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2014.03.12
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カテゴリ: 小説
ローマ治下のエルサレムでユダヤ人貴族のベン・ハーが誤って瓦を落としてしまい、ローマ総督暗殺未遂の罪でローマ人の旧友メッサラに財産を没収されてガレー船漕ぎの奴隷になるものの、提督に気に入られて養子になり、戦車競争でメッサラに復讐して、キリストに母と妹のらい病を治してもらい、キリストを守ろうとするものの失敗して磔刑を見届ける話。
三人称。一場面で数ページしかなく、ころころ場面が変わり、二千年前の情景をあまりうまく書けていない。時代背景のリアリティが確保されないまま場面が変わりすぎて長編としての読み応えに若干欠ける。1880年に出版された古い小説なのでろくに資料もなかっただろうし、描写不足なのもしょうがないのかもしれない。説明も端折られていて、非キリスト教徒の読者にとっては説明不足な箇所が多々ある。史実ではないフィクションらしいけど、どこが聖書に由来してどこが創作なのかも非キリスト教徒にはよくわからない。ベン・ハーはユダと呼ばれているものの、キリストを裏切ったイスカリオテのユダとは別人で、このへんもわかりにくい。
この小説の面白さはどこにあるかというと、キリスト教がテーマでありつつもキリストはしばらくうっちゃっておいて、ベン・ハー個人に焦点を当てたロマン主義的なエンタメにした点。貴族から奴隷になって旧友に復讐するという波乱万丈の人生が面白く、小説として楽しめるようにプロットが構成されている。東方の三博士の一人のバルタザールも主要な脇役として登場して、聖書の世界観を舞台にしつつ聖書に書かれていない空白部分を補う二次創作として想像力が発揮されていてよい。キリスト死後の後日譚としてシモニデスの娘エステルとバルタザールの娘イラスの恋の結末を書いて終わるあたりは読者に対して親切なやり方だけれども、貞淑な女は幸せになってイケメン好きビッチは不幸になりましたとさというのはステレオタイプで蛇足気味。昔の小説なので道徳的なオチがつくのはしょうがない。
物語としては面白いものの文章技法の面では特に見所はなく、小説にしかできないことをやってるわけでもない。エルサレムを舞台にするにしてもメルヴィルの『クラレル』くらいの詩情があれば名作古典になりえたかもしれないものの、この小説の単調な心理表現では復讐や信仰といった心の動きの描写が不十分で、エンタメ小説の域を出ない。映画版のほうが時間と金をかけただけあってガレー船や戦車競走の各場面に迫力があって面白く、映画が傑作なだけに小説の上位互換になってしまっていて、映画が見れるならわざわざ小説を読むまでもないかもしれない。

★★★★☆

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最終更新日  2014.03.12 05:29:46
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