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2026.01.12
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カテゴリ: 日本史
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「大伯皇女哀歌」
                                (高岡市万葉歴史館 S元館長)

伝言 ( つてごと ) を 告ぐる使ひに咎 ( とが ) なけど
終 ( つひ ) にうらみぬ 辛 ( つら ) かりしかば

弟人 ( おとひと ) の 雲隠れにし有様を
つぶさに告げて 使ひは去りぬ

百 ( もも ) 伝ふ 磐余 ( いわれ ) の池に住む鴨は
魂 ( たま ) 振り鳥と いふにあらずやも

朝毎に 見て魂振りし 鴨すらに 君を離れて
飛び立ちけるや

西山に 陽は斜めなり 刻 ( とき ) 告ぐる
鼓 ( こ ) はにはかにして 君を逝かしむ

弟 ( おと ) の妃 ( ひめ )  山辺皇女の髪乱し
素足に走り殉死 ( ともにし ) すと聞く

弟の後 追ひ逝きしとふ義妹の
面の記憶は いと幼かり

暁 ( あかとき ) の 露に濡れつつ弟人を
都へ遣りしは いまに悔しき

秋山を 一人越え行き如何ばかり
さびしかりけむ 弟人よあはれ

大神 ( おほかみ ) の もとに居ましめもろともに
死なば安けむ いまに悔しも

竹河の 橋の端 ( つめ ) なる花園に
君にたぐへる 少女 ( めざし ) あれかし

父君は いかに思 ( おぼ ) すや皇祖神 ( すめかみ ) と
なりたる父は 御言 ( みこと ) 問はさず

十余り 三 ( み ) つの歳より大神に 仕へ奉りて
今日のかなし

十余り 三つの歳より十余り 三つの歳月
神に仕へしを

斎宮と なり清め来し己が身を
今日にはじめて 憂しと思へり

昨夜 ( きそ ) よりは 月の障りの身となりぬ
大神すらも 我をいとふや

御代 ( みよ ) 替はり 斎宮の任解かれるれば
都へ帰る わが身となりぬ

退出 ( まかで ) ゆく 我のたどれる大和路の
仮穂 ( かりほ ) の霜の 取れば消 ( け ) につつ

弟人を 身まからしめし人の住む
都へ向かふ 馬荷も重く

見まく欲 ( ほ ) り 我がする君を死なしめて
安眠寝 ( やすいぬ ) るらむ 人を憎しむ

大神に 仕へ奉りて生き来たる 我にはじめて
湧きし憎しみ

馬な行き 早くな行きそ到りても
我が欲 ( ほ ) る君の ありといはなくに

都への道の長手 ( ながて ) をくれくれと
山越えて来ぬ 馬疲るるに

君の居ぬ 都へ向かふ道遠し 行きて安らぐ 我ならなくに

弟人を 移し葬 ( はぶ ) れる二上の
青きを見れば 我 ( あ ) を音 ( ね ) し泣くる

二上に 向かふ道辺の磯の上の
馬酔木 ( あしび ) の花は いま盛りなり

磯の上に 生ふる馬酔木の悪しからず
我 ( あ ) が思 ( も ) ふ君を 誰か率 ( ゐ ) にけむ

命ある 日に見せましを磯の上に
生 ( お ) ふる馬酔木のすべもすべなさ

うつそみに 君はあらねば葬 ( はふ ) り処 ( ど ) の
二上山を 君として見む

黄泉 ( よみ ) にある 君を思へどうつそみの 人なる我や 逢うこともなし


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最終更新日  2026.02.11 11:05:12
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