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英BENTLEY車。625psエンジン、最高速330km/h。どの数字を指しても世界最高領域のクルマであることは間違いない、でしょう。記事はWeb CG島下泰久レポートからです。
ベントレーの高性能フラッグシップモデル「コンチネンタルGTスピード」。625psのパワーを手に入れ、同社史上最高速をうたう新型をドイツ・アウトバーンで試した。 いや、確かに試乗車にはアップルグリーンをはじめとするカラフルな塗色がそろっていたが、デザイン上の「コンチネンタルGT」との違いは、ダークティント塗装とされたラジエーターとバンパーグリルに、スパイラル加工のエキゾーストパイプ、新デザインのアルミホイールといった程度。フロントフェンダーには新たに“W12”バッジが付けられていたが、これは今後、コンチネンタルGT/GTCにも装着されることになる。 むせ返るほど上質なインテリアは、おなじみのダイヤモンドキルト仕上げのパンチングレザーがシートやドアパネルなどにあしらわれているのが特徴だ。もちろん、エンジンスピン模様のダークティントアルミやカーボンのフェイシアなど、GTスピード専用のものを含めてレザーやトリムの選択肢はまさに無限と言ってもいい。 控えめな見た目とは裏腹に、中身は大幅なスープアップを果たしている。その心臓、6リッターW12ツインターボは、最高出力625ps、最大トルク81.6kgm(800Nm)を発生する。コンチネンタルGTと比べて、実に50ps、10.2kgm(100Nm)の増強は、マネジメントシステムの刷新によって実現した。またトランスミッションには、新たに8段ATが組み合わされている。 こうして実現したのが最高速330km/h、0-100km/h加速4.2秒というパフォーマンスである。ちなみに今までの最高速は、「コンチネンタル スーパースポーツ」の329km/h。こちらの0-100km/h加速は3.9秒であった。 特筆すべきは、これだけの動力性能の一方で、燃費とCO2排出量の、最大12%の低減を実現したことだ。これは8段AT、新採用の減速エネルギー回生システムなどの効果で、燃費は14.5リッター/100km(約6.9km/リッター)となる。 いよいよスタートさせると、空港周辺の一般道を走らせる限り、ドライバビリティーは一切犠牲になっていないと感じた。相変わらずの圧倒的なトルクに8段ATが加わって、むしろフレキシビリティーが増している印象。唯一、日常域で“ただ者ではない”気配を感じるとすれば、アクセルの踏み込みに対して加速がわずかに先行する感が、なくはない。いかにも過給圧の高いエンジンという感触なのだ。 しかしそれは、ほんの序章にすぎない。アウトバーンに入っておもむろにアクセルを開けると野太い排気音がさく裂。分厚いトルクが放出されて、一気に加速態勢に入る。100km/hからの加速が、まるでゼロ発進のように強烈。200km/hを過ぎても勢いは一向に衰えない。特に220km/hあたりでは、パワーと空力、その他もろもろがすべてバランスするのか、二段ロケットに着火したかのように加速感がフッと軽くなる瞬間があり、ゾクゾクするほど気持ち良かった。 そのまま250km/hを超えて、270km/hを過ぎたあたりで、残念ながら交通量が増えてきたためアクセルを緩めた。しかし、その時もまだ猛然と加速中だったことは言うまでもないだろう。 この圧倒的な動力性能を支えるべく、シャシーにも当然手が入れられている。サスペンションは締め上げられ、車高も10mmダウン。床下の空気の流れをさらに煮詰めることで、ダウンフォースはコンチネンタルGT比で8%増加しているという。また、前輪のキャンバー角が15%増やされているのも見逃せないところ。単なる直線仕様ではないというわけだ。 おかげで乗り心地はやや硬めではあるが、ドライバーズカーとして見た場合、むしろこのぐらいの方が好ましいと感じた。高速域での安定感は言わずもがな。うれしくさせられたのがワインディングロードでの振る舞いで、ステアリングの操舵(そうだ)感はよりダイレクトさを増しており、ニュートラルステア方向にしつけられたシャシーと相まって、気持ち良いコーナリングを楽しめる。 「コンチネンタルGT V8」にも匹敵する、あるいはそれ以上とも思えるキレ味に、きっとこの時、筆者の顔は扱いきれないほどのパワーとトルクへの緊張がすっかり解けて、思い切りほころんでいたに違いない。 残念ながら日本では、おそらく持てるポテンシャルの半分も引き出すことはできないだろう。では新型コンチネンタルGTスピードは、手に入れる価値はないのかといえば、答えはノーだ。より深い走りの喜び、クルマとのダイレクトな対話感を求めるドライバーにとっては、これぞ最高の選択となるはずである。
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