星とカワセミ好きのブログ

2023.03.23
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「ウルトラマン対仮面ライダー/池田憲章・高橋信之/文春PLUS/文藝春秋」のP329~333には、「八方破れの突撃スタイル 『仮面ライダー』制作夜話」という記事があり、どのような背景で「仮面ライダー」が制作されたのかが分かり、とても面白いです。
1970年代の労働争議が影響していたり、よみうりランドの近くに急遽借りた生田スタジオや、採掘場で「仮面ライダー」が撮影されたことなど、読むと当時の熱気が伝わってくるような気がしました。


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「ウルトラマン対仮面ライダー/池田憲章・高橋信之/文春PLUS/文藝春秋」
(P329~333)
『仮面ライダー』が企画されていた1970年後半、東映の東京撮影所は、労働組合の争議が過熱化し、スタッフ編成も組めず、毎日放送用の新しい企画を撮影所で制作するのは無理と思われた、
担当プロデューサーに企画を練りあげさせながら、東映の渡辺亮徳専務は、『柔道一直線』を撮影中だった折田至監督を呼び、内田有作担当と一緒に新企画を撮影できる貸しスタジオを見つけ出すよう指令を出した。『仮面ライダー』は何と撮影所探しから始まったのだ。

折田監督はこう語る。
「組合にわかると問題になるので、秘密で毎日、内田有作さんとスタジオ探しに自動車で出かけた。近くだとバレるので、多摩川沿いを探しました。テレビ用やCM用の独立スタジオが結構あったんです。スタジオ風の建物を見つけると行って、そこが倉庫だったり、仕事が入っていたり・・・だんだん川崎市へ近づいて行って、よみうりランドの側まで来て、ユニオン映画の小さいスタジオを丘の中腹に見つけた。聞くと借りられるとのことで、その生田スタジオが『仮面ライダー』のスタジオになりました。



主人公がオートバイに乗るという話に、スタッフから、二輪は撮影が危ないので四輪にならないかという意見もでた。ライダーのバイクシーンは凝りに凝って、ジャンプさせたり、ショッカーとのバイクアクションなど今までのヒーロー物にない撮影をおこなった。またサイクロンの撮影は、ジャンプする度にカウルや排気管が壊れてしまう。あわてて修理に出して、また撮影で故障の連続だった」と阿部征司プロデューサーは回想する。

第一話は『キイハンター』の竹本弘一監督が手がけ、小河内ダムでロケ撮影を行い、まったく新しいアクション物を作ろうという意味で、大幅にカット数が増え、編集がコマとばしで調整するという一幕もあった(一話は375カットもあった。一時間物が200カットの時代にである)

オープニングと、仮面ライダーがバイクに乗り変身するバンクシーンは、折田至監督が演出。排気管から火花を噴射したり、東京撮影所にあった回転バックを生田スタジオに持ち込んでその前で変身シーンを撮影、べニヤを切りぬいてバイクの変身シーンにスーッとフレームインしてきたり、オプチカル合成を極力排して、初の変身シーンを撮影した。

テレビシリーズのため、予算には限界がある。折田監督は語る。
「生田スタジオの所長になった内田有作さんから、ロケーション撮影もスタジオから30分で行ける場所、半径5キロメートルの縁を地図の上に書いて、その中で撮影するようにといわれました。特例は海が出てくるシーンと富士山をバックにしたときだけ。それでロケハンしてみると、近くに 三栄土木 という埋立地用に土を採掘している工事地区があって、工事の邪魔をしなければОKということ、そこがおなじみの赤土とガレ場のライダーと怪人の決戦場になった。広いところで、一か所で工事してても、あとはガラアキ。そういう場所だったので、後では火薬も思い切って使えたんです」

火薬には、折田至監督もいろいろな思い出があるという。
「最初、生田スタジオには火薬のスタッフがいなくて、怪人がやられると、グジュグジュと溶けたり、絵具をバシャッとかけたり、スタッフがおそまつと呼んでいた小さな火薬があったくらい。「もりあがらんなあ」といってたら、山田稔監督が大泉の東京撮影所からこっそり自分で火薬を持ってきて、やりだした。山田さんはベテランだからね。それがだんだんエスカレートしていって、一度山火事になりそうになって、東京撮影所から太平特殊効果の火薬スタッフに正式に来てもらうようになった。

~「まだ矢島信夫氏の特撮研究所がなかったので、煙突の上に仮面ライダーが現れるシーンは、写真をはって写したり、変身シーンは写真を加工してアニメで作ったり、空をサイクロンや怪人が飛ぶのも本編スタッフで撮影して何とかごまかしていた。特撮は残念だが貧弱だった(笑)」

本郷猛役の藤岡弘氏がオートバイシーンを撮影中、電柱のワイヤーに足を引っかけ左足大腿部を複雑骨折、第10話の撮影で主役俳優が3カ月から半年の入院という事態が起きた。放送開始数日前のことで、第11~13話は何とか仮面ライダーのほうを中心に作られたが、第14話以降をどうするか、東映と毎日放送は連日会議を重ねることになる。
平山亨プロデューサーは語る。

~ 会議になると、脚本側から「本郷を殺した方が話は書きやすい」と何度も提案されたが、「主人公がわずか13話で死ぬなどとんでもない。子供たちのオールマイティーの夢をつぶしてしまう」と東映側は反論した。
意見は出そろい、本郷猛はヨーロッパの陰謀を追って旅立ち、第二の仮面ライダー・一文字隼人の登場というプランが煮詰められた。

ついでに第13話までに出ていた問題点、仮面ライダーの色を明るくし、造形も力強くしよう。仮面ライダーと風圧の関係、自分の意思で変身するポーズをつけよう。佐々木剛氏の一文字隼人は本郷より明るいユーモラスな面を出すなど作品の面目が一新することとなる。
「おかげで藤岡復帰とともにダブルライダーを作ることができた。第14話の変更プランは、いずれやろうと思っていた設定です。14話で思い切って新シリーズにして、災い転じてシリーズの強化につたがったのは幸運だった」と平山プロデューサーは回想する。

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『仮面ライダー』におけるその代表地は、 三栄土木 (東京都稲城市)と呼ばれる場所であるが、実際には造成地ではなく東京湾埋め立てのための土を削る場所だったらしい。現在、京王相模線・稲城駅周辺の新興住宅地。なお、この赤土を背景とした戦いは2号編に顕著であり、新1号編に入ってからは、雑草が生えてきているため違う場所にも見える・・・・。

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2023年3月18日朝、映画館で「シン・仮面ライダー」を見ました。
冒頭でバイクに乗った主人公(本郷猛、緑川ルリ子)が、2台のダンプカーに追いかけられるシーンがあります。ダンプカーには「 三栄土木 」という文字が見えました。
1971年からスタートした『仮面ライダー』の撮影で、 三栄土木 の採掘場が使われたので、シン・仮面ライダーでも、オマージュとして「 三栄土木 」が使われたのではないかと思います。

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↓「ウルトラマン対仮面ライダー/池田憲章・高橋信之/文春PLUS/文藝春秋」





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最終更新日  2023.04.04 06:00:59
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