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不用になったり具合が悪くなって捨てられたラヂオたちが野生化したのは彼らのせいではない。 元の飼い主にとっては友であり家族であったはずなのにごみと同じように河原やひとけの無い林道の端に捨ててしまうのは人間たちのエゴに他ならない。 調子が悪いときでもたたけば直ったりするのはなんだか人間臭くてとても愛おしい存在だったはずだ。好きな曲や懐かしい曲がかかるとなおさらだ。 「メロディーフェア」や「オールドファッションドラヴソング」なんてかかるともうたまらない。 ぼくの部屋にいつのまにか住みついたラヂオも調子っぱずれだ。機嫌がいいと窓ぎわで古めの音楽を流してくれてるんだが、ふと静かになったかと思うとホワイトノイズの隙間からわけのわからない言葉のきれぎれを流したりする。きっと受信状態も悪いのだろうけど、それだけじゃないようだった。 頭をポンとたたくと、何ごともなかったようにまた音楽を流すこともあれば、ふいっと開いている窓から姿を消すこともある。知らないうちにまた部屋の片隅にいたりするのだ。 でも、最近ラヂオが窓の外をぼんやりと眺めていることがおおくなった。もうそろそろかな、と思ったりもした。 そう、ゆうべはついに帰ってこなかった。以前にもそんなふうに帰ってこないこともあったが、かならず「星条旗よ永遠なれ」を流してから、姿を消したのだった。今回は違った。前ぶれ無しにいなくなった。 きっと最後の姿を人に見られたくないのかもしれない。 何ごともなかったようにまた帰ってくるだろうか。 少し胸が痛い日々が続いている。
2003.09.30
きつとせかいにあいたのだらうやあいらだんがいからかすむかほうをながめるにつぶいたこのよにかぜもちてうまれたるになぜうつむやててもかかもなみだかれずじや生まれてくるこどもたちはみんな風を持って生まれるだからこの世界はいつも新しい風が吹いているのだだから子等よ命を軽んずることなかれ生きよ風のごとく生きよ
2003.09.25
駆逐艦「秋風」長崎で建造された「秋風」は1945.10/27夜、マニラへ砲弾を輸送する空母隼等を護衛して第30駆逐隊司令駆逐艦として佐世保出港後ブルネイへ航行中11/2.2253マニラ北西フィリピン、ルソン島サン・フェルナンド西方南シナ海(16゚48’N/117゚17’E)を荒天航行中、アメリカ潜水艦ピンタードが隼鷹を狙って発射した魚雷4本が左舷後部に命中、船体を両断されて沈没し山崎艦長以下、乗員204名全員が死亡~近代世界艦船事典より抜粋太宰治の「秋風記」はそこはかとなくせつない小品でKと言うイニシャルが印象的でした。<つづく>「秋風で検索したら啄木がでてきて有名な意地悪の砂が結構秋なのねふーんぢやそゆことで」ほんとはコラージュにしたかった「秋風」だったけれど降りてきたのはこの数行だけだった。秋が秋らしくなかったからかもしれない。それでも、うろこ雲の綺麗な空や、煌々と輝く月は季節の移ろいを感じさせてくれたし、朝晩の気温の変化に連れ、道を行く人波の色が暗い色に変わってゆくのがなんともおかしくて、言葉よりもこの光景を見るのがいちばんだねと笑いそうになるのだった。
2003.09.23
天より降る言葉ありて在る雨のごとく降りそそぐ御身の空虚さを満たすや御心の渇えを癒すやその饒舌なる言葉の豊溢に詩音の豊穣に華は舞い精霊は踊る不死の季節が来るなれば天より降る言葉はとこしえにあたたかい....そう、ぼくの眼の前で螺旋状に回転する天子さまが語るあたり一面花びらや宝石や鳥が舞い踊る中ぼくはめまいに襲われ倒れそうになる天より降る言葉は巨大な眼となり宇宙のはじまりから終わりまでを見つめていた
2003.09.20
夏のぬけがら君のぬけがら西日の中で見上げる空影は濃く景色をふちどる空が高くて手は届きそうにない僕は自分に自信が持てなかった僕は自分の人生を信じていなかった悔やんではいるさでも、煙草をふかしてココロを吐き出してしまえばそれはきっと僕のぬけがら
2003.09.18
砂は石英、長石、輝石類、黒雲母、スコリア(火砕物)、軽石 、岩石片などで出来ていてキラキラ光るのはそのうちのどれかで見とれているうちに砂粒はパラパラと落ちはじめるその頬についた砂をしばらく見ていたかったその砂のついた頬をずっと見ていた
2003.09.14
フレアウテフレアウユビフレアウコトバフレアウクチビルフレアウココロフレアウカラダココロハタマノヒトツブヒトツブニシテデアウコトバノキズナニツナガルヒビキアフココロトカラダニヤドルスベテノモノヨオドリタマヘウタヒタマヘデアヒトアヒノジカンハミジカヒヤハラカナタマシヒニフレアツキナミダナガレルヒカナハヌミライカナウミライ
2003.09.12
龍彦様のお帰りその晩遅く玄関の鍵を開ける音がカチャカチャとして扉が開いて大きなため息と靴を脱ぐ気配。帰宅された御様子にもう既に夢のとば口に入りかけたわたくしの身体は起きなくちゃという意志にも関わらづ半分とろけた布団を出ようとすると無数の魑魅魍魎が手や触手や得体のしれない物でわたくしの手足や寝巻きやらを掴みまするので身動きが取れなくなりました。もがいていますと廊下をゆつくりと歩く音がみしりみしりと聞こえましたのでせめてお帰りなさいましと御声を掛けようといたしましたが唖ウウといううめき声にしかならず心の中であいすみませぬゆるしてくださいませと唱えました。廊下の足音はみしりみしりとお疲れになったのかとてもゆつくりと奥の書斎の扉の前までしてまた大きなため息とどさっという大きな書類鞄を床に置く音がしました。それきりわたくしは寝てしまつたらしく眼が覚めるともうすぐ夜が明けるぐらいの刻限でございました。玄関の鍵を明ける音がカチャカチャとして扉が開いて大きなため息。何かを引きずるような音とずしりずしりと大変重たいものが歩く音が廊下に響きました。
2003.09.09
入口見つからずに迷ってみるその森の入口を見つけられずにうろうろとそれもまたたのしかろと<言の葉の森>まよたまよた森の中はとても静かで永遠と刹那と月と星と光と影と懐かしさと愛おしさと世界の全てが満ちていた森の中に迷ってみる一枚一枚の言の葉をそっと手にとって眺めてみる透きとおった色あいのむこうに笑顔がうっすら見えるような気がした泣き顔がうっすら見えるような気がした過去も未来もこれから在る新しい世界につながっているのが見えた
2003.09.05
九月の歌を幾つか思い浮かべてくれたまえそのメロディの中で踊るきみの気持ちはしなやかさを取り戻すそうしてそのまま夏の残滓をぬぐい去り新しい季節の風を迎え入れるがいい
2003.09.03
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