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October 29, 2016
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カテゴリ: 教授の読書日記
 春山茂雄さんの書かれた1990年代の大ベストセラー、『脳内革命』を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 この本、日本の自己啓発本の歴史の中では結構、重要な地位を占めている本でございまして。

 と言いますのも、この『脳内革命』の大ヒットによって「βエンドルフィン」のような脳内ホルモンの分泌を促すようにするといいよ~、みたいな話に火が付き、そこから今度は七田眞さんの『超右脳革命』が登場して、「右脳を働かせるといいよ~」みたいな話になると。なんかそういう話、どこかで聞いたことあるでしょ?

 で、そういう話の延長線上に茂木健一郎さんが登場して、これでまた一気に、脳をうまく使えば何とかなるっていう話がバァ~っと出てくる。

 だから春山さんの『脳内革命』の大ヒットを一つの契機として、日本の自己啓発本の中に「脳科学系」というサブジャンルが建ったわけよ。だから、日本の自己啓発本の歴史を繙く上では外せない一書なのでございます。


 で、じゃあ春山さんが何故に「脳内ホルモン」とか、そういうことに着目したかと申しますと、元々春山さんの家が東洋医学、つまり鍼灸とかツボとか、そういうのを家業にしていたからなんですと。だから春山さんは幼少の時から祖父からそういう東洋医学の基礎を叩きこまれていた。

 で、春山さんは長じて西洋医学を学び、お医者さんになるのだけれど、東洋医学と西洋医学を両方学んだ見地から、やっぱり東洋医学には西洋医学にはない良さというものがあるな、と実感されるわけ。

 例えば西洋医学では手術をする時には当然麻酔をかけるわけですけれども、東洋医学では、ここぞというツボに針を刺すことによって、西洋医学における麻酔と同じ効果を発揮させ、いわゆる麻酔なしで手術することも可能であったりする。

 で、それはどうして可能なんだ? ということを調べているうちに、どうやら人間の脳には数種の化学物質、それを仮に「脳内ホルモン」と呼ぶならば、そういうホルモンを分泌することができ、それが麻酔と同等、否、それ以上の効果を発揮することができるのだ、ということが分かってくる。しかも、もともと自分自身の体内で生成しているものですから、西洋医学で用いる麻酔剤とは異なって副作用などもない。



 で、以後、春山さんはこの「脳内ホルモン」の、いわば虜になっていくと。

 で、調べてみると「脳内ホルモン」は、単に麻酔的な効果のみならず、人間の免疫を高めることに多大な効果があることが分かってくる。ならば、この脳内ホルモンの分泌を促すような生活をすれば、そもそも病気にならないことになるわけです。

 これ、結構重要なポイントでありまして、本書の中で春山さんは何度もお書きになっているんですが、西洋医学では、医学は病気を治すものであるけれども、東洋医学の見地から言えば、それ以上に、そもそも人を病気にさせないことが重要であると。だから、東洋医学の医者は、患者が自分のところに来ると、医者がまず患者に手をついて謝るというのですな。病気にさせてしまったことは、私の不徳の致すところであるという意味でね。

 だから春山さんは、医者たるもの、そもそも人を病気にさせないことに意を用いるべきであって、そのためには、この「脳内ホルモン」を活用するしかない、と考えるわけ。

 で、だったら人はどういう時に、自分の体を守るような脳内ホルモンを分泌するか、と調べて行った時に、ポジティヴなことを考えたり、楽しいことを考えたりする時にこの種のホルモンがどんどん出る、ということが分かってきたと。そのことは科学的に測定することも出来るので、具体的に言えば、脳から「アルファ波」という脳波が出ている時に、いい脳内ホルモンが分泌される。逆に、ストレスを感じたり、怒ったりすると、ノルアドレナリンなどの悪い脳内ホルモンが分泌されて、これが自分の体にダメージを負わせてしまったりする。

 だから、楽しいことを考えましょう、ポジティヴに生きましょう、イライラしたり、怒ったりするのを止めましょう、そうすればいい脳内ホルモンがどんどん出て、身体は健康に、長生きできますよ、と。

 ここに於いて、脳内ホルモンの話が、「ポジティヴに生きよう!」という自己啓発本の主張と重なるわけですな。

 でまた、食欲とか性欲とか、低次の生物的な欲望を満たしている時も脳内ホルモンは分泌されていて、それをすることが脳的に奨励されていることが分かるのですけれども、この種の欲望がある程度満たされると、今度はそれを阻害するような逆のホルモンが分泌されて、それを永遠に続けることができなくなってしまうように人間の身体はセッティングされている、ということも分かってくる。つまり、動物的な欲望の達成には限界が設けられているんですな。

 だけど、「自己実現しよう」とか「それによって人の役に立とう」とか、そういう人間ならではの高次な欲望を満たそうとする時は、それを阻害するホルモンは分泌されないんですって。そういう欲望は、止めようがない。

 で、春山さんは、そこにある種の神秘を感じるんですな。神さまってのが居るかどうかは分らないけれども、この宇宙の仕組みからいうと、ネガティヴな悪いことを考えている人間は、そのことによって我と我が身を滅ぼす一方、幸せになろう、人の役に立とう、世のために尽くそう、なんてことを考えている人間は、汲めども尽きぬアイディアとエネルギーが補充されるようになっていると。

 つまり、脳の仕組みから言えば、神さまは人間に対して「幸せになれ! 人に尽せ!」と命じていると解釈せざるを得ないと。





 ま、もちろん春山さんご自身は、敢えてスピリチュアルな方向には行きません。むしろお医者さんとして、人の健康のことに集中していらっしゃるのであって、それゆえに本書の後半部は、むしろ脳のことより健康のことに話題が移って行く。例えば、いい脳内ホルモンの分泌を活性化するためには、食生活や運動も重要なファクターで、質の良いタンパク質を取ることを心掛けなさいよ、とかね。

 あと、脂肪はなるべく取らない方がいいけれど、日々の食事の中で脂肪をゼロに近づけようとすると、それはまたそれでストレスとなって悪い脳内ホルモンを分泌してしまうから、あまり極端に無理しない方がいいとか。また運動方面のことで言えば、ウォーキングやストレッチなどの穏やかな運動はいいけれど、スポーツ選手のようにあまり必死になって運動しすぎると、それはそれで体に負担になるから止めた方がいいこと、等々、様々なアドバイスを、春山さんはこの本の中でお書きになっております。

 つまり、結局この本は基本、「健康になるにはどうしたらいいか」の指南本なんですな。ただ、その中で「脳内ホルモン」に主な焦点が当たっているので、自己啓発本寄りの扱いがなされていると。

 というわけで、この本、そういうものとして決して悪い本ではないと思います。少なくとも、ここに書かれているアドバイスを実行したからといって、何か悪いことが起るとも思えませんし・・・。


 なんでそういう言わずもがなのことを言うかと申しますと、結構、この本に対する悪評というのがあって、やれ「インチキだ」とか「医学的にいい加減なことを言っている」とかね。そういう批判本の類も出されていたりして、世間の風当たりは強いのよ。



 だけど、先ほども言ったように、それほど悪い本じゃないですよ。

 実際、脳内ホルモンってものが実際どうなのかってことは別にして、何かストレスを感じるようなことがある場合、例えば明日、気の重い仕事をしなくちゃならなくて、今から憂鬱だ、なんて時、「あ、やばいやばい、今、きっと悪い脳内ホルモンが出ちゃって寿命を縮めているぞ。そうならないように、ポジティヴに考えて、いい脳内ホルモンを出そう! よーし、明日の仕事、楽しみだなあ!! 早く明日にならないかなあ! きっと大成功間違いなし、俺の評価も鰻のぼりになるぞ! ああ、早く明日の仕事したい!」って思い直すとしたら、やっぱり少しはストレス解消になるんじゃないの? そして、もしそれで少しはストレス解消になるのだったら、そのことだけでもこの本を読んだ価値はあったようなものじゃん?


 そういう意味で、この本、私にはそれなりに面白かったかな。







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Last updated  October 29, 2016 03:27:15 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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