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ニュートリノ論争はいかにして解決したか 研究には終わりということがなく、ある1つの難間の解決に当たって、それが成功したときには、その際に別の難問や研究課題が必ず立ち現れてくる。太陽からやって来るニュートリノの数が理論値の 3 分の 1 しかない――宇宙物理学の最大の謎として大論争を巻き起こした「太陽ニュートリノ問題」は、ほぼ解決された。本書は、その一部始終を、一般の読者にも分かるように丁寧に解説したものだ。太陽ニュートリノ問題には関心があって、地球はこれから寒冷化に向かうのではないだろうかなどと勝手に想像していた。だが、本書を読んで納得。私が思い悩む以前の時点で、理論的には解決済みの問題だった。だが、ニュートリノの研究は終わらない。「太陽の磁気活動が、太陽ニュートリノの地球への到来に対し、何らかのブレーキとなる働きをしていることを示唆」(203 ページ)、「宇宙の構成成分の 1 つとして、その存在が予想されている暗黒物質も、もしかしたら、残存ニュートリノとの関わりを通じて解決されてしまうのかもしれない」(231 ページ)など、論争の種は尽きない。著者はこう語る――「研究には終わりということがなく、ある 1 つの難間の解決に当たって、それが成功したときには、その際に別の難問や研究課題が必ず立ち現れてくる」(243 ページ)。■メーカーサイト⇒桜井邦朋=著/講談社/2010年07月発行 ニュートリノ論争はいかにして解決したか■販売店は こちら
2011.01.27
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宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン 老人と若者の「共存」する共同体が『ヤマト』である。実写版・宇宙戦艦ヤマトにタイミングを合わせて出版されたサブカルチャー解説本。1974~75 年にテレビ放映されたアニメ第1 作や 1977 年の劇場版、それ以降のテレビ・劇場版シリーズを振り返りつつ、ガンダムや最近のアニメとの比較を行うなど、盛りだくさんの内容になっている。「『ヤマト』に学園ドラマの要素があると指摘」(144 ページ)し、アニメ「コードギアス」や 2010 年に流行したドラッカーやマイケル・サンデルの話に繋げるのは無理があると感じたが、リアルタイムで「ヤマト」第1 作を見ていた世代としては、何でも「ヤマト」にリンクしたくなる気持ちは分からなくはない。時代は昭和 40 年代後半――第一次石油ショックを受け、日本は自信を失っていた。UFO や超能力、「ノストラダムスの大予言」がブームとなり、科学万能主義による高度経済成長時代に陰りが見えていた。一方で当時の国鉄は「ディスカバー・ジャパン」と銘打って、日本を見つめ直す旅を提案。また、角川春樹によって戦後間もない時代を舞台にした横溝正史の小説が映画化された。日本全体が内向きになったという点では、現代に通じるものがあるような気がする。そこへ、太平洋戦争時代の悲劇の戦艦がアニメになって甦る。しかも、裏番組のカルピス名作劇場「アルプスの少女ハイジ」と比べて暗い、彩度の低い映像としてテレビ画面に登場した。あの赤茶けた地球と、鋼色をした宇宙戦艦のインパクトは強烈だった。プロデューサーの西崎義展は、「『ヤマト』の発想の原形として、ロバート・ A ・ハインラインの『メトセラの子ら』(早川書房、1976 年)を念頭に置いていた」(66 ページ)という。意外である。元々は地球脱出のストリーであったというが、松本零士により大幅に軌道修正されたようだ。ただ、沖田艦長や徳川機関長、佐渡先生といったシニアが活躍するという点では、他の松本アニメには見られない面白さがある(アニメのエンディングテロップでは沖田十三がトップに登場する)。『メトセラの子ら』の流れを汲んだ形であろう。歳をとった今でも楽しめるアニメである。「ヤマト」のおかげで、アニメがサブカルチャーの一分野に食い込んだことは確かだ。サブカル・アニメは時代の主流ではなく、かといって文化や体制を批判するカウンターカルチャーでもない。その時代の流れのギリギリ端っこに位置し、常に時代の本流を斜めから見つめている――それがアニメのあるべき姿だと思う。だから、本書がドラッカーやマイケル・サンデルの話に繋げようとした点に違和感を覚えたのだ。もちろん、ディズニーやジブリのアニメも、ヤマトのようなサブカル・アニメとは異質のものである。「宇宙戦艦ヤマト」の影響が強すぎたせいだろう。自分の人生も社会の本流から外れている。そして今後も本流に戻る見込みはない。だからといって体制に不満があるわけではない。ごく普通の暮らしをしており満足である。「ヤマト」の影響が身に染みついているのだろう。こんな状況にあっても、日本という国や地球という惑星に誇りを感じている。どんな困難な状況になっても、おそらく自分は日本を見捨てることなく、地球上で生き続けることだろう。■メーカーサイト⇒アライヒロユキ=著/社会評論社/2010年11月発行 宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン■販売店は こちら
2011.01.26
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鉄道と日本軍 鉄道は軍事と不可分のものでもあった。明治時代、鉄道は軍事と切り離せない重要なインフラであった。東海道や東北本線の工事が急ピッチで進んだ背景には、軍事物資の輸送という目的があった。本書は、そうした明治期の鉄道の発展と戦争に焦点を置いた内容になっている。著者は、日本が鉄道敷設権を外国に売り渡さなかったことが幸運だと説く。なぜなら、「もしこのとき、アメリカに鉄道敷設権を認めたら、幕末に欧米列強と結んだ通商条約に盛り込まれた最恵国待遇条項によって、各国にも鉄道敷設権を与えなければならなくなる。外国資本による鉄道事業は、ひとつ間違えば、植民地化すら招きかねない危険なものだった」(19 ページ)からだ。西南の役では、鉄道が物資の輸送に一役買っている。その後、日清戦争、日露戦争、義和団事件では、東海道・山陽本線が兵員・平気・物資の大量輸送を可能とした。■メーカーサイト⇒竹内正浩=著/筑摩書房/2010年09月発行 鉄道と日本軍■販売店は こちら
2011.01.22
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怪獣人生 ゴジラに入るのは二日酔いの特効薬だよ。ゴジラの“中の人”として有名な中島春雄の自伝。大部屋の中でも地位の低い「B2」出身で、相当苦労したようだ。「不満を言ったら『そうか、じゃあほかの役者を呼べ』って下ろされても仕方ない。それが B2 の役者だ」(34 ページ)というほど厳しい世界だったようだ。にもかかわらず飄々とした語り口にはホッとさせられる。中島さんは、特撮の神様・円谷英二を「オヤジさん」と呼んで尊敬していた。長い間自伝を出さなかったのも、「恩人のオヤジさんは自伝を出さなかった。僕が出すのはおこがましい」(344 ページ)からだという。「ゴジラの話、オヤジさんの話、聞きたい人がいるなら話してみよう」と決心して本書を書いたという。ゴジラを演じるために、上野動物園へ通い、ゾウやクマといった大型動物の動きを研究したという。特撮はハイスピード撮影するので、「立ち回りをやろうと思ったら、あの二倍か三倍の早さで動かなきゃならない」(105 ページ)という。さらに、フィルムの感度には限界があるから、照明も二倍、三倍と明るくしなければならない。相当な重労働だったと思う。だが中島さんは、「たまに飲み過ぎで二日酔いで現場に出てゴジラに入ったよ。でも入るとサウナと同じだから。汗がドーッと出て治っちゃう。ゴジラに入るのは二日酔いの特効薬だよ」(140 ページ)と読者を笑わせる。いくらゴジラで活躍しても出世はしなかったという。「長いこと大部屋やっていたけど、だんだんと役柄が大きくなったり、出世したりすることはないよ。そういう契約だもん。言われたら何でもやる。それは変わらないよ」(318 ページ)。ちなみに、本書で「ウルトラマンに入っている古谷敏は東宝の役者の大分後輩だった。背の高い二枚目だね」(265 ページ)と紹介されている古谷敏さんの自伝『ウルトラマンになった男』を読むと、二人のスーツアクタの世代の違いを感じる。■メーカーサイト⇒中島春雄=著/洋泉社/2010年07月発行 怪獣人生■販売店は こちら
2011.01.19
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確信する脳 読者に「自分は、知っている内容をどのように知っているのだろう」という最も基本的な疑問を抱いていただけたなら、本書の目的は達せられたといえる。著者は、小説も書くというアメリカの神経医学者である。「訳者あとがき」にあるように、本書は、既知感(feeling of knowing;既視感ではない!)という言葉を使い、われわれの脳がどのように確信を持つに至るかを解説する内容になっている。ただし、安直な回答を読者に提供するものではない。読者は筆者の議論に付き合い、自分の脳で考え、確信の正体を考えなければならない仕組みになっている。その意味では、米ハーバード大学の政治哲学教授マイケル・サンデル氏の講義「ハーバード白熱教室」に似ていると言える。著者は「完全に意見が一致したからといって、思考のプロセスが同じとは限らない」(157 ページ)と主張するが、これは現代社会において忘れがちな事柄だと感じた。インターネットの情報におぼれ、マニュアルやハウツー本を読み漁るあまり、われわれは、たとえ同じ意見を持っていたとしても、その人と自分が立つ位置が同じだとは限らないという“真実”を忘れてはいないだろうか。私は確信する。だが、その確信が万人に当てはまるとは限らない。それが社会生活の難しいところであり、また面白い側面であるのだ。本書を読んで、そんなことをあらためて感じた。■メーカーサイト⇒ロバート・A.バートン=著/河出書房新社/2010年08月発行 確信する脳■販売店は こちら
2011.01.16
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なぞの金属・レアメタル これらの海底資源には、いくつかのレアメタルが含まれていますので、陸上の資源が不足した場合には開発される可能性が大きいと思います。身の回りにあるパソコンや携帯電話、液晶テレビなどに使われているレアメタル。中国の輸出引き締めで話題になったが、じつはよく知らない。そこで本書を読んでみた。レアメタルの形成メカニズム、分布や産業、気になる諸外国との関係や将来・環境問題について地学的観点から分かりやすく書いてある。レアメタルはマグマと熱水によって分離・生成されることが多いという。それなら、温泉が多いわが国に有利なのではないだろうか。だが、国内にレアメタル鉱山があるという話はあまり聞かない。著者はこの疑問に応え、「これらの海底資源には、いくつかのレアメタルが含まれていますので、陸上の資源が不足した場合には開発される可能性が大きいと思います」(128 ページ)と記している。露天掘りの中国に比べれば開発や掘削にかかるコストが大きいということだろう。しかし、自国内にレアメタルを持つ可能性があるということに安心した。著者は、Web サイト「地球資源論研究室」で情報発信を続けている。本書の内容の多くがインターネットのデータに依存しているので、ある程度の知識のある方には不満な内容かもしれない。■メーカーサイト⇒福岡正人=著/技術評論社/2009年03月発行 なぞの金属・レアメタル■販売店は こちら
2011.01.14
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昭和45年11月25日 日本国民すべてがあんまり気違いではなさすぎるので、三島氏は、せめて自分ひとりで見事に気違いを演じてやろう、と決意したのにちがいない昭和 45 年(1970 年)11 月 25 日、三島由紀夫は自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹、介錯される――。本書は、三島由紀夫本人の行動や信条には一切触れていない。三島と同じ時間を共有していた 120 人の人々の、11 月 25 日の出来事を詳細に綴ったものだ。その意味ではノンフィクションと言えるが、三島の自殺があまりにも劇的であるため、彼らはあたかも小説の中の人物(しかも脇役)にも見えてくる。この時、昭和天皇は健在で、総理大臣は佐藤栄作、自民党幹事長は田中角栄、警視庁長官は後藤田正治という最強の布陣である。市ヶ谷という東京都のど真ん中で起きた事件だけに、多くの著名人が事件を間近に体験している。川端康成、永六輔、司馬遼太郎、石原慎太郎、安部譲二、瀬戸内寂聴、仲代達矢、勝新太郎、坂東玉三郎、美輪明宏、篠山紀信、等々。俳優・仲代達矢は、かつて三島に向かって「どうして、作家なのにボディビルをやるんですか」(178 ページ)と訊いたという。三島はこう答えた。「僕は本当に切腹して死ぬ時に、脂身が出ないように、腹を筋肉だけにしているんだ」。後に航空幕僚長となり政府見解との相違から更迭された田母神俊雄は、防衛大学校の学生だった。校長が「暴力は絶対許せない」と訓示したことに対し、後年、「『そりゃそうだろう』とストンと得心した記憶がある」(194 ページ)と記し、「その得心は今でも変わらない」という。作家・安部譲二は三島に呼び出されて六本木のクラブに出向いた。三島は「この店にキープしである私のボトルは君にあげる」(147 ページ)と言った。「プランディーやウイスキーなら、置いといても悪くなることもないでしょう。外国にでも永い旅行ですか」と安部が聞き返すと、三島は「ああ、そうなのだ」と答えたという。アニメ研修生だった安彦良和は、その夜、「アニメ研修所の同期生と共に、三島はなぜ死んだのかを語り合った」(214 ページ)という。ともかく、120 人が 120通りの三島感を持っていた。これについて、著者は、「40 年前に、三島由紀夫は情報化時代を体現していた」(274 ページ)と結ぶ。つまり「現実社会には『たったひとつの真実』など、存在しない」のである。自衛隊市ヶ谷駐屯地の総監室のバルコニーに立つ三島の姿を目撃したという荒井由美は、「あのとき、60 年代末のムーヴメントが終わった。『これで時代が変わるなあ』って思ったことを覚えてる」(58 ページ)という。ウルトラマンという勧善懲悪型ヒーローや、科学万能主義を前面に押し出した大阪万博は、もはや時代遅れとなってしまった瞬間だった。さて、自分の記憶をたぐってみると、同じ年にあった大阪万博のことは明瞭に覚えているのに、なぜかよど号ハイジャック事と三島の割腹自殺は記憶にない。家にはテレビもあったのに、なぜだろう?子どもの記憶に、三島の自殺のような複雑な事象は残らなかったのかもしれない。単純明快な大阪万博やチキチキマシン猛レースは鮮やかな記憶となって心に残り、自分は昭和時代を一直線に駆け上っていく。その上昇飛行が終わるのは、約 20 年先のバブル崩壊であった。そして間もなく、真実の欠片もないインターネット世界と現実の生活が重なり合うようになる。三島が、いまの日本を見たらどう感じるだろうか。■メーカーサイト⇒中川右介=著/幻冬舎/2010年09月発行 昭和45年11月25日■販売店は こちら
2011.01.14
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ファミコンの驚くべき発想力 例えばドラクエでは、ゲーム中で使うカタカナの数を20文字だけに制約しています。「温故知新」という言葉がある。本書がまさにそうだ。かつてファミコン(ファミリーコンピューター)という家庭用ゲーム機があった。8 ビット CPU、最大 52色表示、2K バイトのワーキング RAM と 2K バイトのビデオ RAM、それに合計40K バイトの ROM カセットを挿すという、いまから考えると大変貧弱なハードウェアだった。それでもファミコンはプログラマブルなコンピューターとしてのアーキテクチャを備えていた。マリオシリーズでお馴染みのクリボーのデザインの秘密。ドラクエの復活の呪文のデータ割り当て。ドルアーガの塔のダンジョンの作り方――これらは、ゲームバランスを保ちつつも、プログラムやデータを徹底的にスリム化した末にできた、一種の芸術作品といえよう。本書の最後では、現代のプログラミングでは常識となっているオブジェクト指向を取り上げ、ガベージコレクションとフレームワークの功罪について触れている。われわれ技術者は生産効率を優先するあまり、思いもかけない泥沼にはまることがある。プログラミングで行き詰まった時、また、これからゲームプログラミングを始めようとしている方は、ぜひ本書を読んでいただきたい。■メーカーサイト⇒松浦健一郎=著/技術評論社/2010年11月発行 ファミコンの驚くべき発想力■販売店は こちら
2011.01.10
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Twitter社会論 実はネットを流れる情報の多くはタイトルが付いている必要がないメディアジャーナリストとしてネット上での知名度も急上昇中の津田大介による Twitter論。たった 140 文字の「つぶやき」が、なぜこれほど人気を博しているのか、「tsuda る」の語源ともなった著者が紐解く。2009 年 1 月に US エアウェイズの旅客機がニューヨークのハドソン川に不時着した事故があったが、この第一報は iPhone から Twitter に書き込まれた「つぶやき」だった。この出来事を契機に、速報性の面で Twitter の名がメディアに知れ渡たったという。また、筆者は「シンポジウムに出演したり、イベントを主催したりすることが多いのだが、ツイッターで直前にイベントの告知を始めたことにより、そうしたイベントの『動員』が以前とは比べ物にならないほどに増えた」(57 ページ)という。だが、Twitter の弱点として「デマも急速に伝播してしまう」(35 ページ)点も挙げている。だが、筆者も薄々気づいているとは思うが、実際に Twitter をやってみないと本書を理解することは難しいだろう。Twitter に限らず、ネットの世界には、文言では表しきれない“何か”が潜んでいるのだ。■メーカー/販売元 津田大介=著/洋泉社/2009年11月発行■販売店は こちら
2011.01.09
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昭和天皇の履歴書 昭和天皇は、辞めることができない。生まれてから一度も、辞めることがなかった。その誕生から終戦に至るまで、昭和天皇の激動の半生を、側近の証言などから詳しく分析、整理したものである。家族への思いや信条、好きな食べ物、歴史観、政治観などが明らかにされる。昭和天皇は鋭い洞察力を持っていたようだ。明治天皇の大葬を控え、皇族の教育を担当していた乃木学習院院長が陸海軍少尉任官の祝辞を述べた際、皇太子となっていた裕仁は「院長閣下は、どこかへ行かれるのですか」と尋ねる。大喪の日の夜、乃木学習院院長は妻静子とともに白刃している。また、太平洋戦争開戦前に「日米に事が起きたらどれくらいの期間で片づける確信があるのか」とたずねると、杉山陸軍総長は「3 ヵ月くらいで片づけるつもりであります」と答えたが、「汝は支那事変勃発当時の陸相なり。その時、陸相として『事変は 1 ヵ月くらいにて片づく』と申せしことを記憶している。しかるに 4 力年の長きにわたり未だ片づかんではないか」と追求する。すると杉山は、「支那は奥地が開けており……」とくどくどと弁明し、ついに天皇を怒らせてしまった。「支那の奥地が広いと言うなら、太平洋はなお広いではないか。いかなる確信があって 3 ヵ月と申すか」私は、昭和天皇の後半生しか知らない。全国各地を行幸し、海外視察をし、甲高い独特のイントネーションで話され、笑顔で手を振る昭和天皇しか知らない。しかし、その前半生の苦しさは考えに余りあるものであったろう。著者が「昭和天皇は、辞めることができない。生まれてから一度も、辞めることがなかった」(12 ページ)と指摘しているように、天皇として 62 年という史上最長の在位をつとめあげ、崩御されている。昭和天皇の大喪の礼の日は雨だったが、車列を見ようと街に出掛けたのだった。昭和天皇陵■メーカーサイト⇒文藝春秋=著/文藝春秋/2008年12月発行 昭和天皇の履歴書■販売店は こちら
2010.12.28
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海の翼 「いつの日か、かならず、日本に思返しをしなければならない‥‥」本書は、かぎりなくドキュメンタリーに近い小説である。舞台はイラン・イラク戦争開始から 5 年後、1985 年 3 月のイラン。イラク軍は突如、3 月 19 日以降にイラン領空を飛ぶ航空機の無差別攻撃を宣言。日本政府は救援機を送ることを断念し、イランに数百人の日本人が取り残された。手に汗握る展開。これを救ったのが、トルコの民間航空機である。なぜ、トルコが、しかも民間の航空会社が日本人を助けたのか。100 年以上前に起きた「エルトゥールル号」の事故を振り返りながら、日本とトルコの親密な関係を、大河ドラマ仕立てで紹介していく。巻末の解説で、映画監督の井坂聡は「百年前、私はおろか私の両親もこの世に生まれていなかった。百年後、私は勿論、残念ながら私の子供たちもこの世にいないだろう。百年とはそういう単位の歳月である」と語る。トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのは、いまから 120 年前の出来事である。その時、海岸に近い大島村の住民は、生き残ったトルコ人船員たちを助け出し、献身的な介護を施した。その時の恩を、トルコ国民は今でも忘れていないという。恥ずかしながら、「エルトゥールル号」の事故は知らなかった。ただ、イラン・イラク戦争の折り、イランに取り残された日本人を救出するためにトルコの民間航空機が活躍したことや、1999 年のトルコ大地震の時には日本政府が緊急援助を行ったことは覚えている。こうした関係は、120 年前の「エルトゥールル号」から始まっていたという。トルコ首相が日本人大使に、こう語る場面がある。「人から人へなにごとかが伝えられ、さらにまた人から人へなにごとかが伝えられる。歴史はそうしたことの積み重ねで成り立ってゆく」――。憎しみばかりでなく、親しみ・喜びの歴史を子どもたちに伝えていかなければならないと感じた。■メーカーサイト⇒秋月達郎=著/新人物往来社/2010年03月発行 海の翼■販売店は こちら
2010.12.17
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不良定年 1年に中休みを入れるためには、6月30日を中晦日とし、翌7月1日を中正月として、2日連続の休日にしたらどうか。20 数年ぶりに嵐山光三郎さんの本を読んだ――とうに還暦を過ぎているにもかかわらず、豪腕(豪筆)ぶりは健在である。次から次へと独特な発想が生まれてゆく。まずは、「昔は定年と書かずに停年と書いた」(6 ページ)そうである。これが本当かどうかは知らない。しかし、「停は『とまること』で、車がガソリンぎれすれば停車する、電気が止まれば停電、死ぬときは心臓鼓動停止で、学校で悪いことをすれば停学になった」(笑)。「『旅の帰り方』という本があっていい」(173 ページ)。なぜなら、「旅から帰るときはガッカリ感があり、それを克服するのが課題」だからだ。旅好きの人なら分かるでしょ、この気持ち。旅先で、エジプト発掘で有名な吉村作治・早大教授に間違われ、「吉村作治」とハンカチにサインしてしまったという。滅茶苦茶である。「1 年に中休みを入れるためには、6 月 30 日を中晦日とし、翌7 月 1 日を中正月として、2 日連続の休日にしたらどうか」(191 ページ)――うん、これはいい。6 月には祝日がないから、ぜひやってもらいたい。嵐山さんに言わせると、「ケイタイは戦後最強の新興宗教」(210 ページ)となる。一方、「ぼくは絶版王の異名を誇り、ロングセラーはあまり多くない。文庫本で書店に出ているのは、新潮文庫とちくま文庫、光文社文庫など 15 冊ぐらいで、あとはみんな絶版だ」(221 ページ)。たしかに、図書館でしかお目にかかれない。そんなんで良いんですか、嵐山さん?で、嵐山さんがこの本で言いたかったのは「善人定年となるなかれ」(234 ページ)ということだそうだ。ううむ。いまさら不良にはなれないし、死ぬまで働くしかないか――。■メーカーサイト⇒嵐山光三郎=著/新講社/2005年02月発行 不良定年■販売店は こちら
2010.12.12
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クライム・マシン 「タイム・マシンを手に入れさえすれば、どっちみち、私がどこの誰かなんて、調べ出すことができますからね」ユーモアたっぷりで、少しだけブラックなミステリー短編集。「クライム・マシン」‥‥ヘンリーのタイムマシンのトリックは?「ルーレット必勝法」‥‥数学者シボーグのみせたルーレット必勝法のトリックは?「歳はいくつだ」‥‥余命 4 ヶ月と宣告されたターナーがとった行動は? 「デスノート」を彷彿とさせる展開。「日当 22 セント」‥‥無実の罪で 4 年間の投獄生活を送った男が大金を手に入れた経緯とは?「旅は道連れ」‥‥航空機内で談笑する二人の人妻。彼女たちの旦那とはどんな人物か?「エミリーがいない」‥‥アルバートの妻エミリーは殺されたのか?「切り裂きジャックの末裔」‥‥切り裂きジャックの生まれ変わりと言って精神科に相談に来たポムフレットの運命は「カーデュラ救助に行く」‥‥私立探偵カーデュラが、二晩続けて撃退したひったくり犯の正体は?「カーデュラの逆襲」‥‥前作で胸に銃弾を浴びても生きていた私立探偵カーデュラの正体とは? ヴァン・イェルシング 3 世教授の運命は?「カーデュラと鍵のかかった部屋」‥‥夜だけ私立探偵の仕事をしているカーデュラの正体とは?■メーカーサイト⇒ジャック・リッチー=著/晶文社/2005年09月発行 クライム・マシン■販売店は こちら
2010.12.09
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嫌われない毒舌のすすめ 人が怒られてるときには、ちょっかいを出さないことです。猿岩石で一世を風靡したお笑い芸人の有吉弘行が書いた、他人に嫌われないためのノウハウ本。内容は「卑怯」の一言に尽きます。(笑)。曰く「『本当の自分なんてないんだ』と思っちゃった方が、楽に生きられると思うんです」(67 ページ)。「採み手でくるヤツには、ロクなヤツがいませんか」(80 ページ)。「これだけはやっちゃいけないのが、『成功者の本を読む』こと」(85 ページ)。「誰かを持ち上げるために、他の人の悪口を言うのは危険です」(133 ページ)。「後輩と付き合うのは、すべて打算」(144 ページ)。「出る杭は打つ」こと。自分の身を危うくしそうなライバルは、早めに潰すことです(155 ページ)。ま、こんな生き方もあるんだな、と。ビジネスマンの処世術のひとつとして読んでおいても損はないだろう。■メーカーサイト⇒有吉弘行=著/ベストセラーズ/2009年07月発行 嫌われない毒舌のすすめ■販売店は こちら
2010.12.08
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ブレイズメス1990 私が患者を助ける理由は、カネを戴けるからだ。命と同じくらい大切なカネを、ね映画化もされた「チーム・バチスタの栄光」の原作者であり現役医師の海堂尊による医療エンターテイメント。今回の舞台は「ブラックペアン 1988」の 2 年後。海堂小説では珍しく、海外シーンからスタートする。外部研修から戻ってきた東城大学の研修医・世良雅志は、外科医局長の垣谷雄次とともに、南フランスにいた。世良の任務は、天才外科医・天城雪彦を日本に連れ帰ること。世良はカジノで一世一代の賭けに成功、天城を日本に連れ帰ることに成功した。佐伯清剛・病院長と天城は新しい心臓病専門病院の設立を計画、世良がこれをサポートしていくことになる。天城は、世界中で彼にしかできない心臓外科手術「ダイレクト・アナストモーシス」を公開の場で行うと宣言。世良は、大学病院内の激しい権力闘争に巻き込まれていくことになる。天城は「私は東城大に心臓手術専門病院を設立するように、という指示を受けた。カネの算段もせず、新しい施設が作れるとお考えですか?」(175 ページ)と、後に病院長となる高階権太に詰め寄る。高階は「医師の使命は患者の治療にあり、断じて集金が目的になってはならないからです」とやり返すが、天城の主張が次第に優勢になっていく。天城は、「これから手術はニーズに応じ細分化していく。一般患者も手術の特性を知り、術式を自ら選ばなくてはならない時代になったのです。その時にはオペの見本市を開く必要がある」「医師は医療に専念すべし、などというしみったれた考えに洗脳され、医療とカネを分離しては、パラダイスは私たちのてのひらからこぼれおちていく」と言い切る。天城の主張は、医療倫理や社会通念とは相反する。だが、天城自身のセリフに、現場を知る著者の叫びが込められているように感じた――「確かに命に貴賤はないのかもしれないが、労力には限りがある。だから私は、ふたりのうちひとりしか手術対応できない状況ならばどうするか、と問いかけた。どちらかを選ばなくてはならないという時点で人道的範噂からは外れるが、そんな状況は現実に存在する。ならば、そうしたことを考えることすら禁止するのは、欺瞞ではないのか?」天城と高階の議論は、まるで政治哲学のマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」を彷彿とさせる。われわれは患者として医療従事者に全てを期待するのではなく、各々が医療哲学を持つべきではないだろうか。そして、医療従事者自身も、立ち止まってじっくりと哲学する時間が必要なのではないだろうか。なお本作品には、「チーム・バチスタの栄光」の心臓外科医・桐生恭一や、「螺鈿迷宮」で重要な役割を担う女医・桜宮葵も登場する。海堂尊の本チーム・バチスタの栄光ナイチンゲールの沈黙
2010.12.04
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エントロピーがわかる 系はいつも低い確率の事象グループから高い確率の事象グループに進む熱、温度、秩序、無秩序、元にはもどらない、時間の矢、宇宙の熱的死‥‥これらは熱力学の第二法則、すなわち「エントロピー」増加則に関係する。だが、「エントロピー」とは一体何なのか――本書は、複数のサイコロを転がす思考実験をすることで、エントロピーを理解することができる。いままで熱力学の世界の用語であると考えていた「エントロピー」は、じつは統計学や確率学に置き換えて考えることで、すぐに理解できるものだったのだ。もちろん、確率・統計に関する高校生程度の知識は必要ではあるが、大学生でも難解とされている熱力学の第二法則に比べたら簡明なことである。だが一方で、宇宙のどこへ行っても確率・統計学の公理は成り立つのかという疑問が生じる。その辺は著者も承知しているらしく、「決して」「永久に」などという言葉を太字にするなど、特に注意を払っている。もし、この前提があやふやなものだとすると、ナンシー・クレスの SF「プロバビリティ・サン」に登場する「確率子」が存在するのかもしれない。■メーカーサイト⇒アリー・ベン・ナイム=著/講談社/2010年07月発行 エントロピーがわかる■販売店は こちら
2010.12.02
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電子図書館 新装版 このような情報の自由流通の世界に知的所有権、著作権という意識を強く持ちこみ過度に適用すると、せっかく新しい世界が開けてゆこうとしているのに、ブレーキをかけることになってしまう。本書は、国立国会図書館長による電子書籍に関する解説書である。内容は図書館の立場から書かれているが、驚くべきなのが 1994 年に出版されていることだ。今回、新装版にあたり前文が書き加えられている程度にとどまっているほど、その内容は斬新であり、各界で話題を呼んでいるのも頷ける。だが、解説に「ここで著者である長尾氏の慧眼を褒めたたえることに終始するべきではない」(124 ページ)とコメントされているように、われわれは驚いているだけではいけない。電子書籍の時代になると、出版工程が無くなる代わりに、読者自身も密に書籍の流通過程に組み込まれていくし、検索という図書館の役割を我々自身が担うことになる。そして、著者が「電子図書館の場合には、貸し出すということは記憶装置の中の情報のコピーを作って送ることであり、同時に何人にでも貸出しが可能である。そして原本は記憶装置の中にずっと存在しているのであるから、返却ということをしてもらう必要がない」(108 ページ)と指摘しているように、従来の著作権法の独占権は消滅せざるを得ない。著者はさらに言う――「新しい知的情報を創造している人たちは金銭的なことよりも、むしろ新しい情報を自分が創り出したということをできるだけ多くの人たちに知ってもらうという、いわば名誉の方を大切にするのである」(113 ページ)。これが事実なら、知的所有権を独占権と称している企業・団体の立場が危うくなる。解説は、こうもコメントしている――「慧眼には驚嘆しつつも、ひるがえってわれわれは大きな悔恨を味わうべきだろう。本書が登場した 1994 年の時点で、本書の指摘が真正面から正確に受け止められていたならば、この 15 年ほどの歴史はまったく変わっていたのではないだろうか」(124 ページ)。電子書籍の時代になってなお、知的所有権を盾に甘い蜜をすする企業が、しかも海外にあることを、我々は改めて認識しなければならない。■メーカーサイト⇒長尾真=著/岩波書店/2010年03月発行 電子図書館 新装版■販売店は こちら
2010.11.29
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面白いほどよくわかるロボットのしくみ 現在から未来、そして過去に遡り、ロボットの歴史から最先端ロボット工学にいたるまでを読み解く入門書。現在から未来、そして過去に遡り、ロボットの歴史から最先端ロボット工学にいたるまでを読み解く入門書。■メーカーサイト⇒大宮信光=著/日本文芸社/2010年03月発行 面白いほどよくわかるロボットのしくみ■販売店は こちら
2010.11.24
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マンガ脳の鍛えかた アトリエびーだまには、徹夜の日というのは存在しない。少年ジャンプの人気マンガ家 37 名へのインタビュー集。仕事場や使っている道具のカラー写真が豊富。漫画家によって使っているペンが違うのは当然として、使っているインクも十人十色だ。どの漫画家もオリジナリティに溢れており、時代を鋭く見通す眼力を持っている一方で、孤独な執筆作業に没頭できる忍耐力も併せ持っている。■メーカーサイト⇒門倉紫麻=著/集英社/2010年03月発行 マンガ脳の鍛えかた■販売店は こちら
2010.11.12
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医者を悩ます「ニュータイプなうつ病」がわかる本 多少の残業時間があっても、いくらか裁量権が制限されていても、仕事に対する達成感があれば、なんとかやっていける人も多いようです。うつ病による社会損失はだという。そんな中、「ニュータイプなうつ病」が増えている。それは、「長引く/教科書破り/若年化/多様化/軽症にみえる/治療が難しい/社会復帰しづらい」という特徴があり、旧来の治療法が通用しない病気だという。こんな病気にかかると、家族も、上司も、同僚も、部下も、人事担当者も、学生担当の教員も、精神科医も、みんなが困ってしまう。精神科医として長いキャリアを持つ筆者は、「ニュータイプなうつ病」の問題点として「ニュータイプなうつ病はわかりにくい」「ニュータイプなうつ病は治りにくい」(20 ページ)をあげる。そして筆者は、「残業時間の多さと裁量権のなさがうつ病を増やしているよう」(172 ページ)だと分析。加えて、「多少の残業時間があっても、いくらか裁量権が制限されていても、仕事に対する達成感があれば、なんとかやっていける人も多い」(172 ページ)と指摘している。いまの日本の元気の無さが、「ニュータイプなうつ病」に反映されているのかもしれない。■メーカーサイト⇒山田和男=著/講談社/2009年09月発行 医者を悩ます「ニュータイプなうつ病」がわかる本■販売店は こちら
2010.11.08
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腐った翼 JALを残す必要があるかどうか。誰も口にしないが、本当は、そこが問われているのである。国に守られ、政治家と癒着し、甘い汁を吸って世界に大きく羽ばたいた国策企業「日本航空(JAL)」――本書の内容が事実だとすると、残念ながら、この会社は腐りきっている。社内は権力闘争に明け暮れ、経営者は組合と調整することを先延ばしにしてきた。そして、1985 年 8 月 12 日、御巣鷹山のジャンボ機墜落事故が起きる。この自己は民営化直後に発生したものであり、起きるべくして起きてしまった惨事といえるかもしれない。が、その後も為替ヘッジに失敗したり、燃油先物で大穴を開けたり、管理職の労働組合を用意したりと、普通の会社だったらとうの昔に倒産している経営が続く。さらに、その負債を隠してきた節がある。にもかかわらず、マスコミの報道は甘かった。政治絡みで報道が規制されていたのではないかと感じさせられる。2010 年 1 月、JAL は2兆3000億円もの負債を抱えて倒産した。だが、経営破綻の責任を負うべき 10 代目社長の西松蓮は、社長退任後、JAL 本社ビルにある日航財団の理事長におさまっている。JAL社員の噂によれば、通勤・送り迎えの専用車がないと不満を漏らしているという。どこまで泥沼なんだろうか。■メーカーサイト⇒森功=著/幻冬舎/2010年06月発行 腐った翼■販売店は こちら
2010.11.08
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「国民の祝日」の由来がわかる小事典 古来の日本社会でも、ふだん仕事に励む「ケ」(褒)の日に対して、みんな仕事を休んで地域の神々に感謝し平安と発展を祈る特別な「ハレ」(晴)の日が、神聖な祭日であり同時に祝日でもあった。「建国記念の日「こどもの日」「勤労感謝の日」…。今や年間15 日にのぼる「国民の祝日」はいつ頃、どのように成立したのか。古来の民俗的な年中行事や人生儀礼に伴なう祝祭日。明治以降の国家的な祝日。さらに平成に入ってから付け加えられた「みどりの日」や「海の日」など、「国民の祝日」は古さと新しさをあわせもつ。そこには、わが国で永年育まれてきた自然と、先祖に感謝する心、共同体の人間関係を尊ぶ豊かな精神が盛り込まれている。歴史学の観点から日本人の英知を解き明かす。■メーカーサイト⇒所功=著/PHP研究所/2003年08月発行 「国民の祝日」の由来がわかる小事典■販売店は こちら
2010.11.03
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完全教祖マニュアル 宗教ならば「日常生活に不要なものまで売りつけられる」のです。本書は、キリスト教、イスラム、仏教などの伝統宗教から現代日本の新興宗教まで古今東西の宗教を徹底的に分析。教義や組織の作り方から奇跡の起こし方まで、手取り足取り教えてくれる。各章末にはチェックポイントがあるので、これをチェックしていけば、盤石な宗教団体を構築することができるだろう。「『作る側』からの視点で宗教現象を解説した書籍はこれまであまりなかった」(227 ページ)と筆者が書いているように、これは、大真面目なマニュアル本である。だが、真面目に書けば書くほど、宗教の胡散臭さが際立ってくる(笑)。「教祖は人をハッピーにするお仕事」(13 ページ)なので、たとえば「社会の基準で幸せになれない人を見つけ」(37 ページ)幸せにしてあげる。その結果、教団が反社会組織に陥るのはやむを得ないと考える。また、宗教の胡散臭さを除くには「科学的な体裁を取れば良い」(121 ページ)とアドバイスする。「これはいわゆる疑似科学、エセ科学というやつですが、大丈夫、普通の人は『これは科学です』とさえ言っておけば絶対に疑いません」(121 ページ)。「あとがき」で「本書は実用書ですから、知的好奇心のために読んだ読者など圧倒的少数だとは思いますが」(227 ページ)と締めくくるあたり、最後までウィットに富んだ読み物である。■メーカーサイト⇒架神恭介/辰巳一世=著/筑摩書房/2009年11月発行 完全教祖マニュアル■販売店は こちら
2010.10.31
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ジェネラル・ルージュの伝説 スピンオフ小説「ジェネラル・ルージュの伝説」と著者による作品群の設定「ジェネラル・ルージュの凱旋」のスピンオフ小説「ジェネラル・ルージュの伝説」と著者自らが半生を綴ったエッセイや海堂作品群の解説、著者が構築した世界観の用語や設定紹介が収録されている。複雑に入り組んでいる海堂ワールドを読み解くのに便利。■メーカーサイト⇒海堂尊=著/宝島社/2009年03月発行 ジェネラル・ルージュの伝説■販売店は こちら
2010.10.28
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外科医須磨久善 困っている人をどれだけ助けられるか、ということが医療の本道です本書は、現役医師である医師が現役心臓外科医・須磨久善(すま・ひさよし)の業績を紹介するという内容になっている。じつは、本書の著者・海堂尊が作家デビューした「チーム・バチスタの栄光」でミステリーのプロットに用いているバチスタ手術を、日本で初めて行ったのが須磨久善なのだ。「難手術をし損じて患者が亡くなれば医療訴訟になる」(50 ページ)ご時世だが、それでも医療技術発展のため、ひいては難病患者を救うために、須磨久善はあえてリスクをとる。「日本で言ってもダメなら米国で認めてもらえばいい」(72 ページ)というスタンスである。須磨は心臓移植に対してこんな考えを持っている――「選ばれた人だけに特殊な治療を施してどれだけ生存曲線を延ばすことができたか、というのも確かに医療ですけど、それは医療全体から見ればごく一部のこと。ですから移植も大切ですが、移植せず自分の心臓を直していくという道も模索しなくてはならないのです」(156 ページ)。いずれ人工血管が普及すれば、須磨の手術の多くは不要になる。それでも、普及するまでの間、一人でも多くの患者を救おうと、須磨は果てしない努力を積み重ねる。須磨は「一人前になるには地獄を見なければならない。だけどそれでは所詮二流です。一流になるには、地獄を知り、その上で地獄を忘れなくてはなりません。地獄に引きずられているようではまだまだ未熟ですね」(204 ページ)と語る。この人は壮絶な努力家である。■メーカーサイト⇒海堂尊=著/講談社/2009年07月発行 外科医須磨久善■販売店は こちら
2010.10.22
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ジェネラル・ルージュの凱旋 俺を裁くことができるのは、俺の目の前に横たわる、患者という現実だけだ。東城大学医学部附属病院ICU の速水部長は、一人でも多くの救急患者を救うため、ドクター・ヘリ導入の悲願を抱いていた。そんな彼に不正取引の疑惑が――。前作「ナイチンゲールの沈黙」とまったく同じ時間、同じ場所で、違う事件が展開していくという設定には感心させられた。さまざまな人の想いが凝縮する病院の中では、あり得る話だ。今回も、“昼行灯”こと田口医師や厚生労働省の変人役人・白鳥調査官が大活躍。さらに、白鳥の部下で現場の足を引っ張る姫宮嬢や、速水医師をめぐる恋物語と、シリーズを重ねる毎に登場人物の人間味が濃くなってきたように感じる。著者の海堂尊は 1961 年千葉県生まれで、本業は医師。本作では、社会問題にもなっている「医療崩壊」問題を暗に織り込んでいるように感じられる。速水医師は、厚生労働省出身の病院事務長・三船に向かい「あんたたち官僚の血脈が目指す医療システムは、近い将来必ず崩壊する」と断じ、災害現場を飛び回るヘリに向かい「取材のヘリは飛ぶのに、ドクター・ヘリはどうして桜宮の空を飛ばないんだ」と叫ぶ。これは、小説の中だけの話だろうか。■メーカー/販売元 海堂尊=著/宝島社/2007年04月発行■販売店は こちら
2010.10.21
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ドキュメント宇宙飛行士選抜試験 最も危機的な状況にある宇宙飛行士こそが、率先して自らの平常心を保ち、どのような状況にあろうとも決してあきらめないという、“折れない心”を持っていなければならないのだ。2008 年 2 月、JAXA は日本で 10 年ぶりとなる宇宙飛行士の募集を行った。NHK記者が、候補者10 人に絞られた最終試験の一部始終に密着取材したのが本書。10 人は閉鎖環境という特殊な環境に置かれ、何を考え、行動したのかをつぶさに追ってゆく。アニメやミュージカルが好きで閉鎖環境でもジョークを忘れない候補者たちは、ある意味で“オタク”と言えるかもしれない。だが、「世界最先端の有人宇宙船と言われるスペースシャトルでも、死亡率は 66 分の 1」(206 ページ)なのだ。もしも危険な状況に陥った場合でも、「宇宙飛行士こそが、率先して自らの平常心を保ち、どのような状況にあろうとも決してあきらめないという、“折れない心”を持っていなければならない」(135 ページ)という。日本初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんは「宇宙飛行士に求められるのは、数々の審査で、すべて合格点を取らなければならないということ」(238 ページ)とエールを送る。■メーカーサイト⇒大鐘良一/小原健右=著/光文社/2010年06月発行 ドキュメント宇宙飛行士選抜試験■販売店は こちら
2010.10.14
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ウェブ大変化 もはや時代は変わってきている。少しばかりの情報をいくら占有していたところで、大したメリットはない。「タンジブル・ユーザーインタフェース」「アンビエント・コンピューティング」「セカイカメラ」「ツイッター」など、すでに実現されている技術要素と、まだ概念的である要素を組み合わせて、ウェブ世界の現状と将来を論じた書。筆者は、21 世紀に入って我々の社会はインターネットの登場と発展で大きく変わったが、これまでの変化が単なる通過点であったことを思い知らされる本当の大変化が起きようとしていると語る。そして最後に「誰もが大量のデータを分析することができるようになり、情報もコンピュータインフラも、持つものと持たないものの差はなくなろうとしている」(195 ページ)と指摘し、「このような中で、いったい何が価値を生むのか。それは、間違いなく個々人のモチベーションであり、アイデアである」「自ら手を動かし、価値あるものを生み出すということはとても大事だ」と結ぶ。意外とアナログである。■メーカーサイト⇒森正弥=著/近代セールス社/2010年03月発行 ウェブ大変化■販売店は こちら
2010.10.03
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スマートグリッド革命 誰もがエネルギー作りに参加できる「ユーエネルギー(You Energy)」に向けた進化が起こりつつありますスマートグリッドの世界でいま、誰もがエネルギー作りに参加できる「ユーエネルギー(You Energy)」に向けた進化が起こりつつあるという。インターネットがそうだったように、スマートグリッドの世界では消費者(コンシューマー)が生産者・消費者(プロシューマー,アルビン・トフラーが提唱)に変化するというのだ。「全国におよそ 4 万 8000 カ所あるガソリンスタンドに太陽電池を置き、急速充電器等と連結した太陽光・電気スタンドとすることも効果があります。こうして出来あがるスマート国民総発電所の規模は、何十ギガワットにも相当」(249 ページ)など、即座に納得できない話も多いが、それゆえに「革命」が必要なのだろう。考えてみれば、電気自動車に電気スタンドは必要ない。各家庭で発電し、その電力を電気自動車に販売してやればよい。そうすれば、走行距離を長くするための巨大バッテリーを搭載する必要はなくなる。インターネットのときがそうだったように、従来型の発想にとらわれない人ならカンタンにスマートグリッドの世界に入り込めそうだ。さて、我が家は賃貸住宅であるが、どのような形でスマートグリッドに参加していこうか。■メーカーサイト⇒加藤敏春=著/NTT出版/2010年07月発行 スマートグリッド革命■販売店は こちら
2010.10.02
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シー・シェパードの正体 経験不足のボランティアばかりが乗船するシー・シェパードの船の航行は本当に危ない。最近2,3 年、環境保護団体グリーンピースに代わり、シー・シェパードの反捕鯨運動がメディアを賑わしている。身体を張って調査捕鯨船に突入しようとする彼らは、なぜ南極海という場所で危険を顧みずに行動するのか――本書は、国際的な視点からシー・シェパードの裏側をルポするものである。本書によると、シー・シェパードのリーダーであるポール・ワトソンは、元々はグリンピースで活動しており、方針の違いから仲違いしたという。シー・シェパードが有名になったのは、オーストラリアのドキュメンタリー番組『Whale Wars(クジラ戦争)』に出演してからだ。「オーストラリアでは、ホェールウォッチングは一大産業」(223 ページ)になっているため、クジラの回遊数に関心をもつ人が多いのだという。シー・シェパードは高額寄付者の名前を船の名称にしており、「自分の名前がついた船が、南極海で捕鯨船退治に使われることに魅力を抱く富豪は他にもいるかもしれない」(218 ページ)という。こうしてメディアとマネーのバックアップを受けたシー・シェパードは、危険を顧みないボランティアを 1 年契約で募り、南極海で暴れているというのだ。日本の関係者は「経験不足のボランティアばかりが乗船するシー・シェパードの船の航行は本当に危ない。南極海は大荒れの天候に襲われることがあり、素人の船乗りが行く海域ではない。厄介なのは、妨害中にたとえば、クルーが海に落ちたりして、シー・シェパードが救難信号を出した場合、シーマンシップにのっとり、救助に向かわなくてはいけないことだ」(44 ページ)と嘆く。■メーカーサイト⇒佐々木正明=著/産經新聞出版/2010年06月発行 シー・シェパードの正体■販売店は こちら
2010.09.29
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イチローvs松井秀喜 孟子に「王道」と「覇道」という2つの言葉がある。辞書を引くと、王道は「仁義に基づき国を治めること」、覇道は「武力をもって国を治めること」といった意味だ。私はその言葉こそ、2人の生き様を体現していると思う。大リーグで活躍するイチローと松井秀喜は本当に不仲なのか。高校時代に邂逅した 2 人は、ともにプロ野球選手として頂点を極めた。メジャーリーガーとなった後も、試合前には仲良く談笑し旧交を温めていた。だが、2006 年の WBC を機に、その姿は見られなくなった。日本から海を渡ったヒーロー 2 人は、なぜ相容れぬ仲となったのか――ニューヨークを拠点にメジャーリーグを 16 年間取材してきた筆者が、この問題を明らかにする。イチローは昭和 48 年、松井は昭和 49 年の生まれ。ともに外野手で左打ち。共通点は多い。だがいつしか 2 人はメジャーリーグで対戦しても、談笑はおろか目も合わさなくなった。日本ではタブー視されたが、アメリカでは公然と「不仲説」が唱えられた。筆者は、両雄の「生き様」が正反対であることに原因を求めた。野球人としてのイチローはオリックス、マリナーズという地方球団に属しながらも、安打という「記録」を積み重ね現在の地位を築く。一方、松井は優勝を至上命題とする巨人、ヤンキースの主軸を担い、勝負を決すホームランを放つことでファンの「記憶」に残る選手となった。それだけではない。生い立ち、ファッション、ファンからの愛され方、等々。二人の生き様は正反対なのだ。2009 年、松井はエンゼルスへ移籍した。イチローが在籍するマリナーズと同じ地区のチームだ。本書を読んでおくと、二人の登場する試合がより面白くなるだろう。■メーカーサイト⇒古内義明=著/小学館/2010年04月発行 イチローvs松井秀喜■販売店は こちら
2010.09.28
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バビロニア・ウェーブ しかし、私は思い出すことがあるのです。あのホーマン軌道というのは何と優雅で芸術的な軌道だったかと――太陽系から 3 光日の距離に、銀河面を垂直に貫く直径 1200 キロ、全長5380 光年に及ぶ強力なレーザー光「バビロニア・ウェーブ」が発見された。それは、いつから、なぜ存在するのかは全くわからない。だが人類は、そこに反射鏡を差し入れることで、太陽から得るより膨大で効率的なエネルギーを手中にすることができるようになった。そんなある日、レーザー送電基地へ向かった宇宙飛行士マキノが事故に巻き込まれる。送電基地の 1 つが突然停止したのだ。スペースコロニーで育ったマキタと、バビロニア・ウェーブの発見者ランドール教授は、次々と危機に見舞われる。クエーサー、ダークマターといった、今でも天文学の謎であり続ける話題を巧みに織り込みつつ、物語はミステリー風に進んでいく。星雲賞を受賞した日本ハード SF を代表する傑作であるだけに、発刊後 20 数年を経た今でも読み応えがある。公式サイト:堀晃の SF HomePage■メーカー/販売元 堀晃=著/徳間書店/1988年11月発行■販売店は こちら
2010.09.27
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江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか? 「金離れがよい」とは、金銭に執着しないという意味だ。日本近世文化に詳しい著者が、落語をベースに、江戸時代の庶民の幸せな生き方を紹介する。現代情報社会ならドロップアウトしそうな「与太郎」や「粗忽者」が、なぜ落語界ではスーパースターになれるのか。著者は、「現代ではワーク・シェアリングすら難しいが、江戸時代の人は、必ずしもお金のためではなく、むしろ世間のために働き、あるいは人と仕事をシェアした。それが仕事というものであろう」(59 ページ)と説く。■メーカーサイト⇒田中優子=著/小学館/2010年06月発行 江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか?■販売店は こちら
2010.09.18
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図解宇宙船 最終章では、宇宙戦艦ヤマトやスター・デストロイヤーなどSFに登場する宇宙船の機能・性能を整理している。第1章から 3章までは、宇宙航行の基礎知識や、米ソの有人宇宙船を中心とした宇宙船計画やを図解入りでわかりやすく解説。最終章では、宇宙戦艦ヤマトやスター・デストロイヤーなど SF に登場する宇宙船の機能・性能を整理している。アメリカの最初の有人宇宙船マーキュリーに搭乗した宇宙飛行士のうちの 5 人のファーストネームが特撮 SF「サンダーバード」のトレーシー兄弟の名前になっていることや、同じくマーキュリー計画を描いた映画「ライトスタッフ」に搭乗するテストパイロット、チャック・イェーガーのエピソードなど、ユニークなネタが満載である。ただ、SF に登場する宇宙船の写真やイラストが少ない点が残念だった。■メーカーサイト⇒称名寺健荘/森瀬繚=著/新紀元社/2007年02月発行 図解宇宙船■販売店は こちら
2010.09.17
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ガラスの巨塔 怪文書が多い業界は三つある。ひとつが銀行、二つ目が役所、そして全日本テレビである。著者は、「タイス少佐の証言~湾岸戦争 45 日間の記録~」「埋もれたエイズ報告」などを手がけ、「プロジェクト X~挑戦者たち~」ではプロデューサーを務めた元 NHK職員。その後、万引きの嫌疑をかけられ、病気を理由に NHK を退職している。本書は「全日本テレビ」という舞台をめぐる小説の形態をとっているが、その内容は現実の NHK に限りなく近いものだと感じる。だとすると、われわれはこんな会社のために受信料を払っているのか、という気分にさせられる。社内の派閥闘争は大企業に付きものの病だが、それにしても醜すぎる。■メーカーサイト⇒今井彰=著/幻冬舎/2010年02月発行 ガラスの巨塔■販売店は こちら
2010.09.16
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マドンナ・ヴェルデ Dear KAORU, Welcome to Our Earth.2005 年、「チーム・バチスタの栄光」で小説デビューした現役の医師、海堂尊が再び生殖医療・代理母問題を取り上げる。桜宮市に暮らす平凡な主婦、山咲みどりのもとをある日一人娘で産婦人科医の曾根崎理恵がおとずれる。子宮を失った理恵のため、代理母として子どもを産んでほしいというのだ。一人娘のために代理母となることを決意したみどりであったが、お腹の中の赤ちゃんは孫ではなく、法律上は自分の子どもになるという。しかも、理恵が用意した受精卵には、ある仕掛けが‥‥。本書の未来に当たる「医学のたまご」、本書を理恵の視点から描いた「ジーン・ワルツ」も併せて読むと一層面白みが増すだろう。■メーカーサイト⇒海堂尊=著/新潮社/2010年03月発行 マドンナ・ヴェルデ■販売店は こちら
2010.09.14
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ジーン・ワルツ 医者はスーパーマンじゃないわ。できないことはできないと言うこと。2005 年、「チーム・バチスタの栄光」で小説デビューした現役の医師、海堂尊が描く最先端医療ミステリー。生殖医療・代理母問題をめぐり、どこまでが医療で、どこまでが人間に許される行為なのか、社会に問いかける。今回の主人公は、東京・帝華大学の美貌の産婦人科医、曾根崎理恵――顕微鏡下人工授精のエキスパートで、人呼んで「クール・ウィッチ」。事情を抱えた訪れた 5 人の妊婦をめぐって物語が展開する。一方、先輩の清川医師は理恵が代理母出産に手を染めたとの噂を聞きつけ、真相を追う。本書の未来に当たる「医学のたまご」、本書を理恵の母みどりの視点から描いた「マドンナ・ヴェルデ」も併せて読むと一層面白みが増すだろう。■メーカーサイト⇒海堂尊=著/新潮社/2008年03月発行 ジーン・ワルツ■販売店は こちら
2010.09.13
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医学のたまご 科学を前にしたら大人も子どももない。人の命に関わる医学では特にそうだ。「チーム・バチスタの栄光」(宝島社/2006 年 02 月)で一躍有名になった現役医師、海堂尊によるジュブナイル――医学を志す中高生に一読をお勧めする。主人公は、ゲーム理論の世界的な研究者である父を持つ中学生。歴史は得意だが、英語も数学もまるでダメ。ところが、「潜在能力テスト」で全国一位の成績を叩き出し、中学に通いながら東城大学医学部で研究生活を送る羽目になる。バチスタ・シリーズでお馴染みの東城大学の食えない面々がゲスト出演し、大人の世界の汚さが描かれる一方、そんな中でも患者を救おうとするプロとしての厳しさを盛り込んでいるあたり、海堂氏ならではの巧さだ。また、時代が近未来に設定されており、本書でターゲットとなっているある疾患に対する作者の考え方を窺い知ることができる。■メーカーサイト⇒海堂尊=著/理論社/2008年01月発行 医学のたまご■販売店は こちら
2010.09.12
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コンクリートが危ない 私は、コンクリート構造物が一斉に壊れはじめる時期が、30年後よりもはるかに早い2005~10年頃までにやってくる可能性が高いと考えている。コンクリートはなぜ固まるのかといった理論から、コンクリート建築の手順、劣化のメカニズム、現存するコンクリート建築の問題点などを具体的にわかりやすく説明した本。阪神大震災で、山陽新幹線のコンクリート橋脚の内部から「鉄筋の切れはし、空き缶、角材(木材)、発泡スチロールなどじつに多彩なもの」が出てきたという下りはショッキングである。著者によれば、「山陽新幹線の高架橋は列車の走行によって、ある日突然、床板が破壊するという危険にさらされている」そうだ。さらに、マンションのコンクリートの安全性を調べる手順も紹介されている。1970 年代以降に施工されたコンクリートは、とくに品質が悪いそうである。注意されたい。■メーカーサイト⇒小林一輔=著/岩波新書/1999年05月発行 コンクリートが危ない■販売店は こちら
2010.09.10
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死体の経済学 原価の数十倍を請求することが唯一許されたビジネス、それが葬儀なのだ。人生最後にして最大のセレモニーである葬儀――平均231万円という大金を払いながら、人は葬儀費用の内実を知らない。タダ同然のドライアイスで1日1万円、つかいまわしの祭壇で100万円取られるのはなぜ?死をめぐるビジネスは葬儀社だけではない。映画で話題の納棺師からチェーン展開の遺品整理屋まで、さまざまな業態があることを初めて知った。団塊の世代が亡くなる頃には全国の火葬場が不足するという。それに備え、地下や海上に火葬場を建設するという計画があるという。ベールに包まれた葬儀業界のカラクリを明かすルポルタージュだ。■メーカーサイト⇒窪田順生=著/小学館/2009年02月発行 死体の経済学■販売店は こちら
2010.09.03
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ネットの炎上力 J-CASTニュースの目指す方向は、コメントを通しての読者との双方向メディアである。新聞を購読せず Yahoo!JAPAN やや Google のニュースサイトで済ます若者が増えている。新聞記者から J-CAST ニュースの発行人に転じた筆者が、初めて明かすネットニュースの驚くべき内幕とまったく新しいビジネスモデル。筆者は、政権交代などの具体的なテーマをあげて、インターネット上でのニュースの作り方、紙媒体とは全く異なるビジネスモデルを明らかにする。さらに、新聞・雑誌・ネットそれぞれに通暁する筆者ならではの視点でメディアの未来について論じる。■メーカーサイト⇒蜷川真夫=著/文藝春秋/2010年02月発行 ネットの炎上力■販売店は こちら
2010.08.24
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日本人だけが知らない日本人のうわさ 中国には、反日を標模する情報サイトが複数あります。このサイトの利用者たちは、反日デモが起きるとそれを煽るように、捏造したデマを流します。本書では、海外で語られている噂をご紹介しながら、私たち日本人がどのように見られ、語られ、描かれているのかを探っていく。日本のスポーツやアニメやポルノは海外でいかに受け止められているのか…。それが真実であろうとなかろうと、世界で噂される日本のイメージを直視することこそが、日本のアイデンティティを考えることにもつながる。そして、それはあなた自身に向けられた視線でもある。下ネタ的な噂話が多いのは、それが世界共通の言語だからだろう。■メーカーサイト⇒石井光太=著/光文社/2010年02月発行 日本人だけが知らない日本人のうわさ■販売店は こちら
2010.08.22
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日本最初のプラモデル 幅40センチほどの鉄の塊だが、こうして最初の金型が残っているのは、模型業界の奇蹟かもしれない。■メーカーサイト⇒竹縄昌=著/アスキ-・メディアワ-クス/2008年12月発行 日本最初のプラモデル■販売店は こちら
2010.08.20
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信念を貫く 人間は悔しさとか、何とかしたいという気持ちが、大きなエネルギーになると思います。日本人大リーガーの松井秀喜が、ワールドシリーズ MVP を受賞し、ヤンキースからエンゼルスに移籍しようという 2009 年のオフに執筆されたもの。左手首の骨折や両膝の手術という困難にぶつかり、迷いが生じ、それでも野球を続けてきた松井の心情がそのまま記されている。■メーカーサイト⇒松井秀喜=著/新潮社/2010年03月発行 信念を貫く■販売店は こちら
2010.08.18
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危険不可視社会 危険を完全に排除して、子どもたちを無菌状態で育てるのは、未来の大事故の準備をしているようなものです。著者は 2007 年に危険学プロジェクトを立ち上げ、危険学から社会を見る活動を続けている。「遊び場からの撤去が進んでいる遊動円木、箱形ブランコ、回旋塔の三つは、危険ではあるものの、子どもたちにたいへん人気の高い遊具」(159 ページ)だったとしたうえで、「危険を完全に排除して、子どもたちを無菌状態で育てるのは、未来の大事故の準備をしているようなもの」(164 ページ)と指摘する。私も、危険回避というのは、実際に体験してみなければ分からないものだと思う。子どもの時、じゃれあったり遊びあう流れの中で、相手を怪我させないような力加減を体験していく必要がある。中途半端なところで大人が割って入ってはいけないと思うのである。■メーカーサイト⇒畑村洋太郎=著/講談社/2010年04月発行 危険不可視社会■販売店は こちら
2010.08.13
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読ませるブログ 気長に少しずつ、まさしく自然体で挑むことこそが、プログの楽しさを味わう最大のコツなのだ。ネットの世界にあふれているのは、日記レベルの「おもしろくないブログ」ばかり。小論文指導のプロが、「読ませるブログ」のポイントを解説する。重要ポイントは太字になっているので、まずは、それらを読み拾っていくだけでも良い。著者は「気長に少しずつ、まさしく自然体で挑むことこそが、プログの楽しさを味わう最大のコツ」(63 ページ)とアドバイスする。継続こそ力なり。「たとえ多くのコメントがつかなくても、ブログを書き続けることによって、様々なスキルがアップする」(38 ページ)のだ。■メーカー/販売元 樋口裕一=著/ベストセラーズ/2009年04月発行■販売店は こちら
2010.08.11
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できる会社の社是・社訓 本を読む時間をもて(鹿島建設)老舗企業の失敗しない秘訣は、社訓に凝縮されているという。翻って、自分が勤めている会社の社是・社訓を知らなかったことに気づかされた。毎日朝礼を開くのは迷惑だが、1 年に何度かは、社是・社訓を読み上げる機会をつくったほうがよいと感じる。鹿島建設の社訓が「本を読む時間をもて」(130 ページ)というのは意外だったが、良い社訓である。■メーカーサイト⇒千野信浩=著/新潮社/2007年04月発行 できる会社の社是・社訓■販売店は こちら
2010.08.10
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かくして冥王星は降格された 冥王星という名前が初めて提案されたのは、1930年3月14日の朝、イギリスのオックスフォードに住むバーニー家の食卓でのことであり、提案したのはバーニー家の11歳の小学生、ヴェネチア・バーニーであった。2006 年 8 月 24 日、惑星の定義に関する国際天文学連合の決議が行われ、冥王星は「準惑星」に降格された。本書は、アメリカ人クライド・トンボーによる冥王星発見の時から、2006 年の降格までをめぐるドキュメンタリーである。冥王星降格のニュースは日本でも話題になったが、アメリカではそれ以上に大きな話題になったようである。アメリカ人は、Pluto(冥王星)という言葉に対し、他のどの国より愛着があったようである。著者はニューヨークのへイデン・プラネタリウムの館長を務めているが、国際天文学連合の議決より早い 2000 年、プラネタリウムを新造した際に、冥王星を太陽系の惑星から省いていた。このことが、アメリカ中の話題になったほどである。本書には、冥王星の助命を嘆願する子供たちの手紙から、正式な裁定の根拠にいたるまで、とりどりの図版と資料が収録されており、科学とは何かを本質的に考えさせられる。■メーカーサイト⇒ニール・ド・グラス・タイソン/吉田三知世=著/早川書房/2009年08月発行 かくして冥王星は降格された■販売店は こちら
2010.08.07
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葬式は、要らない 葬式が贅沢だというのは、法的にその実施が規定されていないからである。日本人の葬儀費用は平均 231 万円。これはイギリスの 12 万円、韓国の 37 万円と比較して格段に高い。浪費の国アメリカでさえ 44 万円だ。実際、欧米の映画等で見る葬式はシンプルで、金をかけているように見えない。法律では葬式を営むことを定めていないという話は盲点であった。「葬式だけではなく墓の否定、つまり墓を作らないことも可能」(23 ページ)であるという。なぜなら、「墓理法では、遺骨の埋葬は墓地以外の場所で行ってはならないと規定されているだけ」(23 ページ)だからだ。半ばインフレを起こしている戒名料についても、歴史と経済的見地から分析がなされている。葬式が要らないとは思わないが、自分が喪主になった時、また自分自身の葬式の時、どのくらいの予算で葬式をあげるか事前に考えておいた方が良さそうである。■メーカーサイト⇒島田裕巳=著/幻冬舎/2010年01月発行 葬式は、要らない■販売店は こちら
2010.08.04
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まだ科学で解けない13の謎 暗黒物質がないと銀河の回転速度に説明がつかない以下の 13 の科学上の「謎」(変則,anomaly)を取り上げて解説。暗黒物質・暗黒エネルギーパイオニア変則事象物理定数の不定常温核融合生命とは何か?火星の生命探査実験“ワォ”信号巨大ウイルス死セックス自由意思プラシーボ効果ホメオパシーとくに「パイオニア変則事象」(惑星探査機パイオニアの軌道が計算からズレている現象)について興味があり読んだのだが、NASA のデータ管理の杜撰さを初めて知った。版重力や第5 の力を期待していたのだが、意外にも“ヒューマン・エラー”で決着が付いてしまうかもしれない。本書は、現場に携わる多くの科学者へのインタビューを通じて、謎を謎として放っておくだけでなく、ありそうな選択肢を幾つか見せてくれる。■メーカーサイト⇒マイケル・ブルックス=著/草思社/2010年05月発行 まだ科学で解けない13の謎■販売店は こちら
2010.07.28
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