遊心六中記

遊心六中記

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

茲愉有人

茲愉有人

Calendar

Comments

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな(「アマテラスの暗号」)@ Re:探訪 [再録] 京都・大原の天台寺院を巡る -1 大原女の小径・大原陵・勝林院(10/16) ≪…「念仏により極楽往生ができるかどうか…
Jobim@ Re:観照 インターネットで【龍/Dragon】探しの旅へ -35 中国の龍 (6)(09/18) 中国の彫り物はさすがに手がかかっていて…

Favorite Blog

まだ登録されていません
2021.07.20
XML
カテゴリ: 観照 & 探訪
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
四条通の北側歩道を西に、烏丸通との交差点を横断すれば、ほんのわずか先に「 函谷鉾 」があります。近すぎて全景を撮ることは難しい。

山鉾巡りをするとき、いつも感じることがあります。昼間の観光客等の集り具合です。
長刀鉾は祇園祭山鉾巡行のトップを行く鉾なので、一番知られているからでしょうか。長刀鉾の周辺に留まる人々が一番多い気がします。少し西の烏丸通を横断し函谷鉾まで行くと、鉾の周辺に留まっている人々は半減します。月鉾の傍も同じ。さらにその先を巡ればまた人数が減ります。このパターンはこの前祭も同様。おかげで密という状態にはならずにラッキーでしたが。


前懸 は、2006(平成18)年に16世紀末の毛綴(重文)を復元新調されたもの。
旧約聖書創世記の場面が織られているとか。 (資料1,2)
オリジナルは16世紀末ベルギー製タペストリー(重文)です。 (資料3)

欄縁 には 金幣
上水引 には、ここも 八坂神社の神紋、木瓜(五瓜に唐花) が2つ見えます。
屋根の上には 、屋根の反りに合わせた形で 保護の覆い が設けてあります。鉾が巡行する時は勿論外されていますので、鉾が建つ姿を見なければ楽しむことのない景色です。

屋根の軒裏を見上げると、 金地に雌一羽と雛二羽 が描かれています。
もう一枚は 写真を撮れなかったのですが、 雄一羽と雌一羽 を描いた絵です。

軒裏の三角形の金地の妻板の前に唐団扇を持つ 中国北宋の詩人・林和靖 ​(りんなせい)​ の木彫彩色像が取り付けてあります。
右側には、童子が梅の木の下で白鶴に餌を与える彫刻像 があります。こちらは撮っていません。

鉾の天井には鶴 が描かれています。


胴懸 ​は​見づらいですがこの「北流れ(左側)」と「南流れ(右側)」に 三種類のものが並んでいます 。順次復元新調されたものが懸装品として掛けてあります。(資料2)
鉾の進行方向から列挙しますと、
 「 梅に虎門 」 17世紀 李朝の朝鮮段通 :1991(平成3)年復元新調
 「 赤地花唐草文 」 ペルシャ絨毯 17世紀から使用 :1990(平成2)年復元新調
 「 玉乗り獅子文 」 周囲はアラビア文字 中国緞通 17世紀から使用 :1991年復元新調


下水引 は一部しか見えません。ここには、 鶏の群とその下に草花 が描かれています。
右端下方に、「 山鹿清華 (やまがせいか) 」の名が記されています。
1938(昭和13)年、 山鹿清華がこの手織錦を寄贈 されたと言います。
​函谷鉾の由来となった、函谷関における孟嘗君の「鶏鳴狗盗(けいめいくとう)」説話に因んで描かれたものです。​

隅房掛 は源氏蝶が象られています

​​その房掛けに 金糸の丸和紐 で上から総角・蟻・桐紋などが組まれた 長い房 がかけてあります。 (資料2) ​​

真木が天空に向かって伸び 、下から榊、角幡、関(上開きの柵状の箇所)、天王台がありその上に大幡が翻っています。その先が鉾頭です。 ​(資料2)​

​​​​​​ 前の軒裏の鶏図に対し 後の軒裏には三羽の鴉 (からす) が描かれています。 もう一枚は二羽の鴉 計5羽の明鴉 です。軒裏絵全体で「 ​鶏鴉 (けいあ) 図​ 」と称されています。
これは1900(明治33)年、円山四条派の ​今尾景年 (けいねん) の筆​ により新調されたもの。 (資料2) ​​​​​​

この軒裏絵もまた、孟嘗君が夜明け前の函谷関を無事脱出した故事を表現している そうです。

​​これは鉾の後部の 下水引「雲龍文」 です。鉾巡行の折には見送 (みおくり) が掛けられますので、目にすることはできません。​​
​​オリジナルは1899(明治32)年に制作されたと言います。傷みが激しいことにより、1983(昭和58)年に復元新調されたのがこれだとか。 朱地に金雲丸龍の錦織 です。 (資料2) ​​

それでは、月鉾を眺めましょう。

四条烏丸交差点を横断して、函谷鉾に向かう前に、 四条通北歩道から眺めたほぼ全景 です。真木の上部、天王台を含む鉾頭までが撮れていません。

                  ズームアップして撮って見ました。

​​東方向に向かう 正面には 巡行時と同様に、 稚児人形 が置かれています。​​
囃子方が鉾に乗り、お囃子を奏でています。北流れ(左側)は笛方、南流れ(右側)は鉦方、正面の稚児の近くに太鼓方が位置するようです。

​鉾の屋根を貫く真木は、屋根に近い下部は八坂神社の神紋を縫い付けた 赤地の網かくし が色鮮やかです。​


四条通を横断し、南側歩道の東から月鉾に近づいて行く形で眺めましょう。
​烏丸通から月鉾までは函谷鉾より距離があるので 全景 が撮れます。​

​​かつては「 かつら男ほく ​(ほこ)​ 」と呼ばれ、 応仁の乱以前からあった鉾 です。​​
​​​​ 鉾頭に「新月」 をいただき、 天王座に「月読尊」 を祀ることから、「 月鉾 」と称されるようになったそうです。 (資料4) ​​​​
現在の鉾頭は1981(昭和56)年から 田辺勇蔵氏寄進の18金製の鉾頭 がつかわれているとか。 ​(資料1)​
よく見ると月鉾の天王座は舟形をしています。

屋根の合掌部の拝に八坂神社の神紋が飾ってあり、拝に三ツ花懸魚が装飾されています。 

​​​​屋根には、正面に三つ巴をレリーフし全体に装飾彫刻を施された 鳥衾 の下の 鬼板部分には三本足の烏 (ヤタガラス) の丸彫り像が取り付けてあります。ヤタガラスは神話の中では太陽の使いとされています。 (資料4) ​​​​
ヤタガラスは「日本神話の神武天皇の東征に出てくる鳥。天皇の軍が熊野から大和に入るとき先導したという。」 ​(『日本語大辞典』講談社)​


​​​ 屋根裏 には江戸中期に活躍した 円山応挙筆「金地彩色草花図」 が描かれています。1784(天明4)年の作。 (資料1,3) ​​​
​​​ 天水引 は、 円山応震下絵の“霊獣図刺繍” です。 (資料4) ​​​
​​ 正面の天水引は双鸞図 。絵師 円山応震は円山応挙の孫 で、”双鸞霊獣図刺繍”と説明する資料もあります。 (資料5) ​​
​​「鸞」は「中国で想像上の鳥の名。体はニワトリに似て、羽毛は五色、声は五音 (ごいん) の音階にあっているという。」 (『日本語大辞典』講談社) ​​

​​​​ 破風中央下には ダイナミックな波濤文の中に、 「うさぎ」の彫り物 があざやかです。 左甚五郎作 といわれているとか。 (資料4,5) ​​​​
​稚児人形​
​​​明治45年から、 3代目伊藤久重作 のこの美少年人形『 於菟麿 』に変わったと言います。 (資料5) ​​​

​​        下水引 皆川月華作の「花鳥図} です。(資料1)​​

​​​ 前懸 は2000(平成12)年に インド絨毯を復元したもの とのこと。 (資料1) ​​​
​オリジナルは、 17世紀インドムガール王朝時代の メダリオン緞通 」だそうです。(資料4,5)​
​鉾正面、右側の車輪

​​鉾建てで重要な 「縄がらみ」の技術の仕上がりの一例 を前後の車輪の間に見ることができます。 舞台裏の美の一つ です。​​

​                       右(南側)の胴懸の一部分


​​こちらは 月鉾の左側(北側) です。 天水引(霊獣図)、下水引(花鳥図)、胴懸 です。​​
​​ 左右の胴懸はインドやトルコの絨毯 が使われていると言います。 (資料1)


​下水引の部分図

鉾の正面(前部)と照応する後部の部分図を眺めてみましょう。
​三本足の烏




​鉾後部の全景​
​​​ 後懸 もまた華麗な インド絨毯 です。 (資料1) ​​​

四条通り北側歩道からの眺め
両側のビルと鉾の高さを対比的にみるのもおもしろいかもしれません。​

鉾の車輪は軸に固定されています。従って前後に回転しますが、自動車のタイヤのように右、左に方向を変えることができません。
それ故に、「辻回し」という鉾を交差点で90度方向転換させるという見せ場があります。
この技術もまた、山鉾巡行を実施することにより、そのプロセスで修得される技術と言えます。

さて、次の鉾に向かいましょう。

つづく

参照資料
1) 祇園祭 祇園祭山鉾連合会 ​ ホームページ
2) ​ 函谷鉾
3) ​ 山鉾の魅力細見ー函谷鉾- ​  :「京都市下京区」
4) ​ 月鉾 ​ ホームページ
5) ​ 山鉾の魅力細見ー月鉾- ​  :「京都市下京区」

補遺
八坂神社のご神紋 ​  :「SANSHO」
神紋【八坂造/左三巴と木瓜(五瓜に唐花)】 ​ :「鞆の浦検定【山紫水明處】」
林逋 ​  :ウィキペディア
林逋 ​  :「コトバンク」
林逋 山園小梅 ​ 
暗香浮動月黄昏 林逋 ​  :「茶席の禅語選」
今尾景年 ​  :ウィキペディア
登録有形文化財の旧今尾景年家住宅を大切に利用されている「懐石 瓢樹(Hyoki)」
​:「Open Matome]
山鹿清華 ​ :ウィキペディア
山鹿清華 ​  :「三重県立美術館」
昭和のタペストリー -山鹿清華展- ​  :「曳山博物館」
月読尊 ​  :「コトバンク」
円山応挙 ​ :ウィキペディア
皆川月華 ​ :ウィキペディア

  ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -1 御旅所と長刀鉾 へ
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -3 放下鉾 へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -4 鶏鉾 へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -5 白楽天山 へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -6 山鉾さがしの道すがら へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -7 蟷螂山 へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -8 山鉾さがしの道すがら2 へ
探訪&観照 京都・祇園祭前祭 Y2021 2年ぶりの山鉾 -9 ふたたび長刀鉾 へ

こちらもご覧いただけるとうれしいです。
探訪&観照 祇園祭 Y2017の記憶 -5 函谷鉾の鉾建て
探訪&観照 祇園祭 Y2017の記憶 -7 月鉾の鉾建て 点描:美と工程
観照 祇園祭 Y2018 前祭 -1 鉾建てを経て 鉾の姿(長刀鉾・函谷鉾・鶏鉾)
観照 祇園祭 Y2018 前祭 -2 鉾建てを経て 鉾の姿(月鉾・菊水鉾)
探訪&観照 祇園祭 Y2017の記憶 -10 前祭宵々山(1) 鉾建て巡りの鉾と郭巨山・四条傘鉾
観照 [再録] 祇園祭 Y2014・前祭 宵山 -1 長刀鉾・函谷鉾・月鉾・舩鉾、岩戸山、木賊山、太子山
観照 [再録]  祇園祭 Y2014・前祭 山鉾巡行 -3 17番・月鉾から20番・郭巨山まで





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021.07.28 09:02:16
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: