やまぶろぐ・登る呑む撮る滑る山ブロガー

2022/05/23
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カテゴリ: 登山

毛勝谷滑走 ​であった。

やまやろうは、山スキーなる言葉がメジャーになる前から、ファンスキーの可能性に気付いて、毛勝谷を滑っていた。それが2001年。G会に入る前のこと。

その時はまだ「やまぶろぐ」は存在していない。が、とあるホームページに山行記録を投稿していたのだ。今で言う、山岳ライターのようなものだ。

山行記事と写真を投稿して、お小遣いをもらうというのは、これと言った強味のないやまやろうにとっては、自己肯定感を高められる素敵な活動であった。

掲載された山行記録に毛勝谷をファンスキーで滑走したものがあるので、載せてみようと思う。

読み返してみると、どうかなという文章だ。敢えてそのまま掲載してみよう。





2001年6月10日
タイトル:ライチョウを 見れば雷雨の 毛勝山

魚津市民にとって、毛勝山は特別な存在である。市内の背後にそびえる毛勝三山を毎日眺めれば、残雪の春、新緑の夏、紅葉の秋、新雪の冬と四季の移り変わりを知ることができる。

ゆったりとした山容をもつ隣の僧ヶ岳より、私は毛勝山に心惹かれる。理由として、毛勝山は登山道がなく、登山時期が残雪期のみという期間限定の山だからである。

私は今年のゴールデンウィークに毛勝山に初登頂し、この上なく感動した。登頂したことで毛勝山の魅力にとりつかれ、さらに詳しく知りたいと思い、今回は山頂付近からスキー滑降を試みることにした。

車で片貝川沿いを走り、阿部木谷に入る。残雪で道が絶たれているところが出発地となる。早朝5時過ぎに到着したが、すでに何台か路肩に駐車している。

多くの登山者がゴールデンウィークから6月にかけての残雪期に集中する。過去に雑誌で紹介されたことがあるらしく、それから人気が出たようだ。

愛用のファンスキーをザックに固定し、ピッケル片手に5:28出発する。残雪はすぐに途切れ、コンクリートの道を歩く。発電所施設を過ぎると、道はところどころ崩落し、潅木が行く手を遮る。

5:53に阿部木谷13号堰堤に着く。ここからは谷底いっぱいの雪渓上を歩く。雪渓の下からはごうごう音を立てて雪解け水が流れている。厚みのありそうなところを選んで歩く。谷の両側にそそり立つ岩壁は幾筋もの滝を引き、鳥の声が響き渡る。

6:24標高 1250m付近の大明神沢出合いからアイゼンをつける。ここから左の毛勝谷へと入る。岩がごろつく雪の谷である。先行パーティが150m上部に見える。追いつけとばかりペースを上げる。

毛勝谷ではひたすら上を目指す単調な作業を繰り返す。上るのに飽きた時に谷の景色を眺めてみると、朝日が谷の斜面を明るく染め、雲海を輝かせる。山頂での景色に期待し胸が高鳴る。

毛勝谷の上部は分岐しているので、左側(ボーサマ谷)に向かう。きつい登り斜面に何度もあえぐ。ボーサマのコルにだんだんと近づいていくのが励みになる。大明神沢出合いから2時間でコル(2365m)に到着する。右前方に釜谷山と猫又山が雲の切れ間に見える。

コルにスキーをデポし、もうひと踏ん張りして山頂に向かう。出発から3時間20分で山頂(2414.4m)に立つ。ボーサマ谷で先行パーティを追い抜いていたので、本日最初の登頂者となる。

残念なことにガスがかかっている。天気が良ければ釜谷山・猫又山から始まり、立山・剣から後立山連峰と、ぐるり回ってサンナビキ山・駒ケ岳・僧ヶ岳まで山並みが一望できたはずである。

三角点とそばの地蔵を入れて記念撮影する。バックは白一色!手に持つ「毛勝山」と書かれた板がなければ、どこの山か分からない。谷から吹き上げてくる風は冷たいが、茂みに隠れれば、風が当たらず快適である。

ガスが晴れるのを待ちながら、草の上でうとうとしていた。しかし小一時間経ってもガスは晴れない。暇なので早めの昼食。次々とパーティが登ってくる。記念撮影を頼まれたり、小宴会で山の話に花が咲いたり。2時間以上山頂でのんびりした後、お楽しみのスキーとする。

おそらく今シーズン最後のスキーになるとあって、気合は十分だ。コル直下から開始した。滑り始めは急なため、慎重かつ大胆に滑る。急斜面で腰が引け、滑落するのが最も怖い。なにせ両手はフリーで、滑落を止めるものはない。自分を信じてひたすら滑る。

雪面上の岩がターニングポイント。何度も休憩しながらゆっくり楽しむ。滑降の途中、ライチョウを草むらに目撃した。上る途中で谷間を飛翔する鳥を見て、「もしやライチョウでは」と気になったポイントであった。

こちらの姿を見て、とてとて歩いて逃げ出した。急いでザックからカメラを出そうとしたが、岩壁に上がりガスの向こうに消えてしまった。雨が降りそうで、カメラをザックにしまっていたのが悔やまれる。

それにしても毛勝山にもライチョウがいることに驚いた。ライチョウが現れるということは、天候悪化の兆し。ウェアに露がつき始め、谷が真っ暗になる。急いで下る。

下るに従い雪面は荒れ、デブリを避けて滑ることになる。

大明神沢出合いあたりから猛烈な勢いで、風と雨が叩きつけてきた。谷の下から雨交じりの強風が吹き上げてきて、スキー板を脱ぐ間に全身がみるみる濡れていく。

これまでに経験したことのない、激しい雷雨となった。谷の底には逃げ場はないに等しい。上空のあちこちで落雷が発生しているのが聞こえる。

これはかなわんとザックとピッケルを放り出し、離れた斜面に伏せていた。10数分間恐怖に耐えながら、雷雲が過ぎるのをひたすら待った。

雨が小降りになったところを見計らい、飛ぶように走って下山した。13号堰堤まで下りて来たら雷鳴は止んだが、出発地に戻るまで安心はできなかった。

毛勝山スキー滑降は、見事達成した。ただ予想外の雷雨に遭遇したことで、突発的な天候の悪化に対処できるような備えが、常に必要だと実感した。





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Last updated  2022/05/24 07:39:41 AM


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