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VOLVO車の日本での主流車!だそうです。V60のこれはT4 R-Design、試乗記はCar Watch 河村康彦レポートからです。
主流は「60」シリーズで、全モデル中に占める割合はおよそ50%――かつて一世を風靡した「850」シリーズ、その流れを汲んだ初期の「V70」と、「大きくて四角いワゴン」が基幹モデルとなった時代を知る人にはちょっと意外な事実かも知れないが、これが昨今の日本でのボルボ車販売の内訳だという。そんな勢いをさらに加速させるべくリリースされたのが、すでに発売済みの「S60」に引き続いての特別仕様車となる、「V60」ベースの「T4 R-DESIGN(R-デザイン)」だ。 ちなみに、グレード名に用いられる「R」の文字は、「洗練、優雅、改善」などという意味を持つ「リファインメント(Refinement)」の頭文字に由来をしているという。スポーティなイメージを前面に打ち出しつつも、過度に“硬派”なモデルとはしたくない――このグレード名の決定には、そんな開発陣の思いが読み取れるようでもある。 そんなこのモデルのルックスは、冒頭述べた「四角いボルボ」の時代には誰もが想像できなかったはずの、有機的で個性的なもの。前述のような専用デザインに加えて大径シューズの採用などにより、なるほど活発な“走り”のイメージは標準仕様のV60に比べても格段に高くなっている。 そうしたスポーティな印象はドアを開き、キャビンに身を委ねるとますます盛り上がる。シートバックに専用ロゴが刻まれた立体感の強いスポーツシートや、波紋状のアクセントが効果的なアルミニウム製センタースタック、淡いブルーの照明が印象的なメーターなどなど、さまざまな専用装備群が「特別なモデル」という高揚感を巧みに演じてくれることになるからだ。 そんなこのモデルが搭載するパワーパックは、132kW(180PS)/5700rpmと240Nm(24.5kgm)/1600-5000rpmという最高出力/最大トルクを発生する1.6リッターのターボ付き直噴4気筒エンジン+6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)という組み合わせ。 実は、同様に内外装に拘ったV60としては、3リッターのターボ付き6気筒エンジンを搭載する「T6 R-DESIGN」がすでに存在する。が、オーバー300PSを発する強心臓を4WDシャシーと組み合わせたこちらでは、価格は599万円とさすがに高価。一方で、FWDシャシー採用のT4 R-DESIGNは468万円で、比べれば遥かにリーズナブル。 そんなT4 R-DESIGNの心臓に火を入れる。この時点で、“走り”への期待度はかなり高まってくる。 というのも、実はこのV60に先駆けて今年2月に限定100台で発売された、S60のT4 R-DESIGNの仕上がり具合がかなりハイレベルなものであったことを経験済みであるがゆえ。一般に、走りのクオリティではボディー後端にテールゲートという大きな開口部を備えるステーションワゴンの方が、ボディー剛性が低下をするために「セダンより不利」というのが定説。それだけに、“S60での感動”がこちらワゴン・モデルでどれだけ再現されるかが、走り出しの時点からのとりあえずの興味の焦点になったと言っても差し支えない。 かくして、いざ走り始めるとまず動力性能面に関しては、「両者の差は皆無」というのが実感となった。 セダン・ボディーのS60に対する重量増はわずか20kg。それゆえに、そうした印象となるのも当然と言えば当然。低回転域からアクセル操作に即応してモリモリと盛り上がるトルクを発するエンジンと、MT同等の高い伝達効率を発揮するDCTという組み合わせは、望外なまでの軽快で自在な加速感を味わわせてくれる。 小気味よく“ポンポンポン”と行われる変速動作は、2ペダル・モデルながらいかにもMT風。実際そのたびにタコメーターの針は忙しく振れることになるが、そんなシーンでもショックは殆ど気にならない。一方、DCTといえば微低速時の動きがスムーズに欠けるものも少なくない中で、このモデルのそれはそうした日常シーンでの挙動がトルコンAT並みに滑らかなのが見逃せない美点。ただし、欲を言うならばシフトパドルとダウンシフト時のブリッピング(回転合わせ)機能は欲しかったところ。さらに、アイドリング・ストップメカを望んでも今の時代不思議はないはずだ。 前述のようにS60からの“劣化”が懸念された走りの質感は、率直なところ「全く不変」とまでは言い切れなかった。ワゴン・ボディー車にはありがちな不快な低周波こもり音(ドラミング)を発しない点は評価に値する。が、路面凹凸を拾ってのボディー振動の収まりは、同じT4 R-DESIGNであってもやはりセダン・ボディーのS60がやや上手という印象なのだ。 しかし、それはあくまでも「S60と直接比較をすれば」というレベルのハナシ。絶対的には、無視でき得る程度の差であったのもまた間違いない。 スポーツサスペンション+18インチ・シューズに加え、こうしてワゴン・ボディーということも影響をしてか、低中速メインでの街乗りでは少々強めの揺すられ感が伝えられるシーンもある。 が、それでも基本的にはサスペンションのストローク感はたっぷりしているし、ある程度速度が増せばしなやかさも十分。特に、高速クルージング中のフラット感の高さは「ボルボ史上で最上のレベル」と言っても過言ではないものだ。 そんなフットワークの秀逸さは、さらにワインディング・ロードで真価を発揮する。 マウント部分なども含めて強化したサスペンションを採用し、コラム剛性の向上やギア比のクイック化も報じられるステアリング系を採用するこのモデルは、実に軽快なフットワーク・テイストを保ちつつ、次々と現れるコーナーをスムーズにクリアしてくれる。 決して飛び切りのグリップ性能やコーナリング・スピードを誇るというわけではないのだが、そのドライビングの心地よさはこれもまた「かつてのボルボ車では経験したことがない」というレベルだ。 ちなみに、そんなフットワークの印象全般は、同じR-DESIGNでもむしろトップ・モデルの「T6 AWD」よりも好ましく感じられた。比べれば車両重量が240kgも軽く、特に前軸だけで150kgのマイナスとサスペンションに対する負担が大きく軽減されている点が大きく影響をしていそうだ。 かくして、「S60の限定モデルが味わわせてくれた感動を見事に再現してくれた」というのが、このモデルの走りのテイスト。そんなV60のT4 R-DESIGNグレードは、好評ゆえに瞬く間に売り切れたというS60にも再度の設定がなされ、この5月から発売が行われている。
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