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2005.11.25
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カテゴリ: 米外交史
▼夢心地


ロレンツらが四人乗りの双発のセスナに乗り込むと、観光気分でベネズエラを楽しんできてくださいと、見送りにきていた大尉が言った。ロレンツには、その言葉を疑う理由はなかった。尋問は友好裡に終わっていたし、ロレンツの窮状にも理解を示してくれていたからだ。

セスナが飛び立つと、太陽が昇ってきた。素晴らしい光景だった。ヴェルヴェット・グリーンの山々が眼下に広がっていた。川がくねくねと流れ、何もかもが美しかった。

着いた場所は、シウダード・ボリバルというオリノコ川沿いにある最後の文明の地であった。川岸には小さな家が並んでいたが、人里遠く離れた僻地のようなところに思えた。ロレンツたちは、スイスの山小屋を小さくしたような家に連れて行かれた。タイルを敷いた中庭と菜園があった。年配の夫婦がプライベートホテルとして管理しているようだった。

のどかで、どこか孤立したそのホテルが、ロレンツの住みかとなった。ロレンツとモニカを連れてきた男たちは、「すぐに戻る」と言って、帰っていった。ラテンアメリカで「すぐに」と言えば、「3週間から3年」を意味した。

老夫婦はアデラとホセといった。政府から信頼されている人間らしく、ロレンツの使用人兼看守であった。買い物ができるような店はなかったが、必要なものはいつもそろっていた。

ホテルにはペットの犬とペットモンキーがいた。美しい小鳥たちもやってきて、平和そのものだった。ここでは尋問もなく、身の危険にさらされることもなかった。ロレンツには、モニカの世話をすること以外、何もする必要がなかった。

アデラとホセは、ロレンツの話し相手にもなってくれた。ただし、話題はいつもベネズエラの歴史といった無難なものに限られた。外部からはまったく遮断された世界で、テレビもなければ新聞もなく、新刊書もなかった。それでもロレンツは、人生において一番リラックスできたと感じていた。まさに夢心地であった。

3週間が経ったある朝、ホテルの門が開く音がした。そこにはロレンツたちをここに連れてきたパイロットが立っていた。






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最終更新日  2005.11.25 10:50:46
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