全10件 (10件中 1-10件目)
1
ロボサムライ駆ける第五章 機械城(1)■ロボサムライ駆ける■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ ■第五章 機械城(1) 大阪湾の空母ライオンの会場のあたりが急に騒がしくなった。「剣闘士の試合をただちに止められい」 鑑橋本部からのアナウンスが会場に響きわたる。「どうした、なにごとだ」 剣闘士たちも尋ね合う。「会場におられる皆様方、速やかに退場口より退場されたい」 空母上の観客たちもざわめきあう。大阪港の荷物置き場あたりに、火の手が上がっていた。都市連合の装甲車が出動して行く。「どうやら反乱が起こったようだな」 主水の隣にいるロボットが、つぶやいていた。「一体、誰の反乱なんだ」 主水は尋ねていた。「お主、何も知らぬようだのう」 主水の顔を不審げにみる。「すまぬ、東日本の出身なのだ」「ほほう、知らぬのも無理はない。教えてやろう。ロボット奴隷の反乱じゃ。東日本のとは異なり、西日本ではすべてロボットは誰かの所有物じゃからのう」 健闘士のたまり場でも争いが始まっている。二派にわかれて、ロボット独立派とロボット奴隷派が、争いを始めてようとしている。「主水殿、どちら側の味方に付かれるのか」「いわずと知れたこと。反乱軍にお味方申す」 司令室で水野が手を後ろに組み、歩き回っている。「うむ、反乱ロボットめらが」 怒り狂う斎藤、水野の日本側主催者。冷ややかな眼で見ているのが、ロセンデール卿である。「卿、お味方くださらぬのか」 秀吉顔の斎藤が尋ねた。それに対して、「日本ロボットの反乱でしょう。我々神聖ゲルマン帝国には関わりなきこと。後で内政干渉と申されては痛し痒しですからね」 ロセンデールは涼しい顔である。「そこを何とか助けていただけぬか」 信長顔の水野が困り果てて頼んだ。「お願い申す」 隣にいる斎藤も頭を下げる。「わかりました。反乱軍を鎮圧してもよろしいのですが」 ロセンデールは急に椅子からすっくと立ち上がる。 ロセンデールは、その憂いをこめた眼差しを水野たちに向けて言葉をとぎらす。「何かご所望のものがありますのでしょうや」水野はあわてて言う。「反乱しておるロボットのボディを、我々の手にお譲りいただけますか」おそろしいことを言ってのけた。「そ、それは」 水野は言い淀んだ。水野の心臓がギュッと締め上げられる。 西日本都市連合にとって莫大な出費になる。しかも飛行甲板上にいるロボット剣闘士たちは、各市よりすぐりのものばかりだ。『このロボットたちが神聖ゲルマン帝国の手先となったら』と、ふと考える水野だった。ロボザムライの精鋭が西日本に刃向かったとしたら、恐ろしい事態となる。「どうなさいましたか。早く決めまれぬと、ほら、反乱ロボットがもうそこまで迫っておりましょう」 水野の心の動揺を読み取っているように、ロセンデールがせかす。「卿、そう驚かせないでください」 斎藤はびくついている。「わかりました。とりあえず、静めてくだされ。反乱ロボットのボディは差し上げましょう。ほかに」「とりあえず…、ねえ…、しかたがないですねえ」 ロセンデールが不承不承答えた。「水野様、大丈夫でございますか」 斎藤がこわごわ水野の袖を引く。「よし、神聖ゲルマン帝国のロボットの諸君、出番です。日本ロボットを身動きできぬようにしなさい」 ロセンデールが命令した。 神聖ゲルマン帝国の闘技者ロボットが格納庫から次々と出現し、反乱ロボットに戦いを挑む。「ごらんなさい。我が軍の勇姿を…」 ロセンデールが誇らしげに言う。が、反乱ロボット軍も負けてはいない。逆に神聖ゲルマン帝国ロボットの群れに切り込んできた。「いかん、神聖ゲルマン帝国のロボットが負けておりますぞ」 水野はうめく。「あ、あの先頭におりますロボットは」「斎藤、お見知りおきか」 ロセンデールが尋ねる。「いかにも」 水野もそう頷く。「どれどれ」 ロセンデールが先頭にいるロボットを垣間見る。そのロボザムライは、乱戦の中にあって見事な動きをしている。「あれは…」 ロセンデールの顔色が変わった。ロセンデールの頭の中に過去の出来事が蘇って来る。「そのロボットに向かい、全員切りかかりなさい」 めずらしく興奮し、命令ロセンデールだった。「卿、いかがなされた」 水野がびっくりして問う。「あやつは、私の宿敵、早乙女主水です」 水野はその名を叫び、絶句する。「何! 早乙女主水」「と、いうと、徳川公国の…」 続く、斎藤も言葉をとめる。「そうです、ええい、全員で切りかかりなさい。そやつだけは逃がしてはなりません」 ロセンデールは柳眉を逆立てていた。 ◆「姐さん、どういたしやす。下はどうやら大混乱ですぜ」 徳川空軍飛行船「高千穂」のコックピットで、鉄がマリアに叫んでいた。「いいわ、助けに行くわ」「それはなりません」 佐久間空軍大尉が言った。手には二人に向けて銃が握られている。「何をしやがるんだ。佐久間さん」「徳川公からの厳命なのです。我々の目的は早乙女殿とレイモン様を助け出すこと。下で起こっている騒乱は西日本都市連合で処理すべきことなのです。我々が参加すれば、西日本に対する内政干渉になり、徳川公、さらには東日本都市連合の立場が悪くなります。加えて徳川公廣さまが誘拐されました」 佐久間は冷たく述べる。「えっ」「いったい、誰に」「分かりません、恐らくロセンデールでしょう」「そうでしょうね、あの汚い殿様を誘拐するなんて」「鉄さん、汚いってどういう意味なのですか」「あれっ、姉さんも時々愚痴っているじゃありませんか、給料がすくないって」 その答えにはマリアは答えぬ。「誘拐されていわれれば、動けぬなあ。ああ腕がなるというのに。ともかく政治とは難しいものでござんすねえ、姐さん」「鉄さん、腕が鳴るっていったって、あなた先日のタコの時みたいに震えているじゃありませんか」「いやな、姐さんだねえ。いや、あっしは主水のだんなを助けようと思っていっているんですぜえ。じゃ何ですか、姐さんは主水のだんなのこと、気にならないんですかい」「心配していますよ。でも、これくらいのことでやられてしまう主水ではありません。まあ、見ておいでなさい」 佐久間が言葉を継いだ。「お二人の話は付いたようですね。我々徳川空軍は、争いを避けるため、上空に停船します。お許しください。下界のことは、このテレビモニターでご覧ください。すきあらば、我々空軍の命にかえて、主水殿、レイモン様を助けにまいる所存です」「そのお心持ちは有り難いことです、大尉」 マリアの潤いを帯びた目に見つめられ、佐久間大尉も顔を赤らめた。(続く)ロボサムライ駆ける第五章 機械城(1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.28
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(7)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士■(7) 中盤で、総当たり戦になる。武術ジャンルに関係なく戦う総当たり戦いであった。手慰の興味しんしんタイムだった。『東、大黒屋どの所属、松前闘司郎どの、西、会津屋どの所属、大樹山どの』 行司が大声で呼びあげた。剣術部門と力士部門の本日の人気者同志の対決だった。いやがうえにも、観客の興味は盛り上がる。 歓声が大阪湾に響きわたった。 主水は大樹山とがっちりあたっていた。 大樹山は最初から、主水を殺すつもりだ。大樹山は、刀をはたき込み、剣はみごとにたたき落とされていた。ついで、さば折りを掛けて来る。「主水。ここが地獄の一丁目ぞ」 大樹山は真っ赤な顔をして耳元で囁いた。「大樹山どの、どうしても、拙者を殺すつもりか」「あたりまえじゃ、かわいい舎弟の仕返し、せんでなるものか」 主水は逆にロボットレスリングで鍛えた技で返していた。「むぐっ、貴様、一体、どこで格闘技を」 大樹山の表情には主水に対する恐怖の色が見えた。「アメリカでのう、鍛えておった」 落ち着いて主水は答える。「相手に取って不足なし。ここが死に場ぞ、主水」 NASAにいたころ、主水はロボットプロレスリングから誘われたこともあるくらいの腕前なのだ。 主水は、大樹山の頭を、体でがっちりつかみこんだ。大樹山も両腕で主水の腰関節がきしむ程、締め上げている。 場内の空母でも、観客は息を飲んで試合を見ていた。死闘であった。 戦いをするものの勢いが、観客にも伝染していた。機械の体がきしんでいる。ばきばきと音がした。主水の腕もとから、機械の部品の残りがポロポロと甲板へ転がり落ちた。 主水が、とうとう大樹山の頭を潰していた。「おおーっ」 観客からどよめきが起こった。ゆっくりと主水は、大樹山の体を横たえる。観客総立ちであった。大樹山の首から上はぐしゃぐしゃに潰れ、跡形もない。 この試合の後、主水は『殺戮者』のあだなを貰った。 ◆ 後半戦にはいっていた。また部門ジャンル別の戦いとなる。「もしや、議会のおりの、レイモン殿あずかりの、狼藉の御仁ではござらぬか」 主水の次の対戦相手がそういった。「そういう、貴殿は」「死二三郎でござる」「貴公は、たしか、黒こげになっておられたのでは」「いやあ、修理されました。この剣闘士試合のために。貴公こそお名前が『松前闘司郎』となっておられるので、わかりもうさなんだが、それで拙者が切り落とした左手はいかがいたした」「この剣闘士になる前は、地下坑道で働かされておりましたゆえ、修理してくれました」「それはよかった。それでは存分にお手合わせいただきたい」「のぞむところ」「死二三郎殿、今度はあの議会のおりのように参らぬ」 主水は青眼に構える。「それは私も同じこと」 二人の刀は動き始める。が、刀の動きがあまりに早く、観客は刀が見えない。おまけに死二三郎も、主水もすばやく動く。観客の目にも止まらぬのである。手早に働きながら、主水は話しかける。「中々の腕前よのう、死二三郎殿」「貴殿こそ。このような宿敵にあえて、うれしいぞ」「私も同じ考えじゃ」 しばらくは刀を交え、静止する二人である。突然、主水の目に光が射した。光線は視覚機能から頭脳へ入る。何かの信号が、この光線に含まれている。よろける主水。隙に乗ずる死二三郎。「一体誰が」 おそらくは死二三郎を擁する都市代表の仕業であろう。が、光に目が眩んでいる様子に死二三郎は気付いてはいない。「ええい」 すばやく死二三郎の剣先から逃れる主水。死二三郎は不審に思う。「主水殿、いかがなされた。拙者から逃れられるのか」「そうではござらぬ」 主水は目を瞑った。だらりと両手を下げる。隙だらけである。「その姿は一体、私を嘗めておられるのか」 死二三郎はあまりの姿に怒り始めた。主水は無言である。「ちぇっすと」 死二三郎は怒りに駆られて切りかかる。怒りのエネルギーが、死二三郎の電子頭脳の処理をわずかに狂わせる。 死二三郎が上段から振り下ろす刀に対して、逆に主水は飛び上がる。かなりの上空から、勢いを込めて、剣を振り下ろしていた。主水の剣は、死二三郎の頭から背中にかけて切り裂き、留まっていた。「うっ」 死二三郎は、甲板のうえに頭や背中から生命液を飛び散らかして、どうと倒れる。顔を横にかしぎ、言った。「主水殿、見事じゃ」「いや、貴公こそ」 主水はゆっくり目を開く。主水の開いた目には、まだ何かの光が当たっていた。「その目への光りは」 死二三郎は、様子のただならぬことに気付く。「いや、何でもござらん。波の照り返しでござろう」 主水はごまかそうとする。「くっ、何たる卑劣な真似を。我が都市連合も。我輩ここで恥かき申した」 死二三郎は、この卑劣な手段に気付いて悔やむ。「主水殿、お願いがござる。拙者、メインボディの爆発装置が作動する」 死二三郎は、苦しい息の下、恐ろしいことを告げる。「なんと」「拙者、不負の男と呼ばれましたならば、そのような処理をされておりまする」「して、願いとは」 主水は死二三郎の思いを聞こうとする。「どうか拙者の左腕をお使いくだされい。取り外して貴公の手にしてくだされい。拙者が切り落とした左腕のかわりにお使いくだされい。拙者死二三郎の生きていた証しとして貴殿の左腕として、お使いされたく」「死二三郎殿、有り難く頂戴いたす」 死二三郎は、主水にほほ笑んで事切れた。主水は死二三郎の体を拝んだ。その後形見として左腕をはずす。主水が後に下がって、しばらくして死二三郎の体は爆発した。 ◆ 知恵は、機械城本天守閣をのぞき込んでいた。 剣闘士大会開催のため、機械城の警備は手薄になっていた。 天守閣は一階から五階まで巨大な吹き抜けとなっている。その吹き抜けの部分に黄金の大仏が座しているはずだった。「あっ…」 思わず知恵は叫んでいる。「大仏がいない…」 冷や汗がツーッと知恵の頬を這う。早速仲間に知らせなければと思う、知恵だった。瞬間、後ろに気配が…。「まて、こんなところに鼠がおったわ」「動くな」 機械城警備のロボ忍たちが知恵を発見したのだ。知恵の顔をのぞき込み、彼らはデータベースで知恵をチェックした。「お前、国境のあたりで、主水とかいうロボットと一緒にいた子供ロボットだな」 ようやく答えがでたようだ。「おやおや恐い。あのお兄さんたちだ…」「よいか、知恵とやら。今度はあのときのような失敗はせぬ。それにお前には、今度は主水はおらぬぞ」「機械城の埃にしてくれるわ」「おじさんたちさ、俺をバラバラにできることの方が誇りとなるぜ」「こわっぱめ、いわせておけば」 一斉にロボ忍が知恵目がけ飛び掛かる。大きな音が、大天守閣屋根に響く。ころがっているのは、ロボ忍の方だった。「おじさんたち、おれをばかにしゃあいけないよ…」 知恵は仕掛けを天守閣の屋根につくっておいた。ロボ忍の体に放電されたのだった。 ◆ 細工師の知恵は、機械城内にある金庫の前に立っていた。獲物を前に舌なめずりをする。「さあて、僕の腕が、どれだけ通じるかだな」 知恵は、今まで難攻不落といわれていた金庫の鍵を、次々と押し破っていた。子供ロボットながら、この世界では最高の細工師といわれているのである。 この金庫は割合に時間が掛かった。知恵にとっては、初めての経験だ。人工汗が流れ出ていた。『あるいは破れないのでは』知恵に生まれて初めてあせりの思いが湧いた。 が、開いた。歓喜の感情がじんわりと知恵の人工頭脳に広がっていった。ドアの中は真っ暗だった。スイッチを探して、金庫内の明かりを点ける。「ひゅーつ、こいつは」 一瞬、知恵は口笛を吹いていた。目の前に広がっているのは、知恵には思いも掛けない光景だった。この金庫は武器の山だったのである。 昔ロボット奴隷制が施行され、ロボット動員令が発令されたとき、いわゆる刀狩りが行われた。個人個人のロボットが所有する武器は集められれていた。それがこの武器の山だった。レイ・ガン、レイ・サーベル、動波砲、刀、槍、青竜刀、まるで武器の見本市、なんでもござれだ。が、知恵が探そうとしているのは、特別な刀、つまり早乙女主水の剣ムラマサである。 ◆「花村様が、水野様に至急お耳にいれたいことがあると申されておられますが」 空母の司令室に議長の水野がいた。「よい、我が部屋に通せ」 花村が音もなく現れている。「花村、いかが致した。徳川公誘拐の件、成功いたしたか」「その件は確かに。この花村一去、自らが徳川公を誘拐致しましたゆえに、心配なさいますな。これにより東日本都市連合は、しばしは我々西日本に手出しすることはできますまい。それより、お上」「何か、変事出来致したか?」「誠に私の監視下、変事が起こりました。機械城天守閣上でございます。私の手のロボ忍数体、バラバラにされてございます」「誰もその戦いに気がつかなんだか」「それが大音すると聞き、我がロボ忍おりましたが、数体壊れているのを発見せし次第」「して、何者が。東日本よりの破壊工作者ではあるまいな」「それが天守閣上に設備されております小型モニターカメラのVTRを再生致しましたところ、わずかながら手掛かりを得てございます」「して、相手は」「それが…」 花村は言い淀んだ。「えーい、早く申せ。その仕業の張本人は」「それが、はぐれ子供ロボットの、知恵とかいう者らしく」「何、子供に、そちらのロボ忍負けたと申すか。もしや、花村、そのもの『運命の七つ星』ロボットではあるまいな」 水野の恐るべき質問に、花村も答えることがなかなかできない。「調べる手立てはございません」「何、全ロボットデースベースに、そいつの資料がないと申すか」「知恵なる者の資料、ごっそり消えてございます」「うーむ、ともかく警戒おこたるな」 花村は、すごすごと司令室から去っていく。(続く)ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(7)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.24
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(6)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士■第4章(6) その日、空は天頂まで晴れ上がっていた。大きな音が響いていた。大阪湾上に花火が打ち上げられているのだ。剣闘士大会の会場が、ロセンデール卿の持船「ライオン」の飛行甲板上に設けられていた。 静寂の中、突然に法螺貝が鳴り響いた。 空母「ライオン」甲板の六ヵ所に設けられた入場口から、各々の武術のロボットが一団となって入場してきた。各々のロボットの背中には、西日本連合の各市の旗が掲げられている。 健闘士大会で優勝したロボットの持主の旗が、空母ライオンの艦橋の上にへんぽんと翻るのだ。 この武術試合には、BGMとして、日本古来の音楽がデザインされ、使用されている。ロック調に編曲された日本古音楽にのって、次々と剣闘士ロボットが出現して来る。空母ライオンの甲板上に設けられた客席にいる、観客が手を叩き続ける。もちろん観客は、すべて人間である。 当然ながら、どの剣士が入賞するかの賭けも行われている。客席のあちこちから、各都市の市章応援旗が打ち振られている。ロボットとはいえ、各都市を代表しているので、各都市ではテレビから流れる映像に釘づけになっている人達が多くいた。 艦橋に設けられた挨拶台に、一人の男の姿があった。西日本都市連合議長、水野英四郎である。挨拶を始めた。「ヨーロッパから来航されたロセンデール卿のご招待を受け、急遽このライオン号にて御前試合を開催するに至りました。 まず、卿に感謝の拍手をお願いいたす」 西日本都市連合の人々は頭を垂れた。 ロセンデールは軽く目礼を返す。水野は挨拶を続ける。「この剣闘士御前試合も迎えるところ二十回となり、日本精神の華ともいえる、日本武道を見せる世界でも稀なロボット剣闘士大会となっております。 西日本エリアの各市を代表する参加ロボット諸君はもちろんのこと、西日本における有名企業の皆様の絶大なご協力に感謝する次第であります。 今回より、ロセンデール卿のご好意により、この試合の様子は西日本、東日本は及ばず、全世界に放送され、日本の武道文化を知らしめるに大いに役立つでありましょう」 ライオンの係留されている大阪港の波止場あたりにも、観戦希望客が詰め掛けていた。埠頭近くに民間企業による特設会場が設けられ、何とか空母上を見ることができた。空母ライオン上の会場では、続いて各市を代表する武闘ロボットが紹介されていく。 ◆ 飛行船「飛天」で、東京から飛行し、ほぼ名古屋あたりを通過している鉄は、この健闘士大会の中継番組を、機械茶を飲みながら見ていた。「こりゃ、主水のだんなが出場すりゃ、皆いちころだがね」 独りごちた一瞬後、テレビ画面に主水の顔が写し出される。茶を吹き出す。「ありゃ、いけねえ、本当にだんなだ。マリアあねさん、大変ですぜ。だんなだよ、だんなが西日本の剣士として登場していまさあ」「本当ですねえ。主水め、何しているの。人が心配しているというのに」 マリアがテレビの画面を眺める。主水の姿が写っている画面の映像スーパーには、『大黒屋所属・松前闘司郎』となっていた。 ◆ 剣闘士の試合が始まる。 主水の習練の技は、西日本エリアの剣闘士の比ではなかった。 次々と勝ち進んで行く主水であった。(続く)ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(6)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.21
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(5-2)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士(5-2) ◆ 新平野にある大阪市の中央に、その建物『ロボット道場』は設けられていた。まるで円盤が着陸したように思える。大きい。西日本都市連合議場と同じ広さ、あるいはもっと広いかもしれない。 剣闘士道場の中に入った主水は、驚いた。これは東日本以上だと思った。巨大なアスレチックジムが数十個ある感じなのだ。 ジムといっても人間のように筋力をトレーニングによって増強するわけではない。反応速度、ジョイント部分の潤滑、電子頭脳のシノプス反応、計算速度、試合の分析・解釈、試合例を、電子頭脳に読み込んで行くのだ。 廊下にはずっーと、剣闘士大会の優勝者の立体写真が並んでいた。「これは…」 ゆっくりと、主水はその顔を見ていく。 松前の名前で登録されている主水はトレーナーに尋ねた。「思われるとおり、優勝者だ」 トレーナーはにこりともせず答えた。「今、彼らはどうして…」「それは…」 案内するトレーナー・ロボットは言葉を濁した。「残念ながら、ロボット廃棄処分になったとか」 しゃれを言い、事実を知ろうとした。「そういう訳ではござらん。皆データバンクに生きてござる」「データバンクに生きてだと」 主水は悲しくなった。つまりは優勝者はだれも生きてはいないのだ。 ◆「戦いとは、対戦相手の息の根を止めることじゃ」 主水の前にいる老剣闘士トレーナー『吉野工作』が言った。 怜悧な、あるいは無表情とも言える顔付きで、白髪である。作務衣を着ていた。体にむだな動きがない。流れるようである。「吉野様、ではいかなるときも、対戦相手を殺せとおっしゃる訳ですな」 主水は勢い込んで尋ねた。「そういうことじゃ」「トレーナー吉野殿、何のために相手を殺すのですか。同じロボットなのに」「ほほう、松前殿は、そのような基本的なこともおわかりにならぬのか」「さようでございます。私め、主人の大黒屋様から剣闘士になれと指示されただけで…」「ロボットの戦いは、持ち主の自分の名誉のためじゃ」「名誉ですと、人間の名誉のためだけですか」「さようじゃ、松前殿、我々が存在できるのはそのため。人間のために死ぬことは当たり前じゃろう」「それは足毛布博士の公理でございますな」 足毛布博士の法則『ロボットは、人間の利益のために死ぬべきである』「そうじゃ。どうやら、合点がいかぬようじゃな」「吉野殿。我々は、人間に作られたとはいえ、生命体でござる。つまり新しい個性でござる」 主水は力み、主張する。「いやはや、危険思想じゃのう。足毛布博士が聞かれたら、どう思われることか」 吉野は頭を振りながら暗い顔をする。吉野は考えていた。『このロボットは危険思想の持ち主じゃ。試合中に潰してしまわねばならぬ。後で競技委員会に連絡しておくべきじゃ』 実際、同じような質問をしたことのある主水であった。 主水が足毛布博士の元から逃亡したのも、その議論が原因なのだ。 主水は、深い記憶の層から、何かが浮かび上がって来るのを感じている。 霊戦争以前ロボリンピックという競技大会があり、ロボット同志がおのが技量を競ったことを。そのメモリーはすべてのロボットの基本フォーマットの中に残っていた。それはそれはすばらしいロボット同士の競技会であった。ロボットはロボット自身の名誉のために戦ったのだ。 力士ロボットの一人が、主水の側まで近づいてきた。 剣闘士トレーニングセンターの一室にいた。 大きい。二メートルくらいだが、体重は四百キロはあるだろう。「俺は大樹山よ。主水、覚えているか」 急にそいつは話しかける。この力士は、主水の本名をしっていた。「大樹山殿、申し訳ないが、とんと」 主水は首を振った。「貴様は俺の舎弟を殺したのよ」 主水の記憶メモリーバンクの中で、何かがくるくるまわっていた。「そうか、あのとき、貴公が…」 主水は、徳川公が臨席される天覧大相撲大会に付き添いとして参加したことがある。 そのおりのこと、ロボレスの唐海が、大相撲場所に殴り込みをかけてきたのである。 唐海はロボ相撲の昇進試験に問題ありとして、ロボ相撲を去り、ロボットプロレスであるロボレス協会に所属を変わったものであったが、意趣返しのためこの天覧相撲大会を混乱に陥れようとして、ロボット相撲ホールに暴れ混んできたようだった。 そのとき、主水は徳川公を守るため、唐海を切り殺していた。「それでは大樹山殿は、唐海関の兄弟子であられるか」「そうじゃ、剣闘士大会のおり、楽しみにしておるぞ、主水」 どすの効いた声でしゃべり、大樹山は、どすどすと足音もはでに、去っていった。「この大樹山とは戦わねばならぬのか」 主水は思った。何という因縁の中に生きているのじゃ。もう一つ心配なことがある。この試合を見れば、足毛布博士が気付くかも知れぬ。さらに、ロセンデールがいればもっと悪いことになろう。(続く)ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(5-2)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.21
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(5-1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士(5-1)「姐さん、よい眺めですぜ。さすが徳川様の空軍飛行船てわけだ」 鉄が飛行船の窓から眺めている。「まあ、鉄、いい年をした大人ロボットが、それほどよくはしゃげるものですねえ。飛行船に乗ったというくらいでねえ」「だって、姐さん、私しゃこう見えても、空を飛んだのは初めてなんですよ」「さようですか、よく高所恐怖症じゃなかったことですね。それに私たちは、これから物見遊山に行く訳じゃないのですよ。西日本のロボットと、ひょっとしたら戦わなきゃいけないんですからねえ」「戦いですって。ああ、胸が高鳴りまさあ。おまけに姐さんの前で、いい格好ができるなんて、最高じゃありませんか」「鉄さん、あなた、ひょっとして、私に惚れてる訳じゃないでしょうね」「ね、姐さん。何を言い出すんですか。姐さんがだんなの内儀だってのはよくわかっていまさあ。ははあっ」 と笑いでごまかす鉄。「そうですか。それならいいんですけれど。あなたのはしゃぎの一因は、私と旅行できるからではないかと考えましてね」「そりゃないですぜ、姐さん」 内心ドキッとする鉄。といいながらも、顔を赤らめる鉄であった。「大変です」 ドアをノックして、徳川空軍の佐久間大尉が入って来る。 空軍の軍服は空色のモンペ服の上に陣羽織を羽織っている。肩章には階級が示されている。また、背中には三つ葉葵が白で染め抜かれていた。 佐久間は面長で彫りの深い顔をしていた。どうやら徳川公廣の親戚筋らしい。「どうかいたしましたか、佐久間大尉」「現在、本船は西日本と東日本の境界近くまで飛行してきておりますが、敵が現れました」 佐久間は顔を高潮させていた。「敵だって、そいつはいけねえや」 鉄が起き上がり、片腕をまくりあげた。「気の早い人ですね。空のうえで殴り合う訳じゃないんだから、なんですか、その腕まくりは」「すみません、つい、地の上の戦いと間違いまして」 鉄はぼりぼりと頭をかいていた。「ともかく、お二人とも操縦室のモニターをご覧ください。どうぞこちらへ」 佐久間は二人を案内する。二人は佐久間に従い、通路を歩む。「鉄さん、うれしいでしょう。コックピットを見せてくれるんですからね」「そりゃ、うれしいでさ。願ったり叶ったりとはこのことだ」「鉄さん…」 いいながら、急にマリアは立ち止まり、鉄の顔を見た。「何ですか、姐さん」 何事かと期待してマリアを見返す。「では戦いが始まったら、あなたの男っぷりてものを見せていただけるのでしょうね」「がってんしょうちのすけでえ」 佐久間大尉は鉄の様子を見て首を竦めた。こいつはだいじょうぶかという顔付きである。「どうぞ、こちらです」 ドアを明けた。コックピットに入る。たくさんの徳川軍の空軍兵士が働いている。「うわっ、思っていた以上に広いや。ねえ、姐さん」 鉄が突拍子もない声を張り上げて、片手で額を打った。「うるさいですわねえ、私はヨーロッパから日本へ来たとき、小型気球に乗ったり、飛行船に乗ったりして、うんざりしているのです」「どうぞ、あれが敵の姿です」 佐久間大尉が操作卓の上にあるモニターテレビを指し示した。「何だ、ありゃ」「どうやらタコのようです」 佐久間の間の抜けた返事である。「タコだって、タコってのは海の底にいりゃいいものおよ」 鉄は強がっていた。軽量で張力のある高密度繊維で編み上げられたタコが、境界線上にずらっと揚げられていた。西日本都市連合があげているタコだ。上空からの侵入を防ぐためらしい。「姐さん、何かタコの下に見えますぜ」「何かの重しでしょうね。見せていただけますか、佐久間大尉」 その物体に飛行船の監視カメラがズームした。「これはひどいですねえ…」 思わず顔の表情が強張るマリアだった。「こいつはあんまりだ」 鉄も表情が変わった。 国境から逃げようとしたロボットの首が、各々のタコの飾りにつけられているのだった。「数枚のタコには、どうやらロボットが乗っているようです。しかもロボ忍です」 佐久間大尉が告げた。「おもしろいじゃないですか」「たぶん、あやつらは、この飛行船の気球部分に爆発物を飛ばすつもりでしょう」 佐久間が述べた。「それじゃ、あやつらに、火器じゃなく、火気厳禁と言ってやらなきゃなりませんねえ」「鉄さん、あなた…何を。私の怒りが爆発しますわよ」 たしなめるマリア。が、しゃれを言った鉄に、コックピットの全員から、冷たい視線が投げ付けられた。「へい、どうもすみません」 縮こまる鉄。「さあ、ここが正念場ですよ、鉄さん。あなたに働いて貰いましょう」 鉄にとっては目が覚めるような言葉だった。「ええ、姐さん、私が何を」「こちらもタコを飛ばすのですよ」 にっこりしながら言うマリア。「それで、まさか…」 悪い予感が鉄の頭をかすめる。眼を白黒させる。「そうです、その通りです。あやつらのタコを叩き落としてほしいのです。何、すべてを落とせと言うわけではありません。この飛行船の通る範囲内でいいってことです」 当たり前のように簡単に、マリアは言う「無茶だよ、私しゃ、高所恐怖症なんですよ」 鉄は冷汗をかいていた。「さっきはそうは言わなかったでしょう。ほら、落ち着くために特別の機械茶を飲ましてあげるますから、がんばって」「もし、私の乗ってるタコが切られたら」 鉄は、タコの落ちる姿を想像し、がたがた震えている。「そりゃ、あなたごと落ちるでしょうね」「ね、姐さん。本当にわたしに戦えっていうんですかい」「当たり前じゃないですか。いいですか、鉄さん。あまり動くんじゃないですよ。縛れないじゃないですか」 鉄の体はタコに縛り付けられていた。「いいですか、空軍のだんな方。絶対タコの糸を切り離さないでくださいよ」「おお、心得ておる」 鉄と対照的に、話の経緯に、にこにこしながら答える兵士たち。「で、お助けをしてくださらないんで」 鉄は足をがくがく痙攣させながら、マリアや空軍兵を一通り見渡した。皆知らぬ顔である。「貴公、一人で充分だろう」 佐久間空軍大尉が言う。「鉄さん、震えているんじゃないでしょうね」「え、姐さん、こいつは武者奮いって奴で」「それじゃ、いいかですか。そうれ。外ですよ」 鉄の乗ったタコは飛行船から押し出される。「ま、まってくだせえ。まだ心の準備があ…」 言葉を言い終わる前に、鉄はタコごと空中に浮遊していた。 真下は関が原らしい。雲の間から復旧しつつある東海道がぼんやり見えた。「いっ一体、どうやって動かしゃいいんだ、これは」 鉄は独りごちた。『鉄さん、早く敵の方へ行きなさい』 耳のレシーバーから、マリアの声が入って来た。「あっ、姐さん。姐さんの声を聞けるだけでも、たくましい限りだ」『いいから。ほら、奴らの方が、もうやって来ていますよ』 そういっているうちに、鉄のタコのまわりを、ロボ忍のタコが囲んでいた。「や、やい。俺を誰だと思っていやがるんだい。東京じゃ、ちょっと知られたお兄さんだぞ」 ひびりながらしゃべる鉄。相手のロボ忍が笑いながら言う。「ほほう、威勢だけはよいのう」「あ、あっしの頭を聞いて驚くな。早乙女主水のだんなだぞ」「何、早乙女主水だと」 ロボ忍の数人が、あきらかに顔色が変わっていた。「どうだい、驚いたかい」 鉄はいばるが、逆効果だった。相手の様子が険しい。「早乙女の使い番とあらば、尚のこと、生かしてはおけぬ」 逆にロボ忍の殺意をたぎらせてしまった。「旦那は評判悪いねえ。いや、その、あの、生かしてはおけぬなんて。もちょっと…」 慌てて、何とかごまかそうとする鉄。「各々方かかれい」 ロボ忍の一人が命令する。「助けてくれ」 鉄はとうとう悲鳴を上げていた。悲鳴にもかかわらずタコが近づいて来る。刀を動かす音が数秒続く。鉄は思わず、目を瞑った。「うっ、ややられた。おいらもここで終わりか…。早乙女のだんな、許しておくんなさい。鉄は役に立ちませんでした」「本当に役立たずですよ。鉄さん、目を開けてご覧なさい」 マリアの声だった。目を開く。まわりのロボ忍は、すべて倒され、タコの上でぶらぶら動いている。目の前にマリアが浮いている。「こりゃ、一体、マリアのお姐さんが」「当たり前ですよ。私のサーベル『ジャンヌ』の錆になっていただいたのです」 マリアは小型のジェット推進機を背中に背負っている。愛用のサーベル「ジャンヌ」を手に持っていた。「あ、あっしは餌って訳ですかい」 鉄は気づいた。「そういう訳ですよ」「そいつは姐さん、あんまりだ」「何いってるのですか。お陰でロボ忍を片付けられたのですよ」 徳川空軍・飛行船は、西日本都市連合の領土に入っていた。 ◆「さて、さて、松前さん。あなたはどの試合に出るつもりですか」 御用商人大黒屋は、主水相手にどんどん話を広げていく。大乗り気なのである。「いやいや剣闘士といっても、日本武道のことです。いろいろなコースがある。相撲、弓道、剣道、槍術、薙刀、鎖鎌など。なんでもござれだ。それにこの特殊技術を練習する道場があるのですよ。道場の経営は西日本都市連合が当たっておるから、心配はしなくてもよろしいですよ。そこらの偽者の「ロボット道場」とは違いますからね。さあ、どれを選びなさる。ロボット空手か、あるいはロボット柔道か。またはロボットレス(ロボットレスリング)か」 大黒屋は顔を真っ赤に興奮している。「大黒屋どの、やはり私は…」 冷たく断ろうとする主水だが、「何を選びなさる、思うとおりおっしゃってくださいな」 とうとう大黒屋に押し切られる形となった。(続く)ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(5-1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.17
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(4)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士 (4) 主水が、ぼんやり地上リクライニングゾーンで休んでいると、あるものが目に飛び込んできた。土煙が上がっている。一体あれは……。 八足歩行タイプロボットのクラルテが疾駆してくる。乗り手はいない。それが途方もないスピードで走っている。文字どうり爆走であった。「危ないぞう」「みんな、逃げろう」 人々は口々に叫んでいた。 主水の目は何かに気付く。 進行方向に逃げ遅れた人間の子供がいる。体を強張らせている。その子の姿に主水は気付く。その子は道の真ん中で立ちすくんでいる。「あれは…」 高い階級に属しているらしく金のかかった服装をしている。日よけ傘がそばに落ちている。それを持っていた子供のお供のものどもは、我先に逃げてしまっている。「ううん、何て奴らじゃ。主人をほおって逃げてしまうとは」 主水は助けようと決意する。助けるにはリクライニングゾーンの結界である電磁ビームの中を突き切らねばなかぬ。 主水の疑似皮膚がバチバチと音を立てていた。いままで経験したことのない痛みの感覚が、主水を襲った。「待て、こやつ逃げるでない」 見張りロボットが飛んで来る。主水はそのロボットを殴る。「むぐう、何のこれしき」 主水は意識を失いながら、電磁バリアを突き切っていた。 痛みより、その子供を救おうとする意志のほうが強かったのだ。主水は子供のほうに走り出していた。 背後から警備ロボットのレイガンの光条が追いかけて来る。 目の前に子供が見えた。主水の体が飛び出す。眼前にクラルテの足が見えていた。主水は「クラルテ」の走る一瞬前に、体を投げ出し子供をかかえ横に転がる。 クラルテは主水はの上を走り抜ける。地響きがした。クラルテの八足のうち二足が主水の体の上を走り抜ける。 瞬間、火花が散る。「くくう」 数トンの重みが一瞬主水の上を通り過ぎたのだ。さすがの主水もこれは効いた。「指圧よりすごいのう」 負けず嫌いの性格である。子供は気をうしなっている。 クラルテは主水を一度はねた後、急に止まっていた。後ろを振り返る。再び主水はと子供の方に探査アイを向けた。何かと間違えたのだろう。 すでに狂っている頭脳は、主水を敵と勘違いしたようだ。「わしはロボットじゃ、気付かぬか、このクラルテめ」 が、クラルテはそんな主水の言葉を無視して、反動をつけて主水の方へまっすぐ向かってくる。 主水は、立ち上がり、右手を握り締めて身構えた。勢いづいたクラルテの一足が、主水の方に蹴りかかろうとする。 その一瞬、主水の握りこぶしがその一足を殴る。接合足の一番脆い部分だった。パワーとパワーがぶつかった。グキッといやな音がした。 主水の体は右横に投げ飛ばされる。主水の右肩の蝶番が半分ねじまがった。が、クラルテの一足も折り曲がる。バランスを失ったクラルテは、ドウと地響きをあげて、そばに倒れる。 主水は投げ飛ばされたところから、子供を目がけ走った。主水は左手で子供を抱え、その場から逃げ去る。クラルテの残り七足が跳ね回っている。 警備のロボが刀でクラルテの頭脳部分を切っていた。「大丈夫か」 倒れている主水の方にやってきた男が言う。「お手柄だな」 主水は安堵のため息をつく。主水は、休息所に連れて行かれた。 その夜休息所で寝ていた主水は、たたき起こされる。顔見知りの看守だった。「おい、ここからでるのじゃ」 看守が言った。「一体、どこへ」「しっ、お前をここから出してやろうというんだ」 長い通路を看守に連れられて歩く。機械城から出た主水を、ロボ馬車が待っていた。看守は、きびすを返してすぐに消える。「いかりの長介さんだね」 立ち尽くす主水に、馬車のドアが開いた。中にいる男がいった。四十からみのにがりばしったいい男である。「いえいえ、私はけっして怪しいものじゃありません。大黒屋昭八と申します。どうぞ内へお入りください」「その大黒屋どのが」「いえ、昼間のお礼でございます。いいですか、『いかりの』さんは死なれた。そう全ロボットデーターベースには打ち込まれているはずです。今夜から、手前どもの剣闘士、松前さんになつていただきます」「剣闘士ですと」「おいやなのでございますか」 が、主水はうれしくはない。剣闘士の試合は人間に見せるためのロボットの潰しあいだ。「その件について検討したいといっても、許すあなたではありますまい」「そういうことですな」 大黒屋は主水のシャレに真面に答えた。 馬車は、御用商人大黒屋の家にたどりつく。かなりの家作である。大黒屋富のほどが知れた。主水が昼間クラルテから助けたのは、御用商人大黒屋の子供だった。この商人大黒屋は、政府に顔がきくらしく、お陰でこの商人直属の剣闘士の身分にとりあげられたのだ。「松前さん、都市連合主催の剣闘士大会に出てみないか」 ある日、大黒屋は急に話を投げかけてきた。大切な話を事もなげにである。「長介、僕も応援するからね。がんばってね」 側に擦り寄ってきた、息子竜之介が頼もしげに言う。主水が助けた子供である。主水に懐いていた。「竜之介もこう言っているんですよ。主水さん、ひとつお頼み申し上げます」「大黒屋さん、その戦いによってあなたも利を得るわけですか」「えっ、と申しますと…」「賭けか何かあるんだろう」「だんな、慧眼ですね。そのとおりです。だからお願いしたいのです」(続く)ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(4)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士
2005.10.15
コメント(0)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(3)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士(3) 主水は、地下坑道五-Bに送り込まれている。大阪にある機械城から、古代都市があると思われる方向に二十もの道が掘り進められている。ロボットは二〇時間労働であった。休息時間はわずかである。 与えられるものは潤滑油と栄養液だけである。しかも両方とも、それが良質ではない。東京で与えられているものと段違いに品が悪い。主水は閉口した。やはり、これでは体の動きがスムーズにいかない。 それに例の持病も気になっていた。作業中に空白の時間がくれば、掘削機に巻き込まれる恐れがある。 それに落合レイモンもどうしているのであろうか。 さらに東京にいるマリア、鉄、そして徳川の主上はどうなさっているだろうか。思うと、主水の頬に温かいものが伝う。 人工涙滴である。弱気になっていた。 主水は、安物の左手で涙を拭う。作業用に取り付けられた左腕である。死二三郎に切り取られた左腕は帰って来なかった。あの左腕は特別製である。今の左腕は動きが悪かった。 あるとき、主水は同じ作業しているロボットに尋ねた。「どこへ向かって掘り進んでいるのだ」「若いの、それは知らぬ方がよい」 その老人のロボットは答えた。無数の傷が顔とボディにあるその老人は言う。「いにしえにあったピラミッドと湖といっておこうかのう」 表情を変えず、そう言った。「ピラミッド、湖…それは心柱と関係あるのか」 さらに主水は尋ねる。老人はいやな顔をした。「若いの、知識がある奴が、長生きするとは限らんのじゃ……。知りすぎたロボットはのう、よう削岩機でつぶされとるんじゃ」 苦い思い出があるらしい。 数人のロボットが岩盤を掘り進んでいた。非力ながら、主水もドリルを持たされ、穴掘り作業を続けさせられていた。が、地中作業は、ロボットの表皮や間接部分の非合金を痛めることがある。数時間の水によるボディの洗浄と太陽光線照射が許されていた。つまり、地上での休息である。数人毎に纏められて地上に上げられる。 が、ロボットたちのいる二〇平方メートルの『リクライニングゾーン』には、電磁ビームが張り巡らされていて、容易に逃亡できないようになっていた。 ◆ タコが東日本から西日本へ移動してきた。西日本のロボ忍のタコが国境を越えるタコを見つけて接近してくる。 タコを囲む数機のタコ。「何者だ。名をなのれ」 西日本のロボ忍が叫ぶ。「俺じゃ、花村一去じゃ。ほれこのとおり、徳川公を誘拐して参ったわ」 東日本からきたタコから声が帰ってきた。「おお、これは、お頭。お役目ご苦労にございます」「首尾よく、役目果たして参られましたか」「これにて、我々西日本の動き、具合よく運びましょうぞほどに」「水野の殿が喜ぶ姿、目に浮かびましょう」 祝いの言葉が続々と浴びせられた。 ◆ その水野と斎藤は一室で話し合っていた。「心柱の位置、すぐさま見つけたのはさすがと言わねばなりませんな」「が、レイモンをあまり付け上がらせてはならぬ」 二人が話し合っているところに、折あしくレイモンが現れた。レイモンは、一人で歩く訳にはいかぬので、乳母車のような乗り物に乗っている。後ろで押しているのは夜叉丸である。「これは、これは斎藤氏に水野氏。何か俺の話をしておられたのか」「いえ、別にそうでは」 斎藤が首を振る。「お二方、お忘れなさるな。レイモン様は最高の霊能師でござるぞ。お二方の考え方など、お見通しじゃ」 夜叉丸が言葉を告げた。青くなる二人。「ふふう、どうやら俺の話が、ずばり的を得ていたようじゃな」 レイモンはしゃべるたびに薬用チューブがジャリジャリと音を立てている。「よいか、心柱発見の力、レイモン様の力と知られよ。あだや疎かにされるなよ。お二方」 夜叉丸が再び強い調子で続けた。威しをかけているのである。「まあ、よいではないか、夜叉丸。お二方とも俺の力はご存じのはず」 レイモンは含み笑いをしながら、悪意のある眼を二人に向けた。震え上がる二人。「それではお二方、よろしくお願い申す」 レイモンの乗る手押し車が揺れるたび、ちゃぷんちゃぷんと音がする。レイモンの薬タンクの中の薬液が揺れる音であった。「ふふう、いつもながら恐ろしいのう、レイモンは」 信長の顔をした水野が汗をかいていた。「ところで水野様、あの夜叉丸ととかいう男、ロボットでござるか、あるいは…」 秀吉顔の斎藤が尋ねる。「わからんのじゃ。レイモン殿の話では人間じゃと申しておるがの」「が、水野様。何かあやつ人間ではないような…」 疑い深げな顔をして斎藤が言う。「そんな気が俺もするが、またロボットでもないようなのじゃ」 しばらく沈黙があり、斎藤が小さい声で言う。「まさか、霊人間とかいう…」「げっ、斎藤、恐ろしいことをいいよるのう」 二人は顔を見合わせ、背筋が冷たくなった。(続く)■ロボサムライ駆ける■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikku.com/
2005.10.13
コメント(0)
■ロボサムライ駆ける■第四章 第四章 剣闘士(2)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 第四章 剣闘士 (2) 東京島。 『鉄』が再び主水の部屋を訪れてようとしていた。エレベーターに乗っている。 主水の屋敷は旗本ロボットが居住している公国アパートである。ストリップエレベーターからは、遠く、静岡や房総半島などが眺められる。 間取りは一二畳、一二畳、六畳、バス・トイレ付である。家賃は三十六万円。家賃は徳川公からの給与から差し引かれている。 ロボットにバス・トイレが必要かという疑問があるが、ロボットは体の外部、内部の洗浄が常に必要であった。 押し入れには、体の各部分の部品の予備が常備されているのである。 ロボットは食事はしない。が、かわりに栄養液が必要であり、そのため水道の蛇口と並んで、栄養チューブが常備されていた。 家具も必要ないと思われるであろう。が、ロボット標準設備としては、修理用ベッド、自己精製用コックピット、レーダー精製装置、武器・弾薬整備セット、油圧調整モジュールなど、人間の家具より重量があり、かつ容積を取る家具が必要なのである。当然、ロボット整備中の爆発事件も微量ではあるが起こるので各部屋の壁・床は合金システムとなっている。 マリアは、整備用のベットで眠っていたようだった。「何か御用ですか、鉄さん」「だって姐さん、だんなが西日本へ行って日数が立ちやすんで、何か伝言が情報モジュールにでも入ってやしないかと思いましてね」「鉄さん、あなた、主人思いの方ですよね。でも、まさかホモ友ってわけじゃないですわね」「マリアねえさん。め、めっそうなこと、いっちゃいけませんぜ」 と、いいながら、顔を赤らめる鉄であった。ロボット顔面には人工皮膚が使用されており、人間と変わりがないほどの表情を示すことができる。「まあ、そうおっしゃるのなら調べて見ましょう」 マリアは、奥の部屋にある情報モジュールを操作してみる。 情報モジュールには、電話、FAX、パソコン、キーボード、CPU、CRT、BS、CS、オーディオ、ラジオ、有線放送などすべての情報ラインが纏めてある。モニターには情報が入っていなかった。「何の情報も入ってはいませんわ。お生憎様ですわね、鉄さん」「だって、姐さん、何の心配もなさらないんですかい」「じゃまいたすぞ」 そのとき、玄関先で声が聞こえる。「悪いけど、お客様を見て来てくださる」「へい、がってん」 が、急にマリアの元に戻って来る鉄。「て、ていへんだよ、姐さん」「どうしたのですか、そんなにあわてておられて。まあ、あなたのあわて者ぶりはロボット界じゃ有名ですけれど」「これが驚かずにいられますかってんだーい」「ラブ・ミー・テンダー」 それを受けてマリアが言った。「姐さん、俺のしゃれを先に言っちゃいけねえよ」 急に不機嫌になる鉄。「そんなことをいってる場合じゃないんだ、殿様がここへお出でなんで」「じゃまするぞ、マリア」 徳川公廣だった。徳川家康そっくりの笑顔をして入ってくる。「ええ、汚い、狭いところですが。どうぞ、殿様」 鉄が答える。「おやおや、何をおしゃられるの。ここはあたしの家ですよ」「苦労をかけるのお、マリア。こんなアパート暮らしをロボ旗本たちにさせたくないのじゃが、いかんせん、徳川公国の予算というものがあってのう」「いや、お上の言葉、ありがとうございます。あたしどもはお上からそう言っていただけましたら、何の悩みもございません。本当にいい殿様にお仕えさせていただき、ありがたき幸せ」「ちょっと、鉄さん。何をおっしゃってるの。それを言うのは私ですよ」 今度はマリアが怒った。「まあ、よいではないか、マリア。ところでそちは日本の暮らしになれたかの」「ええ、ありがとうございます、お陰様で大分。それに主水様がよくしてくれます。それとこの鉄もよく仕えてくれますので、何の不満などありますものか…」「また、鉄さん、先走りするんじゃありませんことよ」「で、殿様。今日は何の御用で、このあばらやへ」「あばらやでわるうございましたわね」 マリアが鉄の顔をゆっくりとぐっとつねる。「いていて、あっしの家じゃないからよござんしょ」「よけいにわるうございます」「ちと、困ったことが起こってのう」 二人の戯れを見ながら徳川公は顔を曇らせた。「どうしたんですかい、だんなが何か」「これこれ、鉄。先を急がすものではない。実は…」「実は…何なんですかい。徳川公国が借金のかたに東京島から追い出されるとか」「鉄さん、言って良いことと悪いことがございます」 マリアが、鉄の頭に洗浄皿を投げ付けた。「実は、主水が行方不明になったのじゃ」「何ですって」「落合レイモン様はいかがなされた」「レイモン様も行方不明じゃ」 マリアは尋ねた。「た、大変だあ」 鉄が飛び上がった。「何の手掛かりもないのでございますか」 マリアが続いて尋ねる。「そうなのじゃ、行列だけはかえってきよった」「大変だよ。だんながバラバラにされちゃって、今頃は大阪のごみ捨て場だよ」 急に鉄が泣き声を上げて人工涙をよよと流し始める。「おい、おい」 徳川公が驚いている。「鉄、騒ぐなというに。それでお前たちに助けて欲しいのじゃ」「わかりました。がってんだ。西日本都市連合め、眼にものを見せてくれるってんだ。ねえ、姐さん」「鉄さん、落ち着きなさいませ。あなた、頭のボルトが三本くらいおっこちているんじゃございませんか」「あーあ、姐さんも酷いことをおっしゃる。私がこんなにだんなのことを心配しているってえのに」「鉄、頼むから、静かに私の話を聞いてくれ」 徳川公が呆れている。「だから、静かに聞いてるじゃありませんか。あっしのどこがうるさいってんいすかい」「この、へらず口」「あーあ、どうせ、あっしはへらず口でござんすよ。あっしはこの体に生まれつく前から口だけでしゃべってたってことで有名なロボットでござんす」 鉄もしゃべりだすと止まらない。「わかった、鉄。お前とマリアで、主水を探しに行ってくれ。ついでにレイモンをな」「わかりやした。さすがは殿様だ。家来の難儀をほってはおけない。さすが名君。世界で一番偉い殿様ってのは、徳川公のことだね。地球史に残る。ほんとに、この…」 しゃべりのエンジンがかかって、どんどんがなっているのだ。「マリア、この男、大丈夫かのお」「お任せくださいませ」 マリアは、鉄の首の一点を急につかむ。「な。何をするんですかい。姐さん」「あなたのその役たたずの口を塞ぐつもりです」「それはいけねえや。ロボット人権を認め…」 あとは無音となる。鉄は口をパクパクさせているが、声は聞こえて来ない。マリアが鉄の声のアンプを切ったのだ。「あ、これで、そちと話ができる」「いかようにして私たちは西日本へ参りましょうか」「済まぬが、空軍の飛行船で行ってくれぬか」「飛行船でございますか」「そうじゃ、陸上を移動すると、どうも眼につくのでのう。それに、お前は外国ロボットじゃ、よけいにのう」「わかりました。もし主水様を見つけましたら、いかがいたしましょう」「捕らわれておれば助けだし、二人でもってロセンデールの野望を探って欲しいのじゃ。おお、そういえばマリアは、ロセンデール卿を知っておったのう」「さようでございます」 マリアは顔色一つ変えなかった。「神聖ゲルマン帝国のルドルフ大王の宮廷で、何度かお目にかかっております」「どうじゃ、お主はゲルマンロボット。いざというとき、つまり、もしロセンデールと戦わなければならなくなったとき、そちは徳川、いや日本のために戦ってくれるかのう」「もちろんのことでございます。私を受け入れてくれました日本こそ、今の私の故郷でございます」「それは、ありがたい」 といいつつも、不安を隠せない徳川公廣だった。もしマリアが変身するような事があったらどうなるのだ。その心配が幸いに徳川公廣の心を占めていた。が、他に方法はないのだ。「鉄、よいか。今からお前は旗本に回状を出して皆を集めよ。一丸となって、大阪湾に向かうのじゃ。ロセンデールの野望を崩せ。頼むぞ、マリア」「わかりました殿様。お望みの通りにいたしましょう」 ◆ 三時間後、鉄、マリア、そしてロボット旗本組の面々は、徳川空軍機「高千穂」「飛天」に乗り込み、西日本へと向かった。 徳川空軍基地から飛行船が飛び立つのを見送る男が一人。「これで仕事がやりやすくなったわ」 その影は走り去った。 ◆ その日の夜、東京城の建物は、夜風が吹いてビューツと唸っている。上層から東京の夜景が奇麗に見える。徳川公廣は、その夜景を楽しんでいた。「徳川公でござるか」 急に声がした。「誰じゃ」 徳川公は回りを見る。数十メートルの高さにある、東京城の窓から侵入して来るものがあった。警報装置は作動していない。その男は黒い服で身を固めている。顔も覆面で隠れている。「貴様、何奴」 徳川公は小刀を引き抜いていた。「やつがれは、西日本年連合に仕えるロボ忍花村一去(いっきょ)。お見知りおきいただきたい」 ぐいと徳川公に近づいて来る。「その一去とやらが、余に何用がある。また、この東京城の展望オフィスまで、どうやって上がってきたのじゃ」 あとずさりしながら徳川公は問いただす。「ふっふ、ロボ忍にとってはたやすいこと」「が、我らが護衛いかがいたした」「全員、眠っていただいており申す」「くそっ、肝心のおり役にたたない奴らじゃ」「何しろ、忍者は、西日本が本場にて。徳川公、お体お預かり申す」「何を申すか」 一瞬後、徳川公は当て身を食らわされていた。「ふふっ、たわいもないのう」 にやりと笑う花村の笑みに折から上がる月の光が凄絶な凄みを与えている。(続く)■ロボサムライ駆ける■第四章 第四章 剣闘士(2)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2005.10.11
コメント(1)
■ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 第四章 剣闘士第四章 剣闘士 (1) ゆっくりと主水の意識が戻ってきた。両眼が開く。体の下の冷たさが感じられた。「気が付いたかね」 見知らぬロボットの顔が主水の前にある。「ここは」 周りを見る。ぼんやりと薄暗い冷たい石の壁。蛍光灯の照明が、天井からぶら下がって揺れていた。厳重な扉がロボットの後ろに見える。このロボットは僧服をきていた。 死二三郎に切り取られた左腕はそのままで、応急に処置されているだけだ。着物も剥ぎ取られていた。まるで奴隷扱いだ。「ここか。ここは機械城の中だ」 相手は高飛車に言う。「お主は」「私か。自己紹介しよう。私はロボット懐柔師サイモンだ」「懐柔師だと、止めてくれ、私は由緒正しいロボザムライだ」 懐柔師とは、品行の良くないロボットを悔い改めさせるロボットである。聖職であった。「これは、これは、世迷い事を、お主言っておるのう。どこにその証拠がある」 サイモンは驚きながら言う。「この私の右肩にある桜吹雪マークと、製造コードを調べてくれればわかる」マークとコードはロボットのアイデンティである。 サイモンは念入りに主水の体を自分を見てみる。「そのようなものはない」「そんなはずは」主水も調べる。確かにない。 マークとコードは知らぬ間に削り取られている。身分を証明するものがないのだ。さらに、主水は続けた。「新京都ホテルにお泊まりになっておられる、落合レイモン様に連絡をとってくれれば、すべてはわかる」 サイモンは連絡を取るために外に出て行ったが、やがて戻ってきた。「レイモン様のご一行は、すでに京都を離れ、東日本に帰られたと聞いている。東日本政府にも連絡をとったが、早乙女主水なるロボザムライ、現在東京市にいるとの連絡があった。我々に無駄な労力をかけさせたな。このお返しはたっぷりとしてくれる」 サイモンは、冷たく笑った。「待ってくだされ。それは何かの間違いでござる。今一度、お調べくだされ」 サイモンは無言で、別のロボットに主水を引き渡した。「こやつを例のところへ」 主水は、機械城の地下にあるロボ獄につれていかれる。ロボット専用の獄舎である。 暗い。照明がない。太陽の光りも差し込んでこない。機械油のすえた匂いがした。加えて、何かが腐敗しているようだ。 獄の中には数体のロボットがすでに入っている。「ここで待っておれ、いずれご沙汰がある」 ロボットは言い置いた。獄の中は、不法を働いたロボットで一杯だった。ここに連れ込まれる折、手荒なことをされたらしく、各々のボディはかなり痛んでいる。手足のもぎ取られているロボットも何体かある。「お前さん、どんな悪事を働いたのかね」 ドアが閉まると一人のロボットが擦り寄って話しかけてきた。「失礼ながら、貴公は」「貴公ときたか、お前さん、服装を剥ぎ取られているからわからないが、お侍さんかい」「さようじゃ」「へっへっへっ、よけいにかわいそうにね」 言葉の裏には何かを隠しているようだ。「待て、その笑いはどういう意味だ」「知らないのかね。かわいそうにね」 はっきりとは答えぬ。「私は東日本から来た者だ。この西日本の風習になじんでおらぬ。教えてくれぬか」「いいかい、あっしは町人ロボットだ。だから、あまり詳しくは知らないけどね。ここにいるロボットたちはね、皆、労役に使われるのさ。これまでの身分にかかわりなくね」「労役だと、どのような仕事だ」「へへっ、本当に西日本に詳しくねえな、お前さん。いいかい、今、西日本じゃ、こういう話があるのだ。西日本は外国人に支配されている。水野なり、斎藤ってのは外道だよ。外国人の配下になっている。その現象を『みはしら』様がお怒りだってな」「みはしら様、それが労役にどのようなかかわりあいが」「いいかい、みはしら様に向かって、俺たちは掘らされるのさ。みはしら様のある地下を一生懸命にな。この西日本エリアでは、ちょっとした不法でも皆地下行きさ。ともかく、みはしら様に近づくってのは容易じゃないらしい。何人ものロボットがスクラップになっているようだよ」「誰もおかしいと反対しないのか」「へへっ、やはり東日本の人だねえ。西日本では、ロボットは奴隷なんだよ。ご主人様である人間に対していくら言ったって、話を聞く人間などいるものか」「いわれるままか」「そういうこった。だからお侍さんも、あきらめるこったなあ」「あきらめるだと、何をだ」「そりゃね、ここだけれどね。生きてお日様を拝むことをあきらめるこったね」「何だと、死ぬまでここで」「そうだよ、ロボットの死亡率は、そりゃひどいもんさ。地下道では落盤が日常茶飯事だからね。それにそこを掘り返して、ロボットを助けてやろうなんて殊勝な気持ちなんて、人間が持っている訳ないさ。ロボットは皆消耗品なのさ」「うるさいぞ、だまれ、五郎左。よけいなことをしゃべるな」 別のロボットから罵声が飛んだ。五郎左と呼ばれたロボットは急に黙る。そのとき、二人の役人が現れていた。蛍光カンテラを持って牢内を照らす。「こらこら、お前ら、下がれ、下がれ」「うっぷ、ここに汚れた機械油の匂いがするのお」「仕方があるまい、ご同役。ロボットのどぶだめだからのう」「どぶだめだと、貴公なかなかおもしろい言い方をなされるのお。はっはっは」「ここに主水と名乗るロボットはおるか」「主水とやら、獄から出よ」 主水はゆっくりと立ち上がった。獄の中のロボットの眼が注がれている。 主水は廊下を通って、別の取り調べ室へつれていかれた。机の中にまわらされる。「名前と登録番号を申せ」「何度もいってるだろう。拙者、早乙女主水…」 名前を名乗った瞬間、電磁ムチが飛び、主水の首に絡み付いた。「ぐっ…」「我々人間をバカにするのは止めるのじゃな、いかりの長介。よいか、お前のデータは揃っておるのじゃ。全ロボットデータベースで、すべてわかっておる。二度とそのような口を叩けないようにしてやろうか、長介」 役人の一人が言った。どうやら、主水は、いかりの長介という名前にされたようだ。ロボットデータベースは、日本全国にいるロボットについてのデータがすべて入力されている。いわばロボットの戸籍である。「俺はそういう名前ではない」「まだ言うのか」 電磁ムチから高電流が流れ、主水は気を失った。(続く)■ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2005.10.08
コメント(0)
■ロボサムライ駆ける■第3章10&11 C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ■第3章 (10) 新京都ホテルのレイモンの部屋をノックするものがある。 レイモンは何とか夜叉丸に助けられ、ホテルまでたどり着いていた。主水の行方は連絡が入っていなかった。「レイモン様でございますか」 裃を着た見知らぬロボットが、レイモンの部屋の前に立っていた。「どちら様かな」 夜叉丸が尋ねた。「我々は西日本都市連合の使い番でござる。レイモン様の今昼の会議での発言は波紋を呼び起こし、レイモン様を狙う者多しと聞き及びます。どうぞ速やかに、我々の保護下にお付きくださいませ」「西日本都市連合の使い番じゃとすると、水野殿よりの使いか」 レイモンが尋ねた。「さようでございます」「どうするかのう、夜叉丸」 レイモンは背後に控える夜叉丸に尋ねた。「せっかくのお召しでございます。お断りになられては角が立ちましょう」 夜叉丸は少し考えて答えた。「そういうことじゃな。それではその方々とまいろうか。のう、夜叉丸」 が、使い番ロボットは異をとなえた。「お待ちください。その夜叉丸殿の保護、我々は聞いておりませぬ」 その物言いにレイモンは、顔を曇らせる。不快なのだ。「それは困った。この夜叉丸は俺の体の一部でのう。手や足と一緒なのじゃ。切り離されては俺が動けのうなる」 使い番ロボットはしばらく考えていたが、「わかりました。夜叉丸殿のこと、我々は聞いてはおりませぬが、とりあえず一緒にお越しくださいませ」 レイモンと夜叉丸は、政庁のまわした、かご型小型バンに乗り込んだ。「お上、いよいよ我々の思いどおりに」 夜叉丸が言う。「そうじゃ、そのように進んでおる」 レイモンは薬タンクからのコードをジャリといわせた。 バンがたどり着いたところは、政庁である。会議室に入る。「お待ち申しておりましたぞ、レイモン様」 水野が議長席に座っている。「こちらも待ち兼ねたぞ、水野殿。早く我々にいつ心柱を見せて欲しいのう」 レイモンはにやりと笑いながら落ち着いていった。が、その言葉はの先制攻撃はかなり効いたらしい。「……」 絶句する水野。「わからぬと思うたか。どうせ今おまえたち西日本の霊能師が困っておるのは、化野の存在であろう。そのようなこととっくにお見通しだわ」 レイモンは続けた。 突然、背後から新たに声が飛んできた。「それでは、いよいよ、私たちを助けていただけますか。かっての打ち合わせのとおり」 見目美しい男が、パーテーションの背後から現れて言う。ロセンデールだった。「これはロセンデール卿か、おひさしゅうござる」 レイモンが頭をたれた。水野は、目を白黒させている。■第3章 (11)「サイ魚法師、なぜしくじったのですか」 ロセンデールが、空母「ライオン」の士官部屋で詰問していた。サイ魚法師は、ロセンデールの怒りの前でただただ恐縮しているばかりであった。「いかんせん、主水の方が強すぎました」 ぼそりと言う。まるで先生に起こられている生徒である。「強すぎたとですと、それは聞けませんねえ。あなたが、私たちに最初売り込んだ言葉を、お忘れですか。あなたは主水の弱みを握っていると言ったでしょう」ロセンデールの言葉がチクチクとサイ魚法師の体をさす。「そのとおりです」「ですが、あなたは主水の始末を東京湾でしくじってしまった。おまけに潜水艦を一隻なくしまった。さらには潜水艦をもう一隻貸せとおっしゃる。何を考えておられるですか」 ロセンデールは、美しい顔に怒りの表情を表していた。急にロセンデールの顔は醜くなる。冷たい暗い表情である。「もうよろしいです。契約は終了です。すでに、主水は我々の手にありますからね」「何ですと、主水が……」 絶句する法師。顔色が変わっている。「おや、どうかされましたか」「いえ、何でもありません。が今どこに」 法師としては自分の手で主水と戦いたかったのである。「そんなことは、あなたには関係ないでしょう。あなたはもう、おはらい箱です。もうあうこともないでしょう」 ケープを翻してロセンデールは、法師の前から去った。ロセンデールの部屋から出て、「こなくそ、今にみておれ、ほえずらかかせてやるわ」 つぶやくサイ魚法師だった。「が、主水め、一体どこに」 首を傾げるサイ魚法師だった。サイ魚法師は、本日の都市会議での騒ぎを知らなかったのである。(続く)■ロボサムライ駆ける■C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/
2005.10.01
コメント(0)
全10件 (10件中 1-10件目)
1