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2015.10.20
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カテゴリ: 小説
俺俺詐欺をしたら俺が他人になって他人が俺になって、俺が増殖して俺同士で殺しあう話。

●あらすじ
家電量販店で働く永野均はマクドナルドで檜山大樹の携帯電話を盗んで俺俺詐欺をしたところ、檜山の母にあっさりと息子として認められてしまい、不安になって実家に戻ると別の永野均の俺が母と暮らしていた。母に拒絶されて大樹として生活することになった俺は永野均の俺と本山直久(ナオ)の俺と3人で俺山を作って仲良くするものの、ヤソキチのように自立できない社員がヤソるという隠語で呼ばれて大樹の俺も職場でヤソっていると目をつけられ、俺がどんどん増殖していって上司の田島も俺だったりして、嫌な俺とも出会うようになって自分の嫌な面を見ることですさんでいき、均の俺はついに切れてナオの俺を殺し、大樹の俺は金を持って逃げる。他の俺も俺たちを削除しだして、大樹の姉のかすみ一家が無理心中して、いつのまにかあつしと呼ばれた俺は均の俺に殺されかけ、ナカノと呼ばれて事情聴取されて、削除を恐れるようになり、他の俺に追われて逃げ込んだアパートではヒロシと呼ばれて父親の俺と母親の俺の茶番に付き合うものの、そんな生き方をするくらいなら自分を削除したいと思う。目を覚ますと別の俺がヒロシとして逃げ込んできていて、俺はヒロミになり、ヒロシと口論して刺し殺し、俺のいないところにいこうと高尾山に行くと、他の俺も同じ事を考えていて、俺だらけの車内に俺でない二人組みが乗ってきたので、俺を削除することで傷を負った俺たちは俺でない二人組みを殺す。日本中から集まった俺たちは高尾山中で削除しあい、俺も他の俺に殺されて食われてしまうものの意識はあり、食われることで人の役に立つことの充実感を得ると、食われた俺の意識が食った俺の意識になり、俺は最後の一人だと気づいて山を降りて、俺たち14人が暮らす集落で共同生活をすることになり、ジジイになった俺は悪夢の俺俺時代の体験をお前たちに話す。

●感想
一人称で、主人公の俺がその場で起きていることを逐一語る形式。俺が他の俺に俺俺時代を語るということでナラトロジーの整合性をつけようとしている点はよいものの、回想形式にして過去を語るのではなく実況中継形式にしているあたりは不徹底という感じ。最後に「お前たち」という言葉を出すことで読者も俺の一員として引き込もうとする狙いがあるのかもしれないけれども、読者の私は物語に引き込まれたわけでもなく、俺に共感したわけでもないのでこの仕掛けは空振り。
語り手の無限増殖のスラップスティックは筒井康隆が『脱走と追跡のサンバ』でのタイムスリップネタとしてやっているけれど、筒井が実在のおれの時間軸をずらして増殖させたのに対して、『俺俺』は阿部公房の『壁』のような認識としての自己の存在を増殖させている点が異なる。日本国内で俺がどの程度増えてどの程度減ったのか、全体像が見えてこないのはよくない。日本人の老若男女は俺になるものの、外国人は俺になりうるのかについては言及されておらず、俺と俺以外の人間の境界も不明で、その点は設定が中途半端。一人称の語りにして、なおかつ語り手の頭が悪いことで、俺以外に関する世界についての記述を読者に対してごまかしているように見える。
冒頭では俺俺詐欺という社会問題になった話題を使い、家電量販店の社員としての接客の様子を描写して、マクドナルドという固有名詞まで多用して現実社会を舞台にしたのに、中盤から主人公が愚痴をこぼして社会から逃げ回るようになってしまって物語のリアリティがなくなっていくのはよくない。他の俺が他の俺を殺して新聞に載って警察に追われているにもかかわらず、語り手の大樹の俺はヒロシの俺を殺しても高尾山で他の俺を殺して食っても何の社会的責任も問われておらず、この主人公補正のせいで決定的にリアリティをなくして終盤をつまらなくしてしまった。それに頭も性格も悪くて魅力のない主人公につき合わされると読者もうんざりしてしまう。『俺俺』の出来が目だって悪いというわけではないけれど、スラップスティックの面白さとしては筒井に及ばず、こういう方面の小説を読みたかったら個人的には筒井のほうがよい。

★★★☆☆






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最終更新日  2015.10.20 20:28:15
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