記憶の淵に沈みゆくもの

記憶の淵に沈みゆくもの

2004.01.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類
毎年、この日になると思い出す。
そういえば、恩師の誕生日が今日だな、と。
柚木崎が現在生きていられるのは、
この人に出会えたからだといって過言ではない。
それだけの影響力を柚木崎にもたらした人である。
だが、この人とはもう、よほどの偶然がない限り
出会うことはないだろう。
そういう人に、なってしまった。

ふと今年の今日はいつもと違うことも考えた。

柚木崎は追いついてしまったのだな、と。
恩師と柚木崎は13才年が離れていた。
だから、ふとそんなことを思ったのだろう。
なんだか恩師はとても大人だったのに
自分は全然自分の目標に追いついてないことを思い知らされ
少し苦笑してしまった。
そういう意味でも恩師の背中は大きい。
もう見ることのかなわない背中だが、
どう転んでもかなわないな、と苦笑いが漏れてしまう。
大好きで尊敬していた恩師。
今はどこでなにをしているだろう。

妹と柚木崎が大好きだった心からの笑顔を
今では浮かべられるようになっていて欲しい。
これだけを切に切に願っている。

そんなことを思いながら仕事をしていたら
同僚たちの華やかな笑い声が後ろから聞こえた。

持って行かねばならぬモノを持ってそちらへ行くと
柚木崎の姿を見た同僚たちはぴたりと口を噤んだ。
少し小さなテーブルが半分ほど見え、
そこに座る後輩たちの姿が見えた。
どうやらティータイムらしい。
いつものことだが、やはり嬉しい気分がするものではない。
用事のある先輩の名を呼んだのだが、返事がなかったので
もしかしたらすれ違ったのかもしれない、と思い、
その場に背を向けた。
そんな柚木崎の背中に、別の人の声が刺さった。


 いつまでも居座られちゃうざいって~の」


どっと笑う声がさらに突き刺さる。
そのなかには声を掛けた先輩の笑い声も。
要するに、柚木崎にいて欲しくない席だと言うことだ。
しかも、声の主は……彼の人である。
片割れが自分に惚れていると思っている、彼の人。
部外者が入ってのお茶会。
しかも、柚木崎を嫌っている人がいるから居て欲しくない。
そういうことなのか、と納得した。
気分は悪いが、仕方がない。
そういうならお茶会が終わってから用事をすませに行くしかない。

そう思って、いつまでも響いている華やかな笑い声に背を向けた。
言いたい放題かの人がいっているのも聞こえる。

あいつらはまだ子どもが出来ないのか。
子ども好きなあいつ(片割れのこと)が可哀想で仕方がない。
とっとと別れて自分と再婚すればいいのに。
その準備は進めてる。問題はない。
自分と一緒になれば子どもなんてすぐ出来る。
別れてやらないなんて、最低の人間がやることだ。

爆笑の渦とどこまでも続く納得の出来ない言葉。
気分が悪い。
吐いてしまいそうなほど気分が悪い。
あと少し、あと少しと思いながら
時間が過ぎていくのをやり過ごした。
気づいたら薄いコーヒーカップを握りしめて割ってしまっていた。
やばい。怪我をしなくて済んだが、危険すぎる。
我慢の限界を、越えてしまいそうだった。

そこへ救いの声、というか、何というか。
上司が一人、そのお茶会の場にひょっこり顔を出したようだ。
彼の人の声の質が明らかに変わる。
上司、一瞬唖然としたようだが、
続いた言葉に思わず椅子からずり落ちそうになってしまった。
「あれ? お茶の最中だった? 邪魔しちゃってごめんね~」
……仕事中だぞ、上司(^^;
それを許していいのかおい。
多少の時間ならともかく、もう2時間以上やってるぞ(^^;
そう思ったが、壁越しの出来事。
声は届かない。

上司と彼の人が話している声が聞こえる。
やがて、「おじゃましました~♪」と彼の人は出て行った。
時は既に柚木崎の帰宅時間である。
気分が悪かったのもあるので、とっとと帰ることにした。
先輩に渡さなければならないものを持ち、再び隣へ。
行くと、「お疲れ様~」とお茶会解散の声が聞こえた。
よろしくお願いします、と
通りがかる先輩に渡すモノを渡し、
柚木崎もとっとと帰ろうとした時である。

「ちょっとまって!」
先輩に引き留められた。
振り返ると、一枚の紙をぺらぺらと振っている。

「あのね、来年度のローテーション、決めたから」

はぁ? という感じである。
そんな話、いつしたんだ?
柚木崎は加わっていない。
なのに、決めたからとはどういうことだ?
混乱している柚木崎を尻目に、
先輩は矢継ぎ早にローテーションの話をすると
「じゃ、よろしく」と帰ってしまった。
呆然とするしかない。

呆然としたまま家に帰って、腹が立って仕方がなくなった。
それって単なる押しつけじゃないか?
柚木崎の意見は聞かなくていい、そういうことか?
やれといえば何でもやるから押しつけてやれ。
そういうことなのか?
今回、また初めてやる仕事が増えた。
なにをどうしたらいいのか全く分からない意味不明の仕事である。
そんなこともいきなり押しつけて、なんだというのだろう。
腹が立って腹が立って仕方がなかった。

こんな厭な思いを抱えて、
柚木崎はそのうち辞表を叩きつけてここを辞めるのだろう。
もう堪忍袋の緒は革ひも一枚、というところである。
これを引きちぎった時、
柚木崎は……どんなことをするのだろう?
我ながら想像がつかないところが怖い。





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Last updated  2004.01.30 12:14:05
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Re:記憶の片隅(1/29)  
燕燕1129  さん
悪意のある人が一番イヤですね。
周りの人がみんな、子どもに見えませんか?
ちょっといたたまれなくなりました。
(2004.01.31 06:33:15)

Re:Re:記憶の片隅(1/29)  
柚木崎  さん
燕燕さん、こんにちは(^^)

彼の人にとっては、
柚木崎の方が悪意のある人なんです。
なにせ、
自分と自分に惚れている人の間を裂いている人ですから(^^;
だから、柚木崎に対してはなにをやってもいいのだと
そう公言しています。
……自分も含めてまだ青のだな、と
思わず苦笑してしまう出来事です。

もう少し時が経てば
笑ってお終いに出来る出来事になるでしょうか。
そうなって欲しいと願っています。 (2004.02.05 12:36:37)

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