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2008.09.20
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カテゴリ: その他の動物




 虫と言っても勿論昆虫ではない。コウガイビルの1種、今時の人は「郊外に建てられたビル」のことかと思うかも知れないが、漢字で書くと「笄蛭」、私自身は子供の頃「山蛭」との連想から「郊外に棲む蛭」の意味だと思っていた。

 しかし、「ヒル」と付いても血を吸うヒルとは全く無縁である。血を吸うヒルは環形動物門に属し、まァ、言ってみればミミズやゴカイの親戚だが、コウガイビルはプラナリア、サナダムシ、吸虫類と同じ扁形動物門に属す。血を吸うヒルよりはずっと「下等」な生き物なのである。

 ついでに「笄」とは、字引を引くと色々書いてあるが、私の記憶としては髪に挿す簪(かんざし)の様なもので、片側がイチョウの葉の形をしていた。祖母が使っていた鏡台の引き出しの中に入っていたのを憶えている。コウガイビルの頭部がこの笄のイチョウ型をしているので、笄蛭の名が付いたらしい。


コウガイビルの1種1
コウガイビルの1種.体長10cm程度

最初の写真なので小さめに表示

(2008/09/20)



 御覧の通り「ケッタイ」な生き物である。体長は10cm程度。この辺り(東京都世田谷区西部)では、昔から居る真っ黒なクロイロコウガイビルと、最近目立つ様になった東南アジア(中国南部?)原産の外来種オオミスジコウガイビルをよく見かける。写真のコウガイビルは、クロイロコウガイビルかも知れないが、「日本産土壌動物」には「背面は一様な黒色、腹面は灰黒色で、体側縁は浅い鋸歯状である」と書かれているので、一致しない。「コウガイビルの1種」とした所以である。

コウガイビルの1種2
次は縦長にしてやや大きめに表示.前半は黄褐色、後半は黒色

体の正中線に沿って細い筋が認められる

(2008/09/20)



 体の後半は黒いが、前半は黄褐色、体表の正中線に沿って細い筋が認められる。全身ヌメッとしており、特に目立つ器官も見当たらない。そこで、頭部を接写してみた。頭部と言っても、神経節の多少の固まり(頭神経節)が有るだけで、口はない。口は裏面の真ん中辺にあり、表側からは見えない。

 コウガイビルはガラに似合わず?捕食性で、ナメクジやミミズ等を捕らえて食べる。口から咽頭を外に出して相手を包み込んでから呑み込むのだと思っていたが、消化液を体外に出して相手を溶かして吸う様なこともするらしい。

コウガイビルの1種3
コウガイビルの頭部.笄の形をしている

(2008/09/20)



 先端部には小さな黒点が散在している(下の写真)。これらは恐らく何らかの感覚細胞であろう。若い頃に勉強した「Integrated Priciples of Zoology」を引っ張り出してみると、プラナリアの場合、頭部の側面に味覚、臭覚、触覚に関する感覚細胞があり、この部分を除去すると、プラナリアは餌を探すことが出来なくなる、と書いてある。コウガイビルの場合は、プラナリアとは異なり眼点がないので、光を感じる細胞もこれらの中に含まれているものと思われる。

コウガイビルの1種4
頭部の拡大写真.先端近くに細かい黒点が沢山ある

何らかの感覚細胞であろう

(2008/09/20)



 この連中は、カタツムリやナメクジとは異なり、体表にある繊毛運動により移動すると言う。ガラス板の上を這わせても、波模様は見られないとのこと。しかし、その割にはかなりの速度で移動する。写真が著しい露出不足であったので、撮り直そうかと思ったが、もう、何処に行ったのか分かるはずもなかった。

コウガイビルの1種5
最初の写真の部分拡大.尾部に青色の部分が認められる

著しい露出不足を増感で誤魔化しているので荒れが酷い

(2008/09/20)



 写真を見て驚いたのは、尾部に鮮やかな青色の部分があったことである。昆虫の場合とは違って、これは構造色(光の反射と干渉によって生ずる色)ではなく、実際の色であろう。このコウガイビル、中々の隠れた洒落者なのかも知れない。

 なお、コウガイビルの属名 Bipalium で画像検索すると、外国産の様々なコウガイビルの写真を見ることが出来る。中には、横縞の入ったビックリする程の「美麗種」もある。興味のある御仁は検索され度。但し、「不気味」な種類の方がずっと多いので、その御積もりで。







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最終更新日  2008.09.20 12:16:59
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