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SUZUKIスイフト・スポーツ試乗記。性能面はもういうまでもないでしょうが、注目は価格です。このクルマ、実際価格174.3万円です。 記事はWeb CG 笹目二朗レポートからです。
従来型ではMT仕様の販売比率が7割に上ったという「スイフトスポーツ」。これはスポーツカー好きのノスタルジアか?
ATの技術革新のおかげで、ギアシフトの面白さを実感する人は、かえって増えているように思う。指先でシフトパドルをシャカシャカするだけで、簡単に変速させてエンジンブレーキを使ったり、エンジン回転を下げて燃費を稼いだり容易に行える。もっとも、限られたパワーを有効に引き出す手段としてなら、今でもATよりMTの方が優れていることは知られている。
とはいえ、MTは操作する楽しみはあっても、クラッチ操作を苦手とする人もいるだろう。最近の技術はエンジンに低速トルクを与え、問題のクラッチ操作さえ“省略”してしまったが、それですべて解決かというと、そうではない。
さて、そこで「MTに乗ってみようか」と思った時、われわれの周囲にはMT仕様が手に入りにくい状況にある、という現実に直面することになる。スポーツカーでさえ、いまどきはほとんどがATなのにも愕然(がくぜん)とさせられる。
エンジンの排気量は1.6リッターと先代型と変わらず、自然吸気で136ps/6900rpm と16.3kgm/4400rpmを発生する。そして注目のMTギアボックスは5段から6段になった。1速で目いっぱい引っ張って2速に上げると、思ったほどクロスしておらず、回転落差は大きい。「なーんだ」とガッカリすることなかれ。その後が素晴らしいのだ。
スイフトスポーツの6MTは、2速以降、5速までステップアップ比を、ほぼ1.3にそろえている。そのおかげで、クロスレシオ特有の回転差の少ないアップダウンで、小気味よいエンジンのレスポンスを継続して味わえる。スロットルをほぼ一定にして、ギアシフトだけで速度を選んでもいける。これぞ文字通り「変速機」の語源を実践するものだ。
エンジン回転をあまり上下させずに運転すれば、省燃費運転につながることは言うまでもない。スポーツするということは、タイムや効率を追求することでもあるのだから、よくできたクロスレシオのギアボックスがあれば、特にエンジンにパワーを求めずとも十分に遊べるのだ。スイフトスポーツの場合は、エンジンも7000rpmの高回転域まで楽々と使え、逆にギアを固定して使っても十分に伸びる。
だからこそ、1速と2速の間のステップアップ比が広いことだけが若干気になってしまう。次のモデルチェンジでは、ぜひとも1速から6速まで、すべてのギアをクロスさせてほしい。そうすれば、6速はさらなる燃費ギアとして、オーバードライブ的に使えることも提案しておきたい。
ところで、筆者は冒頭で「ATよりMTの方が優れている」と述べたが、この点に異論をとなえる人もいるだろう。今ではATの方が、少なくとも燃費はいいと思っている人は多いはずだ。それは公表されるモード燃費の数字とか、高速道路でのクルーズ時にエンジン回転が低いといった事実が論拠になっているはずである。
しかし、そこには注意が必要だ。なぜなら、排ガスや騒音測定も絡めた計測モード自体がATに有利に設定されていたり、ギアボックスではなくファイナルのギア比が低く設定されていたりするからだ。
自動変速はあくまでも想定内でしか働かないから、どんなに評価の高いドイツ製であれ、ダウン時には上手にシフトしても、アップ時に待たされる例は多い。またクラッチミートにしても、緩くつなぎたい時があれば、パンッと素早く合わせたい時もあるわけで、自動ではそこまで緩急自在にやってはくれない。
最近の自動変速機は、第一義にともかく滑らかにつなぐことをむねとし、アップ時には慎重になる。ダウン時にはモーター駆動のスロットルが回転合わせまでやってくれるが、アップ時にはエンジン自体の回転落ちを待たなければならないからだ。
そんなことを超越して、間髪入れずにガンガンつないでいけることこそ、MTにおけるギアシフトの醍醐味(だいごみ)でもある。クラッチをつなぐ瞬間の軽いGでさえ快感であり、ギア比がクロスしていればいるほどこのGも小さい。もっとも、Gがまったくないのも、MT大好き派には寂しいものだが……。
クラッチディスクにしても、耐久性は大幅に伸びている。某国産部品メーカーの資料によれば、おおよそ25万kmというのが国際的な標準になっているらしい。ATの耐久性がだいたい10万kmあたりと考えると、やはりMTの方が長持ちするし、パーツ交換も簡単にできる。ATはオーバーホールが難しく、アッセンブリー交換するしかない。
話をスイフトスポーツに戻すと、新型は「足元」も進化した。
ノーマルの「スイフト」自体、日本車にはまれな欧州車風の味を持ち、フラットな姿勢とダンピングの良さを示す。新型には17インチのタイヤおよびホイールが採用されて、ロールセンターが高まったことで相対的に重心高が低くなり、そのおかげで外輪が沈み込む感覚のロール感があり、しっかりした接地荷重がタイヤのグリップを助ける。
乗り心地的には、やや重くなったバネ下荷重のせいで固くなった印象もある。軽快なフットワークという意味では、15インチや16インチタイヤ装着車の方が勝るが、17インチとて落ちついた乗り味の範囲にはある。スポーツシートもコーナーでのホールドを有効に助けるだけでなく、乗り心地の良さに寄与している。
スイフトスポーツは、4ドアであることもよい点だ。これならば、「スポーツ」という言葉には抵抗もあるわれわれシニア世代にとっても、普段の実用的なアシとしても使えるからだ。168万円という価格は望外のバーゲンと言っていいだろう。