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耳鼻科医の天敵、土用の丑の日が過ぎました。この日は、かなりの高確率で呼び出しがかかるのです。 普段から、人が魚を食べて骨がのどに刺さった場合、簡単に取れないと大概は病院の救急に受診します。最近の食事形態を考えると、朝、昼はパンやパスタなどの洋食や、麺類が多いでしょうから、この魚骨異物は、おおむね夕食後が多いようです。つまり、我々がちょうど仕事が一段落ついた時間帯に救急から連絡がくるのです。 例えば夕食を7時に摂って、のどに異物が刺さると通常、ご飯を丸呑みしたりして何とかはずれないか試してみたり、しばらく我慢したりしますね。それでも刺さっていると、いよいよ病院に行こうということになりますが、なぜか大体夜10時をまわったころにおいでになります。このまま夜を過ごすのが不安になる時間帯なのか、我慢が極まったのか、とにかく皆さん例外なく恥ずかしそうに外来で事の仔細を話してくれるのです。 一番多いのはアジやサバの小骨で、これは無理なく納得がいきます。うっかりというやつです。これらの骨は細いのですが長さがあり、比較的あっさりと見つかります。ところが、土用の丑の日だけはうなぎの小骨が引っかかる患者さんがかなりの確立で受診します。皆、うなぎは骨がないものと思って食べるのか、心外そうな雰囲気を醸し出す方もいます。うなぎの骨は細い上に短く、なかなか見つけるのが大変で、見つかっても摘出に苦労します。 普段あまりうなぎの骨の異物で受診される方が少ないのは、通常あまり食べないからなのか、それとも忙しいのでうなぎ屋さんの捌きが雑になるせいなのか。仔細は分かりませんが、外来受診でうなぎの骨を見つけるたびに、「うなぎにも骨はあるんだなあ」と再認識するのでした。
2010.07.28
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head&neckが医者になった頃は、おじいちゃん、おばあちゃんというと明治生まれの方が結構おいでになったものです。カルテの生年月日をみて、43年なんて書いてあるから自分と同年輩のつもりで呼び込むとよぼよぼ(失礼)のおばあちゃんが入ってきて、良く見ると「M」:明治43年だったりする。あらびっくりでした。いつの頃からか、明治生まれの患者さんが減り、現在ではめっきりお見掛けしなくなりました。それもそのはず、明治は44年12月までですから、最後の明治生まれでも現在90代後半です。既に大正生まれのご老人も減少しつつあり、年号で時代の移り変わりを感じます。 先日、日本の平均寿命がyahooのニュースにのっていましたが、女性は86歳、男性は79歳だそうです。他の平均値と違い、人間の寿命はばらつきが少ないのが特徴だそうで、大体これぐらいの年齢になると天に召されてゆくということでしょう。 一口に高齢者と言ってもいろいろありますが、老年医学では、65歳から74歳までを「前期高齢者」、75歳から84歳までを「後期高齢者」、85歳以上を「超高齢者」と呼び区別しています。いま医療現場ではこの超高齢者が病気になったときの扱いに苦慮しています。ひと昔前ならば、高齢というだけで手術や化学療法を諦めていた感がありますが、最近は元気で比較的健康な方が多いため、全身状態が許せば可能な限り行ないます。とはいえ、高齢者では若い方よりもリスクは高く、時に思わぬ合併症が出たりする事があって注意が必要です。術後に痴呆が出たり、足腰が弱ったり、肺炎になったりと様々なことが起きるので、こちらも気が抜けません。それでも何とか退院できれば良いのですが、時には入院のまま回復されない患者さんもいます。50代、60代ならまず問題にならないような合併症で入院が長引く可能性はかなり高いし、その分周りへの負担も大きくなります。 本日もhead&neckの外来に90歳の中咽頭癌の患者さんが来院されました。10年前ならばおそらくは痛み止めの麻薬で対応していたのでしょうが、今では手術を前提にお話が進みます。今後はこれが標準となるのか、社会の高齢化と医療の進歩とともに現場への負担も増大しますが、行政レベルでの対応は全くありません。政府が後期高齢者制度を充実させるというのは掛け声だけで、実際にはころころと制度が変更されて、結果として高齢者を医療施設で長く療養させると赤字になるように変質しているようです。こんなところにも進歩しない政治のツケが浮き彫りになっていると思うのでした。
2010.07.26
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head&neckが医師になって初めてやった手術は扁桃摘出術といって、慢性扁桃炎や扁桃肥大に対して行う手術です。耳鼻咽喉科の中では最も数が多い手術で、おそらく今も昔も研修医はまず、いの一番にこの手術に挑みます。 何事も最初というのは忘れがたいもので、おそらく千例を超える手術をやっても、最初にやったこの扁桃摘出術は今でもはっきりと覚えています。その頃は現在のように上級の医師が傍について逐一指導するようなことも無く、教科書で読んで、先輩の医師がやるのを後ろから数例見ただけでいきなり「じゃあ次はやってみろ」と放り投げられた覚えがあります。 head&neckが担当したのは、12歳の女の子で繰り返す扁桃腺の炎症で手術適応と判断された患者さんでした。現在では20分で終わる手術も、その頃は1時間半かけてようやくなんとか終了し、終了後は術後出血が気になって眠れず、当番でもないのに毎日数回病室に顔を出して確認していました。退院後も、今では一度再診して異常がなければOKを出すのですが、その頃は心配で1ヶ月あまりも通っていただき、もう絶対に大丈夫な状態になるまで不安で仕方が無かったものです。逆に言えば、経過が良好でめったなことは起きないが故に、先輩の医師も何か無い限りは若かったhead&neckの好きにさせてくれたのだと思っています。結果として疾患が治ればそれでよかった時代です。 月日は経ち、先日、3歳になる女の子が慢性扁桃炎の診断で近くの開業医から紹介されて受診されました。月に一度はのどを腫らしては熱発し、肥大も強く、診断に間違いはありません。最初から手術目的の紹介であり、head&neckの病院では扁桃摘出術は年間100例を超えます。上にも書いたとおり、ごく初歩的な手術で、おまけに現在うちの科では最年少の先生でもこの手術はマスターしています。そこで、親御さんが希望する手術日である2週間後に手術担当になっている医師にやってもらおうとお話しました。 ところがこのお母さん、それでは嫌だといいます。なぜか「先生の空いている日でなきゃ困るんです」と言い張ります。折しも癌の手術や学会の予定が立て込んでいて、head&neckの予定は3ヶ月先まで空きがありません。子供のためには、早く手術をしてあげたほうがよいし、あまり先延ばしにするのは得策ではありませんが、どうにも譲りません。head&neck「お母さん、心配要りませんよ、いまうちの若い先生は手術上手ですし。」お母さん「でも、私には先生にやってもらうのが一番なんです」head&neck「はあ・・医者としてはありがたいことですが、私の予定と手術枠は3ヶ月先まで一杯なんですよ。勿論緊急手術は違いますが、子供さんはちゃんと予定組んでやったほうが安全ですから。K先生にやってもらえば再来週にはできるんですがねえ。」お母さん「いや、やっぱり先生がいいんです」・・・はて、そんなに信頼されるほどの仲でもないし、何しろ初対面だし・・途方にくれました。head&neck「なにか理由があるんですか?私の知人の知り合いとか、私の患者さんのお知り合いとかですか?」お母さん「あ、先生私を覚えてないんですか???」・・え?まじまじと患者のお母さんの顔を見ます。おそらく20代後半の綺麗な女性です。意味深なお母さんの言葉に隣では看護師さんが聞き耳を立てているのが分かりますが、head&neckには身に覚えがありません。お母さん「私、旧姓は●木です。●木×子と言います。覚えておられますか?」●木×子、●木×子・・はて、どこかで、、、あっ!お母さん「思い出されましたか?」 目の前のお母さんの顔を見て、面影が蘇ります。まるで映画の特殊撮影のように自分の脳裏でお母さんの髪が短くなり、背が低くなり、化粧が取れて若返ってゆきます。そこには、head&neckが初めて手術したあの少女が立っていたのでした。
2010.07.20
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1年間も放置したこのブログ、まだ読んで下さっている方がいるかどうかは分かりません。head&neck自身のモチベーションの低下、やや燃え尽き症候群なのか、ネットで、実生活での医療の分野での進展のなさに苛立ちを隠せず、なんだか色々と訴えても無駄なことをやっている気がして、日々目の前の患者さんを治すことに専念した1年でした。 民主党政権になっても世の中は変わらず、気がつけば私も中年。いつまでも若くないというのに改善しない現場の忙しさと報酬の少なさ、クレームの多さ、報道の偏りにはげっそりとしています。 自分自身、現場の医療に手を抜くことはありませんが、また一人同級生が勤務医を辞めて開業に踏み切り、仲間が減ってゆきます。臨床研修の悪影響か、私を超えていってくれるオペレーターにはお目にかかりません。手前味噌かもしれませんし、思い上がりかもしれませんが、head&neckは今、県内で髄一の頭頸部外科医とよばれています。もちろん日本一とか世界一ではありませんが、おそらく日本の中央部に位置するS県の頭頸部手術のオペレーターとしては気力、技術ともにトップレベルと自負することができます。しかし、かつて私の師匠が「外科医の旬は30代後半から40代半ばまでだよ。その後はどんどん腕は落ちてゆくんだよ。」と言っていた言葉が最近重く心にのしかかります。あと数年で、head&neckのピークは終わります。そのときに、後継者がいるのでしょうか?今なら出来ることが数年後には出来なくなる。そのときまでに私の技術を伝えることの出来る医者に出会えるのでしょうか?もし私が頭頸部の病気になったとき、私自身を誰が手術してくれるのだろうか?そんな焦りを感じる今日この頃です。 半分以上オープンのこのブログ、医療関係者が真剣に読めばhead&neckの身元は簡単に分かるはずです。head&neckの病院のHPには、後期研修医募集の要項もあります。どなたか、ヤル気のある若い医師はいませんか?
2010.07.17
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