書くことの意味
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長袖が心地良い時期となった。 夏が過ぎて、秋に入るこの季節を迎えると、自ずから、内省的になっていくのが感じられる。受験生だった頃、いつも夏の過ごし方を後悔していた名残だろうか。 知り合ってすぐに、いくつかのボタンの掛け違いがあって、ゆっくり話せないまま、1年以上経っている知人がいた。幸い、そのひととわたしには共通の友人がひとりいて、わたしたちの間を、二言三言の言葉でつないでくれていた。友人からそのひとの言葉を断片的に聞くにつけ、このまま互いに話をしないのは、馬鹿げているような気になった。 先日、3人が所属している組織で懇親会があった。甕に入った泡盛の古酒が振る舞われた。ふんわりと広がる香りに、思わずストレートでくいっと飲み干してしまった。43度のアルコール度数が、体内に広がる。そのひとが壁際でひとり、立っているのを確かめて、近づいた。「今日は一緒に飲みましょう」。いつも感じる壁が、その時は無かった。 まず、自分のことを話した。今の仕事は嫌いではないけれど、書くことに強い憧れを抱いていること。自殺した中学時代の同級生のこと。たまたま、彼女とそのひとは、同じ大学の出身で、そのひとが通った大学のキャンパスは、わたしの現在の住まいのすぐ近くにある。 そのひともわたしも、同じ職業に就いている。わたしは学生時代の専攻分野から直接つながっているが、そのひとは異分野から今の業界に入ってきた。「なぜ、この仕事を選んだのですか」とたずねると、「きつい質問だなあ」。しばらく間が空いて、「大学2年へ上がる時、留年したんだよね。それから流される方が楽だと思い始めたんだ」とかえってきた。 この一年間の沈黙が、ふたりの会話の通奏低音となっていると思った。あのまま交流が途絶えてもおかしくない状況だったのに、互いに、それはしなかった。そのひとの寡黙さの内側には、がらんどうではない何かが必ずあると感じていたし、その直感は間違いではなかった。 だれかと仲良くなるというのは、コミュニケーションを深めることによって得られるのだと思っていた。こうやって、沈黙が、会話のタペストリーの重要な要素になるとは、嬉しい発見だった。何かを待つ。これまでは、待たざるを得なくて仕方なく・・ということばかりだったが、戦略的に待つということもありうるのだと、染み入るように感じた。
2005年09月25日
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