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ロボサムライ駆ける■第20回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」http://www.yamada-kikaku.com/■第3章(8) 主水たちは宿泊所である新京都ホテルへ入った。 この新京都ホテルは、鯱をかたちどった五十階建ての建物になっている。 レイモンの許可を得て、主水は京都市内へ出た。使い番ロボとして知恵を連れている。主水の誕生登録場所は、京都なのであった。 レイモンについてきた主水の目的の一つが、自分の生みの親、足毛布博士に会うことであった。誰も気づいていないのだが、時折主水は病気が出ることがある。この治療について、ぜひとも相談する必要があるのだ。 突然、意識が空白になるのだ。足毛布博士なら、この理由を知っているだろう。 この主水の病気は、マリアもびゅんびゅんの鉄も、きずいてはいない。 急に訪問して、博士にどのように挨拶してよいものやら、主水は迷っていた。 実はすでに十分以上も、広大な足毛布博士宅前にたたずんでいるのだ。「こんちわー」でもなく、「いやーどうもおひさしぶりですー」てなわけにもいかず。そう軽く言う訳にはいかない。 ともかく、足毛布博士が、主水を裏切り者と思っていることはまちがいないのだ。足毛布博士の保護から逃げたことは事実だ。 主水自体のメインボディは、実はアメリカNASA製である。対惑星探査用ヒューマノイドであった。 NASA特別ロボイド工学研究所で制作中、足毛布博士が主水をつれて逃げたのだ。ちょうどそのおり、あの霊戦争が始まって、地球上のすべての観念が少しばかりシフトした。 足毛布博士は、NASAのロボットに日本精神を吹き込んでいた。それゆえ、サムライロボットとして。主水が再生され、誕生したわけである。 徳川公国、旗本ロボットに迎え入れられたのにも一悶着があった。 現在でも、足毛布博士は、主水を自分の手にとりもどそうとしている。 主水としては、今、自分の身に起こっている体の不調の調整がどうしても必要であった。それも誰にも知られないうちに。どうしても足毛布博士に会う必要がある。意識を高揚するいわゆる強化剤が、あるはずなのだ。ついに、意を決して門の呼鈴を押した。 門にあるポールのモニターがついた。『どちらさまで』 コンピュターグラフックスでかかれたキャラクター顔がロボボイスで答える。「足毛布博士にお取り次ぎいただきたい。拙者は、早乙女主水と申す者でござる。そういっていただければわかるもうす」『足毛布博士はご在宅ではありません』CG顔は愛想なくそう答える。もっともCG顔に愛想を求めても無理な話だ。 おかしい。 主水の第六感がそう告げている。 生物体の反応がないことに主水は気付く。加えて、恐るべき悪気が屋敷に残っている。この悪気は、何だろう。主水と知恵は、屋敷内へ忍び込むことにした。「いくぞ、知恵」「がってんだ-い」 二人は裏手の壁からジャンプした。瞬時、二人の体を電光が包んだ。泥棒避けの機構が作動したのだ。「あいたっ-たー」知恵が叫ぶ。「あいたいのは、わしじゃ、知恵」「違う、違う。か…、体が…あいてて」「そうじゃ、わしはててごにあいたい」「痛い、痛い……。そのシャレに腹もいたい」 何とか着地する。が一難去って…… 突然、声がする。ロボットドーべルマン犬だった。 主水は、飛び込んで来る犬をつかまえる。そして犬のある所を強く押した。瞬時、倒れるドーベルマン。 犬の首にある生命点を圧し、眠らしたのだった。 邸内に入った。 博士の研究屋は荒らされていない。が、何かの想念が残っている。どうやら、足毛布博士は、いずこかにつれさられたらしい。ロセンデールだろうか。が、なぜだ。主水は何かの手掛かりをさがそうとする。「主水のおじさん、何かが落ちてる」「拾い物はお前もだ」「何を言ってるの」 知恵が拾ったものを手に取ってみる。「これは一体、何なの」 知恵が尋ねる。それは六角形のペンタグラムだった。「これはユダヤ教の印だが」 主水は首をひねる。「足毛布博士って、ユダヤ教徒だったの」 知恵が、主水にも思いがけない質問をした。「いや、そんなことはないはずだ。博士は、由緒正しき仏教徒だったはずだ。なみあむだぶつ」 といいながら、片手拝み。が、はたしてという恐れが主水の心の中に芽生えている。 今一番の主水の恐れは、足毛布博士がいないことだ。博士がいなけければ、意識をはつきりさせる強化剤の調合法がわからないのだ。家に来た意味がない。 一体どうすればいいのだ。主水は悩んだ。「この人は誰」 机の上に飾られていた立体写真を知恵は持って来ていた。「お前、泥棒なれしておるのう」「そんなにほめられたら、てれちょうよー」 知恵は頭をかいた。「写真の人は、主水のおじさんじゃないの。そっくりじゃない」 が、主水のはずはない。違っている。服装が霊戦争以前のものだ。その男は、主水と同じ顔をしているが、ロボットではなく、正真証明の人間だった。 主水には写真を撮られた記憶はない。 もし、この男が死人でいないとするならば、足毛布博士の法則に触れる。 足毛布博士の法則『現在生存している人間の顔をコピーしてはいけない』 写真をよくみる。主水の生まれる前の日付が写真に焼きこまれている。が、その写真を主水は見た記憶がないのだ。足毛布博士には、主水と同じ顔をした息子がいたことになる。が、そんな話は聞いていなかった。 早乙女主水の顔は、息子に似せて作られたのだろうか。はたして博士に息子が……。考え込む主水であった。 ロボットの顔は、作り手の好みによって作られているのだ。ある者は自分の昔そっくりに。ある者は死んだ恋人に。 二人は行方をしる手掛かりなく、博士の邸を去った。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.30
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ロボサムライ駆ける■第19回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」http://www.yamada-kikaku.com/■第3章(7)「レイモン様、ようやく峠を越えましたぞ」 関所から同道している主水は、最初に駆け上がり、近畿新平野を見渡した。 ここは暗がり峠であった。霊戦争でわずかに残っていた台地である。 「なんと」 思わず主水は叫ぶ。壮観である。 近畿新平野は霊戦争により、様変わりしていた。大阪・京都・奈良・和歌山の山脈は消滅し、平野となっている。 ボルテックスによるレザー攻撃でここにあった全日本軍の要塞が潰滅していた。 が、主水は驚いたのはそのことではない。大阪湾に異様な物を発見したからだ。 主水の眼が二十倍ズームの態になり、大阪湾上をアップにしていた。ロセンデールの空母ライオンから周囲十キロメートルにわたって電磁バイヤーが張り巡らされている。まるで大阪湾に張り巡らされた『蜘蛛の巣』のようにみえた。「ロセンデールめ。すでに大阪湾を支配下においたとみえる」 レイモンが主水のそばにきて、主水の見たる光景を霊力で盗み見していた。「レイモン様、いったいあやつは……何を狙っているのでありましょうや」「ロセンデールめ、あせっているものとみえる。ライオンの艦橋部分が霊波を送る中心塔なのだ。その霊波探査能力を倍増するために、大阪湾岸の高い建物のすべてに網を張り巡らせたのだ」「西日本都市連合会議も市政庁も、何もクレームをつけないのでしょうか」「恐らくロセンデールのことだ。巧妙な語り口で市政庁をあざむいておるのであろう」「しかし、それでは、我々は飛んで火にいる夏の虫ではありますまいか」「主水よ、それに対する古いことわざがあろうが」「はっ、それは」「わからぬのか、虎穴にいらずんば虎子をえずという奴じゃ。しかしながら、この虎子は大きいぞ。世界の歴史をひっくりかえすほどにな。ほっほっほ」 レイモンはゆったりと笑い飛ばしている。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.29
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ロボサムライ駆ける■第18回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」http://www.yamada-kikaku.com/■第3章(6) そこにはものものしい雰囲気があった。検問所である。 検問ゲートには装甲車、戦車など重装備の機材がおかれている。誰も通さないぞという意気込みがあたりには、感じられた。 加えて、クラルテという八足型ロボットに乗った、武士姿の西日本の境界警備員がいた。 遠くからクラルテを見て、主水は尋ねる。「なぜ、あの歩行ロボットをクラルテというのだ」「昔の話だけど、あのロボットのプロトタイプには人間用の席がなかったんだって」 小さい声で知恵はささやく。「ほう、それで」「いやー、これは鞍がいるでと製作担当者がいったらしいんだ」「それから、鞍がいるで、↓鞍いるで、↓くらるてと変化した訳か。なるほど」 という、たわいもないシャレを口にする主水に、「まて、あやしい。異形のロボット。この関所を通すことは相成らぬ」 関ヶ原の関所で、武士から主水と知恵は止められる。 ふとこらから、主水は書類をだした。「この証明書を見ていただきたい。拙者、早乙女主水。徳川公国直参旗本ロボット。天下御免のロボザムライでござる」「東日本ではロボザムライとして認めていようとも、この西日本エリアではロボットなど奴隷よ。この天下の公道、ましてやこの関所を通行することは相成らぬ」 役人は強気である。 判でおしたような役人の答えだった。いつの時代でも役人は変わらぬのである。「無体な。拙者はこの証明書にもあるとおり、東日本市民連合に所属する東京エリア霊能師落合レイモン殿の供者として、この西日本エリアにまかりこした」「レイモン殿は先刻お通りになった。護衛ロボットだと、よけいにこの関所、とおすわけにはいかぬ。貴様武器を所持しておろう」 役人の表情が余計に険しくなる。「あたりまえでござろう。刀は侍ロボの命でござる」「それじゃ。それがよけいに困り申す。通すわけにはいかん。西日本エリアでロボットに武器を持たすなど気違いざたじゃ」 もめている関所の役人と主水のところへ、具合よく落合レイモンの籠が戻って来た。 先行していたレイモンは、もめる音声を聞き、後戻りしてきたのだ。籠から顔を出す。「どうしたのじゃ、主水」「これはレイモン閣下。今、この役人より、護衛ロボットは入国できないと申されて、困っております」 レイモンが助け舟をだす。「お役人殿、それではどうであろう、このロボザムライの武器は、私の使い番、夜叉丸が預かるということでお許しくださらぬか」「ははあ、レイモン閣下がそうおっしゃいますならば」 その役人は納得しかけたが、騒ぎを聞き付けた上役がやってきた。この男がもっと煩い。「落合レイモン閣下とて、規定外のことは、できもうさん。この護衛ロボットの剣、我が役所にてあずからさせていただきます」「サムライの命の刀ですぞ」「主水、しかたあるまい。ここはおれてくれい」「しかし……落合様」「まあ……まあ……」 主水は刀を腰にせず、西日本に入ることになった。「何か、腰のものがなくなりますと変でございますなあ」 刀のないサムライロボットは言った。関所を過ぎてしばらくして、原野の国境線にある、ロボットのさらし首の群れにきづく。「これは一体……」「こちら側では普通の光景さ-」 知恵が悲しそうに言う。「むっー」 考え混む主水であった。 一体このような事が許されてよいものであろうか。恐らくこれは足毛布博士もからんでいるのに違いない。ロボットはこの西日本では人間ではなく奴隷なのだ。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.28
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ロボサムライ駆ける■第17回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」■第三章 霊能師(5) 東日本と西日本を分けている場所は、関ヶ原である。 霊戦争後、東日本も西日本も地形が変化したが、昔の関ヶ原あたりに電磁ベルトが十メートル幅で、日本を分断していた。 国境ラインに張り巡らされている電磁バリアに加えて、西日本側の前には球形の飾りが数万飾られていた。それが陽光を浴びてにぶく光っている。 その光の元は、東日本へ逃亡をはかったロボットの頭であった。 その霧のかかる国境線に、三人のロボットがこっそりと蠢いていた。 あたりを見回す。「あんた、大丈夫かい」 幼い子供ロボットを抱いている母親が、父親のロボットに尋ねた。 三人ともぼろぼろの風体である。逃亡ロボットである。「ここまで、無事にこられたのだ。問題はない」 皆を安心させようと父親は言う。「でもさ、あのみせしめのロボットの頭ぞろえが不気味だよ」 母親は、死のあぎとである国境境界線を、首を見た。「何言ってるんだ。いいかい、何度も話し合ったじゃないか。東日本へ入れば、専門職ロボットには、いくらだって仕事があるんだ。いい暮らしができる」 希望の気持ちを込めて、父親は励まそうとした。せっかくここまで来たのだ。これまでの苦労が、彼の頭の中で、目覚ましく思い出されて来る。「本当だね。そうなれば、この子供も人権を認められるという訳だね」 母親が付け加えて言った。気分を変えようとした。が、「そうはいかぬが花よ」 上空から、誰かの言葉が聞こえて来る。「誰だい」 二人はゆっくりと回りを見渡す。声が変わっていた。「ここは地獄の一丁目よ。よくここまでたどり着いた。誉めてやろう」 三人の前にロボ忍が数名飛び降りて来る。回りを取り囲んでいた。「逃がしておくれよ。あんたらもロボットじゃないか」 哀れをもよおす言葉である。「くくっ、同じロボットだから、逃がすことかなわぬ夢としれい」「お金なら差し上げますよ」 父親は卑屈になっている。「金なんぞ、何の役に立とう」「よいか。ロボットの法律。足毛布博士の法則を知っておろう」「へん、何をいってるんだ。その足毛布だって自分の作ったロボットに逃げられたじゃないか。私ら庶民ロボットだって真相を知っているんだよ」 強気になつて母親が言い返した。「ふふっ、それを知っているなら、なおのこと生かしてはおけないのう」「止めてくれ」 父親がしゃがみこむ。「せ、せめて、この子供だけでも……」 母親が泣きをいれる。「できぬ相談。ロボットの電磁記憶は永久に消えぬ事を知っておろうが」「やれ」「あなたら、人間じゃないよ」 つい母親が、やけくそに叫び声をあげていた。生きる望みが断たれたのである。「そうじゃ。それゆえロボ忍じゃ」 憎々しげにロボ忍は言い、殺戮の喜びに打ち震える。 三人の回りに一陣のつむじ風が起こった。口をパクパクさせている首が三個残っている。離れたところに胴体がバタバタ動いている。「新しい首の組み合わせ、面白かろう」「ロボットに対するよき教訓となろう」「ふははは」 ロボット忍者にとつてこのような事は朝飯前なのだ。 笑い声を残し、ロボ忍たちは去って行った。首だけになったロボットには、まだ命の残滓が宿っている。「あ……、あんた……、まだ意識があるかい……」 母親のロボットがかすれた声で尋ねる。「ああ……」「こ……こんな世の中……、潰れればよいのに……」「つ……潰れるよ……、絶対にな……」 声がだんだん小さくなって行く。 ロボットの生命液が頭部から少しずつ流れ出て行った。 一陣の風が、彼らの生命を連れ去っていた。(続く)■ロボサムライ駆ける■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」http://www.yamada-kikaku.com/
2011.11.27
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ロボサムライ駆ける■第16回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」http://www.yamada-kikaku.com/■第三章 霊能師(4) 急ぎ逃げ帰るロボ忍者の一団の前に。 黒い影が立っていた。「お頭」一団の誰かが叫んでいた。 逃げ来るロボ忍の前に一人の男が立ち塞がるように。怒っているのた。 全員がおぞけを奮う。 その男の前に立ち止まり、膝を屈する。 やがて、その男がゆっきりと口を開く。「お前たち、早乙女主水とかいう侍ロボットに負けて、しっぽを巻いて逃げてきよったか」 怒りを含んだ声が、彼らの聴覚器に響く。「お頭、申し訳ございません。あやつ思ったより、強く」 先刻のリーダー格の男がしぶしぶしゃべった。かぶせるように、「ええい、聞きとうない。主水など、たかが東京城の護衛ロボット。それに比して、我々はロボ忍、伝統ある特殊技能ロボットぞ。よいか、あやつ、今度会いし時、必ずや、血祭りにあげい」 覆面で見えぬが頭と呼ばれた男の怒りは相当のものらしい。「わかり申した」 全員が口を揃える。「それでじゃ、ロッカン」 先頭の男に言う。「はい、お頭」「おまえは、負けた責任を取れい、死ねや」「おまちください、今一度の機会をあたえてください。今度は……」「ええい、くだらぬ言い訳など聞きとうないわい」 その男が光りに包まれる。「ぐえーっ」 ロッカンは倒れていた。「よいか、みせしめじゃ」「わ…わかりもうした」 ロボ忍の体が、小刻みに震えている。 残りの全員が恐れていた。声は小さいが、唱和していた。「ところで、お頭はどちらへ」 ようやく、一人が尋ねた。「水野さまよりの密命じゃ。依頼されて東京城へな」「東京城でございますか」 奇異な感じがした。「そうじゃ、まあ、見ておれ、わしの腕をな。お前たちは、落合レイモンの一行を見張りながら、西日本にかえれ」 ロボ忍者群は、花村とロッカンの死体を残して走り去った。(頭もむごいのう) これが、彼らの思いであった。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.26
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ロボサムライ駆ける■第15回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 「くそっ、皆出て来い」 まわりに急に黒い影が現れる。 西日本都市連合の使い忍び十名。「ただでは帰してくれぬようだな」 フリスビー野郎が言う。「さよう、お代を払ってほしい。じゃない。貴様とそのこわっぱ、証拠が残らぬよう分解し、粉々にしてくれるわ」「それはどうかな。粉々になるのはどちらかなあ」 その男はにっこりとほほ笑んでいる。 一瞬後、侍と子供ロボットのまわりをとりかこむロボ忍。 続いてロボ忍の手から何かが次々と投げられた。手裏剣である。 が、侍ロボットは瞬時刀を抜き、自在に振り回す。手裏剣はすべて足元に落ちていた。刀を動かす速度は目にも止まらなかった。「くっ、我らが頭脳手裏剣を落とすとはただ者ではないのお、お主」 頭脳手裏剣は、小型の電子頭脳を持ち、軌道を計算するいわば小型ロボットである。「今度はこの刀じゃ…」 黒い影が一つ、その男に切りかかる。「まて…」 ロボ忍者のリーダーが止めようとしたが。一瞬遅く、「ぐわっ」 そのロボ忍の体が三つにおろされている。機械油や生命液が噴き出ている。その動きはロボ忍群たちにも見えないのだ。「見たか、聞いたか、さんまい降ろしの剣」「やったね。ピース」「いかん、引け。覚えていろよ。お主、名前を聞いておこう」「名乗るほどではない。が、覚えておくため答えてやろう。拙者、早乙女主水。徳川公国直参旗本ロボット」「貴様が主水か。いずれ会おうぞ」 ロボ忍は、名前を聞いて少し驚いていた。 彼らは一塊になり、姿を消す。「主水のおじさん、助けてくれてありがとう」 子供ロボが擦り寄る。「まあ、よい。危ないことには近づかぬ方がよい。特にこの御時世ではな」「おじさん、お願いがあるんだ。俺をおじさんの使い番にしてくんな」 急に顔を変え擦り寄る子供。「といっても、お前の体は誰かに所属しているだろう」「いや、所属していないーよ」 子供は軽々しく喋る。「みてごらん。その証拠さ」 子供は自分の右肩を見せた。右肩にあるはずの登録番号が削り取られている。「登録番号がないのか。お前、はぐれロボットか」「ああそうさ、土木建設専用事業団『いろは組』に捕まって、この有り様さ。今この東海道復旧工事に使われているのさ。どうせ、俺が消えたって、わかりゃしないさ」「そういうことなら、人助け。いやロボット助けかもしれんのお。ついてくるがよい。小僧」 かねてから、いろは組のやり方には不満を持っていた主水である。「俺は、小僧ではない。細工師の知恵ってんだい」「よしよし、わかった、知恵。こちらへ」 レイモンの一行から少し離れて歩いているいわゆる遊軍の主水だった。主水はゆっくりと木陰から騒がしい一群を、のぞき見た。「ははん、おじさん、あの行列と一緒にいたくなかったね」 図星である。「いや、その、ちょっと、不都合があってな」「不都合って何なのさ」するどく尋ねる知恵。 どぎまぎする主水「まあ、よいではないか」「ふーん、まあよいことにしておこう」 知恵にかるくいなされている。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.25
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ロボサムライ駆ける■第14回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第三章 霊能師(3) 復旧しつつある東海道は中世世界のようになっていてとても静なのだ。 特に早朝は、鳥たちの歌声がハーモニーを奏で、道いく人々の気持ちを和ませるのだが。 今、この東海道は、『いろは組』によって復旧工事が急がれていた。 静寂の中ににぎやかな音がだんだんと近づいてくる。工事中のロボットたちが手を休めた。「あの騒がしい、恥ずかしいご一行は」 工事中の東海道を下る一行を見ていたロボットの一人が尋ねた。「おお、あの昔、騒音条例があったころなら絶対つかまっておる団体か」 わざとらしい説明を付け加えるロボットだった。「知らないのか、霊能師落合レイモン様のご一行じゃ」 もう一人が答える。 いろは組にしきられたはぐれロボットの一群が、道路復興の建築工事を行い、そのエリアの霊写真をとらされていた。霊戦争のおり、なくなった人々の過去の霊をなぐさめるのである。 このあたりは、空中衛星ボルテックスによって滅びた全日本連邦軍の残滓がいまだに発見される所である。にぎやかに打ち騒ぐ一団が通っているのはもとの高速道路である。 近くに森林地帯が広がっていた。霊戦争後の生やした比較的新しい森林である。 この東海道から遠く離れたバイオ林の中から、この一行をのぞきみる四つの眼。突然、うめき声を上げて、その一人が倒れた。「うっ、何ごと」 もう一人が相棒を介抱する。が、事切れている。咄嗟に自分たちが仕掛けた罠が返されたことを知る。「恐るべきよ、レイモン」 残った一人は独りごちた。 二人は西日本都市連合が派遣したロボ忍であった。レイモンの霊力を調べるために、ここまで遣わされていた。 霊写真を盗み取ることで、実力のほどを調べようとしていたが、逆にレイモンの『お霊返し』の術でロボ忍の一人が倒れたのだ。 『霊返し』とは、霊写真への霊力を、送った本人に何倍もの霊力に倍増して返すものである。「おじさんたち、何しているんだい」 その時、背後から、子供ロボットが急に現れていた。作業ロボットらしく、蓬髪で、汚れた小袖姿である。賢そうな顔をしている。というかやんちゃな顔である。靴みがき少年の顔である。ジャリンコちえの顔である。『いろは組』のはんてんを着ている。「何でもない、あっちへいけ」「おじさんが倒れているじゃない、大変だ」 といいつつ、子供はそのおじさんの顔を踏んでいた。「大丈夫ぶーい」 と叫んでいる。「こやつ、騒ぐとためにならぬぞ」「ははっ、わかったぞ。おじさんたち、忍びのロボットだね」「なぜ、わかった」「だ-って、忍者スーツをきているんだもん」 どーっとすべりそうになるロボ忍者。「小僧、我々の姿を見たからには生かしてはおかぬ」「うわっ、やめておくれよ、くれよ」 そのジャリンコちえじゃない、子供ロボットは逃げようとした「まて、まて」 続いて旅装姿の侍ロボットが急に現れ、子供を庇う。「貴様、何やつ」 叫び、身構える忍者ロボット。「待ってました」 子供は叫ぶ。 深編み笠が空中に、まるでフリスビーのように勢いよく飛んでくる。すんでのところでこのロボ忍は、深編み笠から逃れた。それは近くのバイオ樹木に深く突き刺さる。 (こやつできる) そうロボット忍者は読んだ。このフリスビー野郎には、助成を頼んだ方が得策だろう。 後詰めの連中が別にいるのである。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.24
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ロボサムライ駆ける■第13回 ★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第三章 霊能師(2) 出発日がやって来た。 主水は落合レイモンの屋敷に旅装で出向く。予備の品をいれた旅装バックパックである。門前が騒がしい。「何だ、この行列は」「おお、よいところへ来られた、主水殿。我が行列に加わられい」 ざわめく人々の群から夜叉丸が現れ、挨拶する。「夜叉丸様、この行列は」「我がレイモン様の御行列じゃ。このまま復旧しつつある東海道高速道路をくだる」「が、この行列、まるで大名行列ではござらぬか」 というよりもチンドンヤかと、思いが頭をかすめた。「よいか主水殿。今度のこの落合レイモンの西下りは、東日本都市連合の力を見せることにもあるのじゃ。またまた落合レイモンの霊能師としての力を見せつけなければならぬ。その威光を見せつける行列でじゃ。装飾の一部と思ってくれ」 金属でできた機械籠が四つ。加えてそれを抱えて進むカーゴ型送行ロボットが数機。先触れを伝えるスピーカーロボットが四機。レイモンの旗持ちロボット十機。東日本都市連合の各市の旗を持つ旗ロボット二百機。生命液、潤滑油、洗浄液などを運ぶタンク型ロボット二十台。警備隊ロボット三百機などなど。 おまけは振袖チアガールズだった。振袖でありながら、下位置はミニスカートになつている和洋折衷のコスチュームをきた妙齢の三十名の女性群。まるで色物の世界である。 主水はくらくらと、倒れそうだった。さすがにロボットなので倒れはしなかったが。「これでは、私など必要ないのではございませんか」 嫌みを言う。「そうはいかぬ。よいか、主水殿は護衛ロボットとはいえ、徳川公の使い番でもあらせられる。従って、カゴ形バンを用意しておる。どうぞお使い下されい」 夜叉丸は行列の後ろにある、行列よりもっと悪趣味なバンを示した。ゴテゴテした装飾がバンのスタイルをくずしている。「うむ」 主水は逃げ腰になった。ひらめいた。よーしこれでいこう。断りの文句は。「夜叉丸どの、私はこの籠の回りを警戒いたしましょう」「と、いわれると」「遊軍でござる」「主水どの、まさか、我が行列をあざ笑っているのではあるまいな」「いえさようなことはございませぬ」 おぬしよく分かってるのじゃないと思う主水であった。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.23
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ロボサムライ駆ける■第12回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」「何をおっしゃいます。おそれおおうございます」 こいつは、ホモかと主水は思った。いやなこった。「手を貸せともうしておるのじゃ、はようせい」 レイモンはいらだっていた。 レイモンの方に、主水の右手が勝手に動いていく。「うわっ、どうしたことだ。手が…」レイモンの手に主水の右手がくっついてはなれない。「何をなさいます、レイモン様」 恐るべき力が主水の腕に加わってくる。電流が二人の間に流れている。「さすがロボザムライ、記憶が電磁処理だけに読み取りやすいわ。ふふん」主水の持つ電脳情報が手を通じて流れていく。「お、おやめください」 あがらう主水。が、手を離すことはできない。 主水の体にレイモンの体から発せられた電流が走っていた。微弱ではあるが、主水の体のメインコンピューターが出力低下を起こしている。自らの命令のまま、動かないのだ。 ロボザムライの頭脳記憶の中に、レイモンの何かが侵入してきた。ロボの記憶データは膨大過ぎる。レイモンのそれは必要な情報を、主水の記憶の森から奪い取るようであった。「くくっ、徳川公もくせ者よな」 一瞬、空白が主水の頭を襲う。レイモンの前に倒れている主水に、「気を失いよったか、この機械人形。やくたいもない。わしの護衛としては、どのようなものかのう、夜叉丸」「レイモン様、こやつはやはり力仕事に」 夜叉丸が尋ねた。「そうじゃな、へんに情報を与えると我々の仕事の邪魔をするやもしれん」「ところで、御前、また、お薬の時間でござる」 夜叉丸がいった。夜叉丸はレイモンの薬飲のタイムテーブルを持っているのだ。後ろには薬品が詰まった収納庫が控えている。前の主水より、薬の方が大事だった。「うーむ、この時間はどの薬じゃったかの」 金庫の棚の薬をかき回すレイモンであった。ふと、夜叉丸の方を振り返り、「よいか、夜叉丸。やつがれの薬、忘れず西日本に持って行くのだぞ。薬は生命の源じゃからのう」 レイモンの最大の関心事は、薬である。「承知しております。して、御前。この主水なるロボット侍の処置は」「主に任せる。とりあえず帰してやれ。気を失ったことなど、忘れておるであろう。そう電脳の処理はしてある」「ふっふっふっ」 軽く含み笑いをするレイモンであった。 ◆ 何とか旗本公国マンションにたどり着いた主水は、確かに、落合レイモンの家での事を忘れていた。「旦那、どうでしたい。お上の御用は」屋敷にはすでに、鉄が上がりこんでいた。「うむ、ご壮健であられた。しかし、鉄、おまえも良く宅にくるのう。まったく」「よろしいじゃござんせんか。姐さんもよろこんでいることですし」「どなたが喜んでいるんですか、鉄さん、あなた……」「へい、何でござんしょ」「感情のラインが、いかれているのじゃないのかしら。一度ドクターにチェックしてもらいなさいませ」「そりゃ、姐さん。ないですよ。私がいるおかげで、早乙女家にいつも笑顔がたえないってものでしょ。ねえ旦那」「旦那じゃねえや。用がすんだら早く帰れ」「そう、邪険にしちゃ、いけあせんぜ。そいでお上の御用向は」「しばらく、東京を留守にいたす」「どこかにご出張ですか」「西日本に下向いたす」「西日本ですって、そりゃ大変だ。旦那、まさかロボット奴隷になりにいくんじゃ」「ばかもの、なぜわざわざ私が奴隷にならねばならんのだ」「いや、どれいでもすきにしてとか」「鉄。ばかもの。貴様が奴隷になれい」「でも、あなた、京都では、足毛布博士にお会いになるのでございましょう」マリアが話しの話題を変えた。「その足毛布博士よな……」 いいながらマンションから東京の風景をみる主水であった。どうしょうかなと思い悩んでいるのである。生みの親である足毛布博士の顔が夜空に浮かんだ。「ちちうえ……」思わず叫んでいた。なぜちちうえという言葉が口から飛びだしたのか。主水は自分でも不思議に思った。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.22
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ロボサムライ駆ける■第11回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」■第三章 霊能師 (1) 落合レイモン、現存する霊能師の中では、最高クラスといわれている。彼の霊治療をうけるための人々で、屋敷の前に列ができていた。 彼の屋敷、いや御殿と言った方がいいだろう。そこには桂離宮をまねた豪奢な造りの日本家屋と、古来の神宮建築をベースにしたあたらしい神宮建築である。 その二つの建物を左右に配した山水画を思わせる日本庭園が広がっていた。この建物及び敷地は、すべて東日本の政財界の大物からの寄付金によってなりたっているといわれている。 下手をすると、徳川公の東京城よりも金がかかっているのではないかと、噂されていた。その門前に主水は立っていた。 特別な出入り口から、主水は座敷に通される。「お待ちください、主水殿。レイモン様は薬浴の時間なのじゃ。しばらくお待ちいただきたい」 レイモンの使い番のものが答えた。「薬浴と申しますと」「わからぬか。レイモン様は、種々の薬を混ぜた、プールの中で泳いでおられるのじゃ。そうすれば体の節々から薬が体に回り、気持ちがよいと申されてのう」「それは毎日でござりますか」「いや、毎日三回じゃ」 やがて、主水の前に、くずれかけた巨体を揺さぶるように、四十才くらいの男が現れる。ブヨブヨの体からは湯気が上がっていた。強烈な薬の匂いが主水の鼻に届いていた。成分は主水に分析できないくらいに多い。薄い浴衣着に羽織りを着ていて、体がすいてみえる。目や鼻はあるかないかくらいだ。未熟児だったといううわさもある落合レイモンだった。そのため、顔の表情がとても読み取りにくい。 背後には敏捷そうな若い男が一人。その男は二〇才くらいで、総髪できれいな錦羽織りをきていた。こちらは書き上げたように目鼻だちがはつきりしている。少し暗いが美男子の類いに入るだろう。一九〇センチはあるだろう。「ロボザムライ、早乙女主水めにございます。今度、徳川公より、落合レイモン様上京の旅に随行せよと命があり、ご挨拶にあがりました。以後お見知りおきを」 主水は丁寧に挨拶をする。「ほほう、貴公が、今東京エリアで噂のロボザムライ主水か。力強い味方を、公もつけてくれたものじゃ。おお、そうじゃ、紹介しておこう。これは俺の小姓、夜叉丸じゃ。以後よろしく頼むぞ」 落合レイモンはその体に拘わらず甲高い女性のような声だった。 レイモンは体を動かすたび、じゃりじゃりと音がする。主水がよく見ると、何十本ものコードがレイモンの背中に張り付いている。「レイモン様、失礼とは存じますが、そのコードは一体」「ああ、これかの」 レイモンは気軽にその質問に答えようとした。「無礼者め。レイモンさまを何と心得おる」 夜叉丸が表情を激変して怒り、背中の鉾を抜こうとする。「よいよい、夜叉丸。わざわざ徳川公が遣わしてくれた護衛ロボットじゃ。すべてをお教えしておかねばのう、主水」 ゆったりとレイモンは言う。「ははっ、できますれば」「私の体は、常時薬を注入しておかねばならぬのよ。大義じゃがのう」 言いながら、レイモンは薄い羽織りを脱ぐ。何と二人分の大きさと思っていたレイモンの体は、半分にも満たぬ。残りはいろいろな液胞が組合わされた水槽が幾重にも重なって、レイモンの背中に張り付いていた。「さて、主水」 レイモンは、霊能師の特徴である頭の真ん中のこぶを、主水の方に近づけ、右手を差し出していた。「手を貸してたもれ」 レイモンはくぐもって言った。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.21
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ロボサムライ駆ける■第10回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」(2) 新東京で新しく建てられたランドマークがある。東京城はその一つである。 東京城城中。最上階、主上の間、広々とした六四畳の広さである。主水は正装をして、徳川公の前に畏まっている。 第二五代徳川公、徳川公廣。六七才。公家のような温和な顔をしているが、歴代の徳川公の中で切れ者と言われている。この徳川公でなければ、東京島はできなかったろう。クールな頭脳が売り物である。特別製の絹の着物を羽織っている。徳川家康そっくりの顔をしていたが、これはどうも整形ではないかという町の噂である。 この東京島の五分の一を占めるのが東京城である。 一〇層だての建築物はバイオ木材で作られている。このバイオ木材は特別製で季節、天候によって建物自体の色彩が変化し、変幻自在だ。現在では、東京の観光名物になっており、一部分は、観光客に解放されている。最上階は関東新平野を見渡せる展望オフィス。ここが主上の間である。 徳川公はビジネスマンとしても優秀で、バイオ植物産業、サイボーグ魚養殖、観光事業などいろんな方面に手をだしていた。「まずは一服、どうじゃ主水」 二人の間に茶道具が並べられている。この時期でも一緒に茶を飲むというのが心を開いているという証拠になっていた。人間の徳川公とロボットの主水が同じ茶を飲む。「これは殿、恐悦至極に存じます」「これは、私が作り上げた茶じゃ」「う、うまい。乙な味。はて、この銘柄は何でござりますか」「機械茶二八号鉄人じゃ。どうじゃ主水、味は。日本精神がよ~く馴染んでおろうが」「ははっ、なにか夜の空を見ると、ガオーッとほえたくなります」 この機械茶の栽培も、徳川公は手掛けていた。新静岡に広大な茶畑を持っているという。ロボット用の茶であるが、人間も飲める。ロボットは、この茶を飲むことで落ち着くことができるのだった。ICに微妙に影響を与えるらしい。「ははっ、五体臓腑に日本精神が染み入りましてございます。で、殿、今度の御用の向きは」 しっとりとした茶が、主水の体の細部に染み渡って行く。「そうじゃ、その珍しい茶を飲ましたのは他でもない。お前に、西日本へ下ってほしいのじゃ」 クールな顔で徳川公は命令する。「と、申しますと、何やらよからぬ企みが、またぞろ首をもたげてまいりましたか」「ロセンデール卿を知っておるか」「ははぁ、ヨーロッパで会っております…」主水は言葉を濁した。これはこの茶のせいではない。すくなからぬ因縁が、二人の間にあるのだ。むろん、それは徳川公も承知のことだ。 「あやつが、どうやら、日本を狙っておる。卿の自家用空母『ライオン』が、世界一周を計画し、今は『大阪港』に停泊しておる」「大阪ですと。では西日本で何か活動を……」「あやつらは、大阪に機械城なる前進基地を建設しよったのじゃ」「で、そやつらの狙いは、おそらく…」 主水はロセンデールの狙いに気付く。主水の眉が吊り上がっていた。その表情に徳川公はきずく。「余もそう思う。奴らの狙いは京都にのぼり、日本の心柱(しんばしら)を発見し、この日本を領土にしたいと考えておるのじゃ。西日本に走れ、主水」「は、いますぐにでも」 走る姿勢を取る主水である。昔なつかしいエイトマン姿勢であった。BGMが聞こえてくるようだった。「慌てるな、主水。ところで、貴公、その姿勢は何じゃ」「はっ、わからないのですが、走れといわれますと、ついこの恰好をとります」 過去のロボットの記憶がICに詰め込まれているらしい。「まあ、走れと申しても、本当に走らぬでもよい。西日本で一週間後、都市連合会議が開かれる。そこに東日本エリア代表としての霊能師『落合レイモン』が遣わされる。この『レイモン』の使いとして紛れ込め。ともかくあのちでは、ロボットは、奴隷じゃからのう」しばらくして徳川公はつけつわえた。「そうじゃ、足毛布博士に会ってきたらどうじゃ」 ぐっと睨む徳川公。「おかみ、それは、どうも」 続く言葉が主水を驚かせる。「いや、どうも足毛布博士、ロセンデールと結びついているやもしれん」「まさか、そのような可能性が…」 呆然とする主水。「残念じゃが、可能性はある」 徳川公は、東日本都市連合の副議長を努めている。この議会で落合レイモンの派遣が決まっていた。また、西日本の動きにも、目をつけている。東日本と西日本はいわば微妙な敵対関係にある。「レイモンと申しますと、あの薬(やく)づけのレイモンでございますか」 突然に出て来た名前に心を動かされた。「そうじゃ、いかに薬づけであろうと、レイモンが東日本エリアでは、最大の霊能師であることは間違いあるまい」「それはたしかに……」 『薬づけ』の意味は、落合レイモンはもともと体が丈夫ではなかったらしい。幼いころレンモンは、生体防護チューブにいた時、何かの霊に取り付かれて霊能師となった。体を保つために一日に百種類の薬品が必要と言われている。「主水、お前はこのあと、落合レイモンのところへ行き、今度の主なる目的を尋ねよ」「それでは、御主上も今回のレイモン様の旅の目的をはっきりとは」「わからぬ。落合レイモンは、東日本都市連合では顔が効く。それゆえの派遣じゃ。が、お前も存じておろうが、余は霊能師をこころよく思ってはおらん。が、あやつらの助けがなければ、この日本を救うことなど不可能じゃ」「一体、いつの時代から、あやつら、霊能師が力を持つようになったのでしょうか」「余が父君より聴いたところによると、やはりあの霊戦争のあとと聴いておる」 霊戦争後、霊能師がこの世界で大きな役割をしめるようになつたのは、彼らが非生物、生物をとわず、その物体の『声』を聞けるからだとされている。あちこちにしゃべる霊が数多く出現している世界なのである。徳川公は急に話題を変えた。「それで、病気はどうじゃ」「えっ、なぜ、お上がそれを……」 突然の質問に、主水はあわてた。が、それは主水の勘違いであった。「何をいっておる。マリアの例の病気のことではないか。ほら、あの姉のパーソナリティがでるのではないかと尋ねておるのじゃ」「さようでございますか。拙者てっきり……」 安心する主水。「何か、お前、病気なのか」 不審な顔で主水の顔をのぞき込む徳川公である。「いえ、まさか、そのようなこと、この私に」 心の中で冷や汗がでる主水である。本当は、主水には最近ある病状がでていた。その表情に気付かず徳川公は、「それならよいが。まあマリアにも気をつけてあげよ。ともかくたったひとりの姉がのう……」 その姉がロセンデールと深い関係にあるとは、徳川公は知らなかった。 主水は東京城を辞した。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.20
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ロボサムライ駆ける■第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 1承前「あれ、旦那、そんなこといって、あとでマリアねえさんが怒ったってしりあせんぜ」主水は鉄の言葉を無視してしゃべる。「これからの道行きだともうしたな。私がどこかへでかけるというのか。また、そのことなぜ、知っている」「これはしもうたわ。貴様、まだ、聞いてはおらなんだか」 サイ魚法師は、顔をくしゃっとした表情にして、自分の頭をつるりとなでた。 さては…、主水は思いつくことがあった。「さては、法師、ロセンデールに雇われたか。貴様日本人でありながら、外国人に魂を売ったか」 どうやら、当たりらしい。サイ魚法師が答える。「ふふん、主水、何をアナクロニズムな言葉を吐くんだ、お主はいまごろ国籍にとらわれることなどあるまい。だいたい、ロボットに魂などないわ。お前はロボットだ。どうあがいたところで、日本人になることなどできまい。お前自身が日本人というよりも、徳川公国の使い番だからな。主水、そろそろとどめをさしてあげようぞ」 サイ魚法師が、潜水艦のブリッジから身を乗り出して怒鳴っていた。「鉄、マリアをたのむ」「だんな、どこへ」「ちょっと一仕事だ」 軽く言う。「主水、大丈夫ですか」「マリア、心配無用」 主水は、愛剣ムラマサを上段に構える。 その瞬間、再びサイボーグ魚が、主水めがけて、水面から発進した。そのとき、主水は上空へ跳躍する。 わずか数センチしたの足元を、サイ魚の大群が飛び過ぎる。 そのサイ魚の群れを、板を踏むのように足で踏み付け、飛び石のように潜水艦になだれ込む主水だった。 人間の目にとまらない技。さすが徳川公直属旗本ロボザムライである。ブリッジに主水はいた。刀を構える。「サイ魚法師、かくご」 驚くサイ魚法師。「まて、主水」 サイ魚法師はもう逃げ場がない。 名刀ムラマサが潜水艦「越月(えっきょう)」の艦橋を切り抜く。音立てて、船橋の右肩が少しずつ倒れていく。その切片がずぶずぶと海中に沈む。「うわっ、やめんか、主水」 サイ魚法師は、船橋内部の階段を転がり降りる。「おしい」 にやりと笑う主水。まだだいぶ余裕がある。 ムラマサは、すでに艦橋上四分の一を切り離していた。「さすが、殿から拝諒いたした刀ムラマサ。すごい切れ味じゃ」 逃げ出そうとする潜水艦。「逃げるな、法師」 続いて艦橋から外側に飛び降りながら、船体横に着地するまで、主水はムラマサを数百回横に払い続ける。 次々、艦橋金属部分がササラカマボコのように切り離されていく。「やめろ、主水」法師は泣き声をあげる。「降参する。後生だ、やめてくれ」「ならぬ、攻撃を仕掛けたのはお前だろう。この潜水艦、切り刻み、東京湾のサイ魚のエサにしてくれるわ」「みな逃げろ。主水め。やりよった。一人でこの潜水艦を切り刻むつもりだ」 サイ魚法師が、潜水艦の乗員に警告を与えていた。まさにクモの子を散らすようにハッチから乗組員が飛び出して来る。 遠く川船の上で、主水の様子を見ているマリアと鉄がしゃべっていた。「大丈夫ですかね」「どちらが、主水、それともサイ魚法師さん?」「ねえさんも人が悪いや。サイ魚法師に決まっているじゃありませんか。だんなも刀を使い始めると見境がないからなあ。キジルシだからなあ」 腕組みをして観戦している鉄が言う。「ふふん、あたしもそう思います。サイ魚法師も時期を選ばなきゃいけませんよね」「じゃなにですかい。だんなは今…」「そうです。あの方は、いま気分が一番悪い時期なのです」 ロボットにもバイオリニズムがあるのである。 サイ魚法師と逃げ出した潜水艦の乗組員は、ゴムボートをサイ魚の大群に引かせて逃げて行く。「あーあ、やっとあいつら、逃げよった。」 主水は泳ぎ、帰って来る。「それで、鉄、どんな用だ」 一仕事を終えた主水が、舟に戻ってきて尋ねる。「そうだ、いけねえ、お上(かみ)がお呼びですぜ」 急に鉄は思い出した。「何、殿がお呼びだと、早くそれをいわんか」 今度はも主水が大慌てである。何しろ、主君徳川公のお呼びなのである。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.19
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ロボサムライ駆ける■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」■第二章 新東京(2)(1)承前「あれ、旦那、そんなこといって、あとでマリアねえさんが怒ったってしりあせんぜ」主水は鉄の言葉を無視してしゃべる。「これからの道行きだともうしたな。私がどこかへでかけるというのか。また、そのことなぜ、知っている」「これはしもうたわ。貴様、まだ、聞いてはおらなんだか」 サイ魚法師は、顔をくしゃっとした表情にして、自分の頭をつるりとなでた。 さては…、主水は思いつくことがあった。「さては、法師、ロセンデールに雇われたか。貴様日本人でありながら、外国人に魂を売ったか」 どうやら、当たりらしい。サイ魚法師が答える。「ふふん、主水、何をアナクロニズムな言葉を吐くんだ、お主はいまごろ国籍にとらわれることなどあるまい。だいたい、ロボットに魂などないわ。お前はロボットだ。どうあがいたところで、日本人になることなどできまい。お前自身が日本人というよりも、徳川公国の使い番だからな。主水、そろそろとどめをさしてあげようぞ」 サイ魚法師が、潜水艦のブリッジから身を乗り出して怒鳴っていた。「鉄、マリアをたのむ」「だんな、どこへ」「ちょっと一仕事だ」 軽く言う。「主水、大丈夫ですか」「マリア、心配無用」 主水は、愛剣ムラマサを上段に構える。 その瞬間、再びサイボーグ魚が、主水めがけて、水面から発進した。そのとき、主水は上空へ跳躍する。 わずか数センチしたの足元を、サイ魚の大群が飛び過ぎる。 そのサイ魚の群れを、板を踏むのように足で踏み付け、飛び石のように潜水艦になだれ込む主水だった。 人間の目にとまらない技。さすが徳川公直属旗本ロボザムライである。ブリッジに主水はいた。刀を構える。「サイ魚法師、かくご」 驚くサイ魚法師。「まて、主水」 サイ魚法師はもう逃げ場がない。 名刀ムラマサが潜水艦「越月(えっきょう)」の艦橋を切り抜く。音立てて、船橋の右肩が少しずつ倒れていく。その切片がずぶずぶと海中に沈む。「うわっ、やめんか、主水」 サイ魚法師は、船橋内部の階段を転がり降りる。「おしい」 にやりと笑う主水。まだだいぶ余裕がある。 ムラマサは、すでに艦橋上四分の一を切り離していた。「さすが、殿から拝諒いたした刀ムラマサ。すごい切れ味じゃ」 逃げ出そうとする潜水艦。「逃げるな、法師」 続いて艦橋から外側に飛び降りながら、船体横に着地するまで、主水はムラマサを数百回横に払い続ける。 次々、艦橋金属部分がササラカマボコのように切り離されていく。「やめろ、主水」法師は泣き声をあげる。「降参する。後生だ、やめてくれ」「ならぬ、攻撃を仕掛けたのはお前だろう。この潜水艦、切り刻み、東京湾のサイ魚のエサにしてくれるわ」「みな逃げろ。主水め。やりよった。一人でこの潜水艦を切り刻むつもりだ」 サイ魚法師が、潜水艦の乗員に警告を与えていた。まさにクモの子を散らすようにハッチから乗組員が飛び出して来る。 遠く川船の上で、主水の様子を見ているマリアと鉄がしゃべっていた。「大丈夫ですかね」「どちらが、主水、それともサイ魚法師さん?」「ねえさんも人が悪いや。サイ魚法師に決まっているじゃありませんか。だんなも刀を使い始めると見境がないからなあ。キジルシだからなあ」 腕組みをして観戦している鉄が言う。「ふふん、あたしもそう思います。サイ魚法師も時期を選ばなきゃいけませんよね」「じゃなにですかい。だんなは今…」「そうです。あの方は、いま気分が一番悪い時期なのです」 ロボットにもバイオリニズムがあるのである。 サイ魚法師と逃げ出した潜水艦の乗組員は、ゴムボートをサイ魚の大群に引かせて逃げて行く。「あーあ、やっとあいつら、逃げよった。」 主水は 泳ぎ、帰って来る。「それで、鉄、どんな用だ」 一仕事を終えた主水が、舟に戻ってきて尋ねる。「そうだ、いけねえ、お上(かみ)がお呼びですぜ」 急に鉄は思い出した。「何、殿がお呼びだと、早くそれをいわんか」 今度はも主水が大慌てである。何しろ、主君徳川公のお呼びなのである。作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.18
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ロボサムライ駆ける■第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training思い出にふける二人のもとへ騒音が駆け込んできた。 川舟に埠頭から、クレーンが懸かる。「だんな、だんな」 クレーンの上をかける音が、本人よりさきにきた。おまけに履いていた鉄ゲタが先に飛んで来た。主水の頭にコチンと命中する。「こらっ、鉄」 鉄ゲタを避けられなかった主水は自分にも怒っている。「あらっ、これりゃあ、すみません。だんな、そんなにのんびり釣りをしている時じゃありませんぜ」 いなせな江戸時代の町人姿のその男は、人工汗を吹き出していた。特殊手ぬぐいで汗を拭く。そして、絞り上げた。船の床は水浸しだ。「鉄、まあ、落ち着け。魚が逃げる」「これが落ち着いていられますかってんだー。ラブ・ミー・テンダー」 と大慌てである。「何事なのだ、鉄」たたずまいを整えて、もんどは尋ねた。「それがね、だんな、えっー…と…。あれ、いけねえ、慌て過ぎて忘れちまった。ちょっと、まっておくんなせえよ」 この男、びゅんびゅんの鉄。性格を一言でいうと、慌て者である。主水のために働いている。いわゆる情報収集者だ。考え込む鉄の眼に先刻から垂れている主水の釣り糸が眼に入る。「それより、だんな、引いてますぜ」「何だと、それを早くいわんか」 ところがこの魚がくせ者である。 主水の竿をぐっとひっぱる。かなりの力だ。普通の魚ではない。大物である。慌てて主水、「おい、マリア、鉄、わしの体をもってくれ。水にひっぱりこまれそうだ」「魚を放しなさいませ。そのほうが簡単じゃございません」「そうでさあ、だんな、そのほうが早いや」「な、何を言う。この竿は徳川公からいただいた由緒ある竿…」 と言ってる間に竿から勢いがすっと抜ける。 今度は魚の方が飛び上がってくる。口を切っ先のようにとがらせて、主水の体を狙ってきた。といってもキスを求めているのではない。かみ砕こうというのだ。「あぶない。ノーキッス」 体を伏せる主水。その上を魚が飛び去る。「えーっ、ありゃ、あの魚はきすじゃありませんぜ。でも旦那もすきがないなあ」 その状態でも、ダシャレを忘れない鉄である。 魚はまるでロケットだ。船を飛び出して再び水の中へ。「あの魚、ひょっとして」 主水が疑いの眼差しでいう。「何だってんですかい」 キョトンとして鉄。「サイボーグ魚」マリアがつぶやいた。 サイボーグ魚は、霊戦争後、出現した新しいタイプのロボット魚類だ。非常に頭がよく、攻撃性も抜群である。各国とも攻撃兵器として開発しているのだ。「そうだ、すると…、いかん。危ない」 主水は両肩で二人を床へねじ伏せた。水が白いしぶきを上げる。一瞬の後、船の両舷から一斉に魚の大群が飛び上がり、船を襲った。スタスタスタと音を立てて、魚が何匹か体に突き刺さる。残りは交差し、海中へ。二三匹、鉄の目の前に刺さる。「うわっ」 鉄は叫ぶ。「大丈夫か、鉄」「ちょっとかすったくらいでさあ。おめいら、交通信号をまもらんかい」 急に強気になった鉄が言う。「マリア、ムラマサを取ってくれ」 主水の愛剣ムラマサがすらりと引きぬかれる。太陽をうけて、りゅうと光る。「よし、次の攻撃だな」 ムラマサを抜き放ち、構える。 再び、魚が、今度は、船の前後から襲い掛かってきた。 瞬間、主水の刀が走った。人間の眼にもとまらない。サイボーグ魚のなますが船のうえに山積みとなる。主水の動きと魚の流れが交差し、すさまじい光と音とがあたりを覆った。「さすがは、だんなだぜ」 サイボーグ魚のなますをつつきながら鉄は言う。「鉄、これをあてにして、一献、ロボット酒でも」「主水、おいしそうなお話しですけれど、前をご覧になった方が」 続いて、巨大な水泡が目の前に近づいてきている。「ひょっとして…」 主水の人工皮膚の顔色が変わっていた。「何か、心当たりでもあるんですか」「このような水泡に帰す企てをくわだてる者、これは……」 目玉が飛び出しそうである。 その時、海面から十メートルはある、その巨大な魚が浮かび上がる。それを見てのけ反る主水。「うおっ」「旦那、あっしはぎょっとしたねえ」 小ぶりなシャレで応酬する二人。 そいつは魚に見えたが、背鰭のところが開く。中から、坊主頭で紺の作務着を着た三十がらみの男が出て来て、腕組みをする。「さすがは主水、サイ魚を切り刻んだか」 男は無念そうに船上の主水を睨む。 サイボーグ魚。略してサイ魚である。「サイ魚法師、久しぶりだなあ。お前が絡んでいるのか」 主水がキッと男を睨んでいた。「ふふん、主水、ほんの挨拶がわりだ」 サイ魚法師は、頭をずるっと撫でて、主水を見返した。「挨拶ありがたくちょうだいいたす。が、法師、それだけであらわれてきたのではあるまい」 主水、ムラマサは構えたままだ。「そうだ。これからの道行で、いずれ雌雄を決しなければならんからな。また、そこなお内儀にも挨拶がてらだ。外国ロボットとはいえ、なかなか見目麗しい女性ではないか」 サイ魚法師は、こころなしか、うらやましそうな顔をした。「あら、どうもありがとうございます、サイ魚法師さんとやら」 マリアがやんわり受け流した。「このやろう、おべんちゃらをいいやがって。俺もいいいたいじゃないか」 鉄は着物の袖をまくりあげていた。どうやら興奮している。「あら、鉄さん、その言葉はどういう意味ですか」「いや、姉さん、そう悪くとっちゃいけあせんぜ。たんなるお世辞だい」 鉄はマリアに睨まれ、真っ赤な顔をした。「お世辞はよしてくれ、法師」「あら、あなたなにをおっしゃるの。せっかく、サイ魚法師さんが、あたくしを誉めてくれたんじゃありませんか」「だまっておれ、これは男どうしの話しあいだ」 ムッとする主水。(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.17
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ロボサムライ駆ける■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training■第二章 新東京1) 東京湾は、この日「日本晴れ」と呼ばれる晴天であった。湾のまわりには、かつて存在した東京工業地帯は跡形もない。かわりに緑豊かな植物群で覆われている。 湾の中央に島がある。第二首都都心として形成された、この東京島は現在徳川公国の領土となっている。公国の中心には東京城が建築されていた。 西を遠望するに富士がきれいに見える。霊戦争後、急激に復興した自然界は、日本を中世世界とわせるほどその景観を変えていた。また、人々のライフスタイルも変化していて、それは、政治体制を変化させ、霊戦争後の世界は民族主義の動きに覆われていた。 古代の民族古来の習俗に戻ろうという心の動きが顕著になっていた。現在の世界は機械文明と自然が調和した民族主義世界となっている。東京島を巡る運河エリアは、真昼の太陽を照り返している。運河面に魚が動き、跳ね上がる。東京湾も浄化され、魚の遊弋する場所となったのである。 その東京湾に、水面に釣り糸を垂れた川船が、一隻のんびりとたゆとうていた。「世が世なら、大名にもなれたものを」 川船の中で男が一人寝そべっている。 太陽に向かって主水(もんど)は唸っていた。早乙女主水(さおとめもんど)。今日は着流しをきてくつろいでいる。刀の大小は床の間にかけてある。無論、日本の武士のように髪はゆうている。京人形のような顔をしていた。といいたいが、すこしばかり、体重オーバーの顔だった。はれぼったい顔だった。アンパンマンみたいな顔だった。 つまり、その顔だけ目立っていてごつかった。 が、一重の目には、意志の強いきりりとした眼差しがある。ロボットでも何か救いがあるものである。「だめですよ、あなたはね、人間じゃないのですから」 そばに同じように寝そべるマリアが言う。「どこまでいってもね、ただのロボザムライなのですよ」 先程の「大名に」に対する答えだった。 きれいな音声でシニカルに男の夢を履き捨てる女だった。これは人間もロボットも変わらないようだ。 彼女の名は、マリア=リキュール=リヒテンシュタイン。 緑の眼をしてハシバミ色の髪を、今日は、日本髪にゆうていた。そして留め袖の和服を流麗に着こなしていた。が時には、ヨーロッパの貴夫人の姿形を取るときもある。こちらは典型的なアンチックドールの顔だ。なにしろヨーロッパの貴族ロボットなのだから。 ときおり、言われるのだが、マリアは美意識がおかしいのではないか、ゲテモノ趣味ではないか。目がおかしいのではないか、という評判である。 というのは、天下ひろしといえども、これほど似合わないカップルもめずらしいのである。 この間など、新東京の盛り場を、二人が歩いているとこう言われたのである。「へええ、かわいそうにね、あの奥さん」「そうよね、きっと何かあるのだわ」 ともかく、主水が、ゲルマン留学のおり、連れて帰って来た女性ロボである。 主水には、額に切り傷がある。これは、ゲルマンのハイデルベルグで、マリアを巡っての決闘のおり、切り込まれたものだ。相手はザムザ=ビスマルク。名前からもわかるとおり、あのビスマルクの子孫につながるロボットである。 ともかくも二人は神聖ゲルマン帝国で出会い、いまここにいるのである。 ゆったりとした風が川船を通り過ぎて行く。二人は思い出に耽っているのである。(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.16
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ロボサムライ駆ける■第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training ◆ 聖騎士団長シュトルフが駆け込んできた。「どういうことですか、殿下。機械城の警備を日本側のロボ忍に任せろとは」「シュトルフ怒るな。これも殿下の深慮遠謀なのじゃ」 鷲顔の秘書官クルトフが言った。「どういう理由か、お教え願いたい」「よろしいですか、日本側は我々の動きを完全に信じてはいません。この機械城に仕掛けがあると考えておる節があるのです。その疑いを少しでも取っておきたいのですよ」「それでは殿下は、機械城すべての警備をロボ忍に任せろとおっしゃるのですか」「シュトルフ、そのとおりです。彼らに任せなさい」「任せろとおっしゃられても」「よいですか、シュトルフそれでは、教えてあげましょう。機械城全体が大きな罠なのです」「その罠に落としますのは、一体?」 シュトルフは怪訝な顔をした。「我らの目的の邪魔になるもの、すべてのものですよ。日本の政府関係者、氾濫ロボットどもとかね」 ロセンデールの青眼は残酷にきらりと光った。 ◆ 霊戦争は地球の浄化作用であった。当時、地球の文明全体が機械化文明に犯されつつあった。 情報公社「リンクス」や機械化会社「ロボテック」などのコングロマリットが、地球の全体のほぼ利益及び生産資材を握りつつあった。世界初の企業による世界帝国である。霊戦争が始まりを、今となってははっきり記述することは不可能だろう。結果的には地球の文明は少し後退したように見えるが、地球全体の生命体から見ればそうもいえない。緑が地球の全てを覆いつつあり、河川、海の汚染度も下がりつつあった。 地球上空何千キロの部分には監視衛星「ボルテックス」が数個設置されていた。これらの衛星はいわば、神の剣であった。 すでにこの時期、自然類は地球外に影響を及ぼしつつあった。外惑星は、この地球の状態を理解できないでいた。ボルテックスはこの地球全体に結界を引いていたのである。しかしながら、機械化文明は退歩した訳ではなかった。地球にはロボットや機械がうじゃうじゃ存在し、減少する傾向は出ていなかった。 (4) 地下坑道。巨大なトンネルがうがかれていた。ともかく天井が異常に高い。 鑿岩ロボットたちは、手を休めていた。皆へとへとに疲れている。これから先は人間、霊能師の役割なのだ。彼らは霊能師たちを見守っていた。 多くの人間が円陣を組み、何かを唱えていた。すべての人間が汗をかいていた。 その円陣の向こうの壁が光り出している。「おおっ、あれは」 何人かが、驚きの声をあげた。 壁という壁は、石仏、仏像、寺社の建物でひしめいていた。そこから先数キロは異様な空間を作り出している。 うしろから、巨大な光る物体があるいてきた。 大仏である。 ゆるゆると、歩いてくる。ロボットたちの前をすぎ、人間の円陣の横をすぎる。 が、その先が問題なのだ。 バリバリと音がする。 大仏は歩こうとするのだが、ある一定のラインを越すことができない。 大仏がブルブルと震えていた。 同時に壁にひっついている仏像も石仏もゆらゆらと震えているのだった。まるでその壁が揺らぎ、大仏の進行を妨げているようにも見えた。(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.15
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ロボサムライ駆ける■第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training 機械城。ロセンデールによって、大阪に極めて短時間に作られていた城である。 ロセンデールが、日本に到着してすでに六カ月がたっている。 この時期、古来からあった城は霊戦争のおりなくなっていた。それゆえ大阪城の場所にその機械城は建てられていた。 外見上は日本の城に見える。城壁、天守閣、櫓などを見ても変わっているようには見えない。が、すべて機械でできているのだ。城壁の石垣の一つ一つも、窓枠の一つ一つも、すべて機械なのだ。 それもロセンデールの命令どおりに作動する一つの機械生命体であった。城壁の四隅に櫓があり、中央部に天守閣、小天守閣がある。 この天守閣のみ、少しばかり形が変わっていて、西欧の寺院風にも見えた。 一階から五階まで、吹き抜け部分が作られていた。小天守閣には、心柱を探るための研究機材が集中していた。 天守閣は、ロセンデールの居城であり、そして何か別の目的で建てられているのであった。 ◆「斎藤殿、水野殿、ご覧ください。もうここまで進んでおります」 ロセンデールは、機械城の中央、天守閣にあるコントロールルームの巨大なモニターを二人に示した。 この画面には、心柱があると思われる位置がコンピュータグラフイックスで描かれ、その心柱に向かって進む地下坑道が数多く表示されている。この地下坑道のすべてで、数百体のロボットが作業を行っていた。「西日本都市連合がロボット奴隷制でようございました。東日本ならロボットを強制労働させるわけにはいきませんからね」 ロセンデールがいった。「さようでござる。ロセンデール卿も運のいいことじゃ」 水野がほくそ笑む。「しかし、やはり足毛布博士がいなければ、こうもいきませんでした」「さようで。で、足毛布博士は」「ああ、彼は人に会いたくないとおっしゃって坑道A-五〇に入っておられます」「博士の人嫌いにも困ったものじゃのう」「いやいや、それだからこそ、このようなロボット強制労働ができるというものです」「ほほ、博士の性癖に感謝せぬといかん訳ですな」「そのようですな、はっはは」「が、ロセンデール卿。みはしらが発見されたあかつきのこと、よろしくお願い申しあげますぞ」「日本統一のことですね」「しっし、ロセンデール卿。声が大きすぎます」「何しろ、これは我々だけの秘密でございます」「まさに、まさに。それにしても、落合レイモン殿があように易々と我々に協力していただける意向をお持ちとは思いもしませんでした」「レイモン殿も何か考えるところがあるのでござろう」「斎藤、それゆえ、レイモン殿の監視、努々怠るではないぞ」 水野は、隣に控えていた斎藤にいった。「さように取り計らいます」「水野殿、斎藤殿。珍しいものをお目にかけましょうか」「ロセンデール卿、それは一体どのような」「ご両公とも眼を回されるに相違ない」「ほほう、卿がそう言われるくらいなら」「期待いたそう」 巨大な空間が機械城天守閣の中にある。高さ三十メートル、広さは縦横とも百二十メートルはあるだろう。その真ん中に真紅のカーテンで仕切られている。「いったい、これは」「お見せしよう。カーテンを開けよ」ロセンデールが命令した。「こ、これは」 二人は絶句した。黄金の大仏であった。「どのようにしてここへ」 水野と斎藤は叫んでいた。「それはね、企業秘密です」 ロセンデールはにこりとした。(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.14
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ロボサムライ駆ける■第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training 漆黒の闇の中、小さな明かりが灯された。何やら呪文が繰り返されている。 京都、中央区にある広大な屋敷、足毛布博士の屋敷である。 度の強いメガネをかけ、白髪まじりの蓬髪の五〇くらいの男は、なにやら独り言をつぶやいていた。 足毛布博士は秘密の地下室で祈りを捧げていた。この儀式のことは、誰も知らなかった。それを知れば、足毛布博士を、西日本都市連合も放っておかない。 足毛布博士は、日本古来の着物を脱ぎ捨て、彼が信じている大義のための服装に着替えていた。 何かの祭壇がある。日本古来の神棚ではない。『古来より、日本へ飛来しました我々足毛布一族、ついにその目的の貫徹はちこうございます。願わくば、私の世代にその願いを叶えられんことを』 祈る足毛布博士であった。 足毛布博士は、京都市内に広大な土地を占めていた。この本宅以外にロボット製作所が近畿エリアに四十ヵ所ある。 足毛布人造人間製作所といえば、泣く子も黙る西日本の大企業である。が、最近、足毛布博士は政府の要職も、会社の経営も他人に譲り渡していた。 ◆「博士、博士はご在宅か」 八足移動ビーグル、クラルテに乗った武士が、玄関先で呼ばわっていた。足毛布博士の屋敷は、博士が人嫌いのため、使用人は雇っていない。全自動ロボットシステムで構築されていた。「これはどちらさまでしょう」 玄関に設置せれているロボットボイスが答えていた。「水野都市連合議長の使いの者じゃ。足毛布博士、至急にご登庁をお願いしたい。火急のこととあり。以上を足毛布博士にお伝えいただけるか」「わかりました。至急お知らせ致しましょう」 足毛布博士の情報モジュールは、都市連合からの連絡情報を一切入力させない設計になっている。それゆえ、わざわざクラルテに乗った使者が現れるわけである。 博士は書斎兼図書室にいた。古書籍がずらっと並んでいた。一冊の本を取り出す。タイトルは『西洋の没落』となっている。 博士は誰かにしゃべっている。「貴公はシュペングラーの『西洋の没落』という本の名を聞いたことがあるかね」「いや、そのような本、耳にしたこともない」「ふふん、まあ、ロセンデールなら知っていよう。あれは第一次大戦の前だったか、このページに書いているのだが。文明が没落する兆候はテクノロジズムとオカルティスムの流行と言っておるのじゃ」「ふふぉ、我々のことか。予言しておったのか、そのシュペングラーとか申す霊能師」(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.13
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ロボサムライ駆ける■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training ◆「大仏様が、大仏様が、こちらへ動いて来るぞ」「ああ、ありがたいことじゃ」 都市にいる人々は、空母上の大仏を見て大騒ぎとなっていた。海岸のほうへ人々は繰り出していた。人もロボットも。「ありがたい、大仏様じゃ」 大仏が、空母ライオンの甲板上に、座を組んでいる。ロセンデールのライオン丸であった。その上には天女が竪琴をもって演奏している。先刻のロセンデールの歌姫たちが服装を変えて違う歌を奏でているのだ。演出効果バツグンである。「ふふう、見てごらんなさい、クルトフ。大仏とやらは、日本人によく効くシンボルですねえ」「タイのバンコクで手に入れたのも、この効果があれば安い買い物でしたな」「それに、この大仏のもう一つの目的を知れば、水野たちも驚くに違いありませんねえ」 大阪港に接岸した空母ライオンに、人々が群がり集まって来るのだった。大阪は、いや、近畿エリアはまさに平野であった。かつて存在していた山並みは、霊戦争のおり消滅している。「これ、斎藤、落ち度があってはなりませぬぞ、あの方には」 二メートルの大身の水野は、ネズミのような小男、斎藤にいった。 二人とも日本の礼服である裃に身を固めている。上下二本の刀をさし、草鞋ばき。当然頭は丁髷を結っている。この二人だけでなく、一般人も、和服、丁髷である。人間だけでなく、ロボットも同様の風体だつた。「わかっております、水野様。あの卿の取り扱いいかんでは、我々の手に日本が…」「しっ、斎藤。それは禁句じゃ。誰が聞いておるやもしれん」「が、水野様。わざわざあのロセンデールとか申す神聖ドイツ帝国の手の者を、日本に入れる意味がありましたでしょうか」「何を今頃申しておる。足毛布(あしもふ)博士の強制ロボット動員策でも、あの場所がみつからんのだぞ。ヨーロッパ随一の心柱(しんばしら)発見の著名人であるロセンデール卿を招くのは当たり前だろうが」「しかし、心柱を発見された各国、いずれもルドルフ大帝の支配下に入ったと聞き及びます」斎藤は不安げに言った。「お主も心配症じゃのう。支配下に入った各国はヨーロッパぞ。東洋の一国である我々には関係ないわ。よいか、これからの時代で俺は織田信長、お主は豊臣秀吉じゃ」 水野は、織田信長。斎藤は、豊臣秀吉そっりの顔をしていた。「が、水野様。東京には本当の徳川公がおわしますぞ」「本当に心配症の奴じゃのう。心柱さえ見つかれば、そのようなこと取るに足りぬ」 大笑いする、水野。西日本都市連合議長である。 自らの未来が、鮮やかに脳裏に浮かび上がっているのだろう。 一方、斎藤は大阪市長だが、顔色は優れなかった。ともかく、秀吉も信長も外国の力を借りはしなかった。と斎藤は思った。「それ、ロセンデールが現れよった。斎藤、笑顔じゃ、笑顔」 ロセンデールが、ケープをひるがえせて降りて来た。あとには鷲顔クルトフ、ジャガ芋顔シュトルフが続いている。「これは、これは、ロセンデール卿、遠い道程、お疲れ様でございます」「水野どの、日本は美しい国ですね。とても欲しくなりました」 憂いを秘めたロセンデールは、簡単に言ってのける。「えーっ」「いえ、冗談ですよ、外交辞令ですよ」 にこやかにほほ笑みながら、ロセンデールは言った。「では、早速、現況をお伺いしましょうか」「化野(あだしの)と呼ばれる地下エリアが、我々の掘削機械やロボットの侵入を防いでおります」 水野は汗を吹きつついった。先程のロセンデールの言葉が心に残っているのである。疑いが少しずつ水野の心にひろがっていく。「と、いうことは、それより先は、あきらかに心柱、そして古代都市というわけですねえ」「そういう可能性がかなり高かろうと思われます」「我々が、日本じゅうから、多くの霊能師を持ってきても、その化野エリアを突破できまないのです」 斎藤がいった。「この方はいったい。水野さんの小姓ですか」「いえ、紹介するのが遅れました。大阪市長、斎藤光三郎です」「斎藤です。以後お見知りおきを」 斎藤は怒りを隠しながらいった。「水野さんだから、私はお土産を持ってきたのです」 ロセンデールは、水野とその閣僚連中に向かって胸を張った。「あの大仏です」「何ですと、あの大仏」「が、あの大仏は、空母の上に置かれております。それを化野までどうやって」「心配ご無用です」「まさか、運搬機械が必要とか、おっしゃるわけではありますまいな」「あの大仏、実は戦闘用ロボットなのです」 ロセンデールは嬉しそうに言った。「何ですと」「我々が、タイランドの軍隊と戦ったおりの戦利品なのです。賠償金がわりに受け取った訳です」 聖騎士団長シュトルフが誇らしげに語った。「あのロボットならば、あの化野の霊を打ち破れると」「そう考えております」ロセンデールが言った。(続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.12
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第12回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●山田企画事務所「危ない所だった。天宮=地球意志は、私アー・ヘブンを道連れに、この星を破壊するつもりだったのか」 アー・ヘブンは独りごちた。 地球意志は、大球(元の地球)と結ばれた小球(元の月)に、スパイダーネットで、集積した色々な星の武器を集めていた。 地球爆発の際、武器群は小さなユニユニット群となり、小球から発進し、この宇宙に存在する生命を破壊しつくす武装機械船群を、あらゆる方向にむかって発射されようとしていたのだ。そのために、長い長い時間をかけ、知らないうちに、スパイダーネットを使い武器を集積していた。それは、ハーモナイザーに対する「地球意志」の復讐行動である。「地球の上に新しき生命を宿すのだ」 アー・ヘブンの心の底から声が響く。ハーモナイザーが呼びかけていたのだ。「どうやって、この地に生命を宿したらいいのですか」「アー・ヘブンよ、お前は種子なのだ。お前が変化し、新しき地球になじむ植物となるのだ。お前子孫がこの星、地球に充ちるのだ」「しかし、ハーモナイザー、この大球いや、地球は鋼鉄のよろいがあり、内部ば機械星となっています」「心配するな。機械星、大球に根をなせぱよい」「根ですって」「お前の第1触手を、根とするのだ」 アー・ヘブンはハーモナイザーにいわれた通り、第1触手を大球の機械地中深くシャフトにそってかろす。触手は膨張し、根となった。 次の瞬間、地表を被っていた鋼鉄面は光り出し、熱を持つ。一気に蒸発した。同時に地球全体が光り輝く。大球内部の機械類は燃えあがり、やがて燃えつき、土と化した。 アー・ヘブンの体に内包されていた、ハーモナイザーの種子も。同時にまきちらかされる。種子は大球、全世界を被う。 『大球をアウフ・ヘーベンせよ。アー・ヘブン、それが、お前の役割なのだ』 光の声がいう。 いまや、大球から変化し、再生された地球の世界樹となったアー・ヘブンの聴覚に、ハーモナイザーが働きかけ、アー・ヘブンは始めて、自分の名前の意味合いを悟った。 アー・ヘブン=アウフ・ヘーベン(止揚)だったのか。 アー・ヘブンである、世界樹の、表皮、小さな部分に、古代の地球文字が刻まれている。突然、それは現れた。『私の夢は、、、』今は存在しない「北の詩人」イメージ脳はただよう。その存在しない思念には、かつて″木″、に記号を印した事を思い出している。すっと昔の古代の記憶。『かしのきに、ナイフでしるしを……』北の詩人が。消え去る一瞬、耳にした何かの産声は、この変化のさきぶれだったのか。新しき地球は、ハーモナイザーと意識では一体化し、アウフ・ヘーベンした世界樹により、新たなIページを書き記し始めた。北の詩人の体は、再び実体化し、北の詩人の目の前にはユニコーンの姿も、ちらほら形作られはじめるのが見えた。そして、ゴーストトレインも、、、(完)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第12回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●山田企画事務所
2011.11.12
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ロボサムライ駆ける■第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training ■第1章 胎動(1) 巨大な島が動いている。その島が瀬戸内海を航行しているのだ。まろやかな陽光たなびく中、その島は動く。空母ライオンであった。「風光明媚なところでございますなあ」 バイオ空母ライオン、排水量一〇万トン。甲板の幅五〇メートル、全長四〇〇メートル。ロセンデール卿の私物である。 ロセンデールの秘書官のクルトフが、ライオンの鑑橋から、瀬戸内海を見渡しながら言った。 今年六十になるクルトフは、鷲のような顔付きをしている。赤く思慮深い眼、大きない鼻梁は高くいかつい感じをましていた。長い白髪は仙人を思わせる事がある。 ヨーロッパの首相級を思わせる華麗な宮廷服を着ていた。「クルトフ。ここ、日本が手にはいるわけですから。心して計画にかかねばなりませんね。それでどうですか。大阪シティの受け入れ体制は」ロセンデールは言った。 ロセンデールはいかにもヨーロッパ的な顔立ちであり、言葉使いも優しく、一見やさ男であるが、よく観察すると、野望を秘めた目と高貴な育ちを表す高い鼻と、力強い意志をもつ顎が見えて来る。そして、体全体からは権力を持つ男のオーラが発されているようであった。今年三七才になるが、二〇代後半にしか見えなかった。 長い金髪を後ろで束ねて垂らし、ビロードでできた古代ペルシア風のチュニックとショートコートを来ていた。「万全のようです。これも卿(けい)の深慮遠謀のお陰」「くくくっ、ともかくも、世界史上誰もなし得なかったことをしようとするわけですからねえ。ところでクルトフ、例の霊能師の方は大丈夫なのですか」「その方の準備も万全でございます。西日本都市連合議長の水野なりが、餌をまいておりましょう」「ロセンデール様、皆の用意ができました」 聖騎士団長シュトルフが言った。 シュトルフは、戦のなかで生まれたような男だった。赤ら顔で首は太く、胴は樽のようだった。その樽の上に乗っている顔はどちらかというと愛嬌があった。眼は小さく、鼻は団子鼻で大きく、口もまた大きかった。ロセンデールいわくジャガ芋顔である。 大きな戦いを生き残ってきた四五才の精鋭だった。 光る電導師の制服を着ていた。そのコスチュームは、昔の十字軍を思わせた。「よーし、お前たち聖騎士団、電導師たちの力を見せてもらいましょう」 ロセンデールは剣を引き抜いていた。 ゲルマンの剣である。切っ先が陽光を受けてきらりと光る。「殿下、さすがに見事でございます」「ほれぼれとするお姿じゃ」クルトフが言った。 ロセンデールの後ろには、うすぎぬを着た巫女たちが戦いの歌を歌い始める。一五才から一八才の美女ばかりだった。 ロセンデールの歌姫たちだ。 ゲルマンの剣はわざわざ、ルドルフがロセンデールに渡したものだった。「皇帝ルドルフ猊下、この剣にて帝国の土ひろげましょうぞ」 こう見栄をきったロセンデールだった。 ロセンデールはヨーロッパの某国で生を受け、霊戦争後のし上がってきた貴族である。現在、神聖ドイツ帝国ルドルフ大帝の右腕とすらいわれている。「シュトルフ、例のものを合体してみせて下さい」「殿下、ここでですか」「まだ大阪港へつきません。ここで、姿と力を見てみたいのです」「わかりました。殿下のおおせのままに」「飛行士の諸君、甲板にバイオコプターを集めよ」 バイオコプターは生体を形どった機械飛行機で、大きな羽根で羽ばたくことにより揚力を得ていた。この生体とは、とんぼとか兜虫とかの昆虫である。「よーし、動かせ」 バイオコプターが一点に集まっていた。 そのバイオコプターの群れが別のものに変化した。何か巨大なものが、ロセンデールたちの前に立ち上がっていた。瀬戸内海の陽光を受けて、それはきらきら輝いている。「まことに見事です。これで日本人どもの肝を冷やさせるでしょう」 (続く)2011改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 you tube manga_training
2011.11.11
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第11回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」本が風化するのと同時に、コードの中の,北の詩人の体も消滅した。アー・ヘプンはその一瞬、産声を聞いたような気がした。その機械共生体も、外気にふれて腐触し、機械パネルははじけ飛び、粉々に分解していく。が本がやヽその背後の機械共生体がくずれ去った後,内壁中央部に光点が残っていた。光点はアー・ヘブンの方へ移動してきた。球体には、ぎっしりと古代の本が積まっている。その球体からは、強烈な激怒のイメージが、アー・ヘブンに注がれていた。それが「天宮」だった。アー・ヘブンは「天宮」に話しかけている。「天宮」の過去の名前で。「地球意志よ、寂しかっただろう」「地球意志? 太古の、私の、名前を知っている、お前は一体……」「そう、「天宮」いや、地球意志よ、君が考えている通りだ」「つまりは、ハーモナイザーの手先というわけか」「正確にはそうではない。ハーモナイザーの意識の一部という方が、いいだろう」「なぜ、私の所へ来た。私地球意志の宇宙に対する復讐の理由を探りに来たわけか」 アー・ヘブンは、天宮=地球意志、の意志の強固さ。その意志の持つ邪悪さに、思わずたじろいた。「やはり、君は、宇宙に対して、復讐を考えていたわけか」「そうだ。私はハーモナイザーのおかけて、「地球人類」という、かけがえのない財産を奪い取られたのたからな。それに君は、私のデータベースも破壊した」 「まだ、わかっていないのたな、地球意志。ハーモナイザーは君から地球人を奪いとったわけではない。彼ら、地球人類は、自らの意志て君から離れたのだよ。地球人類は宇宙の意志という大きな思念のために出かけていったのたよ」アー・ヘブンの意識は、ハーモナイザーと一体となる。「ハーモナイサーの手先としてか」「手先?、そういった問題てはない。地球人類はひとつの思考形態としてより進化したといえるだろう。かつては地球人類という小さな枠て物を考え、自分達の能力を使っていたが、ハーモナイザーの意志により、彼らは同調したのだ。君、つまり地球意志より、より大きな意志のためにね」「ハーモナイザーよ、いくらくりかえしてもしかたがない。ハーモナイザー、君が私から人類を奪い去った事に変わりはない。あまつさえ、私にこの鋼鉄の鎧を着けさせてその上に監視員をおき、彼ら監視員を進化させた」「そう、彼ら新機類は、君、天宮=地球意志を、監視するために存在し、生命球がすへてを統禦していた。が新機類や生命球は君が滅ぼしたのだろう」「そう、それが、宇宙に対する、ハーモナイサーに対する私の復讐の手始めだ」生命球は、アー・ヘブンのソウルブラザー、同類の意識体だった。生命球も、ハーモナイザの個性群体の一つだったのだ。「ハーモナイザーは、君、地球意志の行動を観察していた。君があるいは新しい精神構造を持ち始めて、ハーモナイザーの考え方に同調するかもしれない、と思ったのたよ。がそれは残念ながら、期待はずれだとわかったわけだ」「それて、わざわざ、このシャフトまで降りてきて、私を滅ぼすわけか」 天宮=地球意志の声、はあくまで冷たい。「地球意志よ。最後のチャンスだ。君の思念を我々と同調させなさい。それがすべてだ」「答えはノーだ」「わかった」天宮=地球意志は、何かの信号を送りだそうとしていた。間髪を入れず、アー・ヘブンは、第3触手をのばし、天宮=地球意志をにぎりつふそうとする。天宮の中身は、聖書、仏典、コーランなど地球の宗教書・哲学書、地球人類の遺産の書類とイメージーコーダーが包含されていた。この宗教聖典こそが、天宮=地球意志のアイデンティティーたった。存在価値のすべてだ。アー・ヘブンの第3触手の握力で、天宮の外壁がはじき飛び、本の数々がバラパラに吹き飛び、破片は大気へ散っていった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第11回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.10
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」アー・ヘブンが立ち去った後、しばらくして,北の詩人は意識をとり戻す。大球と小球を結ぶコードは揺れていた。北の詩人は振動するコードの中ではいつくばりきがら、事の始まりを思いかこしていた。北の詩人は、古代に生きていた男の実体化であった。詩人は自分白身のデータを情報ユニットとして残していたのだ。 彼は詩人であると共に、優秀次技術者でもあった。彼の画期的な発明が「イメージコーダー」てあった。 情報ユニットをイメージコーダーのある部位にセットすれば、それが実体化されるのだ。ただしわずかな時間だったが。 詩人は、その発明のパテント代で億万長者となり、死後、巨大な地下ピラミ″ドに埋葬された。 もちろん納宮室には、イメージコーダーと、彼の大好きだった情報ユニットのコレクションが収納された。 数百年後、このピラミッド近くに建築された軍のビッグコンピュータとリンクして、イメージコーダーが機械共生体の中心になるとは想像だにしなかった。 彼の地下ピラミッドの上には、樫の樹林が果てしなく広がっていた。その中の樫の木一本に、北の詩人が若い時、ナイフで刻みつけたフレーズが残っていた。『私の夢は・・・・:』 たどり着いたシャフトの内部を見て、アー・ヘブンは驚く。ここは古代の遺跡なのだろうか。 触手をのはしてみる。情報ユニット群にふれる。情報ユニットはやはり、アー・ヘブンと同じ植物繊維からできている。 さらに、情報これらの一つ一つは繊維のシートの集合体だった。 各シートの表面には、この星の旧生物が使用していた記号が、多量に刻み込まれている。 記号をシート上に刻み込むことを「印刷」といったらしい。 その記号を、この星の生物は古代より「文字」と呼んでいた。この一枚一枚のシートから或る情報ユニットは″本″と呼ぱれていたのだ。この本の集合体が、データベースであり、この星の住民は、視覚を通じて脳に入力していたのだ。この情報ユニット″本″が数十万、いや数百万ユニット、シャフトの中心部内壁に埋め込まれている。しかし、アー・ヘブンが鉄表を破って潜入し、密閉されたシャフト内に外気が侵入したことにより、シート=紙が変質し崩れ始めた。粒子となり飛び散り出す。 何千年の夢だろう。数えきれない程の、多数のこの星の住民の知恵が、虚空ヘチリとなって消え去っていく。 この星の文明遺産の消失であった。 膨大な本というペーパー情報集合体が消え去り、その後に古い機械が姿を現わす。機械共生体であった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.09
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第9回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 アー・ヘブンは,横たわる北の詩人をながめている。彼からは、はっきりした「天宮」の位置を読みとれなかった。彼はその「天宮」の場所を知らないのだ。闇の空洞だと? アー・ヘブンはしかたなく、大球と小球をつなぐコード(絆)の内壁ににじりよると、内壁金属に聴覚器をあてがった。 この金属の持つ記憶巣から、「天宮」の情報を読みとれないかと思ったのだ。壁に聴覚器がふれた一瞬、アー・ヘブンの体は硬直した。 恐るべきデータが一度に脳に流れ込む。体が震動し、コードの内壁に倒れ込む。 倒れていても、アー・ヘブンの体は痙學し続けている。 コードの内部は、すでに「天宮」の腕の中も同然なのだ。コード内には「天宮」の神経系かくまなく張りめぐらされていた。その神経系から派生した神経糸が一本、アー・ヘブンの体に鋭く突きささる。神経糸は蛇の様に、体内に侵入し、ためらい左く体中を突き進む。神経糸はアー・ヘブンの中央脳を探りあて、アー・ヘブンの正体を知ろうとしていた。 脳部位はどこだ! 神経糸は位置をさがしあぐねていた。 アー・ヘブンには中枢脳がなく、しいていえば、体全体が脳機能を持っているのだ。 アー・ヘブンは、体の中を這い進む神経糸にたいいして、逆に、パルス(波動)スを送った。パルスがたどり着くところ、そこに「天宮」の命令中枢があるはすだ。 一瞬の後、逆にアー・ヘブンは「天宮」の位置を読みとっていた。 『シャフト』 アー・ヘブンは立ちあがると、体につきささっている神経糸を力まかせにひきちぎった。からまってきていた神経網を引きさく。アー・ヘブンは、コード内を大球にむかい直進していた。目ざすは「天宮」の存在するところ、「シャフト」である。 コード内の神経網が急激に膨張し、道をふさぐ。アー・ヘブンの前進をはぱもうとする。 コード自体も震動している。「天宮」は、小球とコードを、自分のいる大球から切り放そうとしていたのだ。アー・ヘブンをコードに詰め込んだまま。 大球とコードの接合部分はすでに切り放され、コードと大球の鉄表が数10開いている。 危ない所だった。アー・ヘブンは、コードの内壁を第3触手を使って突き破り、からくも大球の鉄表へ降り立りていた。 切り放されたコードは耳を聾する轟音をあげている。何かの泣き声の様だった。コードは小球の方へゆっくりとたぐり寄せられ、ねじ曲がっていく。何か生き物の断末魔を思わせた。 アー・ヘブンは鉄表の下を透視して身ぶるいをした。この鉄表下は驚くべきことに、機械の集合体に変化していた。本来の岩盤はどうなったというのだ。 この機械類はスパイダーネットによって集められた宇宙船の部品々のだろう。大球全体が機械惑星と化していた。内部の地層は天宮が変化させてしまったのだろう。 アー・ヘブンは、この機械類をチェックして、ある事に気づく。これは危ない。「天宮」は、何をやりだすかわからない。 全宇宙に害毒をぱらまくつもりかもしれない。機械のすきまを探査する。そこがシャフトのはずだ。それにその部分のみ、構成成分が異なるはすなのだ。 「天宮」自体が機械と、そのモノの集合体なのだから。 またそのモノは、、アー・ヘブンと同じ成分を持っているはずだ。「天宮」の存在するところ、「シャフト」の位置をようやく探し当てた。怒りという古い感情を思いおこし、鉄表をアー・ヘブンの第3触手でふち破った。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第9回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.09
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第8回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」ユニコーンは,大球と小球を結ぶ通路である「コード」の中を、北の詩人を乗せて、ゴーストトレインの後を走っていた。「あ、腹の中にいる生物が動いたようたよ。彼に知らせなければ」ユニコーンはゴーストトレインに向かって大声でどなった。「ゴーストトレイン、腹の中にいる生物が、今、動いたそ」それを聞いて、ゴーストトレインは,少しばかり、腹の中にいる生物を消化して動かさしてしまかうと考えた。生物の意識部分だけでも、残してかけば、調査には充分だろう。ゴーストトレインの腹腔内に分解液を分泌し始める。分解液は今までに断機類を解体している。やがてゴーストトレインの腹腔内は分解液で充満し、アーヘブンの体は、液中に沈んだ。「何だ、この液体は?」アー・ヘプンの触手の一部が解けていた。アー・ヘプンはこの液から逃がれようと、再び、触手を全開する。が、腹腔はアー・ヘプンの触手にあわせ、やわらかく包み込むように自在に拡張した。いくら試みても、柔らかな腹腔をつき破る事はできない。アー・ヘブンは今度は、自分の体に蓄積している体内エネルギーを放つ。光合成によって蓄積されたエネルギーだ。アー・ヘブンの全身は赤色に輝き、次第に熱をかび始める。ゴーストトレインの腹腔が、今度はアー・ヘブンの発した熱で溶ける。穴は徐々院ひろがり、充分々大きさになったのを見はからって、アー・ヘブンは外へころがり堕ちた。 それでもゴーストトレインは惰性で走り続け、張力が効かなくなった腹腔は前後二つに裂けた。上半身は、大球と小球を結ぶ「コード」の内部で、つっぷし、下半身は後にとりのこされたが、あたり一面に消化液が、コード内部にふちまけられた。 アー・ヘブンはゆっくりと立ちあがり、ゴーストトレインに近づく。ゴーストトレインはかま首を突然持ち上げた。悲しそうな顔だった。 『この動く″木″は一体何だったのだろう』 それがゴーストトレインの最後の意識であった。動く″木″である、アー・ヘプンはゴーストトレインの半透明の体が、コード内部の空気中に、かえっていくのをながめている。ユニットコードナンバー 836250ユニットタイトル 幽霊列車(ゴーストトレイン)実体化された、情報ユニット「ゴーストトレイン」は消滅した。大球と小球を結ぶコードの通路上には、二つの光るラインがずっと続いていた。 急に、後からアー・ヘブンの体に衝撃があった。 ゆっくりと振り向く。 ユニコーンだった。角が、アー・ヘプン体を見事に突き抜けていた。ユニコーンは自分のペアとゴーストトレインの敵討ちをしようとしたのだ。「くそっ、彼女とゴーストトレインをかえせ」 ユニコーンはそう叫んでいた。『無益な事をするな』 アー・ヘブノは悲しくなった。ヘブンのエネルギーが、ユニコーン角に収斂する。 ユニコーンの両眼がまっ赤になる。ユニコーンの体はきしり、爆発した。 コードー面に、肉片が散らばった。 角は、アー・ヘブンの体に突きささったままだった。ゆっくりとアー・ヘブンの内部細胞は、ユニコーンの角を、体外へと押し出した。 角はコード上にころがりがち、ゆっくりと静止する。角はユニコーンが存在したことの唯一の証拠に見える。ユニットコードナンバー 386574ユニットタイドル ユニコーンの旅情報ユニット消滅。 しばらくして、アー・ヘブンは、側に北詩人が忍びよってきたことに気づく。 「北の詩人よ、教えてくれ、天宮はどこにある」 アー・ヘブンは、この生物の名が自分が「北の詩人」という事を知っている。北の詩人は、少しづつ消滅しつつあるユニコーンの肉片の側にうずくまり、涙を流していた。「ユニコーンよ、とうとう、君まていなくなってしまった。僕はひとりぼっちじゃないか」北の詩人はアー・ヘブンに問いただす。「アー・ヘブン。なぜ、ユニコーンや、ゴーストトレインを殺したのた。私の数少々い友人達を」 北の詩人の言葉にはアー・ヘブンヘの激しい怒りが含まれている。「許してくれ、北の詩人よ。私にとっても以外なのだよ。殺戮とか抹殺とかいう狂暴なイメージをふりまく事すら、昔の私には耐えられきい事だった。が、私はやってしまった。いかなる事があろうと私は「天宮」の元に辿りつかなければ左らないのだ。それが私の使命なのだ」アー・ヘブンは、悲しげに北の詩人の眼をのそき込んだ。「それに君達は、この世界には存在しないはずの生き物なのだ。ただの情報ユニットなのだ。それが実体化させられたものだ。生物ではない」「存在しないはずの生物だって?」アー・ヘブンを見ていて、北の詩人は想いかこす事があった。北の詩人は思わず、アー・ヘブンの体に両手をのばし、その表面をなてていた。アー・ヘブノは詩人の心に悪意のない事を知り、なすがままにした。「ああ」急に、北の詩人はうめき声をあげ、ひざをおとした。北の詩人の眼からは、新たなる涙がこぼれ落ちていた。「わが家よ、暖かき住み家よ、、」北の詩人の口からは、そんなフレーズが湧き出ている。「住み家? どういう意味だ」「わから々い。ても、僕のイメージ脳が、そう告げている」涙をたたえた眼て、北の詩人は言う。「さあ、思い出してくれたまえ。こう質問を変えてみてもいい。君は大球のなか、一体、どこで生まれたのだね」「どこで生まれたかって? そういえば、、」北の詩人は、アー・ヘブンの体から手を放し、遠い所に視線を移して、昔の事を想い出し始めていた。「そう、大地の中だ」「地中はわかっている」「闇の中、いや光があった。そうだ。空洞があり、私の仲間たちがそこにたくさん居た」「仲間がたくさん居ただと?」「そう。まだ、実体化していない多くの仲間だ」「いったい、君やゴーストトレイノは何者なのか、わかったか」「僕達は、、僕達は、そう、情報ユニットが実体化されたものだ」北の詩人はそこまで言うと、突如、その場に倒れた。自分白身の記憶の復活があまりに強烈だったのだ。これは事実々のたろうか。イメージ脳がくるったのか。そう、北の詩人は考えていた。 脳裏には、かつてアー・ヘブンに似たモノ、動く″木″、に記号を印した事を思い出している。すっと昔の事だ。『かしのきに、ナイフでしるしを……』(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第8回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.08
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」北の詩人は考えていた。私はどこへ行くのだろう。北の詩人は、ユニコーンから降りて、大球と小球をつなぐ「コード」の中間地点である通路に腰かけていた。やがて、北の詩人は、通路の奥、つまり「小球」側に近い所から大きな音が響いてくるのを聞いた。伺だろう。北の詩人は、すぐに立ち上がると、ユニコーンに音のした方向へ進むように命じた。 ゴーストトレインは、倒れているアー・ヘブンの体をさぐる。かま首をヘブンの体にあてる。鼻先から黒い舌の様なものが飛びでる。どうやら、今までにむさほり食った新機知の知いてはカいらしい。端をすこしばかり、かじってみる。 表面は固いクチニン質で被われている。この舌ざわりは、ゴーストトレインにが木というイメージ 語を、意識巣から思いおこした。 同時に、レール。枕木という単語が、意識巣から、頭の中に、こぼれ落てくる。 このイメージはすぐさま、ゴーストトレインの支配者である[天宮]へ送られた。 天宮は木というイメージ語から、自分の体を構成するモノとの相似に愕然とした。「木だと。誰なんだ。誰かが、私に何かの信号を送っているのかもしれん。私は長い間、眠りについていたのだ。私の覚醒におびえている者がいるかもしれん』 天宮はコードにいるゴーストトレインに命令する。『ゴーストトレインよ。その侵入者を食べるな。侵入者を積み込み、大球へ戻ってこい』 北の詩人は、ようやく、その場所へ辿りついていた。目の前でゴーストトレインが伺かを食べようとしていた。 よく見るとゴーストトレインは、その何かを噛まずに、飲み込もうとしていた。北の詩人にとって、飲み込これたものの姿は、彼のイメージ脳をいたく刺激した。 北の詩人の眼から、いつしか温いものが流れていた。 「この液体は! ああ、そうだ、「涙」というんだったな」 北の詩人は独りごち、手で涙をぬぐう。『なぜ、涙が流れるのだろう。それにこの心の奥から湧いてくる切ない気持はなんだろう』 さわりたい。あのアー・ヘプンの体にふれてみたいと北の詩人は思う。 なぜか、北の詩人は、その物体がアー・ヘプンという名を持つ生合体である事を知っていた。 北の詩人の手は、ゴーストトレインの半透明々体を貫き、すでに消化器に入っているアー・ヘブンの体をなでまわした。 ゴーストトレインは、いつの間にか詩人が現われた事や、さらに自分の体の中の生合体をさわって泣いている事に驚いていた。 ゴーストトレインは、北の詩人を見た。一体どうしたのだという表情で。『いったい、この侵入者は伺なのだろう。かつて、大球と小球をつなぐコードにある透視層を突き破った生命体はいなかった。それになぜ北の詩人が泣いているのだ』 ゴーストトレインは、不思議に思った。「ねえ、北の詩人、君は、この生合体を知っているのか」「いや」 北の詩人は首を振る。そして続けた。 「知らない。が、とてもなつかしい気がするんだ。この侵入者に触れてみたかったんだ」 「なつかしいだって? どんな気分々のか、俺にはわからないなあ。とにかく、俺は「天宮」さまから命令を受けている。この生物を「大球」までつれて帰れとね」 ゴーストトレインは、寂びしそう力顔をしている北の詩人に尋ねた。 「俺と、一緒に来るかね」 「いや、僕はユニコーンに乗せてもらうよ」 「そうか、それじゃ、俺は先にいくぜ」 北の詩人は、後をふりかえってユニコーンを呼んだ。 ユニコーンは、対のふたつに分かれた死体のそぱにいた。ユニコーンは無心に死体にしゃべりかけていた。「君は、どうして、僕と一緒に実体化しなかったのだろう。僕は待っていたんだよ。いつの間にか君が僕達を追いこして、コードにはいっていたなんて……」「ユニコーン、こっちに来てくれ」 今度は、北の詩人の声が聞こえたらしくユニコーンは、北の詩人の側にやってきた。詩北の詩人の様子に驚く。 「どうしたんだい、泣いているのかい。何か、悲しいことでもあったのかい。そう泣かないでかくれよ。僕も、彼女が死んでいるのを見て驚いているんだ」 北の詩人が、心配そうに尋ねた。「彼女だって、あのユニコーンか」「そうなんだ。情報ユニット「ユニコーンの旅」とは、僕と彼女の小球への旅々なんだ」「そうか。悪い事をしたんだね、僕は」 北の詩人は、また泣き出した。「しかたがないよ。もう彼女は生き返りはしない。早く、僕の背中に乗りなよ。ゴーストトレインを追いかけるんだろう」「頼むよ」「でも、なせ、ゴーストトレインに乗せてもらわなかったんたい」 北の詩人は答えす、首を左右にふった。「わかったよ、泣かないてくれよ。僕もとても悲しいよ」 アー・ヘブンは、ゴーストトレインの腹腔で、徐々に回復しつつあった。傷ついた表皮は復原機能が働き、元に戻りつつあった。 アー・ヘブンは自分の体が、振動しながら移動していることに気づく。体が空中に浮かんでいる。 空気が高密度に収斂し、動いている。空気の構成因子が膨張し、実体化され、ゴーストトレインという一つの生体機械を作り出しているのだ。 ゴーストトレインの車体部分はほとんど古代の動物そのものであり、しかも半透明だった。 アー・ヘブンは腹腔の中にとらえられたままでいようと思った。そうすれば、天宮の元まで、おのずと連れて行ってくれるだろう。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.07
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第6回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」アー・ヘブンは意識をとり戻す。奇妙な液体がアー・ヘブンの体をとりかこんでいる。アー・ヘブンはすばやくこの液体の成分を分析する。 塩分、鉄分、鉱物資源を多く含む液体層。それが透視層だった。 この中で生物体はやすらかに眠り、その眠りの間に、生体や生体細胞、生体情報が、すみからすみまで分析される。 アー・ヘブンは,層内には数々の星の、種々の精一構造を持つ星人の意識が浮遊しているのを読みとっていた。それらの意識は、スパイダーネットによってつかまえられた星人の意識なのだろう。 この透視層に浮かんでいる星人の意識は、色々な事を叫びつづけている。幻想的なイメージでー杯なのだ。そのイメージは一種、心のトリップをかもわせ、アー・ヘブンも興昧屎かった。 私も、そんな意識因子になるのか。アー・ヘブンは、快いまどろみの中でそう感じた。それもいいかもしれない。ハーモナイザー末端部の個性群体に属していた時の気分に戻っていた。 羊水の中にいるようだ。 アー・ヘブンの心は、さまよっている。 それはとてもいい気分であり、、長い宇宙飛行のあとの休息、、それに、体もバラバラに解体され…… すでに「アー・ヘプンの切り離された肉片」が解けて、同化しようとしていた。 『何をしている、アー・ヘブン』 心の奥で光るものがあり、それがまどろみをさえぎろうとする。 『アー・ヘブン、お前の使命は何だ。それを思いだせ』 その声は明らかに怒っていた。 アー・ヘブンに言いきかせている何かが、アー・ヘブンの心のどこかにいた 『その透視層の中から抜け出せ。溶液の中から逃げ出すのだ』 光の声は、そう叫んでいた。 まどろみたい、この安らかな溶液の中で。 意識が再び沈んでいきそうだった。相反する二つの意志。アー・ヘプンの心はまっ二つに分裂する。そんな気がする。どうすればいいのか。自問自答する。 意識の中の光が、働いていた。『はい出すのだ」 アー・ヘブンは、自分の球体に内包している全ての触手を、全開した。 3番目の触手が、透視層の外壁を一気に突き破っていた。 破れ口は拡がり、溶液は流れ出て、勢いにのって、アー・ヘブンも押し出された。 溶液に含まれている種々の星入の意識が、コードの内壁に拡がる。それらはバチバチと音をたてて、コード内に張りめぐらされた「天宮」の神経糸を刺激した。 アー・ヘブンは、しばらく倒れていたが、肉体としてなんとか立ちあがる。アー・ヘブンはの視覚組織は、自分の目の前にいる生物体を読み取っていた。、 その生物体はたしか、、、、。 天宮に関する知識を、プレイバックする。 「そぅだ、新機類か」 アー・ヘブンは、思い出していた。 このユニコーンは、ハーモナイザーが作り出したものだ。そう確か、ハーモナイザーが天宮を監視するために、新機類と呼ばれるユニコーン型の観測機械を大球上に配置したはずだ。 が、何かが少し違っている。 アー・ヘブンは、ユニコーンに意識を送り込み、意識を融合しよぅと努めた。しかし、アー・ヘブンの意識は、はじきかえされた。やはり変だ。ユニコーンの意識に同化できない。 ハーモナイザーの意識の一部であるならば、たやすく「アー・ヘブン」と内部で意識融合できるはずガのだ。が、意識の融合現象は、おきなかった。 あきらかに、そのユニコーンは何ものかに加工されたに違いなかった。 アー・ヘブンはゆっくりと、ユニコーンヘ近づく。 それより先に、ユニコーンの方がアー・ヘブンヘ接近してくる。ユニコーンは勢いづいていた。ユニコーンの角がキラリと光っている。眼には憎しみの感情があふれている。 感情だと! それも憎しみの!アー・ヘブンには理解しがたかった。憎しみの感情がまだ残っているのか このような感情は、ハーモナイザーの世界には存在しないはずだ。憎しみの感情が、こんきに原始的な形で存在しているなんて! アー・ヘブンは、未知の異なる存在に対する反応をおこしていた。 ユニコーンは、あきらかに、私アー・ヘブンを抹殺しようとしている。 「抹殺!」 何んという、原始的な感情なのだろう。 が、アー・ヘブンも古い本能を思い出していた。それは、先刻、透視層をつきやぶった時から、徐々に、アー・ヘブンの心を浸しつつあり、自分でも統禦できないものだった。 「身を守る」という概念が、古い意識の下から蘇ってきていた。 ユニコーンの角は、アー・ヘブンの第一表皮に接触した。 瞬時、アー・ヘブンは自らの体内エネルギーを解き放っていた。ユニコーンは動きを止め、胴体の真中からばっくりと二つに割れた。腹腔から、ずるっと内臓があふれ出た。湯気をあげているそれは、機械内臓ではなく、有機体のそれだった。アー・ヘブンは第一触手を、ユニコーンの体内に這わせ、神経記憶を読みとろうとした。『彼女が目ざめた時、すでに連れはいなかった。彼女は彼と旅をするはずだった。どうやら「北の詩人」という存在とすでに旅立ったらしい。彼女、ユニコーンは、彼「北の詩人」を求めて、大球をさまよった。が、大球では見つけることができなかった。しかたなく、彼女は、コード内に侵入し、異物とそうぐうしたのだ:・・「この記憶は……」アー・ヘブンがユニコーンの記憶に驚いた一瞬、危険という概念が、電撃の様に体を貫いていた。巨大な物体に、アー・ヘブンははじき飛ばされていた。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第6回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.06
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第5回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」ユニコーンと北の詩人が歩みはじめた、その地下、つまり「大球」の奥深く存在する純粋思考体、新しく目覚めたばかりの「天宮」は異物の飛来を気にやんでいた。そしてまた、「大球」の鉄表面でも、大いなる生態系の変化が、起こっている。つまりは、すでに大球の表面に生棲していたハーモナイザーからの監視者=ユニコーン達、新機類、はゴーストトレインが喰いつくしている。覚醒したる「天宮」は、情報ユニット「ゴーストトレイン」を実体化させると同時に、その「ゴーストトレイン」の感覚を共有している。つまり、「天宮」イコール「ゴーストトレイン」。そして、不思議なことに同じく実体化させた情報ユニットである「ユニコーン」と「北の詩人」の心情、感覚も理解して、共有しているのだ。覚醒したる「天宮」は、「大球」の鉄の表面には、存在しえない生物体を実体化させ、「大球」「小球」の生命生態系を、大いに改革しょうとしている。まるで、別の星になるように、、何匹めかのユニコーンを倒した時、「大球」につながる「小球」に存在るう大いなるハモナイザーの監視機構「生命球」から、危険信号が天空にむかい放たれたのを、機械群の共生体「天宮」は感じていた。さらに、むずがゆさとでも呼べばいいのだろうか、ある種の奇妙な感覚を天宮の予知能が感じていた。目覚めたる機械群の共生体「天宮」にとっての「敵の存在」である。「生命球」以上の存在。ハーモナイザー?、しかし、今感じる脅威は、それではなかった。「天宮」、その気持は、新機類を喰いつぶした時のゴーストトレインの様な荒々しい気持とは異なっている。何か細やかな手ざわりを持つもの。そう、なつかしい人?の手?のイメージが、天宮の全感覚の中にひろがっていく。人? 手? それは、何だ。「天宮」には記憶にない。あるのかの知れないが思い出せない。やわらかき手。そして人間のイメージが、、。しかし、天宮は、そのやわらかい手によってにぎりつぶされるイメーージを描いた。「自分は滅びるかもしれない」、そんな予感を、覚醒したばかりの「天宮」は感じているのだ。ハーモナイザーの使徒、「アー・ヘブン」の空間飛翔体、つまり「胞子」は、急に襲ってきた「粘性の網」に包まれている。胞子の持つ推進力が、この粘着力のある網に対してはまったく作用しないのだ。あらゆる方向に動くことは動くのだが、一定の距離に達すると、反作用でまた元の場所へ戻ってしまう。つまりは、アー・ヘブンはみごとに敵の手中に陥ったようだ。ここは「敵」の勢力圏の中である。「敵」イコール、ハーモナイザーせざるモノたちである。恒星「タンホイザー=ゲイト」の中心部、緑色の液体で充たされた空間。その場所に浮遊する巨大な″木″。″木″は意思の集合体であり、「ハーモナイザー」と呼ばれる。この粘性のネットは、俗に「スパイダー・ネット」と呼ばれている。「天宮」は、小球をチューナー部分として使い、自分の膨大な情報ユニットが持つ、色々なイメーージを宇宙にまき散らし、そのイメージ像に、興味を持った宇宙船を呼び寄せていた。 そして、その宇宙船を、大球と小球を結ぶコードから発射される「スパイダーネット」でからめとっていた。 「天宮」は、その船のメインデータバンクや乗員から全宇宙の知識を盗み出していた。「天宮」は、自分の存在を検証しているのだ。自分とは何か。そして何のために存在するのか。そして大なる覚醒の意味合いは、何なのか? アー・ヘブンの乗った胞子は、ゆっくりとコードヘ引き寄せられていた。 ハーモナイザーの使徒、アー・ヘブンは、自分の分かれている位置をじっくり観察する事にする。 まっ黒な表面で包まれている「大球」のまわりをゆっくり「小球」がまわっている。小球は大球の何分のIかの大きさで衛星のようだった。 睡眠学習によれば、「大球」は、遠い昔、ハーモナイザーと争い、敗れたとの事。その時、「大球」はみずからの意志で、大球表面上の生き物をねこそぎ滅ぼした。 大球が黒い表面、鋼鉄で被われているのは、ハーモナイザーによって封印されたからだ。宇宙の邪悪な星として。 睡眠学習を再生中のアー・ヘープンの体にいきなり激しい衝撃が伝わる。 アー・ヘブンの意識は停止した。 ついに胞子は、スパイダーネット」によってコードまでたぐり寄せられ、凄まじい圧力を加えられた。「胞子」は圧力で消滅しアー・ヘブンは裸のままとり残される。アー・ヘブンのまわりを包み込んでいた胞子の構成要素は瞬時に消え去っていて、 破片を分析しようとしてコードからはりだした、「天宮」の「感覚枝」は、むなしく空をがでた。「感覚枝」は天宮の、実在化する神経細胞であり、手の役割をする。感覚枝は、代りに、とり残されたアー・ヘブンの体をとらえた。コードの一部に穴が開き、感覚枝はアー・ヘブンをその穴の中へ引きずり込む。感覚枝は、アー・ヘプンを、巨大&プールヘと送り込む。このプールは、コードにある透視層で、生命体が解析される場所だった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第5回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.05
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第4回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」北の詩人は、目ざめた。あるいは 意識が戻ったという方がいいのだろうか。とにかく、その時、彼はユニコーンの背中にのっていた。 突然、どこかの世界から、この世界へ転移されたような気分だった。 ユニコーンの背中の乗りごこちは気持よく、首すじの毛をそっとさわってみる。ぞくっとする。何とやわらかな手ざわり々のだろう。北の詩人は、ユニコーンに言った。「さあ、ユニコーン、行っておくれ、君の望む方向に」なぜ、この生物がユニコーンという名前なのか、とにかく、詩人の口を通じて出た最初の言葉だった。目のの前に、別のユニコーンがこちらを見ていた。そのユニコーンは、詩人が乗っているユニコーンとは異なっていて、悪意というものが感じられた。北の詩人の詩人には、その前のユニコーンのコードネームが、新機類「ルウ502」であり、ハーモナイザーの観察機械、というイメージが浮かび上がってくる。しかし、意味自体は、北の詩人には、コードしてしかわからない。その言葉の意味は理解できなかった。その、悪意を持つ「ユニコーン」は、背後から急速に接近してきたゴーストトレインにはじきとばされた。ゴーストトレインは、倒れたユニコーンの側へもどってきて、死体を確かめ、ユニコーンをうまそうに食べ始めた。その姿に、北の詩人は思わず顔をそむけた。どれくらい、時がたったのだろう。北の詩人は、暗い鉄表で被われた大球の上をユニコーンと一緒に移動し、やがて、一つの穴の前にたった。その穴は、空間にのびていて、どうやら小球という大球の衛星へと続く道の様々のだ。コードだった。 北の詩人とユニコーンは、その穴へと人っていった。なぜ自分がここを歩いているのか自分自身でも理解していなかった。 記憶なのだろうか、北の詩人の心を激しくとらえたのは、ユニコーンが、ゴーストトレインの餌食となったのをながめた瞬間の、胸をしめつける感覚なのだ。 その視覚イメージに触発されて、詩人の頭の内で何かが爆発し、言葉という古い記号が、自分自身のイメージ脳の泉から湧きあがってくるのを感じていた。 さらに奇妙なのは、詩人の情感が何かわけのわからない巨大々存在に扱い取られているような気がすることであった。 北の詩人はイメージする。 私は何かの感覚の末端であり、情報を、視覚と、それから誘発される言語記号で巨大なものに伝えているだけの存在ではないだろうか。 空気というものが、濃密にたまり、流れ、それが風という記号で呼ばれている事を、詩人は思い出していた。 風は、詩人が行くべき方向を示しているようでもあった。 地下道は、血脈のようなもので被われていて、天井には、その血脈から派生した網もはりめぐらされている。 詩人はユニコーンに言った。「さあ、風の吹いてくる方向に向かっておくれ」 ユニコーンと北の詩人は、「大球」と結ばれている「小球」への道を歩み始めていた。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第4回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.04
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第4回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」●動画manga_traininghttp://www.yamada-kikaku.com/北の詩人は、目ざめた。あるいは 意識が戻ったという方がいいのだろうか。とにかく、その時、彼はユニコーンの背中にのっていた。 突然、どこかの世界から、この世界へ転移されたような気分だった。 ユニコーンの背中の乗りごこちは気持よく、首すじの毛をそっとさわってみる。ぞくっとする。何とやわらかな手ざわり々のだろう。北の詩人は、ユニコーンに言った。「さあ、ユニコーン、行っておくれ、君の望む方向に」なぜ、この生物がユニコーンという名前なのか、とにかく、詩人の口を通じて出た最初の言葉だった。目のの前に、別のユニコーンがこちらを見ていた。そのユニコーンは、詩人が乗っているユニコーンとは異なっていて、悪意というものが感じられた。北の詩人の詩人には、その前のユニコーンのコードネームが、新機類「ルウ502」であり、ハーモナイザーの観察機械、というイメージが浮かび上がってくる。しかし、意味自体は、北の詩人には、コードしてしかわからない。その言葉の意味は理解できなかった。その、悪意を持つ「ユニコーン」は、背後から急速に接近してきたゴーストトレインにはじきとばされた。ゴーストトレインは、倒れたユニコーンの側へもどってきて、死体を確かめ、ユニコーンをうまそうに食べ始めた。その姿に、北の詩人は思わず顔をそむけた。どれくらい、時がたったのだろう。北の詩人は、暗い鉄表で被われた大球の上をユニコーンと一緒に移動し、やがて、一つの穴の前にたった。その穴は、空間にのびていて、どうやら小球という大球の衛星へと続く道の様々のだ。コードだった。 北の詩人とユニコーンは、その穴へと人っていった。なぜ自分がここを歩いているのか自分自身でも理解していなかった。 記憶なのだろうか、北の詩人の心を激しくとらえたのは、ユニコーンが、ゴーストトレインの餌食となったのをながめた瞬間の、胸をしめつける感覚なのだ。 その視覚イメージに触発されて、詩人の頭の内で何かが爆発し、言葉という古い記号が、自分自身のイメージ脳の泉から湧きあがってくるのを感じていた。 さらに奇妙なのは、詩人の情感が何かわけのわからない巨大々存在に扱い取られているような気がすることであった。 北の詩人はイメージする。 私は何かの感覚の末端であり、情報を、視覚と、それから誘発される言語記号で巨大なものに伝えているだけの存在ではないだろうか。 空気というものが、濃密にたまり、流れ、それが風という記号で呼ばれている事を、詩人は思い出していた。 風は、詩人が行くべき方向を示しているようでもあった。 地下道は、血脈のようなもので被われていて、天井には、その血脈から派生した網もはりめぐらされている。 詩人はユニコーンに言った。「さあ、風の吹いてくる方向に向かっておくれ」 ユニコーンと北の詩人は、「大球」と結ばれている「小球」への道を歩み始めていた。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第4回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」●動画manga_traininghttp://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook
2011.11.04
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」一つの恒星がある。名前を「タンホイザー=ゲイト」という。星の中心部に緑色の液体で充たされた空間があった。 そこに巨大な″木″が浮遊していた。″木″は意思の集合体であり、自らをハーモナイザーと呼んでいた。虚空からの信号をハーモナイザーは受けた。彼はその信号を分析し、推理した。その信号は小球にある「生命球」の消滅を意味していた。同時に一つの決意が、彼の意識の中で生まれた。ハーモナイザーの末端部へ、中央神経叢を通じ、一つの刺激が送られた。ハーモナイザーの末端部には、数多くの個性群体が付着していた。それぞれは、小さな球体であり、それがまるで根に付着しているように群体を構成していた。個性群体のひとつである「アー・ヘブン」は夢みていた。たゆとう羊水の中で夢みる事を楽しんでいた。アー・ヘブンの個性がいつ、どこの星で生まれ、また、いつハーモナイザーに同化されたのか、その記憶は消え去っている。『アー・ヘブン、目ざめよ』突然、声がアー・ヘブンの体の中に響いていた。誰だ。この快いまどろみの中で私をめざめさせるものは。アー・ヘブンは怒りを感じた。『アー・ヘブン。使命を与える。すぐに旅立つのだ』使命を与えるだと、誰が、いったい、何の権利があって、私を目ざめさせるのだ。おまけに旅に出ろだと、何を言っているのだ。『アー・ヘブン、それが、お前の運命なのだ』運命だと、そんなものなど、とっくの昔に忘れてしまった。私に何をさせようというのだ。『アー・ヘブン。お前は一つの世界を作るのだ、私の代理人として』世界だと、世界とは何だ。それにそんなに価値を持つものなのか、世界を作ることが。『アー・ヘブン。動け。分前が自ら動こうとしないのなら、私が動かす』あー、やめてくれ、私はこの羊水から離れたくがいのだ。しかし、無情にもアー・ヘブンの球体は末端部から切り放され、ハーモナイザーの導管に吸い込まれた。上へ上へと扱いあげられる。 アー・ヘブンの球体の上から何かが、かぶせられたのを、アー・ヘブンの意識は感じた。 何かをかぶせられたまま、導管の内にあるアー・ヘブンの体は急激に加速度を増し、羊水の外、さらにはタンホイザー・ゲイトの外へとはじきとばされた。 アー・ヘブンの体を包んでいるのは「胞子」と呼ばれる飛翔体だった。アー・ヘブンの体は、タンホイザー・ゲイトから離れてゆく。アー・ヘブンは、自分の故郷、タンホイザー=ゲイトを観察する。真中に緑色の輝きが見えた。羊水湖の輝きだった。私はあの中で眠っていたのだ。できれば戻りたい。そうアー・ヘブンは思った。しかし、「胞子」は回転しながら、太陽光流に乗り、銀河を横切って行く。 長い旅路になるだろう。そうアー・ヘブンは感じていた。そして、自らの体を冬眠状態においた。 アー・ヘブンも、また一つの運命を荷っていた。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.03
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第2回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」新機類である、ユニコーン、「ルウ502」はどこまでも拡がる鉄表の上を四つの足で駆っている。眼の前に拡がるのは、鋼鉄の荒野。いや荒野と呼ぶのさえ、不適当だろう。つるりとした冷たい鉄で被われていた。 ルウ502の生体機能は充分に活性化していた。活発に働いている内臓機構や機械筋肉がルウ502に快い気分を与えていた。荒野から絆が生え出ていて、それは上空に消えている。大球と小球を結ぶコード。がそれだ。衛星、小球に存在する生命球が、ルウ502たち、新機類に命令を授けているのだ。まさに、天の糸である。大球、つまり鉄の表面を疾駆するルウ502は、『ああ、俺は生きている。駆けている』 そんな充実感があった。 が、ルウ502の顔にあたる空気流が急に温かくきり、かまけに生体液のすえた臭いがした。 『うっ、この臭いは』 その時、生命球から『ゴーストトレインが出現した』という情報が入力された。ああ、なんという連絡なんだ。そんな連絡などなけれぱ、ルウ502はずっと快適に走れていたのに。 急に走るのがおっくうになる。 ゴーストトレイン。 この「生物的な動きをする一連の機関車・列車群」は、あるいは幻想かもしれなかった。というのは、ゴーストトレインが実際に走っている姿を見たルウ502の仲間はいない。 とにかくそいつはレールもないこの鉄表面を自在に走り廻り、ルウ502たちの仲間をひき殺しているという。 前方に仲間の新機類たちが集まっているのが見えた。ルウ502はどうやら目的地についたようだ。 犠牲者はルウ300たった。首がへんに左角度に折れ曲がり、角は抜きとられていた。腹腔が無惨に破られ、内臓機械がはみてていた。 ゴーストトレインはルウたち斯様類をくいちぎり、内臓をくらうという。それも情報回路が集積されている心臓部分を。 ルウ502は身震いをした。不快感から全身の汗腺穴が収縮した。が、冷静に観察しなければならない。 ルウ300の赤外線アイが色相変化している。かわり果てた姿としかいいようがない体。 角からコードがはみでているのも、物悲しい。 一番大切な角。 この角で、ルウ502達は衛星、小球にある「生命球」へ連絡をとっているのだ。 収集した現場データをルウ502は生命球へと送った。 しばらくして、ルウ502達全員に、生命球から命令が下った。 『ゴーストトレインの存在を確かめよ』 新機類たちは四方八方へ飛び出した。ルウ502も無限に拡がる鉄表の上を、つめが生えた節足で駆ける。 , 二、三クロノタイム走っただろうか。平原にはまるで変化はなかった。 ルウ502は急に停止する。角が感応する。何かが存在する。が、この鉄表上には何者も存在するはずがない事を、ルウ502は理解していた。 何しろ、この「大球」、つまり巨大な鉄の球の表上では、ルウ502たち、新機類しか生存していないのだから。 が、何かが反応していた。そいつは今、動いてはいない。 ルウ502の数m前の鉄表が白熱していた。 白熱部分にルウ502はゆっくりと焉ついていく。そいつは白熱部分の中から姿を見せていた。 自分の赤外線アイがこわれたのてはないか。ルウ502はそう思った。なぜなら、そいつはルウ502とうり二つなのだ。 が、体の中に機械が存在しない。かまけに、そいつの上には別種の醜い生物が乗っていた。 ルウ502達断機類とはまったく異なる存在だった。こんな生命体がいるとは信じがたい。 醜い生合体が、ルウ502にそっくりな生命体に音を使って意志を告げていた。ルウ502はその空気振動を解析した。音はこういう意味らしい。 『さあ、ユニコーーン、私、北の詩人と行こう。旅行しょうじゃないか。この大球をね』どうやら、そいつは、微笑んでいるようだ。つまりルウ502に対して、友好的な態度を見せているのだ。 驚きの連続でルウ502は一所に静止していた。 それゆえ、急激に接近してくる別の物体に全く気づかなかった。 一瞬、ルウ502の体は、巨大な物体にふき飛ばされていた。 ルウ502の赤外線アイは二本の光帯を一瞬見た。 ゴーストトレインだった。 ルウ502の生命光が消えるのと同時に、20メートルもの体長のゴーストトレインはかま首をもたげ、愕を開け、ルウ502の腹腔を喰い破り、心臓をむしゃぶり始めた。 ゴーストトレインの顔は、うれしそうに笑っている。おいしいのだ。ルウ502の体が。ゴーストトレインの先頭部に口となっていて、ぼろぼろと、ルウ502の内臓のあたる、機械部品が転がり出てくる。「大球」から遠く離れて存在する「小球」。その「小球」中心部に機械パネルで被われた生命球が存在していた。生命球はハーモナイザーの分身であり、また監視機類の元締であった。生命球は大昔、ハーモナイザによって、小球に組み込まれ、新機類を生みはぐくんできた。■生命球は、ルウ502の最後に送ってきた映像を分析していた。なぜ、新機知しか存在しないはずの鉄表に、生命体がいたのか。それにあの白熱は何を意味するのだろうか。『まさか、天宮がめざめたのては』何かが大球の中でかこっている。ハーモナイザーによって、大昔、「封印された大球」の中で。その頃、大球と小球をつなぐ絆に,変化がおこっていた。蘇った機械共生体「天宮」が神経糸を張りめぐらそうとしていたのだ。生命球は、大球上の、すべての新機類を呼びだしてみた。ゴーストトレインを捜索中のはずだ。が、どこ個体からも、応答がまったくない。こんな事は今までになかった。生命球が始めて感じたパニックだった。生命球は自らの体を移動し、バリヤーヘ逃げ込もうとした。が、パリヤーは生命球を包み込むと、収斂した。『これは、どういう事だ』バリヤーは生命球の意図に反して作動している。すでに、天宮の「神経糸」が小球へ侵入していた。生命球はバリヤーにからみとられ、動けない。表面パネルが音をたてて吹き飛び、各部位がめり込んだ。数秒後、「生命球」は圧力に抗しきれずづフパラにはじき飛んだ。生命球は消滅する時、信号を発する事が自分自身の存在理由であったことを理解していた。やがて、生命球の破片を天宮の神経糸がつかまえた。いまや大球と小球は完全に、機械共生体の支配下にはいっていた。それは天宮(てんきゅう)が一つの運命の道を歩み始めたことを意味した。■大球上では、醜い生合体がゴーストトレインに言った。「おいおい、僕の乗り物を奪うんじゃないって」「北の詩人よ。では、新しいユニコーンを再生してやろうか」ユニットコードナンバー 16589ユニットタイトル 北の詩人ユニットコードナンバー 836250ユニットタイトル 幽霊列車(ゴーストトレイン)ユニットコードナンバー 386574ユニットタイドル ユニコーンの旅彼らは、、機械群の共生体「天球(てんきゅう)」のイメージコーダーが作り出した創造物であった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第2回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.02
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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第1回●全12回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」それは、小さな石だった。石は隕石となり、「大球」と呼ばれる星に落下した。大球は、「小球」と呼ばれる衛星と絆で結びついている。大球には、「新機類」と呼ばれる生物が生息していた。「ルウ502」は、天空を走る光の矢を見ていた。ユニーコーンつまり、一角獣の外形をした新機類ルウ502にとって、隕石は見慣れた現象であり、注意をあまり払っていない。 警戒すべきは、ルウ502の足元、つまり鉄表下であると、教えられていた。その教示は[小球]にある「生命球」から与えられていた。 念のためだ。そう思ってルウ502は、隕石の堕ちた場所を求め、走った。やがてその場所に辿りつく。落下地点の鉄表には、何の損傷も見られなかった。 大いなる昔、ルウ502達が誕生する前から、この星、大球に張りめぐらされた鉄表は、時の流れをあざわらうかのごとく、傷ひとつ付いてはいない。「ハーモナイザー」と呼ばれる大球の創造者に対して畏敬の念がルウ502の心に浮かんだ。ハーモナイザーは、ルウ502にとっても想像を絶する存在で必った。ともかくも、鉄表には何の変化もない。よかった。彼は安堵し走りさった。もし、ルウ502が辛抱強い観察者であったなら、微妙な地下の変化をとらえていたかもしれない。その変化を感じて、小球の生命球に通報していたならぱ、あるいは、この星の歴史が変わったかもしれない。事実、隕石は鉄表下に存在するあるもののつぼを直撃していた。隕石が鉄表に激突した時の微振動は、ある種の反応を、地下に呼びおこししていたのだ。。 鉄表の下、奥深い所に、闇に包まれた空洞がある。はるかなる昔からここに閉じ込められた者のうらみがこもっている。 隕石の与えた微振動に、「機械共生体」が反応し、生きかえりつつあった。 突然、一点に光がともる。 その光が、またたく間に、空洞内にある機械類を巡り、すべての機械群の息を吹きかえらせた。最初の機械意識が蘇った。『誰だ、俺は』 闇の奥から疑問の声があがる。機械は自らの存在の意味をさぐろうとする。やがて、機械意識は自らの名前を思い出した。『そうだ。思い出したぞ。俺はイメージコーダーだ」イメージコーダーは次の作用として、体を勣かすことにした。腕=マニュピュレーターだった。マニュピュレーターを振り廻している内に、自分の前に集積された物体にづく。 「何だ、これは」次の疑問だ。目の前にある「植物繊維群」の呼称を記憶の中から呼びかこしていた。「情報ユニットだったな、たしか」 これは何をするものなのだ。 マニュピュレーターで、それをつかみ、観察する。「ああ、そうだ。こいつはこう使うんだ」やがて、イメージコーダーはそれを自分の体一部位に組み人れた。 マニュピュレーターが、偶然に選びとった三ユニットは次の通りである。ユニットコードナンバー 16589ユニットタイトル 北の詩人ユニットコードナンバー 836250ユニットタイトル 幽霊列車(ゴーストトレイン)ユニットコードナンバー 386574ユニットタイドル ユニコーンの旅イメージコーダーの温度が上がり、彼は自分の役割を果たし始める。 役割すなわち、情報ユニットのイメージを実体化させる事。イメージコーダーの空間に、情報ユニット内に内包された情報の三次元数字が打ちだされる。それが線を形づくり、フレーム=モデルが作りあげられる。色彩が決定され、ゆっくりモデル表面がペイントされながら作成される。 やがて、生き物が実体化していた。徐々に、機械群の共生体「天球(てんきゅう)」に意識が蘇りつつあった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第1回●(1987年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.01
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