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2011.01.17
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Helicoverpa armigera )の終齢(6齢)幼虫を紹介する。

5齢幼虫 から体長も急激に増加し、6齢では体を伸ばすと4cm位になる。食べる量も尋常ではない。



オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)1


菊の花の上を歩くオオタバコガの終齢(6齢)幼虫

背中が凸凹しており全身を深度に入れるのに一苦労

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 5齢の初め頃まではコスモスの花を食べさせていたのだが、この頃から食べる量が著しく増加し、1株しかないコスモスの花は直ぐに無くなってしまった。仕方なく、新たに菊の花(1鉢100円を2鉢)を買ってきてそれを食べさせることにした。

 この幼虫を飼育し始めた当初は、食べる量が少ないので飼育箱に小さな花瓶を入れそれに花を挿して食べさせていたが、暫くしてからは、シャーレに移した。食べるのが速くなり、花だけを切って与えても、花が萎れる前に食べ尽くしてしまうからである。また、排泄物の量も食べる量に比例してスザマジイので、シャーレの方が清掃が楽である。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)2


横から見た図.腹部第1節と第8節が盛り上がっている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 今日の写真は、その餌にしている菊の花の上に芋虫を移して撮影している。下の写真の様に、直ぐに花に頭を突っ込んで食べ始めるので、頭部がチャンと見える写真を撮るのには結構苦労した。兎に角、食いしん坊なのである。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)3


放って置くと直ぐに筒状花の部分に頭を突っ込んで食べ始める

右上はこの幼虫の「落とし物」.食べる量に比例するので

その量(出す頻度)もスザマジイ

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 どれ位食べるかというと、終齢(6齢)では、この写真に写っている菊の花を1日で5個くらい食べてしまう。最も好んで食べる部分は筒状花で、花弁が短いせいか花全体を食べてしまう。周辺の舌状花は、もし花が他にあれば、子房の辺りだけを食べて、花弁は食べない。要するに、蛋白質や脂質の多い子房や花粉などを真っ先に食べるのである。

 飼育に際しては、花の量が限られているので、出来るだけ花弁も食べさせる様に餌の量を少な目にしたが、これが自然条件下であれば、一番良いところだけ食べて次の花に移ってしまうであろうから、その被害は相当なものであろう。流石?大害虫だけある。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)4


食事中のオオタバコガの終齢幼虫.頭部は隠れて見えない

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 前回書いた様に、最初に掲載した2齢幼虫は10月12日撮影、14日には既に4齢幼虫になっているのが認められ、3日後の17日には5齢(何時5齢に脱皮したかは不明)で、19日には6齢に脱皮するところを観察、21日に撮影(今日の写真)した後、23日には早々に土に潜ってしまった。2齢から前蛹化まで僅か11日(土に潜ってその日の内に前蛹化すると仮定)、6齢期が長く、2齢から6齢に脱皮するまではたったの7日である。2齢、3齢の各齢期はほぼ1日と推定されるので、初齢も1日とすると、幼虫期は僅か13日でしかない。

 一方、福井県農業試験場のHPの中にある「県内産オオタバコガの積算温度と農薬感受性」に拠ると、25度で飼育した場合、幼虫期はほぼ17~22日となっている(上記資料のデータを簡略化した日数)。この資料には餌として何を与えたのか書かれていないが、これと較べると、13日と云うのは著しく短期間である。これは、今回の飼育では花を餌として与え、幼虫はその蛋白質や脂質の含量が多い部分を主に食べていたからだと思われる。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)5


オオタバコガ終齢幼虫の頭部.頭幅は2.6mm

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 今回も一応頭幅を測定してみた。上の写真をスケールと比較すると頭幅は2.6mm。これまで何回も引用した「大豆を加害するハスモンヨトウ及びオオタバコガ各幼虫の齢期を判定するための頭幅測定ゲージ」に掲載されているオオタバコガ幼虫の齢と頭幅との関係を示す一覧表に拠れば、2.6mmは6齢の頭幅最頻値であった(文字数制限の為、表の引用は省略した)。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)6


斜め横から見たオオタバコガ終齢幼虫の頭部

口器は非常に複雑.単眼が6個見えるが

1個は少し離れて触角の下にある

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 食いしん坊の横顔を上に示した。ついでに頭部の構造に付いて説明しておこう。北隆館の古い「日本幼虫圖鑑」に拠れば、頭部の大半を占める一見複眼の様に見える部分が頭頂(Parietales)で、中には脳ではなく上顎(後述)を動かす筋肉が詰まっている。頭部下部やや左にある3節からなる先端が黒い突起が触角で、成虫とは異なりやや下を向いている。左右の頭頂に挟まれた三角形の部分が前頭、その下の幅広い一寸固そうな部分が頭楯、更にその下の白い丸まった板の様な構造が上唇である。その下に見える黒い部分が左右の上顎(大腮)でこれを使って食物を食い千切る。更にその下に触角を小さくした様な3節からなる1対の構造が見えるが、これは口器の一部で下顋鬚(保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑」では小腮鬚)であろう。その間(頭部中央下)に吐糸管や下唇鬚があるのだが、この写真では良く分からない。

 触角の右側に単眼が見える。右から1~4番目までは明瞭だが、5番目は少し左にずれて触角の下、6番目は4番目の下やや右側にあり色薄く少し不明瞭である(5番目と6番目は、研究者によっては、逆に6番目と5番目とされることもある)。



オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)7


胸部と腹部第1節.細かい棘状の構造(顆粒)に被われている

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 ヤガ科(Noctuidae)タバコガ亜科(Heliothinae)の特徴とされる胴部表面の棘状構造(顆粒)は4齢から認められたが、終齢では実に見事に発達している。下の写真は上の写真の部分拡大である。是非、最大まで拡大して御覧頂きたい。


オオタバコガの幼虫(終齢:6齢)8


前の写真の部分拡大.右から胸部第2、3節と腹部第1節

細かい棘状の突起と微妙な色合いが印象的

(写真クリックで拡大表示)

(2010/10/21)

 この幼虫は写真を撮った2日後の10月23日には土に潜ってしまった。アゲハの幼虫では、蛹化する前の2日位は食事をせず、最後に「ビチ」をしてから蛹化する場所を探して半日くらいウロウロするものだが、オオタバコガの幼虫では全然違った。

 23日に余り食べなくなったのでどうしたのかと思っていたが、ビチもせず、動きもしない。蛹化が近いのだろうと思い、乾いた土と湿った土を半々にしてプラスティックの透明なコップ(百円ショップの品)に3~4cm程入れ、その上に虫体を置いてみた。

 驚いたことに、一歩も歩まず?、置かれたその儘の位置から直ぐに頭を下に向けて潜り始めた。30秒後には完全に土の中、何と言う早業!! 異常な程の成長の速さに加えて蛹化する時もグズグズせずに食べるのを止めてから殆ど待たずに土中に潜ってしまう。ほぼ1ヶ月で1世代を終えることが出来るのも、この様な早業の連続に因ると云うことが実感として良く分かった。


[追記]以前及び以降のオオタバコガ成長記録の一覧は、文字数制限の為此処には載せられないので、「 蛹と成虫 」の末尾を参照されたい。







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最終更新日  2011.02.01 11:52:55
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