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2006年10月27日
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「聖エルダー学園・天使と少年と魔女と・・・」

 ここまでのあらすじ

 秘薬の素材「フェニックスの血」を求めて「不死鳥山」へと探索にやってきた天使の少女ハルカと魔女エレン。二人は山の中で一人の少年ククと出会い。フェニックスの居場所を教えてもらうことになったのだが。初めからフェニックスの居場所を教える気などなかったククは、丁度お腹をすかせたというハルカに、人間がひと口食べれば酔っ払ってしまう果実「フェニックス・フルーツ」を食べさせその場から逃走。酔っ払ったハルカを抱えて当惑するエレンだったが・・・。

 #9 魔物

 林をざわめかせるような大きな悲鳴があがり。
 エレンは、はっとした顔をしてククが消えた林の方向を見た。

「はぅぅぅ~~~、い、今のはぁ、あの子の悲鳴ですぉ~~~」
 エレンに支えられながらハルカは、わずかに顔を上げていった。
「・・・そうね」エレンは真剣な表情のまま頷いた。

「『行きましょう』は良いけど、そんなフラフラな状態で大丈夫なの?」
「ら、らいりょうぶれすぉ~~」
「・・・とてもそうは見えないわ」
 誰が見ても説得力のないハルカの発言に、エレンは少しだけ呆れた顔をした。

 一人では立っていることもできないハルカを引っ掛けるようにしてホウキに乗せ、エレンは猛スピードで悲鳴が上がった場所を目指した。
 途中、細い木の枝を避けることができずにいくつか折ったのも気にせず真っ直ぐに――。

「うわわわ・・・・っ!」
 情けない声を上げて尻餅をついたまま、後ずさるクク・・・。

 ズシンズシン・・・ズシン・・・!

 と、丸太のように太い足を一歩、また一歩と進め、徐々にククとの距離を縮める異形の魔物――鼻息が荒く、大きな口から唾液が滴るのも気にせずに、直立歩行する牛のような格好をした――それはミノタウロスであった。


「・・・あれは!?」
 少し離れた位置でミノタウロスの大きな体を確認したエレンは、ホウキを急停止し。様子を窺がった。
「・・・ど、どぉしたですぉ~~??」
「ミノタウロスがいる・・・」

 エレンの声は聞こえても、ホウキに引っかかっているハルカにはそれを確認することは出来なかった。
「あれを倒すのは難しいわね・・・」
 エレンはハルカを引っ掛けているのを一瞬忘れて、ホウキから降りた――と同時に魔力の供給をを失いただのホウキに戻ったため、ハルカは地面にホウキごと落ちた。

「あぅ・・・っ!」
「あ・・・。ごめん」
 地面にうつぶせになったハルカを振り返ってエレンは謝った。

「ブモォォーーー!!」
 吠えるミノタウロス。
 ククは怪我をしたのか、それとも腰が抜けたのか。
 樹を背にしたまま、そこから動くことが出来ない様子だった。
「た、助け――」
 目に涙をうっすらと浮かべながらいう、ククの言葉をまったく無視して、ミノタウロスの太い右腕が、ブゥン!と真横に振り払われた。
「ひぃ!」
 短い悲鳴を上げて、ククは体を前に折り曲げて辛うじてその一撃を交わす。

ドォン!

 ミノタウロスの一撃を受けた樹が激しく揺れ――まだ青い葉が雪の様に散り――そして、

ミシッ! ミシミシミシィ・・・!

 と音を立てて倒れた――!

 真っ青になるクク。
 その驚きのあまりに悲鳴も出ない様子だった。

 そんなククに無情にも魔物は、第二撃目を振り下ろそうとする――!

「[炎の矢]!」
 呪文を唱えたエレンの声が響くと同時に、彼女の手のひらから放たれた一条の、文字通り「炎の矢」が、ミノタウロスの横顔を焼いた。

 人とは思えない――いや、人ではないのだが――思いがけない不意打ちを食らったミノタウロスは、攻撃の手を緩め「矢」を受けた顔を手で覆った。
 そして、怒りに血走った目で「矢」が放った人物を確認しようとする。

「・・・こっちよ!」エレンはわざと自分に注意を向けようと声を上げた。
「ブモォォーーーッ!」
 一声吠えて、ミノタウロスはまさに猛牛のごとくエレンに向けて突進しかける。
「・・・離れたわね!」
 ククから離れたミノタウロスを確認して、エレンは直ぐに別の呪文を唱え始めた――!

 エレンが助けにやってきたのを確認したククは、ミノタウロスが標的を変えたのを良いことに、その場から再び逃走を図ろうと、立ち上がった・・・。
「・・・ま、まってくらさぃ・・・!」
「――!?」
 後ろから掛けられた声に、ククは驚いた顔をして振り返る――やはりハルカだった。
 やはり立つことが難しいようで、樹に支えられるようにしてようやく立っている感じだった。
「あ、あんたか・・・!」
「あなはに、フェニックスの居場所を聞かないとぉ~、こまうんですぉ・・・」
 ろれつが回る、迫力に掛けた声でハルカは言う。
「ふ、ふん。知ったことか・・・! そんなフラフラの状態で、捕まえられるものなら捕まえてみろ!」
 そう捨て台詞を吐いて、ククはその場から逃げ出した。
 だが、ハルカのようにふらついていた。
 どうやらミノタウロスに襲われたときに脚をくじいたらしく、左脚を引きずるような走り方だった。
「ま、まっへくらさ~~~ぃぃ・・・!」
 ハルカは脚がもつれたまま、そのククの後を追いかけた。





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最終更新日  2006年10月28日 03時44分42秒
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