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2017/08/13
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 63.オールド・ファッションド(Old Fashioned)

【現代の標準的なレシピ】 【スタイル】 ビルド

 代表的なクラシック・カクテルの一つです。古い時代のカクテルブックには必ずと言っていいほど紹介されています。著名なカクテル史研究家のデヴィッド・ワンドリッチ氏によれば、「オールド・ファッションド」の原型は、1830年代の前半には登場していたそうです。誕生の経緯・由来については、以下のような4つの説が伝わっていますが、どれも決定的なものではありません(1~3の説は様々な文献資料でよく紹介されいます)。

 (1)19世紀末、ウィンストン・チャーチルの母、ジェニー・ジェロームが考案した。
 (2)19世紀半ば、米ケンタッキー・ダービーが開催されることで有名なチャーチルダウンズ競馬場のバーテンダーが考案した。
 (3)ケンタッキー州ルイビルのペンデニス・クラブのバーテンダーが考案した。
 (4)1900年~1908年の間に、フィラデルフィアのベルビュー・ストラトフォード・ホテルのバーテンダーが考案した。

 Wikipedia英語版は、上記のうち(3)の説を紹介し、「1880年代、ペンデニス・クラブ(The Pendennis Club)のバーテンダーが考案し、クラブでの人気カクテルとなった。後に、このクラブのメンバーだったジェームズ・ペッパー大佐によって、ニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテル(The Waldorf-Astoria Hotel)のBarへ伝わり、全米へ広まった」と記しています。

 レシピが「トディ(Toddy)」という古風なカクテルに似ていることから、「オールド・ファッションド」と呼ばれるようになったとも言われていますが、裏付ける資料は現時点では確認されていません。元来はライ・ウイスキーをベースにつくられていましたが、その後はバーボン・ウイスキーでつくる方法が一般的になりましたが、今日ではスコッチ・ウイスキーでつくられることも珍しくありません。

 欧米のカクテルブックで「オールド・ファッションド」が初めて紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、米国で出版された「Bartender's Manual」(Harry Johnson著、1882年刊)です。そのレシピは「ウイスキー1Wine Glass、キュラソー1~2dash(もし求められればアブサンでも可)、ボウカーズ・ビター2~3dash、シュガー4分の1tsp、角氷2個、レモン・ピール」です。
 キュラソー(またはアブサン)を加えるという点が現代とは大きく違いますが、現代でもバーテンダーによってレシピは微妙にアレンジされることも多く、オールド・ファッションドも作り手の個性が現れます。

 参考までに、1880年代~1930年代の主なカクテルブックで、オールド・ファッションドのレシピがどのように変化していったかを見てみましょう。

・「The Bartender's Manual」(Theodore Blue著、1988年刊)米 ※レシピ不詳
・「Modern American Drinks」(George Kappeler著、1895年刊)米
 ウイスキー1Jigger(45ml)、角砂糖1個、アンゴスチュラ・ビター2dash、角氷1個、レモン・ピール(ビルド)

・「Daly's Bartender's Encyclopedia」(Tim Daly著、1903年刊)米
 バーボン(またはライ)・ウイスキー2分の1Wine Glass、角砂糖1個、アンゴスチュラ・ビター2~3dash、小さな角氷1個、レモン・ピール(ビルド)

・「Bartender's Guide:How To Mix Drinks」(Wehman Brothers著、1912年刊)米
 バーボン(またはライ)・ウイスキー2分の1Wine Glass、角砂糖1個、アンゴスチュラ・ビター1dash、オレンジ・ビターズ1dash、角氷1個、ソーダ少々(角砂糖を溶かすため)、レモン・ピール(ビルド)

・「173 Pre-Prohibition Cocktails」(Tom Bullock著、1917年刊)米
 バーボン・ウイスキー1.5Jigger、アンゴスチュラ・ビター2dash、角砂糖1個、角氷1個、レモンの皮のスライス1枚(ビルド)

・「ABC of Mixing Cocktails」(Harry macElhone著、1919年刊)英
 ライ・ウイスキー1Glass、アンゴスチュラ・ビター4dash、粉砂糖1tsp、角氷1個、レモンの皮のスライス1枚(ビルド) ※角砂糖ではなく「粉砂糖」を指定しているのが興味深いところです。

・「Cocktails:How To Mix Them」(Robert Vermeir著、1922年刊)英
 ライ・ウイスキー4分の3Gill(※「Gill」は昔の液量単位。1gillは、英国では142ml。※米国では120ml)、アンゴスチュラ・ビター(分量明記なし)、角砂糖1個、角氷1個、レモン・ピール(ビルド)

・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英
 ライ・ウイスキー(またはカナディアン・クラブを)1Glass、アンゴスチュラ・ビター2dash、角砂糖1個、角氷1個、レモンの皮のスライス1枚(ビルド)

 「オールド・ファッションド」は、近年のクラシック・カクテル再評価ブームに伴って、欧米やアジアの大都市では、いま人気カクテルの一つとなっています。ロンドンやニューヨークのカクテル・バーでは、毎日10杯、20杯と注文が出るそうですが、なぜなのか日本ではさほど注目されないカクテルです。

 日本には19世紀末には伝わったと思われますが、文献で確認できるのは、20世紀初めになってからです。オールド・ファッションドは非常にシンプルなレシピですが、「スタンダード」があってないようなカクテルなので、作り手のアレンジ次第で様々に変化する可能性を持っています。今後も、新たな面白い「オールド・ファッションド」が誕生することを期待しましょう。

【確認できる日本初出資料】 「洋酒調合法」(高野新太郎編、1907年刊)。※「欧米料理法全書附録」という形での出版物。そのレシピは「バーボン・ウイスキー1ジガー(45ml)、ボウカーズ・ビター1dash、角砂糖4分の1個分、氷、オレンジの皮一切れ」となっています。



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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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