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春画の展覧会は、以前、永青文庫で見たことがありますが、今回のこの展覧会にも度肝を抜かれました。歌麿のそれこそ、大画面モニターのような大きさの「夏夜のたのしみ」という大作もあり、当時の人々の誰がどのようにこれらの絵を鑑賞していたのかと思いを巡らしました。 鳥文斎英之の肉筆画、四季花鳥図ではなく「四季競艶図」なんて周辺の風景は美しく、主人公の男女もまったくイヤらしい感じはしません。まさに自然の営みの一つという感覚。 逆に北斎の「肉筆波千鳥」なんかは、これでもかというくらいの執念を感じる作品。どんな題材でも本質を追求するんだという気迫を感じました。 面白かったのは鈴木春信の「風流艶色真似ゑもん」、小人になった主人公が男女の営みを覗き見するという題材。彼のつぶやくセリフには笑えました。 春画は文化のひとつだなぁと実感した展覧会でした。 (11/1)
2024年11月18日
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塩田千春というアーティストをはじめて知ったのは、5年前の森美術館での「魂がふるえる」でした。赤い糸に絡めとられたような船。そして、黒い糸に覆いつくされた焼けたグランドピアノと多くの椅子。あの時の言葉にならない衝撃は今でも忘れられません。 本来、人が着るべきなのに無数の黒い糸に覆われて触ることもできないドレス。拒絶されている絶望感に打ちひしがれた後の展示では、東京の街を借景にした多くの人形や、赤い糸につるされたスーツケースで、明るい希望を感じることもできました。 その後、いくつかの小作品を見てきていますが、今回の大阪展は東京に巡回しないそうなので、覚悟を決めて出かけました。 今回も美術館のエスカレーターを上がっていくと見えてきたのは無数の赤い糸に覆われた真っ赤なドレス。期待感は大いに高まります。目がチカチカしてきました。会場に入ると打って変わって、黒い背景に白糸が張り巡らされた大規模なインスタレーション。一方には巨大なプールがあり、そこに滴り落ちる水滴の音が響きます。ここは生命も何も存在しない無の空間。白と黒の太極図を思い浮かべました。朝、一番の展示だったので人もいなくて、この空間を独り占めできたのは嬉しかったです。 過去の作品を紹介したビデオのコーナーがあり、また巨大なインスタレーションがありました。くるくる回る巨大な白いドレスも面白かったです。 圧巻は、チラシにもなっている「つながる輪」。無数の赤い糸の合間の白い紙には、「あなたは何とつながっていますか?」という問いに、公募によって集められたメッセージや絵が描かれていました。ひょいと覗いた紙には、死を迎える伴侶への感謝の気持ちが書かれていて、読んでいて思わず涙が零れ落ちそうになりました。白い紙は千羽鶴のように赤い空の中を渦を巻いて飛んでいました。 大規模なインスタレーションは6点と少なかったのですが、それぞれのビデオ作品も、最初から最後まですべて見て、濃密な時間を過ごしました。(11/1)
2024年11月18日
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昔から一度行ってみたいと思っていた奈良での正倉院展に念願かない、今年ようやく出かけることができました。コロナ以降、チケットも日時指定制となり、長時間、長い列に並ぶ必要もなくなったとの話を聞いたからです。実際、入場開始時間直後はかなりの人が並んでいましたが、15分ぐらい過ぎると列は解消されていました。館内の混雑も、そこそこでしたが、人の頭に隠れてまったく見ることができないというほどではありませんでした。 正倉院の宝物は最低でも一度公開されると、10年間は展示されないとのこと。今回、コロナ前に東博で開催された正倉院の世界展で見て気に入った紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」、赤い象牙の物差しに再び出会えたのは、嬉しかったです。30センチほどの赤い物差しに動植物や建物が細かく描かれ、その細かい技法に感動しました。 「緑地彩絵箱」は花の文様が描かれた緑色の箱。丸く装飾的に描かれた草花の姿には言葉もなくうっとりと見つめるばかりでした。側面などウミガメの甲羅が使われているように見えるのですが、実際にはだまし絵のように描かれているものです。1300年前の道具がそこにあるだけでものすごいことなのに、それがまだ当時の色彩を保ったまま美しく残っていることが信じられません。 四色のガラスの魚形はそのままアクセサリーとして持って帰りたくなります。緑、黄緑、青、黄色とそれぞれが美しい発色を保ったままです。当時の役人が腰につるして楽しんでいたとのこと。古代人もおしゃれです。(10/31)
2024年11月18日
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徳川綱吉の治世、幕府の怒りを買って三宅島に流罪になるも、およそ10年後、奇跡的に江戸へ戻ることになる波乱に満ちた生涯を送った絵師である。一蝶の絵に描かれた人々は皆、欲動感があり溌溂としており、眺めているこちらも絵の中の人々と同じように、歌い笑い語り合っているように感じるのだ。私が出かけたのは前期で、残念ながら重要文化財「布晒舞図」は展示されていなかったのだが、東博とメトロポリタン美術館所蔵の「雨宿り図屏風」が同時に展示されており、見比べることができて嬉しかった。武家屋敷の門前で夏のにわか雨を避けるさまざまな人々。子供がが柱にぶらさがって遊んでいるが、東博版とMET版ではポーズが少し異なっている。雨宿りする人々も全て一緒ではない。でもいろんな職業、身分の人たちが出会う一瞬の時。なんとも楽しい絵だろう。(10/10)
2024年11月12日
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黄土水という名前は初めて聞いたのだが、ポスターとなっている女性像の彫刻が気になって出かけてみた。黄土水とは台湾出身の東京美術学校の留学生で1920年頃活躍した彫刻家。高村光雲の指導を受けたそう。会場の奥にこの女性ヌードの彫刻が鎮座している。「甘露水」という大理石の彫刻。台湾で国宝指定されているそうだ。台座は貝殻をモチーフにしているということで、この女性はヴィーナスを表現しているということが分かる。顔つきは東洋人そのままだが、その張りのある肉体は生命のオーラを発しているようでまぶしく、そして美しい。黄土水以外の彫刻も、高村光雲をはじめ平櫛田中や高村光太郎、荻原守衛などの作品も多数。けっこう、見応えあり。油絵でも1920年前後の近代絵画が展示されており、中でも和田英作の「野遊び」を見ることができて嬉しかった。藤の花を背景に奈良時代の夫人が笛を持ってたたずむ。着物の美しさにうっとり。(10/5)
2024年11月11日
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今年は印象派展が開かれてちょうど150周年の年にあたる。日本人は印象派が好きだというのが定説だが、ご多分に漏れず自分も印象派、そしてモネが大好き。高校1年の時、生まれて初めて出かけた美術館が当時のブリヂストン美術館。そこでモネの「黄昏のベニス」の美くさに圧倒されたからだ。それ以来、モネの絵は何枚見たことだろう。モネの展覧会には何度出かけたことだろう。昨年の今頃は上野の森美術館でモネ展を見ていたと思う。(しかし入館料3.000円は高かった)そして、今回の西美でのモネ展はマルモッタン美術館からの多くの睡蓮を中心に構成されている。ほとんどがジヴェルニーのモネの庭を描いたもの。晩年の絵は色彩の乱舞。ラストの「バラの庭から見た家」は圧巻。もうやけっぱちになってキャンパスに絵の具をたたきつけているよう。老いて目もよく見えない。だからこそ、気力を振り絞って創作する画家の気迫を感じる。年が明けたら、もう一度、西美に出かけようと思う。まったくの余談だが、DIC川村記念美術館の「睡蓮」は私のお気に入りのひとつ。閉館したらどこに行ってしまうのかとても心配。(10/11)
2024年11月07日
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今回の田中一村展はものすごいボリュームだった。幼少期から晩年まで300点余りの作品を年代に沿って展示している。7歳の頃の絵を見ても、もう天才だったことが分かる。父の英才教育を受けていたのか。一村の描く南画もステキだったが、やがて濃密な写生画へと移行していく。もし一村が、東京美術学校を2か月で退学しなかったら、もし日展や院展に入選していたら、どんな画家になって、どんな作品を描いていたのだろう。でもこの奇跡のような奄美の光景は見られなかったかもしれない。「アダンの海辺」の濃密な砂浜と波の描写には見るたびに度肝を抜かれる。閻魔大王への土産と本人は語ったが、まさに命を削って描いた作品だと思う。(9/28)
2024年11月07日
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出光美術館も、この展覧会と次回の展覧会を最後に建て替えによる休館となるとのこと。この展覧会で出光美術館らしい江戸絵画を見られるのもしばらくお預け。ここで旧プライスコレクションの若冲の「鳥獣花木図屏風」は絶対に見ておかなかければと出かけてきた。やはりこの屏風の持つオーラは抜群のものがある。升目描きによって、それぞれの動物たちはちょっととぼけた味わいに感じられるのだが、それぞれが生き生きと描かれていて、楽しいこと半端ない。ありがとう若冲さんといつも言いたくなる。酒井抱一の「十二か月花鳥図」を並べて展示してあるのも見応えがあった。展示解説を眺めながら、なるほど同じ草花を描いていても、こんな違いがあるのかと、こちらも楽しめた。文人画のコーナーでは、大好きな浦上玉堂に出会えて嬉しい。国宝伴大納言絵巻をはじめ、重要文化財、重要美術品のオンパレード。英一蝶の「四季日待図巻」でいい気分になって、皇居の眺めて、美術館を後にした。(9/27)
2024年11月07日
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毎年恒例の建物公開。今年は「照明」に焦点を当て、アールデコのデザインの照明器具を楽しめる。改めてこの美術館の照明を眺めているだけでも、どんどんと時間が過ぎてしまう。この美術館の人気はラジエターカバーと照明だそうだが、自分もずっと昔からそう思っていた。とにかくお気に入りは2階姫宮寝室前廊下のチェーンペンダント照明だ。制作したのはルネ・ラリックではなくこの建物の設計、管理をした宮内省内匠寮とのこと。しかし、何ともかわいい照明を作ったものだ。どこかにステンドグラスの窓も作ってほしかったなぁ。今回は、3階のウィンターガーデン(温室)に特別に見学できる。市松模様と赤い椅子が調和している。椅子とテーブルはマルセル・ブロイヤー。無料で配られるカタログになっている写真集の小冊子がかわいくてステキ。(10/10)
2024年11月05日
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実は空が絵画に描かれたのは、江戸時代になってからで、それ以前は空はまさに「くう」として、表現されていなかった。画家はいかにして空を発見して描くようになったのかというテーマで構成された展覧会。お気に入りの作家の作品も多く、とても楽しい企画だった。次の6つの章立てで江戸時代か現代までの日本の作家と19世紀頃のジョン・コンスタブルの絵を中心とした西洋画を紹介している。1日本美術に空はあったのか?-空の輸入2開いた窓から空を見る-西洋美術における空の表現3近代日本にはさまざまな空が広がる4宇宙への意識、夜空を見上げる5カタストロフィーと空の発見6私たちはこの空間に何を見るのか?1章のコーナーを見ると、なるほど空を積極的に描こうとしたのは西洋画の影響を受けた江戸時代の司馬江漢や北斎らの浮世絵師だったことがよく分かった。明治以降の絵画では洋画にしろ日本画にしろ、積極的に空を描くのも当たり前になっていく。そして写実での空でなく、表現主義やシュールレアリスムの空に変わっていく。萬鉄五郎の「空のある自画像」の雲なんて、まるで、エクトプラズムのようだ。関東大震災ののちの空の光景、戦中大空の中で敵機を撃墜する光景、敗戦後の空。そしてチラシにもなっている抑留生活の中でみた香月康男の「青の太陽」。いずれの空も美しいのだ。ホンマタカシの幕張ベイタウンの写真、Chim↑Bomの空を埋めつくすカラスの映像など、現代作家の作品にも心を打たれた。(9/25)
2024年11月05日
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奈良の飛鳥園の小川晴暘と小川光三親子の仏像写真展。仏像は生でその姿を眺めるのもいいが、写真で見ると、実際には見えないものが見えてくるようですばらしい。とにかく、晴暘のモノクロにしろ、光三のカラーにしろ、背景の黒がまさに「漆黒」でそこから浮かび上がってくる仏の姿が素晴らしいのだ。お気に入りは東大寺戒壇院の四天王のうちの広目天。我が家には入江泰吉の憂いに満ちた表情の写真が飾ってあるのだが、小川晴暘の写真は力士のように力強い。本物の仏像でもないのに、それぞれの写真の前で思わず合掌してしまった。入場無料というのも嬉しかった。(9/27)
2024年11月05日
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Nerhol(ネルホル)という二人組のアーティストの展覧会。千葉市美の一階のさや堂ホールの床が和紙で覆われている。どんなアーティストなんだと展示室に向かった。200枚ほどの写真を多層的に張り合わせ、その表面を削って凸凹をつけた作品の数々。2次元の写真が3次元のレリーフのように表現されている。じっと眺めていると、写真の歪みから自分の立ち位置が分からなくなり、めまいを覚えた。まるでホラー小説の挿絵を見ているようだった。千葉市の大賀蓮を題材にした作品。時間軸が揺らいでいて、満開の蓮の花も、あくまでも見せかけの姿で、実はそこにはもう存在していないのではないかと感じた。不思議な体験だった。(9/14)
2024年11月05日
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10月の読書メーター読んだ本の数:8読んだページ数:2699ナイス数:165夢違 (角川文庫)の感想夢の中で素晴らしいインスピレーションを得るのですが、目覚めるとそれが何だか具体的に覚えていないことがよくあります。こんな夢札があればいいなぁとつくづく思いました。ただ悪夢は引きたくありませんね。読了日:10月07日 著者:恩田 陸お梅は呪いたい(祥伝社文庫ふ12-2) (祥伝社文庫 ふ 12-2)の感想笑いのツボをしっかりと掴んでいるなとおもったら、作者は元お笑い芸人。それぞれの話がきれいに繋がっていていくところにも感心した。一気読み。読了日:10月08日 著者:藤崎 翔目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)の感想障害のある人にはサポートしてあげなければならないという考えそのものが上から目線なんだということに気づかされた。読了日:10月09日 著者:伊藤亜紗逆転美人 (双葉文庫 ふ 31-03)の感想前半はまどろっこしく、何度と投げ出そうかと思いましたが、大どんでん返しを期待して何とか読み進めました。なんとこんなトリックだったとは思いつきませんでした。読了日:10月13日 著者:藤崎 翔ホワイトラビット (新潮文庫)の感想たまに読む伊坂幸太郎、コンゲームのような面白さ。ただ時系列があちこち動いて、登場人物の混乱が起こってしまった。読了日:10月19日 著者:伊坂 幸太郎ふしぎな話 小池真理子怪奇譚傑作選 (角川ホラー文庫)の感想たまにこういうしっとりと美しいホラーを読みたくなります。律子が成長してい言う家庭がステキでした。読了日:10月22日 著者:小池 真理子V.T.R. (講談社文庫 つ 28-15)の感想辻村深月制覇の一環で読んだが、内容が今一つ分からなかった。凝った体裁にファンは喜ぶのだろうけど。読了日:10月23日 著者:辻村 深月妖の掟 (文春文庫 ほ 15-10)の感想ラスボスとの対決もあっさりと終ってしまい盛り上がりに欠くこと甚だしい。うまく読ませるのだが、こんなものかと思いながら読了。前後の本を読めばまた面白さは変わるのかもしれない。読了日:10月30日 著者:誉田 哲也読書メーター
2024年11月04日
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