。一日一回クリックを。
2008.03.09
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3月は送別会の季節です。head&neckの病院は医師が200人以上いますから、異動人数も多く、この時期には30人近くの医師が入れ替わります。head&neckと比較的関わりが深いのは、形成外科、麻酔科、外科、小児科、放射線科、内分泌、脳外科などですが、特に麻酔科の先生には日ごろから無理を聞いてもらって麻酔をかけてもらっているので、異動を聞くとさみしくなるものです。 いま、当院には10人の麻酔専従医が居ます。昔はもっと少人数でやっていたものが徐々に増員してこの人数になったのですが、今回、歯科麻酔(歯科医の先生が、麻酔の研修としてローテートしている状態)出身の先生が移動で病院を去ることになりました。歯科麻酔については、少し前にニュースになったりして、色々と問題があります。その是非についてはここでは敢えて触れません。 あくまで、我々がお世話になっている歯科麻酔医個人についてですが、彼は溢れる才能と技術をもって麻酔を担当してきました。血管確保は誰よりも早く上手く、挿管もCV抜きん出ていました。勉強熱心で麻酔の成書は何冊も読破しもちろん麻酔管理も上手で、彼が麻酔をかけてくれると非常に手術がやり易いのです。人柄も良く、全国的に麻酔科医が不足していることもあり、数年にわたり当院に勤務し、長く外科系の手術業務を支えてくれた一人でした。 彼のことを思うと、資格というものと、才能というものについて考えさせられます。我々医師は、医師免許を取って初めて技術を磨き始めます。技術というのは、素質がかなりの割合を占めますから、大方の新人医師は自分が外科系に向いているか内科系に向いているかは自分でそれなりに把握しているでしょう。途中で向いていないと感じたら、労力は要りますが科を変更することだって出来ます。逆に言うと、才能を開花させるのにかなりの年月を要します。ところが、歯科麻酔医は、資格という大前提がグレーゾーンであるため、たまたま数年をかけて才能が開花してしまった人間を作り出してしまうことがあるのです。 江戸時代、土佐藩では武士は上士と郷士に身分差別されていました。上士は殿様にもお目見えでき、藩の要職に就くことが可能でしたが、郷士はいくら優秀であってもお目見え不可能、要職は与えられない身分でした。有名な坂本竜馬はこの郷士出身です。竜馬の友人で武市半平太も郷士出身ですが、白札郷士といって、上士と郷士の中間のような身分を得ていました。白札郷士は、殿様に意見を具申できるのですが、あくまで郷士ですから要職には就けません。 優秀な麻酔技術を持った歯科麻酔医というのは、ある意味この白札郷士のような存在です。麻酔医であって麻酔医でない、といった鵺のようなものです。辛い立場です。 制度の狭間に落ち込んで、苦しんでいる人は医療以外の分野にもたくさん居るのではないかと思いますが、実際目の前にすると深く考えてしまうのでした。 ←まだまだ参加中。一日一回クリックを。
2008.03.08
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head&neckの病院に、20年に渡って非常勤で外来、手術をしにきているのがS教授です。S教授は耳鼻科ではなく形成外科の手術の名手です。 もともと、耳鼻咽喉科というのは境界領域の多い科で、医療の発展、多様化に伴って、昔は耳鼻科で扱っていた疾患が徐々に形成外科担当になっていった分野も多いのです。例えば口唇口蓋裂や耳介奇形、顔面奇形などもそうです。更には、頭頚部外科の発展で再建手術がどうしても必要になり、形成外科にお世話になることも多く、我々にとっては非常にかかわりの深い科でもあります。 S教授の手術は、芸術です。通常の医師ならば作図してから取り掛かる口唇裂も、S教授はおもむろに切開し始めます。そして、出来上がりはエクセレントです。再建もすばやく、顕微鏡下の血管吻合も超一流で、形成外科分野のオールマイティープレーヤーです。なんでも、日本中で手術をしておられるそうで、行ったことのない地域は無いそうです。 もうすぐ60歳ですが、外来やオペ室で見る姿は背筋が伸びて颯爽としており、ロマンスグレー一歩手前の若々しい風貌なので、小さいお子さんのお母さんなどにはS教授ファンが大量におり、我々から見ても憧れの的です。 手術が終わると、皆で飲みに行きます。 ・・・飲み会でのS教授は、さっきまでのダンディーさが見事に吹っ飛ぶ豹変をきたします。志村けん扮する酔っ払いおやじとそっくりのべろんべろん状態となり、のどちんこが見えるほど大口を開けて笑い、呂律は回らなくなり、最後は代行運転を頼んで千鳥足で車に乗り込んで帰ります。 最初は激しいギャップにびっくりしました。いつも別れるときはぐてんぐてんの状態なので、それが印象に残っていますが、次に会うときはいつもの颯爽とした姿で病院に現れるS教授は、やっぱり偉大な先生なのでした。 ←なかなかランクが上がらないながらも参加中。一日一回クリックを。
2008.03.05
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普段の診療の中で、口頭での感謝の言葉を頂くことはしばしばあります。面とむかって「ありがとうございました」と言われることは、医師冥利に尽きます。 たまにですが、お手紙で感謝の意を表現してくださる患者さんが居ます。これまでにそうたくさん頂いたわけではありませんが、こういう手紙は全て手元に残してあります。head&neckの中では、最も大事な宝物の一つです。 数年前、head&neckは、主に自閉症児を教育している養護学校の嘱託校医をしていました。嘱託学校医は年に一度、診察道具を持って学校に出向き、学校で検診をするということをそのとき初めて知りました。自閉症児の診察は大変です。泣いたり逃げたり暴れたりする患児をなだめすかして、ときには学校の体育の先生に押さえつけてもらいながら全ての生徒の耳、鼻、のどをチェックします。前任の先生は患児をおびえさせぬようにしたのかもしれませんが、失礼ながらあまり熱心に診察をされていなかったようで、診察に行くと、数十人の生徒のうち、半数以上の耳は耳垢で栓塞し、鼓膜が観察できない状態でした。その他、中耳炎やひどい鼻閉で鼻の中がただれている患児もいました。 放っておけないと感じたhead&neckは、当時外勤に行っていた、養護学校の近くの病院に頼み込み、午後一杯の時間をこの養護学校の生徒のために確保しました。その日は普段の午後の仕事を空け、擁護学校の先生と、小児科の先生、それから病院の男性看護師に協力を求め、20人以上の自閉症児の生徒の耳垢掃除、中耳炎の処置、鼻の処置を行いました。 生徒たちは学校で診察したときに輪をかけて脅えています。中には走って外まで逃げる子、診察室で暴れて椅子を倒したり器具をぶちまける子、所かまわずつばを引っ掛けて診察を逃れようと必死な子なども居ます。 全てを終了したときは、大変な疲労と脱力感で一杯でした。それと共に、「もしかしてこんなに怖がらせて、あの子たちにとんでもないトラウマを作ってしまったのではないか?親御さんたちにいい加減にしてくれとクレームをつけられてしまうのではないか?」と不安な気持ちになりました。そのことを、養護学校の先生にお話し、親御さんたちに、もしお子さんたちを脅えさせて傷つけてしまったようなことがあれば謝罪しますと伝えていただくように話しました。 数日後、養護学校のPTA代表の方から手紙をいただきました。以下はその手紙の抜粋です。(個人情報を伏せるため、一部改変してあります)---------------------------------------------------------head&neck先生、○×病院の皆様へ 先日は、私どもの子供たちのために、わざわざ貴重な時間を割いて処置をしていただき、誠にありがとうございました。 その後に学校の先生と、付き添った親からことの仔細を聞き、事情を知って、改めて感謝の気持ちをお伝えしたく筆を取りました。 突然のお手紙、お許しください。 私たちの子供は自閉症という病気を持って生まれ、親以外の一般社会の人たちからはある意味、隔絶された存在です。もちろん、症状には個人差があり、何とか社会の片隅で生きている子もいますが、それは少数派で、多くの子供たちは決まった施設で、理解有る人たちのお世話になっているのが現状です。 先生や病院の皆様はご存知のとおり、ただの健康診断につれてゆくのもままならず、時に私たち親でさえ、子供の病気を見逃してしまうこともあります。 子供たちが病気になったとき病院に連れてゆくと、普段と違う環境に脅えたりして、満足に診察を受けるまで待っておれないことも多く、キャンセルして帰ったこともありました。病院や診療所の待合室で大きな声を出したり、暴れるわが子を抑えきれず、私たち親が回りの視線に耐え切れない思いをしたこともあります。 そんなこともあり、これまで私たちは、病院や医院に気軽にかかったことがありません。個人のお医者さんや看護婦さんを責める気持ちは毛頭ないのですが、私たち自身のほうで何となく引いてしまっている気持ちがあったことは否めません。 さらには、医療機関に自閉症児のための診療制度が無く、理解を示さないことに、責める気持ちを持ち続けていました。脅え、泣き、暴れるわが子の姿を見る度につらく、責めたくなってしまったのです。 今回の診察にあたり、子供たちを充分に診るため、たくさんの人数をさいて準備をしていただいたと聞きました。また、先生は特別に普段診療なさらない時間を使って、一般の方々が待合室に居ないときを選んで、私たちに配慮していただいたことも、大変にありがたいことでした。 先生が、子供たちを脅えさせて傷つけたかもしれないと心配していると伺って、私たちの責める気持ちは、全く独り善がりの考え方であることに気づきました。 ある意味、責める気持ちは自分たち親自身に対する後ろめたさや、周りの目を気にする気持ちの裏返しであることに思い当たりました。 大変なことが判りきっているのに、しっかりと検診をしてくださり、更にはその後にもきっちりと診察と治療をしていただいて、今は、先生や協力して下さった病院の職員の方々に、感謝の気持ちで一杯です。 本当にありがとうございました。---------------------------------------------------------- この手紙を頂いたときの感動は、そう簡単に忘れることはできません。頑張って良かったと思える瞬間があるからこそ、医師を続けられると思うのでした。 ←日曜日も参加中。一日一回クリックを。
2008.03.02
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