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永い言い訳 西川美和 文藝春秋 小説家 津村啓こと衣笠幸夫は、妻 夏子とうまくいっていない。いつからだろうか。出会いは鮮烈だったはず。大学の同級生だった夏子だが、父の死をきっかけに大学に顔を見せなくなった。幸夫が就活をしている時に入った美容院でシャンプーをしてくれたのが、新米美容師の夏子だった。 今はすっかり冷え切った二人。高校の同級生のゆきと恒例の旅行に出かけた夏子。そして幸夫は。 意外な展開に驚きつつ、自堕落な幸夫を見守る気持ちで頁をめくる。 心が機能していない幸夫と、人間的なゆきの夫 陽一と子どもたち。人は誰かのために生きている。最後の一行に泣いた。
2015/09/24
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てのひら怪談 百怪繚乱篇 ポプラ社 「てのひら怪談」とは、怖い話、不思議な話、奇妙な話をテーマに、上限が八百字=原稿用紙で二枚以内というルールにもとづいて書き綴られた、世にも小さな物語群の愛称です。(はじめにより引用) ビーケーワン怪談大賞傑作篇という副題がついている。編者の一人、東 雅夫氏は怪談専門誌「幽」編集長、おお!この雑誌の創刊号は泉鏡花特集だったので買ったぞ。 そう、私は十代の頃から泉鏡花のファンであり、不思議な物語が大好きだった。小学校の低学年の頃は、中国の怪異物語などを読んでいた。 だから、こういった怪異物語の掌編本があれば、つい手に取ってしまう。 それぞれの作品に怪異が織り込まれ、怖いというより、興味津々で読了。日常の中に潜む異界への入り口を、一瞬見かけたような読後感。
2015/09/20
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好きなのにはワケがある 岩宮恵子 ちくまプリマー新書 著者が幼い頃に観たアニメ「海のトリトン」 そのストーリー展開の衝撃に、著者は思春期の逃げ場を見つける。 宮崎アニメで思春期のモヤモヤを分析する臨床心理士の著者のお手並みが鮮やか。「となりのトトロ」では母親の不在を、「千と千尋の神隠し」では思春期の親がブタに見える時を解説する。親との一体感を感じていた幼い頃との決別として、今までの自分の「死」を体験し、親とは別人格の自己を意識する。いつだって思春期は痛くて血が滲む。
2015/09/08
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物語のおわり 湊かなえ 朝日新聞出版 読者はまず「空の彼方」という短編小説を読む。それには明らかな終わりがない。なんとも中途半端なラストなのだ。そして次の短編を読むべくページを捲る。そこには北海道旅行をする主人公と、彼女に手渡される原稿用紙の束「空の彼方」がある。 どんどん短編小説を読み進めるうちに、人から人へ「空の彼方」は渡り歩き、それぞれの主人公が抱える問題になんらかのヒントを与えることになる。そして最後「空の彼方」が手渡された人物とは。 ひとつひとつの短編が味わい深く、それが最後にひとつの大きなストーリーになっているのが、手練の作者らしいと思った。デビュー作「告白」に象徴されるような後味の悪い読後感が、湊かなえの得意技だと思っていたが、「絶唱」といい、この作品といい、そうでもないようだ。私はもちろん、後者が好み。
2015/09/04
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Red 島本理生 中央公論新社 専業主婦の塔子は、なに不自由なく、夫の実家で2歳になる娘の翠と暮らしていた。夫の真はいわゆるイケメンで優しく、姑の麻子も理解がある。何もかもうまくいっている筈だった。 友人の結婚式で、大学生の時に付き合っていた鞍田と再会するまでは。 鞍田に紹介してもらった会社に再就職し、鞍田との関係が再燃。会社の先輩の小鷹の存在。自分のことを理解しない夫。塔子の中で、少しずつ何かが明らかになってくる。 最初は塔子の優柔不断さが嫌だった。専業主婦としての思いなどには共感したのだが、鞍田と小鷹への態度に反発を覚えたのだ。 しかし読み進めるうちに、塔子の孤独に共感するようになる。 女の生き方について、考えさせられる一冊。
2015/09/01
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