伊勢屋の酒が好きだった侍さ
ある日、喜仙に若さまを訪ねて来てお澄とおいとの女同士の冷たい火花が散っいます。そのころ、若さまの足は日本橋の伊勢屋の店に向いていました。
伊勢屋では小納戸役の山田文五郎が、伊勢屋周兵衛に家財没収の上獄門、家族一同、使用人に対し遠島を申し付ける、という書状を読み上げ、おちかに、鈴木様にお願いしようと思えばおちかの覚悟一つだというのです。立ち去る山田を追う弥平に「番頭さん」と肩をたたき止めたのは若さまでした。若さまは弥平に
若さま「 いまは無理だな
。・・・やあ、 落ち着くんだ
」
弥平 「あ、 あなた様は
」
若さま「 伊勢屋の酒が好きだった侍さ
」
若さまは弥平と 店の中へと入ると
、周兵衛が息を引取ったところでした。 その様子を見ていた若さまに
、弥平が
弥平 「 お侍様
、私共のお酒に毒が入ってたなんて、 誰がそんな馬鹿なことを
」
そんな弥平をいたわり、
若さま「 番頭さん
、・・・何か、思いあたることはないのかい」
弥平 「あ・・・ ございます
」
若さま「袖の下が足りなかったのかい」
若さまはさっきから、店の中を見ている やくざ風の男達に目をやりながら
、話を続けます。
弥平 「それもございましょう。しかしそれよりも、鈴木様が、前々から うちのお
嬢
様を
」
若さま「 なに
」
弥平は、泣き崩れているおちかに、しっかりしてください、今も、通りすがりのお侍様が、ちからを落すなとおっしゃってくださいました、といったのです。
若さまが伊勢屋を出て途中で、喜仙で若さまの行き先を聞いて来た 小吉と出会います
。
若さまは、この間殺された城の番士は、 あの晩何処の見回りだったか調べること
と、それと頼みがある、といって、若さまは 辺りを見まわし
て、 小吉の耳元で話をします
。
その様子を物陰から見ているのは、伊勢屋でも見たやくざ風の男です。
小吉は与力佐々島のところへひとっ走り、若さまはお若い矢で待っているといい別れます。
続きます
。
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若さま侍捕物帖・・・(10) 2024年10月27日
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