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今日は、銀座で、「女殺油地獄」を見てきました。
これは、ご存じ、近松門左衛門の世話物です。
この作品は、彼が69歳の時の作品だそうで、彼の世話物の中の最後から二番目のものだったそうです。
初演の時は、あまりにリアルな悪行のため、非常に評判が悪く、それから200年も再演されなかったそうな。それを、明治に入って復刻したところ、大評判になったそうです。
今では、かなり頻繁に上演される人気定番です。現在66歳の片岡仁左衛門(孝夫)が、20歳の時に演じて、鮮烈な主役デビューとなり、以降、上方歌舞伎、孝夫の当たり役になりました。
しかし、残念ながら、私は、見たことがありません。
去年は、愛の助が演じて、これも良かったらしいが、(関西公演なので見てません)私としては、染五郎に一票あげたい。。
今日の舞台は、久しぶりに堪能しました。
間違いなく、染五郎は、この「女殺し」で実力をあげたし、彼の代表作になるんじゃないかと思います。父松本幸四郎、叔父中村吉右衛門、の重厚な荒事を得意とする家に生まれ、繊細で線の細い彼はかなり悩んだらしい。
しかし、自分の魅力と方向が、最近の作品の選び方と成功で定まった感があります。
現在、興奮中!!!
内容は、ほとんど現代の心理サスペンス風。
以下は、染五郎のインタビュー記事です。
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/trad/20110131-OYT8T00379.htm

近松の作品は好きです。
何といっても、いろんな風に解釈できるところが楽しい。
で、独り言を書きます。
この戯曲の見どころは、二つ。
一つは、いつ、殺意が目覚めたか。
二つ目は、何故、危険を犯して、35日忌にお吉の家を訪ねたか。
この舞台のクライマックスは、もちろん、油問屋の店内で、血まみれ、油まみれになって、与兵衛が、お吉を追いかけまわして殺すところ。近松は、この場面に至るまでに、いくつもの仕掛けを施しています。
決して、偶然殺したのではなく、殺しに至る必然を丁寧に下敷きとして見せてくれて、全く緩みがない。
これが、300年以上前の作品だと思うと、ぞっとするね。
私は、歌舞伎の何でもありの大らかさを愛してるけど、近松のモザイクみたいな心理設定にはいつも圧倒されます。
物語は、野崎参りの場面から。
大店の道楽息子与兵衛は、どうしようもないワル。 この日も、悪友と繰り出し、馴染みの遊女の取り合いから、喧嘩沙汰。川にはまってびしょぬれになる。
そこに夫と待ち合わせをしていた幼馴染の4つ年上のお吉が居合わせ、親切に、身づくろいを手伝ってやる。
やってきた夫は、姿のいい与兵衛とお吉の様子を勘ぐり、お吉は大急ぎで去って行くが、与兵衛は、それを黙って見送る。
この時の与兵衛は、「いい女じゃないか。」と言う悪友に、
「ただの固い女だ。」と、捨て台詞を言うだけだが、この場面が後で効いてくる。
若くて、若さ特有の傲慢さを持っている彼は、お吉など眼中にないのかもしれない。
与兵衛は、おぼっちゃま育ち。父親を亡くした後、母は、店の手代と再婚する。
それは、店のためだろうが、手代にしてみれば、主人の子供。遠慮があって強いことが言えないうちに、与兵衛はグレていく。
与兵衛も、面白くないのだ。もとは、雇い人だったのが、父親になったのだから。
しかし、なんだかんだとあった後、与兵衛は、勘当され、借金をこしらえて、夜明けまでに大金を用意しないとならない、どうにも身動きの取れない状態に陥る。
ここで、与兵衛が助けを求めたのが、お吉だった。
彼女の家は、油問屋。
その日は、集金の日で、店に現金があることを、彼は知っている。そして、旦那が、夜遅くまで集金に出歩いていて不在なことも。
与兵衛は、懐に脇差を忍ばせているが、この時点での殺意は、役者の解釈に任されているそうだ。
おそらく、染五郎は、殺意がない。
小心者だから、お守り代わりに持っているか、せいぜい脅しのつもりじゃないか。そして、店の中の両親とお吉のやり取り・・・
自分がいかに可愛がられているか、愛されているか、立ち聞きして、涙を流す。与兵衛は、愛してくれる人に敏感である。
愛されているとわかると、甘える。
二人きりになり、いよいよ、殺しの場面になる。
なんとか、金を貸してくれと、身も世もなげに頼み込む与兵衛。
彼は、野崎参りの日に、お吉に親切にされたことを忘れていない。だから、この切羽詰まった夜更けに、訪ねてきたのだ。
お吉にしてみれば、大金を貸す義理はないし、なんとか更生してほしいと、世間並の考えだろう。
「それに、この間、うちの人に不義密通を疑われ、さんざ、言い訳して、ひどい目にあったのよ。あの人に内緒で、そんな大金、貸すわけにはいかないわ。」
えっ? 不義密通・・・・
お吉に言われて、初めて与兵衛の頭に、不義の文字が浮かび上がる。親切な年上の幼馴染が、女として意識される。
舞台に、染五郎のフェロモンが、グワッと 充満・・・
「そんなら いっそ 不義になって貸してくだされ。」
と、いきなり、にじり寄る、抱き締める。
お吉は、狼狽する。
そして、さっと、引く。 一気に、分別が頭を持ち上げ、この若いろくでもない男を恐れる。
引いた。っと、与兵衛は、悟る。この間、数秒・・
この呼吸がイイね。
与兵衛は、拒絶されることにも、敏感なのだ。
そうか、そんなら・・・・・
と、たぶん、この瞬間に殺意が芽生えたんじゃないか。
そして、今回の公演では、与兵衛が捕えられる場面も上演された。
本来は、油まみれの与兵衛が、懐に金を掻き込んで逃げていくところでお終い。続きはない。しかし、この試みは成功だったんじゃないかと思う。
ひと月後、与兵衛は、一見、何事もなかったように遊び呆けている。
遊び上手の、金離れのいい、いい男。
ちゃらい、ろくでなし。
廓の人気者である。
しかし、着実に追い詰められている。
お吉殺しが、早速、芝居になって大当たりを取っている。
与兵衛の叔父が、廓で与兵衛を探しているらしい。
ひと月も遊んで暮らせば、そろそろ、金も底をついてきた。。。。
そんな状況の中で、与兵衛は、お吉の35日忌に、念仏の一つもあげようかと、家を訪ねるのだ。
ここで、二つ目。
何故、彼は、危険を犯して、お吉の家を訪ねたのか。
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