Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2005/05/26
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カテゴリ: エトセトラ
 5月に入って、パーシー・ヒース、モニカ・セッテルンドと、個人的に思い入れがあった方が相次いでなくなり、日記に触れた。悲しい思いをしていた矢先に、昨日の朝刊が、人気ブランド「VAN」の創業者で、服飾デザイナー&評論家の石津謙介さんの死を伝えていた。93歳。死因は肺炎。記事には「故人の遺志で献体し、葬儀は行わない」とあった。石津謙介氏

 「VAN」と言えば、60~70年代に青春時代を過ごした僕のような世代にとっては、このうえなく愛着あるブランド。英米の若者ファッションを日本に紹介し、ファッションだけでなく生活スタイルすべてに多大な影響を与え、ブランド自体が一つの文化だったと僕は思う( 写真左 =オフィスでの石津氏。 (c)石津氏のHPから

 僕自身、中学、高校生の頃から「VAN」や「KENT」など、石津さんが生み出したブランドの服のデザイン、すなわちアイビー、トラッドといわれるファッションに慣れ親しんできた。それまでの国産メーカーの洋服にはなかった、決定的な新鮮さ、ある種の洗練されたセンスを感じてきた。

 以来、ウン十年。僕にとって、ファッションのベースは、一時の流行に触発されて若干「遊ぶ」ことはあっても、常に中心線は、アイビー&トラッド・ファッションだった。だから、石津さんとVANは、僕にとって、ファッションの骨格のような存在だった。

 実は、石津さんと僕は思わぬ縁がある。新聞にも記されていたが、VAN・JACKET創業(1951年)の地は、大阪市南区北炭屋町14番地である。現在は中央区西心斎橋1丁目と地名が変わっているその地は、僕の卒業したM中学校と目と鼻の先の、歩いて1分ほどのところにあった。VAN is my life

 創業の場所には、2階建てのアパートのような建物が建っていた。VANそのものは55年に東京へ本社を移したが、その後も60年代後半まで、大阪の創業の地は社の施設として使われ続けた。

 今でもよく覚えているが、VANのあった場所は、表通りから細い路地を15mほど入ったところにあった。そして、通りには目印らしいポールが立っていて、その先にはあのVANのロゴを記した看板が吊されていた。

写真右 =VANやアイビー、トラッドがらみの本は今もなかなか捨てられない)。

 後年、石津さんのご子息の祥介さん(僕より年上だが)、僕と同じ大阪府立のK高校を卒業されていたことを知った(文芸春秋の「同級生交歓」というページで)。おそらく、創業間もない頃の大阪時代、祥介さんは家族と住む大阪の自宅から通っていたのだろう。石津ファミリーとのさらなる接点を知って、嬉しい気分になった( 写真左下 =貰ったノベルティ類や、昔使った定期入れも今も手元に…)。

 VAN倒産後の石津さんは一時期、不遇の時を過ごしたが、その存在を忘れない多くのファンの支えもあって、再びファッション・リーダーとして復活した。僕が何よりも感銘を受けたのは、つつましいなかにも心豊かに暮らした石津さんの晩年の生活だ。Van Novelty Collection

 10年ほど前、石津さんの暮らしを追うテレビ番組を観たことがある。都内の狭い一戸建てが終(つい)の棲家(すみか)だったが、そこでは、質素な食事と服装で過ごし、晩年でも台所に立って自ら料理もつくられた。小さな庭では野菜も作っておられた。番組で着ていたブレザーは、「30年前のものを、今も大事に着てるんだよ」と笑っておられた。

 唯一の贅沢が、愛車のミニ・クーパーだった。80歳を過ぎてなお、車のハンドルを握ることには賛否があるかもしれないが、それでも、僕は石津さんのおしゃれ心というか、こだわりに、「格好いいなぁー」「僕も、こんなおじいちゃんになりたいなぁ…」と番組を見ながら素直に感動していた。

 生前、石津さんは「私は流行は作らない。風俗をつくってるんだ」と口ぐせのように語っていた。その言葉通り、VANは未来へ続く風俗の礎をつくった。VAN創業の地が大阪であったことは、今も僕ら関西のトラッド・ファンの自慢でもある。石津さんの服飾文化への貢献に感謝するとともに、同じ時代に生きることができた幸せを心から喜びたい。合掌。





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Last updated  2005/05/26 09:36:19 PM コメント(4) | コメントを書く


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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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