温故知新

2004.12.25
XML
テーマ: たわごと(26894)
クリスマスの夜。


冷蔵庫から出して食卓へ。
特別に揺らした記憶もないのだが、栓を飛ばした瞬間、
品の良いピンクベージュの液体が少し、大きくて軽い泡に包まれて押し零れた。
舌にほんの少し刺激を残した後、その甘い色彩からは想像出来ないようなキリっとした、しかし繊細な味。

こんなに美味しいシャンパンを飲んだのは初めてだ、と思った瞬間、もう10年以上も前のことを思い出した。

こんなに美味しいワインを飲んだのは初めてだ、と、その時は思った。
あれもクリスマスの夜。


18歳の頃。
私は飢えた虎のように獰猛で、身勝手だった。
自分ほどの人物は世の中にいない、と、うぬぼれていた。
そんな根拠の薄い自尊心で周囲の心を切り裂いていた、と、今では薄ら寒くなるときがある。

そんな頃、出会ったのが彼女であった。

一言で言えば、彼女は私より賢かった。
ただ、賢いだけではなく、ハングリーさを兼ね備えていた。

彼女は、都心、山手線内の某所とんでもないところに、ドラマのセットのような家に住んでいた。
両親、ともにエリートだった。
そこで両親を尊敬し、愛しまれて育った。

そんな恵まれて育った人にはハングリーさなどない、と、当時の私は思い込んでいた。


そんな、つまらない考えを木っ端微塵にしてくれたのが彼女だった。

彼女にとって私にどんな魅力があったのか分からないが、私たちは友人となり、
最初のクリスマスを彼女の家で過ごした。

そこで、彼女が父親の棚から出したワイン。
当時、よく飲んでいたシャブリと同じ銘柄だったから、すぐに記憶に残った。


その味はもう忘れてしまったが、その感動だけは今でも忘れることが出来ない。
美味しくて美味しくて、全て飲んでしまった。
そして、こいつには一生勝てない、と、何か嬉しくなった記憶がある。

もちろん、今回のシャンパンも全て飲んでしまったのだが…。

お礼に、と、どんな高価な物を贈っても、きっと彼女はそれ以上のものを手に入れているし、
真の価値も私より分かっていると思う。
何より、そんなことを望んで贈ってくれたのではないだろう。

だから、せめて、これ以上、彼女に心配をかけなくて済むように、私は私のことを頑張ろう。
この境遇にいる自分に誇りを持ち、自らの力に変えられるようになろう。
それが、彼女への一番のお礼になるのではないか、と。

…と言っても、
いつも彼女が何かにつけて私に言ってくれる、

『何も力になってあげられなくてごめん、仕方がないので、こちらで自分の仕事に力を入れるね。』

という言葉の受け売りなんだけどね。
やっぱり彼女には一生勝てない。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004.12.25 23:14:17
コメント(6) | コメントを書く
[私が私らしく生きるために] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

pms

pms

Calendar

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Comments

ウルフがおー @ Re:私の背中(11/27) 子供が多いのですが、一番下の子に「脱腸…
音楽愛好家@ Re:もう一つの七夕の歌(07/02) かな~り昔(今から30年前)もうひとつの七…
ぁゅみ084 @ Re:私の背中(11/27) はじめまして さきほどはじめました 障…
はなまる@ Re:私の背中(11/27) 大学院合格おめでとうございます。私も発…
kepiko@ Re:私の背中(11/27) pmsさんが、自分らしく自分を大切に生きて…
あきら@ Re:私の背中 信じていると、突然変異がいつか起きるん…
月夜夢. @ Re:大学院進学のための居宅(10/21) あまりにご無沙汰なのでもうお忘れになっ…
あきら@ Re:大学院進学のための居宅 なにか新しい出会いがあるはずだから、信…
えりこ@ Re:大学院進学のための居宅(10/21) 久しぶりにお邪魔しました。 大学院合格…
たかっち。 @ Re:大学院進学のための居宅(10/21) うまくいえないんだけど、もし障碍児じゃ…

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: