分かってるよ、お侍れえさん
熊造と書かれた位牌に線香をあげ手を合わせている次郎長の部屋の障子が静かに開きました。「誰だい」と声をかける次郎長、入って来たのは政吉、障子を閉めたとき、
次郎長「何の用だ」
政吉「 次郎長親分
」
政吉は刀を持ち仏壇の前に座っている次郎長のところまでやってきます。
政吉「街道一とうたわれた大親分だ、・・・ といいてえところだが
、見ると聞くと
は大ちげえだ。 かわいい子分をなぶり殺しにされ
て、位牌に手を合わせて、
ぼろぼろ泣いていなさる
。ちえっ、・・・ いいかい
、男一匹と生まれたから
にゃ、やるべき喧嘩にゃ、 りっぱに命をかけるもんだ
。おらあ、京都で、
・・・よろこんで死んでいった男をいくらも見た。それは武士だけじゃな
い、町人も百姓も、・・・ みな笑って死んでいきやがったぜ
。・・・残され
た家族の口からも、一度だって角太郎の女房のような言葉はもれなかった。
何故だか、・・・」
次郎長は黙ったままです。
座っていた政吉は、刀を持ち、片膝たてる姿勢で、次郎長に浴びせかけます。
政吉「 おうっ
、 次郎長さん
、いま国をあげて佐幕か勤皇かと 大喧嘩の真っ最中だ
ぜ
。兎に角、 (
この時、次郎長が傍にあるドスに手を伸ばしています )
どっ
ちがいいか悪いか、その人たちの心ではっきり決めて、 死に物狂いでやっ
てるんだ
。男の中の男といわれる次郎長さんなら、一生に一度は そんな喧
嘩の味を
、 なめてみる気はねえかい
」
そのとき、「 なめるねい
」という言葉がとび、 次郎長のドスが政吉めがけ振り落ろされます
。振り下ろされたドスを政吉が止めると、 次郎長は笑って
、
次郎長「分かってるよ、 お侍れえさん
」
その言葉に、一瞬ハッとするが、政吉は何もかも見通した次郎長を見て、笑いを浮かべ、
政吉「 そうと分かりゃ
、・・・ 親分
、しばらくこの 位牌をかりますよ
」
部屋を出て行こうとした政吉は、廊下にいた お蝶とお雪を見て足が止まります
が、次郎長の方に「 ご免なすって
」というと、二人には 声をかけずに足早に行く
のです。
次郎長は、お雪に、政吉は為五郎のところへ殴り込みに行ったことを伝えます。
為五郎一家の方へ急ぐ六助は、喧嘩支度をした政吉に会い、 一緒に死んでくれるか
、というと、政吉は「 俺は死にやしねえよ
」と。そして厳しく、
政吉「てめえなんかの、出る幕じゃねえ、 けえれ
」
走る政吉、一緒に行くと追ってついて来る六助、そのとき、為五郎一家の者がかかってきたあと、 政吉は囲まれます
。一匹だけでも斬らしてという六助に「よーし、 それじゃ気をつけて付いて来いよ
」と為五郎の家に向かっていきます。
続きます
。
炎の城・・・(11) 2024年08月05日
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