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泉川の川岸に設けられていた「泉津」の想像図
=京都府立山城郷土資料館
水運、
泉川の"津
"
を
拠点に
近くの京都府立•山城郷土資料館で、恭仁京の歴史や出土品などが見みられると聞いて訪ねた。窓口で話をすると、学芸員のIさんに展示コーナーへと案内され、丁寧な説明をいただいた。現時点で想定されることとして遷宮時代の名残のほか、当時の現地の地理的条件など2つの背景が考えられるという。
一つは、当時の泉川 (
現 ·
木津川 )
による物資輸送ルート。近くに荷揚げの津 (
港 )
があった。そのころの重要港湾 •
難波津 (
現・大阪港 )
には奈良盆地からつながる大和川があり、飛鳥では重用された。だが途中の浅瀬による船の制約などの問題があった。
泉川は
平城京に近い
大きな河川。合流する
淀川経由では物資の大量輸送も可能だったので 利用が増え、川港ができた。紫香楽宮の建設資材も、ここで陸揚げされ、運ばれたと考えられる
。
展示コーナーには史料を基にした「泉津」の想像図(↑)も展示されている。
◆
歌枕に「
みかの原」の和歌多く
また現地は以前に女帝・元明天皇が行幸した離宮の近くだった。南の吉野離宮に並ぶ北の 甕原 (
ミカノハラ )
離宮
として知られ、女帝の孫の聖武天皇も
皇子時代に
出かけたという。
みかの原は、小倉百人一首にも登場する歌の歌枕にも
甕原とは、確かに聞いたことがある地名だ。万葉集などに和歌が多数詠まれている。「みかの原わきて流るる泉川いつみきとてか恋しかるらむ (
藤原兼輔 )
」は、百人一首にもある。清らかな地とのイメージで、近くに領地を持つ 右大臣・橘諸兄
の影響もあったようだ。
改めて川沿いを行くと、かなりの山間部で木立に隠れがちだが、川幅がどこも 100
mはありそう。なるほど水運に十分な水量で、ゆったりとした流れだ。
大極殿跡は斜面の中ほど、緩い坂を上った地元小学校の隣接地にあった。1mほど高くした基壇部分に、大きな礎石が数か所。石柱に「恭仁京大極殿趾」とある。一帯は左京で、周囲の草原にコスモスなど野の花が咲く。右京は西側の山の向こうで、見えない。
人影が少ない草原で、お弁当を広げている中年の夫婦に出会った。山の中腹の古寺まで歩いて上り、眼下に広がる平原を一望してきたところだとか。大阪に住んでいて、最近この近くに引っ越してきた。古代史に特に関心はなく、大極殿跡は見ていないという。定住地を探し歩き、「奈良市に近くて交通の便がよく、南向きの広くて明るい斜面が気に入ったので」決めたそうだ。

広々とした恭仁京跡と山背国分寺の遺跡。七重の塔なども建てられたという
=京都府木津川市加茂町例幣
◆「奈良に近く明るい斜面」
が決め手
確かに川の対岸の JR
関西本線加茂駅から、奈良駅まで約 15
分。京都、大阪へも 1
時間程度と、今の首都圏なら十分通勤圏である。奥まった山間の地ではあるが、未開発地域といった印象はない。平城京の当時も都の圏域内だっただろう。遷都先に選ばれた
理由には同じようなことがあ
ったのかも知れない。
川の堤防へ行ってみた。年配の男性が2人で歩いているのを見かけ周辺の史跡について尋ねると、「恭仁大橋」のたもとにある万葉歌碑へ案内してもらった。
万葉歌人・大伴家持が、新都ができるのを寿 (
コトホ )
いで詠んだ、有名な歌だという。
「今造る 久邇 (
クニ )
の都は 山川の さやけき見れば うべ知らすらし」(建設中の恭仁京は山河が清らか。都にするにはふさわしく、もっともなことだ)

木津川の橋のたもとに建つ万葉歌碑。恭仁京遷都に尽力した大伴家持が詠んだ歌が彫られている
=京都府木津川市加茂町
家持は、聖武天皇の恭仁京づくりに尽力、数年後には国司として越中へと転出する。地元の歴史研究グループにいたという 2
人によると、近くには京都 •
下鴨神社の元宮など、古い社寺や史跡がいくつもあるとのこと。だが泉川沿いにあった恭仁京の川港について、跡地や遺跡などは近くで見たことがないという。
尋ね歩くと3 Km
ほど下流に、関連施設の遺跡があった。住宅団地の空き地に「上津 (
コウヅ )
遺跡」と彫られた石碑が建つ。木津川市教委が設置した説明板によると、港は船着き場以外に製材所や市場、東西 200
mほどの建物が並ぶ港湾都市だったという。遺跡は、物資の調達を管理する役所跡とみられる。

港や荷揚げ場などがあったとされる関連施設跡の「上津遺跡」石碑
=京都府木津川市木津宮ノ裏
◆"泉津"の管理施設の遺跡も
昭和の終わりごろの宅地開発に伴う調査で発掘された。石碑を撮影中、犬と散歩中の主婦がのぞき込み「 30
年以上住んでいて、何の遺跡か分からなかった」。確かに港そのものの遺跡ではない。川の港は各地に伝わるが、船の接岸場所の地形など多くは想像もしにくい。
しかし川岸には、高さ 10
mほどの雑木林がうっそうと茂り、入り込めないばかりか、川の様子がまったく見通せない。少し上流なら回り込めると聞いて歩いてみたが、思いのほか河川敷が大きい。遠くに見える幹線道路の橋に上がり、ようやく川面が撮影できた。JR奈良線木津川橋梁の手前、左岸に「泉津」があった辺りの水面がゆったりと蛇行し夕日を照り返していた。
蛇行する木津川。左の森の辺りに「津」があったとされる
= 京都府木津川市加茂町宮ノ裏
◆◆ ◆◆ ◆◆
恭仁京の建設は遷都というより、水運の拠点として平城京と首都機能を分担する副都(二都)政策の一環とも言われる。当時、中国の
唐を
意識していた朝廷が、長安と洛陽に 倣(ナラ)
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