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明後日の土曜日に閉店するBarに先ほど、別れを告げてきた。 ここには、イギリス製の古いスピーカーがあって、ビートルズのレコードをいつも、聴かせてもらっていた。今日も、青ナンバーをかけてもらう。つまみに出されるコンソメ味のプレッツエル。マスターが丁寧に作ってくれる生クリームとブランデーを使ったカクテル。 先日、この店の閉店を知らされた日の深夜、テレビでビートルズの主演する古い映画が放映されていた。映画が終わったのは明け方の午前5時ごろだったのだが、思わず最後まで観てしまった。そのとき、プレッツエルとマスターのカクテルが、ずっと脳裏に浮かんでいたのだ。あの店の雰囲気までも。 化学変化が起きたのだと思う。ビートルズの音楽、プレッツエル、マスターのカクテル、そしてあの店の内装。どれかひとつに接すると、ほかの3つも自動的に思い浮かぶ。そうして、自分の無意識層にしっかりと、記憶がしまいこまれるのだ。 ビートルズの青ナンバーのアルバムは、メンバー4人の若い頃、そして10年後の写真が2枚、掲載されている、4人の並ぶ順番は同じで、どちらの写真も、下から見上げるように撮影されている。 ポール・マッカートニーは比較的、顔つきが変わっていない。しかし、ジョン・レノンは「これが同じ人間だろうか」と思うぐらい、表情が異なっている。多分、ジョン・レノンも、オノ・ヨーコに出会ったことで、化学変化を起こしたのではなかろうか。 誰かが誰かと知り合うことで、相手から余りにも強い影響を受け、自分の人格や顔つきまで変わることがある。ひとが大きく変わる理由のひとつとして、考えられることだと思う。これまで、ジョン・レノンがなぜ、あんなに顔つきを変えてしまったのか謎だったけれど、今日、ふとその理由が浮かんだのだった。 このお店もきっと、わたしの記憶に残る。なぜなら、化学変化が起きたから。よって、このお店が閉店したとしても、絶対に、大丈夫。今はそんな気持ちでいる。
2005年12月15日
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ひとつ、仕事がひと段落して、ほっと、一息をついた。 ここ3ヶ月ほど、ひとりで飲みに行く気になれず、Barから足が遠のいていたのだけれど、繊細なカクテルが飲みたくなった。久しぶりに、近所の店を訪れたら、マスターが何か言いたげに口を動かした。「昨夜、メールを送ろうと思ったんです。・・来週の土曜日で、閉店します」 店の扉を開けた瞬間、6人のお客さんが見えたのだった。土曜日の閉店間際の時間、こんなに沢山ひとがいるなんて、変だと、瞬間的に思った。テーブルを見たら、出前の鮨桶やピザが置いてある。ああ、みんな、別れを告げに来ていたのだ。 その店は、20年間ぐらい、別のオーナーがジャズ喫茶を開いていたのを居ぬきで借り受けたもので、内装の古びた様子がとても気に入っている。井伏鱒二の「手水鉢」という短編をいつも、思い出したものだ。手水鉢にこびりついたコケを長年、愛でていたのに、1週間の留守を預かった女性が、好意からコケを無残にも、洗い流してしまい、井伏鱒二ががっくりする話だ。長い時間を経て初めて得られる重厚感。どこか煤けた、黒光りする木製のカウンターと棚。レコードのターンテーブル。イギリス製の古いスピーカー。ここで、ビートルズのレコードを何度も、聴かせてもらった。そして、マスターの作るカクテルはいつも、お手前のような、厳かで柔らなふくらみを感じさせた。 行きつけのお店を失うのはこれで、2店目だ。最初は、札幌はすすきのだった。あそこも確か、20年は経っていたはず。ビルの老朽化で取り壊されることになって、オーナーも泣く泣く、移転したのだった。2店とも、あのスモーキーな空気が似通っていた気がする。 時間だけは、お金で買えない。だから、長い時間を経て作られたものに対しては、限りない愛惜を覚える。今回も、しっかりと、脳裏に刻もう。今日はひたすら、カウンターを手で撫でさすっていた。まず、手に記憶を染み込ませる。次に行った時は、店のにおいを、鼻に仕舞いこもう。そして最後は、店の内部を、目に焼き付ける。 すすきののお店は、今も、目を閉じればすぐに、蘇る。だから、今回は比較的、冷静に閉店を受け止められる。しかし。お金持ちの知り合いがいれば良いのになァ・・と、思ってしまった。この雰囲気が取り壊されるのは、本当にもったいない。
2005年12月10日
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