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カテゴリ: 書評
見出し:だから、怖いもの見たさはやめておくべきだった!!

久世光彦著『怖い絵』(文春文庫)

 だからやめておくべきだったのだ。やっぱり怖かったのだ。そう、私は久世光彦が苦手なのだ。私自身もたくさん読んだわけではないが、久世光彦の文章は、根底の部分で私を慄然とさせる、ある意味不快感があるから生理的に受け付けない(それは、 つまりは久世光彦の世界観が、強烈に洗練されユニークであるがゆえなのだが)し、その美学には、私とは対極にある匂いがし、彼を読むときいつも、なんともいいがたい息苦しさを伴ってしまう。もう読むまい。そう、いつも思うのだ。
 単純に「怖い」という意味では、中野京子著『怖い絵』よりもはるかに怖い絵の話が登場する。というよりも、結局、この絵のここが怖い、あれが怖くなかった、ということではなく、久世光彦が怖いのだから、、もうこの一冊まるごとが怖くて怖くて仕方がないのである(ところどころに意図的に配される、読者の無意識を騒がせる布石やシークエンスが、じわじわと大きな演出につながる仕掛けなどには脱帽してしまう)。
 そうして私はつい久世光彦を避けてしまうのだが、今回はただ、中野京子版『怖い絵』を読んだから読んだ、そんな軽い動機だったのに、やっぱり、それこそ久世風に言えば、粘っこい陰鬱な雨のように重苦しい話が、儚く情けない蝋涙のような私の臆病にのたくってまとわりつき、冗談のように無垢な頁から久世の文章が、印刷された文字の一字一字が、まるで何もかもお見通しとばかりに何千、何万もの目となって私の怯懦を、稚い性欲を伴って窃視しているかのようなのだ(我ながら大袈裟だが…)。
 振り返って、軽い動機があったにせよ、結局なぜ久世光彦の『怖い絵』を読んだか。怖くて仕方がない久世光彦の侵入を、恐いもの見たさの衝動が抑えることができなかったのである。(了)

著作です: 何のために生き、死ぬの? 。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/05/14 09:33:06 PM
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