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あれから一年。昭和を思わせる平和への振興と、文化の発展は、穏やかに、そして、最適な方法で進化し、忌まわしい急激な進化は、必要性ある医学だけに絞られた。強制的で不必要な進化は、時間を持て余し、争いに繋がり、生活していく上では何も支障がない場合、むやみな開発は法律で罰せられることとなった。人間、そんなに頭はよくない。だから楽をする事だけは一人前だ。そこだけを取り上げたらきりがない。新しい聖地で新しい住職を務めるシンは、訪れる人に勇気と陽気を与えるために、定期的にセータ達を呼んで、いいところと悪いところを指摘しあい、コミュニケーションを絶やさないようにしていた。シンの教えは、人間、ひとりではない、ひとりでは生きられない、という項目を、題目に加え、上手く仏教を通じながら広めていった。その教えは、シンだけで考えたのではなく、セータ、サーヤ、イオン、サク、そして、ウインによって教えられた事だ。リセットは決して正しい選択とは言い難い。しかし、本当の最悪に出会い、どう対処するか考えなければ、リセットをする意味がないのだ。何も考えないで、リセットするものなら、確信が持てないまま何回も繰り返すに違いないのだ。2007年、この時代は、意味のない技術と、無駄な時間を使い、バブルを懐かしんでいる者が、見た目だけのバブルを築き、品質改善や見直しを無視する傾向にある。中身のない技術が、世界を翻弄させているのだ。その根本的な原因は、少子化にも関連がある。人が足りない、経済的に厳しいから結婚出来ない、だから子供が増えないし、環境が変化したから、産みたくても産めなかったりする。人材も減少し、年功序列めいた会社が増え、若者が育たない会社となれば、多くの高給取りが存在する以上、給料も上がらないから内部でやり繰りしながらコストを下げる、行き着く方法は手を抜くことしかない。食生活や教育や施設にも過大な変化をもろに受けて、どれもこれも変わり過ぎた。一人一人が冷静に考える時間があれば、見えない事までもっと見えてくる。会社の都合か、政府の勝手なのかわからないが、誰が急がせているわけではなく、もう少し自分自身にリセットしたらどうだろうか?世間の叫びを受け入れ、努力するまでに時間がかかるしお金がかかるように、まず政治家の特権を世間に使うかどうかがカギのようだ。それでもどうしようもないと政府が判断を降した時、正義の味方が登場するのか、それとも、リセットか?[END]リセット
2007.03.15
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住職は旅立ち、この地に新たなる平和が訪れる。住民達も、社会も、目が覚めたかのように動き出し、今までの時間を取り返すくらいの意気込みで活発さを取り戻していた。まるで昭和初期の戦後の慌ただしさを思わせる。寺院の片隅で再起不能に陥ったドンを見つけ、施設へと送られた。このリセットには、最悪が深過ぎるドンに関しては、最良にする作用を施すためにほとんどの記憶を消去する必要があったために、キルどころか、チップとしての機能まで失ってしまったのだ。だが、ドンは、「…夢…」と、記憶の破片で持っていた譫言のように繰り返していたという。夢を持たない人は沢山いるが、実現するには数々の道を通らなければならない。早いか遅いかは別としても、どういう形で通るかで結果は変わってくるはずだ。キルには、その夢を欲望として実現するために一番早い方法を見つけだす能力があった。結果が全てであり、それが最悪な方法だろうが、キルが最良、最短はアバウトに判断されて動き出す。サクもシンも今まではそうだった。だが、あの瞬間リセットの影響で、世の中が一掃されたように、悪という部分は消し去られた。キルはもう、キルではなかった。サーヤは、サクとシンの行方を気にしていた。しばらくすると、通信機に声が聞こえてきた。[…セータだ、聞こえるか…]サーヤが飛び上がるくらい喜び、[…今どこにいるの?無事だったら早く連絡しなさいよ!…]サーヤは、喜びながらも厳しい言葉をかけた。それは最愛だった3人を思うからこそだった。[…住職は?…][……][…やはりそうか…]セータはサーヤの気を読み、全て悟り、しかも後継者の事までわかった。[…これからそちらに向かう…]と言ってすぐに通信を切った。あまりにも衝撃的であまりにも悲しかったからだ。セータは今後継者の事をシンに伝えようとした。サクもキルの機能は失っていたのでセータの考えを読む事ができない。セータ:「ねえ、シン、あのね…」するとすぐ、シン:「しゃべるな!こいつは危険かも」突然とシンが言葉を拒否した。サクにも同じ反応で、2人で目を閉じ、深刻な表情を見せた。セータは、2人が変わり始めているのを感じた。記憶が吹っ飛ぶのではなく、新たな機能に生まれ変わるためのバックアップが始まったのだ。シンとサクにそれぞれの記憶が戻り、2人の表情が普通に戻った。シン:「セータ、さっきは悪かった、変化の途中で外部からの情報を入れると、一部でも塗りかえられてしまう危険性があってね、別の人格になってしまう可能性があったからねぇ」サク:「別の人格でもよかったんじゃないの?」きつい冗談だった。セータは安心したと同時に、伝えようとした事はもうシンの頭に入っていた。「…住職かあ…」人気blogランキングへ
2007.03.15
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サーヤは、ベッドの前でしゃがみ込んだ。住職は、自らの命を振り絞り、外を見ながら座禅を組んでいたのだ。サーヤ:「もう、終わったの、だから…」そう言いかけて、住職の背中を軽く触った時、サーヤは、住職の気持ちを感じていた。---------------------------------------------「…寺院は安全、そして神聖な場所に移り、セータはサクと共にやがて戻ってくるだろう。後継者をシンとし、新しい記憶と時間の流れが、きっと彼をサーヤの希望を叶えてくれるであろう…]---------------------------------------------それは、意志を体の表面に浮き彫りにさせた住職の伝言だった。サーヤは涙を浮かべて、これが住職の遺言となった事を受け止めた。シンには記憶がないこともわかり、悲しみが増したが、サーヤ:「告白しないまま記憶がなくなるって事は、あたしなんかまったくわからないということかあ、もっと早く出会って告白しとけば覚えてくれたかも…」サーヤのつぶやきは、この後の展開で思わぬ事実が待っていることになる。ウインとイオンにすぐ住職の事を説明し、手を合わせ、ウイン:「よくやってくれたよ、そこまでしてようやく手にした自然なんだ、きっと永遠に保つ事が住職への恩返しなんだ」サクとシンは、ドンとの格闘の末に、墓穴となったあのリセットについて複雑な心境を抱いていた。サク:「勝ったことより、こうなることを知っていたのでは?」シン:「ああ、私もそう思っていた。でもそうだとしたら、ドンにもそんな一面もあったという事になるなあ」身を投げた形に終わったこの一件、2人にとって、最低限の記憶として最初に残されるはずだったが、2人のキルの作用は、記憶をある程度とどめる機能を新たに残し、それを最後に、「キル」という名のチップだけが消えていった。2人の中には、チップを越える何かが変化していたのだ。そんなことは2人には気づくはずもなかった。シン:「思い出したが、アジトは元からなかったと言っていたけど、もしかしてキルには、他に何かすごい機能が隠されている事じゃないかあ?」サク:「有り得るな、でもドンがどうやったのかわからない」サクが考えている間に、シンは、自然に寺院の事を感じていた。寺院が移動した事の気を感じて、アジトの件をリンクさせていた。シン:「ドンには夢を持っていた、しかもしっかりとした夢だ、最悪といえども、夢は抱ける。ただ、通った道を間違えただけなんだなあ」サク:「言っている意味がわからんが?」シン:「だから、どんな人にも夢を持っているけど、目指し方が人それぞれって事だ」そんな発言をするシンを見つめながら、サク:「おまえ、なんか住職みたいな事言っているなあ」シン:「ああ?」シンの言葉には確かに住職の気が宿り始めていた。ドンの夢とは、大きな屋敷に住むという、悪な金持ちが抱くような夢を具現したのがあのアジトだという。人類全てが具現するか実現させるかは別としても、夢への思いの深さによっては、実現させるために結果として現れる事もあるのだ。そして、悪も善もなく、幅広い考えを持つ大切さを身につけたシン。一方、永遠の旅に出た住職を、サク達を除く一同は、彼らのいる、自然へと帰っていくに相応しい寺院の新たな聖地となった森林で天へ見送ることを誓った。人気blogランキングへ
2007.03.14
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住職の言葉に圧倒されたのか、ドンは、口を開かなかった、というより、キルの作用から麻薬まで、毒素となる成分が全て消去されたことのほうが致命的だろう。自分からリセットしたために、後悔に包まれていたドン。そのドンにも、変化が起きていた。他のキルと同様に、浄化が始まっていたのだ。軽い犯罪から重罪までに浄化されるレベルがあるらしく、ドンの場合は、かなり密度のある重罪であることから、単なる浄化でなく、記憶までもがリセットされる可能性があった。それはもう、一度死んだも同然の記憶による死刑といっても過言ではなかった。かつては、いいも悪いも全てが一律なリセットが基本だった。現代では、世の中に起こる事件や事故、あるいは最悪の事態が起きた後には全国一律のルールが生まれる。それは罪のない住民をも道連れにした、一律な考えであり、罪を犯していない人にまで縁のなかった分野でも縛られることは間違いなく、罪人を恨む気持ちが生じる。しかし、いい部分を延ばし、毒素を根本的に消去して、悪い部分をなかったことにするという、これがまさに、寺院の伝統が生んだ、究極のリセットといっても過言ではない。悪い所をなかった事にするというのは聞こえが悪いかもしれない。過去に起きた事件を記録に残して罪の重さを考える事も大切だが、そうはとらない人物もいるのだ。普通であれば、悪い部分というのは、その事件、犯罪が解決したからといって、まずそこで終わったケースはない。必ず形態が変わっても次に考えられていく罪の繰り返しは必至だ。前の事件を参考に、連鎖的や便乗的な犯罪も発生してしまう。いい部分はよりよくのばして発展の貢献にあてる、寺院が行ってきた、最終の願いなのだ。サク、シン、そしてドンは、キルの運命を背負って、毒素の記憶の消失を前提に、全ての記憶も道連れになる事を覚悟しなければならなかった。セータは、セータ:「サクとシンまでが、俺達を忘れる、いや、なかった事になるなんて!」心で叫ぶ事しか出来なかった。リセットは霧が晴れるかのように終了した。あたりは静かになった。寺院は、山のしげみにあった。森林に囲まれた幻想的な場所。小川が流れ、鳥がさえずるこの場所は、まるで神や仏の聖地かのように、神秘というか、神が選んだ場所のようだ。イオン達は、セータ達の反応が心配だった。ウインは、キルの追跡をしていたが、それはもう使い物にはならなかった。一番心配していたのはサーヤだ。シンの事、サク、そしてセータの身体に異変がないだろうかと。イオンは廃墟のホテルの外に出てみた。そこにはまだ見たことのない光景が広がっていたのだ。サーヤは、ベッドに休ませていた住職の様子を見に行った。その時、サーヤが見たものは?人気blogランキングへ
2007.03.13
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その声が聞こえた後、セータに物凄い勢いで何か空気のようなものを感じた。セータ:「何だかホッとする、気持ちがよくなってきた…」その空気は、サクとシンにも向けられ、同じ気持ちを得られた。ドン:「ば、馬鹿な、あいつら、笑ってやがる…」あれだけの事を受けていながら、まるで癒されていた。サク:「何だか痛みを感じなくなった、こりゃあ一体?…」シン:「大事なのは、癒し系だな…」力が甦ってきた3人。体制を整えて、ドンに立ち向かった。その間、血迷ったドンは、持っていたリセットボタンを押した。「…!」一瞬にして、寺院もろとも、跡形もなくなった。瞬間リセット。それは、瞬間移動を利用した、人工リセット。その特徴は、瞬時にその場の危機から逃れたりするための手段だが、ドンの目的と寺院の代々伝わる瞬間移動の効果がミックスされてしまい、移動中、変化が起きていた。ドンにも予想のつかない事態に発展していくのだった。ドンの計画では、キルの機能である音波に乗せながら寺院のある場所、「鬼門」を起点に、麻薬の流れを拡散移動させる作戦だった。鬼門からは、拡散がバランスよく行き渡り、キルの力が注がれるために、簡易的とはいえ、全ての住人にキルが備わるのと同じタイプになる予定だった。そして一方の寺院の代々伝わる瞬間移動は移動というより、何もなかったことにするタイプ。即ち、なにもかも変わらなかった事にするものだった。失敗や不幸を迎える事が今後のステップアップのための踏み台に出来ない、引きずったまま悩みを抱えて生きている住人のために、この寺院に訪れた者に気を与え、瞬時に気持ちを入れ替えために伝えてきた。鬼門だった場所からのドンの瞬間移動は、光となって効率的に拡散していき、ドンの思いとはま逆に、空気中の麻薬を消し去っていった。まわりの草木も清浄され、全ての悪性を取り除いていった。その瞬間移動の要素に、新たに住職の思いも加わっていた。薬など不要、ただ声だけはかけて欲しいコミュニケーションを重視した。住人にも何か力が加わっていた。ドンにも、今何が起こっているのかわからないまま、空間移動し続けた。寺院もろとも。その間、新たな光が加わり、寺院をまるごと覆い囲んだ。ドンも、サクも、そしてシンやセータも、ただその光を見ているしかなかった。その光は、紛れも無く住職が放ったものだったのだ。何も喋る事が出来ない中、光は、寺院にいる皆に声をかけた。[…もう無駄な事に手を延ばす事もなかろう、ドンよ、あなたも所詮同じ人間であることにかわりはない、だから、違う事に力を注ぐなら、もっと人の事に向ければよかったものを。身をもって洗礼を受けるがよい。それに、皆に言える事だが、この世にチップなど無意味な物、何も変わらん。変わるのは人格だけ。人格も個性があるから触れなくても生きていく上では問題ないのだよ。更なる強制が必要なら真面目に集中すればいいこと、チップはきっと人間のためにはならない、欲望の塊になるだけ。それだけ言いたかった…]ドンは記憶が飛びかかっている間、この言葉だけが頭に焼き付いていった。人気blogランキングへ
2007.03.12
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声は紛れも無く、ドンだった。瞬間移動の先は寺院だった!先を越され、しかも、ここに来た理由は、既に住職の考えを読んでいた事になる。ドン:「残念だったなあ、上には上と考えていただろうが、更に上がいるとは思わなかったようだなあ、ここの最終手段はもう封印した、あとは私自身の問題だ」シン:「あの野郎、いったいどこまで知ってるんだ?」サク:「もうこれまでかあ!」セータ:「よく考えて、感じなかったのはキルって事は、キル向けに作られた何かって事だよね」サク:「それがどうした!?」セータ:「だから、キル以外のチップには向いていない、ということは、勝ち目があるのは、俺だけかも?」サク:「何いうかと思えば、そんな事かあ、キルに向いているからって勝てるという根拠あるのかあ?」サクは、セータの言っている事がよくわかっていた。ドン:「そろそろ終わりにしようか、君達にはいい墓場になりそうだなあ、俺が寺院でやることはわかってるんだよなあ」セータ:「ああ、瞬間リセットだ」サク:「瞬間リセット?!」ドン:「素晴らしい、お前のチップにはとても予想できない何かを秘めている、もったいないから死んだ後摘出してキルの開発にあてるかな」寺院代々だった術はドンには解読済みであり、チップとの組み合わせでより可能性を広げることもわかっていた。キルがキルの考えに踏み込めないのは、キル特有の磁力が外部の信号をお互いに発しているために、セキュリティがない替わりに、意志を持ち込めないスクランブル式になっていた。キル同士、同じ考えを持たないのではなく、持てないのだ。干渉はあっても、入り込む事ができるが意味が通じないのだ。だからドンを読む事が出来なかった。唯一、対抗出来るのはセータただ一人。ドン:「セータ君だけは予想外なチップだったな。だが、その若さでは止められないだろうなあ」サクとシンは、セータに頼るしかなかった。シン:「しょうがない、力仕事しか役にたちそうもないなあ」ドンにとっての宿敵は、セータのサーヤ特製チップ。しかしユーザーが若すぎるために、ドンには見下されていた。サクが攻撃を仕掛けたがすぐにあの超音波を発して、サクとシンの攻撃を絶った。ドン:「それじゃあ足手まといになるだけだなあ、どうする、セータ君」セータは考えた。[…キルにキルは入り込めない、じゃあ、セータのチップからは?…]セータ:「え、住職?」何か声が聞こえたように感じたが、ヒントになったようだ。セータは最大限の力を振り絞り、ドンのキルだけを考えた。そして今、新たな機能が追加された。ドン:「ん?何!何だ、この痛みは?!」セータの能力に加わったのは、機能をリッピングする事だった。しかし、かなりの力を消化するため、ドンにダメージを与えるのに限界があった。ドン:「クッ、痛いが、身体に支障がない、やはり素晴らしいチップだ。それを付けているのはセータ君には相応しくない。宝の持ち腐れってやつだなあ」セータ:「ここまでかあ…!」セータも既に限界がきていた。そこにまた、声が聞こえた。[…力をやろう、これで終わりだ…]人生をリセットしたいあなたに
2007.03.09
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サクとシン、そしてセータは寺院へと向かい、代々伝わるという瞬間移動の術に挑戦する。サク:「いいか、住職の気持ちを重んじるんなら、身を削るつもりじゃないと無理だろう、しかし、住職にはないこのチップが判断を降す可能性も高い。だから…」シン:「わかってるよ、住職の経験値とチップの判断で造られる奇跡ってやつでしょ」そう、それは、住職にも予想出来ないチップによる偶然が含まれていた。機械を多く取り入れるやり方もあるが、奇跡は起こらない。発達、進化を止めないエレクトロニクスの分野では、開発の中に奇跡を起こす可能性も秘めている。偶然からくる開発も技術陣が歓喜を抱く瞬間でもある。しかし、恐ろしいのは望まれて出来た奇跡よりも、仕組まれた偶然なのだ。率直にいうと、「罠」である。うまくいく背景には、偶然か、金か、それにかける時間である。時間があれば、丹精込めた力作が生まれ、理想のハードが完成するにちがいない。時間がないという状況は、納期が決まっていて、時間内に完成させるという場合は、ごくマイナーなパーツ的なグレードアップか、バグ処理で賄うぐらいにしかならない。問題なのは、金によって開発費用を、よりすぐれた人材に宛て、優れた逸品を造らせる。金によるという部分が、後に価格に反映されるから、買う立場においても限られた者しか味わえない技術となる。金をかければいいもの、というのがひっかかる部分で、安価な物はそれなりと判断するのが自然だ。チップを経由した術には、金はかからないが、技術と時間を要する。基本的には高度なやり方なのにボランティア的な行動。世界を救うのに金などかける意味がない。金をかければいいという事ではないのだ。最終的な判断は開発陣の気持ち次第。サク、シン、セータには金という文字は一切頭にはなかった。それだけの熱意を感じた。寺院に到着すると、3人は同時に気を感じた。セータ:「何だかいやな予感がする」サク:「俺もだ、何かいけないものを感じる」シン:まさかなあ…」そのまさかが、目の前にあるのか?3人はバラバラになって、寺院のまわりから探り、左右から寺院を入った。しかし、何も起こらないまま、中央の本堂に3人はたどり着いた。サク:「おかしいな、確かに感じたんだがなあ」セータ:「今でも感じてるよ、ここに何かあるよ」セータだけが特に強い気を感じた。サクとシンのキルには反応がなかった。これはどういうことか?「それは、開発者がキル使いだからだよ、諸君」
2007.03.07
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住職もやはり、環境の変化と、術の影響からかなりの体力を長年負担していた。そのために、身体にかかわるほとんどの免疫が吹っ飛んでいたのだ。セータは更に、セータ:「これから、風邪一つかかってしまったら、その時は、かなりの負担となり、その……」イオン:「言うな、いまはやめとけ」以前から癌はあった。それは体質や遺伝といった要素もあるが、環境が変わってくれば体質を変えてしまうこともある。それがどう影響を与えるかはとても判断できず、予想もつかない。偶然が重なって、適応していく体質や性格は、長年続いた生活習慣から来る場合と、一瞬で変えてしまう場合がある。前者は、先祖代々からくる習慣、職業、生活が成り立ってきたもの、勿論、途中で変わることもあるが、それは、生活していく上で適応するために必要性があるからだ。では後者は、どちらかというと、人間にとっては突如起きた出来事や、環境の変化によって、身体に予期せぬ変化を及ぼす。ところが、身体にはやはり準備する時間があり、長き年数をかければ適応出来る事が、予期出来ないまま変わってしまうのはかなりリスクを背負う。それは大半は良性とはいえない方向にいってしまうのだ。住職は、職業柄僧侶でありながら、多様な出来事に染まりたがら、環境の変化についても苦労して住人に尽くして来た結果が、自分の身を犠牲にしていまうという皮肉な事になってしまった。誰かがやらなければならないのも事実だが、犠牲にならなくては環境を変えていけないほど重傷にしてしまった世間が何もしてあげられないという悲しい現実。住職は、目が覚めてすぐ立ち上がろうとしたが、すぐによろめき、近くにいたサーヤが支えた。サーヤ:「まだ駄目ですよ、後はサク達に任せていいんじゃない?」住職:「そうだな、だが、引き継ぎもまだしてないし、しないとこの先の行動に影響するんだが」サーヤ:「あなたは少し安静にしたほうがいいんです、そうしないと、逆に引き継ぎが難しくなりますよ。」住職:「では、用件だけでも伝えなければ…」サーヤ:「大丈夫、あの2人はもう行動に出ていますよ」住職:「何と?!…」サーヤ:「忘れてたんですかあ?チップの存在を」サクとセータは、普段はしたくはなかった詮索を必要性があるこの時に、詮索回路を調整した。そして住職の心を読み、即行動に入った。その瞬間、行動の意味が、後継者を決める事である事も理解していたのだ。住職:「そうか、もうすでに後継者として動き出したんだなあ…」自分の身体に終わりが近づいていることを、時間刻みで感じていた。人気blogランキングへ
2007.03.06
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シンがたどり着いたその場所には、昨日まで存在していたアジトが跡形も無くなっていた。跡形も。シン:「マジで?有り得ない!」幻だったのか、逃亡したのか、どちらにせよ、消えるという事自体、考えられない。シンの頭脳の中で、痕跡を探索する機能を見つけ、起動。消えた時間はいつか、何かが残されていないか計算していた。すると、とんでもない答えがかえってきた。しばらくして、サク達が追い付いた。サク:「何だ、どうした?」シン:「無いんだ」サク:「そういえば、ここは…」セータ:「アジトが消えてる?」シン:「いや…」サク:「…??!」シンが出した答えは、シン:「最初からなかった…んだよ」サク:「…え?」シン:「だから、ここには元々何もなかったんだ。」セータ:「幻の中にいたって事?」今度はサクが答えた。サク:「それも違うなあ、あった事は事実だ。でも今はない」ウイン:「瞬間移動…?!」ウインが真っ先に導き出した言葉は、サクにもセータにも記憶があった。時空を飛ばして現代の中のみ、瞬時に移動する装置、チップとの組み合わせにより、機能が変わるのだ。リセットの応用ともいわれ、かなりの知能がないと生み出せない、究極の方法なのだ。サク:「このままこうしていても、らちがあかない。ドンがどのように行動するのか、瞬間移動のタイミングも見破る必要がある。」ドンのキルは痕跡や行き先を阻む、今までのセキュリティタイプとはわけが違う。シンは、真っ先に来た甲斐もなく、追い付込めなかったのがとてもくやしいようすだった。ウインによると、瞬間移動を使用すると、力の消耗が激しく、そう繰り返し出来るものではないという。キルを利用したとしても、キル自体にも何らかの負担は免れないはずだ。サク:「もしその予想が外れたら、ドンは化け物って事か」セータは、限りなく薄いが、ドンのキルらしき形跡をキャッチしたが、まわりにいた刺客の反応もあり、あてにならない。セータ:「でも、今はそれで捜すしかないようだなあ」住職が、「ちょっと待て、寺院代々の技がある、しかし、寺院に戻らないと不可能なのだが…」サーヤ:「またあ、そういって1人で何とかしようとするんだから」サーヤが突っ込むと、住職:「いやあ、図星だなあ、瞬間移動なんだがなあ」イオン:「…?」サク:「師匠、先代からそんな技術があったのか?」住職:「技術ではなく、術だよ」イオン:「そんな題目があるとでも?」住職:「あるんだ、だが、1人しか実行出来ない」サク:「だからあ、あんたが行ってさよならなんて事じゃあないよなあ?」住職:「まあ聞け、この術は、本来、僧侶がまったく人間が踏み込む事の出来ない場所にある薬草や食物などを採取するというのが使い道なのだ、これも住人の苦しかった時期を乗り越えて来た証となったのだ、だが今回は目的が違う、だから私が行ってもしょうがないのだ」サク:「そこでチップの投入ってわけだろ?」サクは、その時、やる気満々だった。ドンに馬鹿にされたまま、引っ込んでいるような我慢強さは持ち合わせていないのだ。住職:「一つだけ言っておくが……」住職は言いかけたが、くらっとめまいがしたせいか、よろめいた。サク:「おい、師匠、大丈夫かあ!」住職:「…い、いかんな、もう末期か…」イオン:「何言ってるかわかんないよ!」イオンが叫んだ後、セータが肩を叩いて、セータ:「センコー、住職、癌にかかってるよ」イオン:「…?!」人気blogランキングへ
2007.03.05
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ドンのアジトからすぐ近くにある小さなホテルの廃墟にいたセータ達。一晩が経ち、イオンがサーヤとシンの様子を見に行くと、ベッドにシンの姿がなかった。イオンは慌ててサーヤを起こし、事情を聞いたが、熟睡していまい、全く覚えていなかった。サーヤが寝ていたベッドの脇に手紙のような物が置いてあった。サーヤはそれを読んで、涙を流し始めた。イオン:「何て?」サーヤは黙ったままイオンに見せた。[誰だかわからないが、感謝する、あなたの近くで安心して眠る事ができた、おかげで、私の体と頭はパワーを増した。ありがとう]イオン:「サクの野郎、言ってたのと全然違うじゃん」サーヤ:「どういう事?」イオン:「ああ?噂とは違って、ロマンチストだって事さっ!」サーヤ:「ええ」サーヤはますます惚れ込んだ様子だ。イオン:「てことは、まずい展開だな、皆に言わなければ!」サクとセータ、ウインにその事を伝えると、サク:「あいつひとりでいいとこ見せようとしたって駄目だ、いくぞ!」「ちょっと待て!」「…」止めたのは住職だ。住職:「やみくもに行ったってまた同じ目に会うだけだ、シンはおそらく何かを根拠に動いたとみえるが」サク:「あの手紙のとおりであれば、パワーの源が蓄えられれば、進化すると判断出来るかも」何度も繰り返された驚き、怯え、闘い、逃走。今までの事を考えたら、安らぐ時間などなかった。欠けていたこと、それは、シンの説によると、どうやら癒されること、体を休める事が、力の源であり、属に言う、パワーアップに繋がる事だった。人間、何のために働き、学び、闘うのか。生活のため?出世のため?それともお金のため?全てにおいて、欠かせてはならないのは、一息つく時間を作る事、食事をする事、そして睡眠を捕る事だ。それらを抑えて生活しようものなら、結果的には、遅かれ早かれ支障が出てくる。死ぬ事さえあるのだ。シンの手紙によって、改めて癒しの重要さを噛み締めた一同。サク:「あいつは、元々が悪だったわけでも、ちゃらんぽらんだったわけでもなかったんだ。ただ不器用だっただけだよ。体も心も気も休めず、突っ走っただけなんだ。ここまでよくなったのは変わったんじゃなくて、癒された事で成長したって事だよ」サクは、ウインの説明を聞いて、自分がこれまでやってきた事より、シンが重ねてきた努力が実って、ここにきた。そして自らパワーアップする術を覚えた事に、サク:「彼の方がよっぽど大人だ…」一同は、癒しを胸に抱き、シンの後を追う。人気blogランキングへ
2007.03.02
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シンとの抗戦の中、ドンは、シンの強さと能力に感激していた。ドン:「お前、なかなかいい素質を持ってるなあ」シン:「ふざけんな!金なんかいらないんだ、俺には目的があってここにきた、あんたよりも可能性のある事がここにあるからだ!」ドン:「…?」ドンはそれがキルのことだとすぐにわかり、ドン:「そんなすんなりと渡せるものではない、ビジネスとして、この世界を変えるためにやっとたどり着いた結果なのだ!」シン:「ビジネスだと?世界の為?何言ってんだ、こいつぅ」シンは更にバシバシ拳を連発し、ドンもそれをかわし、格闘が更に激しくなる一方だが、2人はどちらも引かず、劣らず、スタミナの消費だけの問題だった。サク達が来る気配がしたとき、ドンは、シンの執拗な攻撃の間に、自分自身のキルに問い掛け、命令していた。ドン:「怪音波を放て…」シン:「…?!」[キューン]シン:「しまった…」先に仕掛けられたシンのキルは、超音波に刺激されて激痛が走った。もがき苦しみ、更にドンの攻撃を浴びるように受けて、倒れ込んだ。これで気を失う方がまだましだった。激しい痛みはやまず、シンはただもがき苦しみ続けた。-----------------------------------------------------------気がついた時、シンはいつの間にか気を失っていたのかわからなかった。「場所が変わっている、いったい…」暗い部屋にただ1人、いや、そこにもう1人、シンをずっと看病していた人物がいた。サーヤだった。シン:「一晩中ここにいたのか…」眠っていたサーヤを見ながら、シンは安らぎを感じて、再び眠った。サクとセータは、チップのメンテの一画であるリハビリをしていた。考える力、覚える力、そして、自分を守る力に調整をした。セータ:「あのドンの最大の武器っていうか、超音波なやつ、シンの所に向かうまでにどのくらいのレベルを感じた?」サク:「そうだな、放ったというくらいはわかったが、痛みとか、そういう感じにはならなかったなあ」すると、ウインが、ウイン:「これは、確定ではないが、キルの能力の一つでもある追尾というのがあるが、それを応用すると、超音波でも操作可能ってありえないだろうか?」サク:「それも可能性あるな、特定の人だけに集中させ、痛みを何倍にも注ぎ込むやり方。ああ、怖いねぇ」イオンも案を言い出した。イオン:「逆もできるってことだよな?」ウイン:「そう、拡散させて多人数にも対応できる、でも、拡散のほうがむしろ危険だ。なにしろそこにいる全員が喰らうからね」サク:「じゃあ、あいつに勝つ方法って、誰かに集中させといてスキを作らせるって事だろ?」すると、住職:「それしかないのであれば、私が盾になろう」イオン:「住職!」住職:「この役目を果たせば心置きなくどうにでもなる、だから…」人気blogランキングへ
2007.03.01
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ドンは、ドン:「そいつがもし女なら、出してやってもいいぞ。」それに対して、サーヤ:「皆とここにいるわ、あんたといたってしょうがないでしょ!」ドン:「立場考えて言葉を選んでくれよなあ、あんたらは犯罪者なんだよ」イオン:「どっちが犯罪者だあ!あんたがやっている事が意味あんのかあ!?」ドン:「あるさあ、この頭と金があれば、豊かな世界にする力がある。サポートは大胆で単純なものでないと住民には理解してもらえないだろ!」イオン:「それはあんたが楽して指揮りたいだけじゃないのかあ?」ドンは口答えするのが気に入らず、カギを開け、牢獄から無理矢理サーヤだけを引っ張り出し、すぐにカギを閉めた。セータ:「何すんだよ、ネエチャンを返しやがれ!」ドン:「それは、問題発言をしたダレカサンに聞いてくれぇ、わしゃあ知らん、フフフ…!そういって、追求された発言を却下させ、封じ込められた。ドンは奥の部屋へとサーヤを連れて行く通路の途中、一人の男と遭遇した。シン:「そいつはいただけないねえ」ドン:「あんたあ、さっきのお!」シン:「ああ、取引成立して、あんたをお見送りした時な、ちょっと仕組ませてもらったんでねえ」サーヤ:「あなたが、サクの?」シン:「なんだ、ご存知で?」ドン:「何が狙いだあ?」すると、ドンからサーヤを引っ張り出し、シン:「とりあえずこういう事だろう、取引した金をどう使おうが関係ないが、女をそんなふうに使うんじゃ話しは別だあ」サーヤは一瞬、「カッコイイ・・・・」と思っていた。シン:「あんたは、これを持ってサクん所へ行くんだ、急いで!」潔く、サーヤはカギと何かを受け取り、サク達の所へ戻った。一方、牢獄では一悶着に発展していた。イオン:「サーヤをいったいどうする気なんだろ?」サク:「よくてメイド、悪くて…」イオン:「それ以上いうなよ!サクッ」イオンは妹として誰よりも心配している時に、サクの失言は、異様な空気を生んでしまった。サク:「謝るよ、悪かった。許せ」イオン:「軽々しい謝罪なんかいらねぇよ」サク:「どうしたらいいんだ?」イオン:「サーヤを助けに行け!」サク:「私もそうしたい、けど、どうやって開けるかわからない!」イオン:「チップでなんとかならないのかあ?」サク:「そんな威力あるんならとっくに……?!」そう言ったとたんに、突然扉が開いた。イオン:「お前、やったのか!?」サク:「い、いや、まだ…!」扉が開いたその向こうにサーヤが立っていた。サクは、それを見て、一瞬、喜び、手を上げようとしたが、寸前で抑えこんだ。イオン:「さ、サーヤじゃないか!お前、あいつやっつけたのかあ!?」サーヤ:「サク、これ」サク:「…!」サクはサーヤから受け取った物を見て、ビクッとした。それは、キルのカケラだった。サク:「あいつ、そこにいるんだな!?」サーヤ:「そうよ、早く行かなくちゃ」サク達は急いで牢を出た。通路の向こうで物音がする。あきらかに格闘の気配。サクは、サク:「悔しいが、あいつはとにかく、強い…」仕方なく話したサクに、サーヤ:「カッコイイじゃない・・・・」サク:「気に入ったのか、あいつを?」サーヤ:「ズバリ、好みが一致したわ」それはまさにサーヤの恋がほのかに芽生えた。為岡そのみ為岡そのみ『記憶リセット』
2007.02.28
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政治家のやっている事って、何故あんなにむずかしくするのか?政治家の血を引く人間はそういう環境の中で生まれ育ち、後を継いでいくが、素人同然の人間が政権をすればどうなるのか?ある程度の政治の知識と、環境を踏まえていれば、後は自分から知っていけばいいし、考えていけばいいと思う。難しい言葉でわざわざ発言したところで、住民が着いてこれるわけがない。カッコイイから?それとも住民を見下しているのか微妙な意味合いな存在なのが政治家だ。その割には、お金の事になると、桁はちがうが、普通の人以下になったりする。談合だとか、選挙の時期だけ大騒ぎするが、結局呑みたいだけの地域のお祭りと変わらない気がする。セータ達の中から僧侶が誕生するのも、まるで知識を持たない者ばかり。だがこの中から決まるのは間違いないようだ。知識も大事だが、そんな人間に限って、人間を知らないし、地域も知らない。ただの金喰い虫だ。政治家の知識を持ちながら、それを利用して、一番自分の醜い部分をさらけ出し、欲の塊となり、好きな事しか出来ない、知らないことは捩伏せる最悪の結集、それが、ドンそのものなのだ。住民がどう生活していようが、どうなろうが関係ない。自分が思ったように空気が動く、どうにでもなるという考え方だ。これは最近に見る政権となんら変わらない。「ドン」の存在は、全ての世界で起きている悪い所取りなのだ。妙に知識だけがあることに、余計な事ばかり思い付く、しかも他人には何にもメリットのないことばかりなのは、自分の立場しか考えていないから。ドンという存在を、現段階の政権に通ずる何かを訴える意味合いで見立てているのだ。どんな内容でも発言は大事だが、普段格好つけている政治家ほど、ボロが出る、その一言だけで命取りとなる。牢獄でのドンの発言は、まさに影での彼の本性であり、表向きとは正反対な、光と影の生き方しかできない。逆の立場からみれば、案外可哀相な人間かもしれない。何故なら、世間体に流されて仕方なく政治している人間、後に引けなくなって、悪い方向へ導かれる人間とは、そういう生き方しか出来ないという選択肢の無さが、生きていく中で一番不幸なことかも知れないからだ。セータ達がドンを可哀相な人間とは思わないだろう。それは、セータ達が今真っ向で被害を受けている最中だから。でも、過去の事となったとき、それが初めてドンの存在を哀れむ時と感じるのだろう。変わりたい日本人変わりたくない日本人
2007.02.27
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セータはシンから状態を探っていた。シンも今、違う気を感知して、そちらに切り替えて、状態を伝えた。シン:[…サクに着いてる者だね、あんたは、俺達の事は知らないようだな…]セータ:[…全くわからない、でも、昔一緒にいたんだね…]シン:[…あんた、ガキか?…]セータ:[…ガキで悪いかぁ…]セータは応答を辞めようとした、が、シンから、シン:[…待て、今遮断されたらわからなくなる、このままの状態を保ってくれ…]セータ:[…わかった…]サクが混乱から癒えた時、セータの立腹ぶりを見て、サク:「変わってねぇ所もあるみたいだな」安心と不安がまだ定かではなかった。セータにも、シンの本当の心が読めないが、わかった事は、自分達を捜しているという事だ。サクにもそれを伝えると、信用できないような顔でシンに問い掛ける。サク:[…なにしに来た?テメェはあんときの事を知ってて来たんだろうなあ?!…]すると、シン:[…やっと繋がったかあ、お前、変わったみたいだなあ、実は俺もここに来る間に変わってきてるみたいなんだ、今でもなあ…]サク:[…今でも?…]シン:[…ああそうだ、それが不思議でさあ、気分が交互に入れ代わるみたいに揺れ動くんだあ…]サク:[…それは、テメェが優柔不断なのが治ってねぇ証拠だあ!…]記憶は留めていても、性格は変わってきているのはサクもセータも同じ事だ。ただ性格の違いで進化したり退化するのが学習チップの特性でもある。サクにしてみればシンの登場はあまりにもきつかった。だが、過去を引きずるサクには、切り捨てるシンがいるほうがちょうどいいのかもしれない。沈黙漂う牢獄に、あのドンが先に帰ってきた。サク:[…何も考えるな…]イオンが断ち切るかのように、イオン:「なあ、トイレってここにあるのか?」ドン:「よく使う手だな、したければそこでしな」サク:「レディの前で失礼な事いうなよ」ドン:「いたのか、女が、この中にいるのは男でも女でもない!」最悪な男はやはり最悪の言葉を発する。この世界を最悪に導こうとしている源となるのだ。空気は澄んでいるはずだった。森林はイキイキとしていたはずだ。そして水や食料や、人間の体も、健全であったはずだ。ここには確かにあった、その時間が。しかし、この男たった1人のために、全てが犠牲になろうとしていた。いや、もう始まっているのだ。自然が作り出した流れを止める権利などない、自然があるから人間は生きていける、自然は何も言わないのをいいことに、好き勝手をすれば、たちまち、危機に曝される。そのことを皆人ごとだと勘違いしているのだ。その結集たる存在が、ドンそのものなのだ。60歳からの脳内リセット!
2007.02.26
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取引を終えたシンの行動は、かつては、自ら装着し、更にはサクにまで騙して装着させた過去を持つ、悪友か、裏切りかはっきりしない繋がりがある。サクを陥れたのがきっかけっなった、あの透明なリセットを引き落とし、悪の心はそのまま引き受けているものの、リセットを期に幾度か変貌を繰り返していたのだ。その変貌とは、シンの中にあるキルが、リセットと環境変化などが繰り返され、思考力が減ったり増えたりしながら、退化した部分もあり、逆に進化した部分もあるという、シンの性格である、優柔不断さが物語っていた。サクの決断とシンの優柔不断との組み合わせが絶妙な、最悪コンビだったという意味では、今後の展開に大きな影響力を秘めていたのだ。現に、シンは、ドンの持つ金の入ったトランクには、チップ状の探知器を仕掛けていた。これこそ、これからのシンの行動をいらしめる一歩となるカギである。サクとセータは、考えた末、思い付いた事を話した。すると、2人とも、1カ所を指さして、サク:「何だよ、私と同じ事考えてたのかあ、ある意味凄いねぇ」セータ:「お、俺が先に思い付いたんだぞ」サク:「ルセェ、どうでもいい事イウナヨ」イオンは、イオン:「ホントだ、セータ、どうでもいいよ、それより、指さしている場所が弱いって事なんだろ?」セータ&サク:「……そう」2人の考えを悟った教師は、胸を張って言った。しかし、壁が弱いと知ったはいいが、どうやって突き破るか?すると、サクに少しだけだが、頭に過ぎった物を感じた。サク:「何?いまさら?有り得ない…」しかし、段々その過ぎるものが強く感じるようになり、サクの勘は確実性を増した。サク:「助かるかもしれない…」イオン:「どうした?助けるために見つけたんだろ?」イオンは改まっているサクに聞いた。その様子を見たセータが、セータ:「センコー、もしかしたら、外からの力が必要かもしれないって事だよ」イオン:「…?」セータの言葉に意味不明な表情をみせたイオン。それもそのはず、まさかこの近くで、サクを捜しながらサクのキルを利用してコンタクトをとっているシンの存在を信じるはずもなかった。サク:「あいつ、変わってきている」こんな時に現れるとは思いもしなかっただけに、サクは過去の仕打ちと、現在の気持ちが全く信じられない筋書きとなって記憶を揺るがせていた。サク:「あいつ、いったいどっちなんだ?何しに来た?」セータは、サクとシンの過去をひもといてみようと試みたが、荒れているサクの記憶に立ち入る事が出来ない。しかし、遠回しにシンからの記憶から先に感じ始め、想像もつかない筋書きをキャッチしたのだ。
2007.02.22
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単なる賞金稼ぎから足を洗い、研究熱心な、元最悪の男、今、現在の最悪の男、ドンとの取引が始まる。いつもの倉庫に準備されたテーブルに、彼がドンを待つ。ノッソリとトランクを片手に持ったドンが入ってきた。軽く会釈をしたが、すぐに厳しい顔になり、彼の前に来た。ドン:「今日はよろしく、いい取引が出来る事を、期待していますよ」男:「そうですねぇ、ミスター・ドン。」ドン:「一応伺うが、キルの使い道は決まっているのかな」男:「ああ、概ね。部下に着けて、迅速なる軍隊に作り上げる事で…あります」ドン:「ふん、軍隊ねぇ、軍にキルは使っちゃあダメでしょ」男:「……」ドン:「軍というのは、団体の中にあって、自分自身の感性を持って、その人、その国のために尽くすもの、キルはそのような働きをする物ではありませんぞ」彼は、完全に嘘を見破られていた。キルに見せ掛けは通用しないのだ。ドン:「まっ、使い道はどうでもいいですな、それでは、キル20という約束でしたな」男:「…ああ、そうだな」後味が悪い彼の心の中は、やはり、「こいつ、殺す…」という気持ちで一杯だった。ドンの部下は全てキルを持つが、決して団結しているわけではなく、基本的には個人主義だ。だが、ある使命が一致した場合、一緒にいるだけで、あくまで個人レベルで判断し、相手や味方すら関係ない、味方がどうなろうが関係ない、敵味方がないのだ。単独では100パーセントの力も、集団としては70パーセント程度しか発揮されないのは、人の事を考えて行動している時。キルは、欲望のカタマリである。人に気遣う事、人のためになる事は全て失敗作だという。彼は、金があるか確認し、ドンもキルの数を再確認した。男:「金はこれです、確認を」ドン:「確認させていただきます」ごくふつうに取引されているが、これが最悪の一歩となるのか、それとも、また違った展開となっていくのか。一方、サク達は、この牢獄を出る方法を考えていた。セータもまた違った角度から探っていた。サーヤは、そんな彼等を見て、チップの力を改めて確認していた。成功と後悔の渦の中でさ迷うサーヤの心に、イオンは肩を叩いて思いやる事しか出来なかった。イオン:「今はこいつらが必要なんだよ、後悔じゃなくて、進歩した形で見守るのが相応しいんじゃない?」兄妹として精一杯の言葉に、サーヤ:「そうね、この2人にかけるしかないよね」救世主になるかどうかの瀬戸際で、また新たな展開が待っていた。取引が無事に終わり、ドンを見送る彼。その彼こそ、救世主達を揺るがす人物。男:「さてと、サクを見つけないとなあ」取引成立の証明書を片手に、20のキルを引っ提げて、建物を出た。その証明書の署名には、[シン]と書いてあった。
2007.02.21
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誰ひとりとして、文句を言う事も、政治を引っ張る事も、悪を止める理由もない、この世界は、誰も指摘しない、咎めないから決して話題にもならない、取り上げられない、滲み出ている悪の組織そのものがとうとう表沙汰に出没しようとしていた。囲む刺客こそ、この世界で1番最初にこの地を立った悪なのだ。今更興味を示さない住人、関知しない警察、触れない政権、そして、動き出すドン。まさに、最悪の帝国が築かれようとしていた。単なるマフィアではなく、世界を動かし兼ねない最悪の人物にほかならない。サクは今、あの男の悪を見破りながらも、ここまで勢力のある最悪の人物とまで気付けなかった自分を責めていた。あの時解っていれば、あの時食い止めていれば…。鋭い反応でセータが、セータ:「しょうがないよ、キルの創設者だよ、気を消す位簡単だったんだ」住職:「それに、やはり私がけじめをつけるという、サダメなんだよ」住職が付け加えた。セータ:「ああ、ありがとよぉ、そんなことより、今の状況ってかなりヤバイんじゃあないかあ?」イオン:「住職、降伏するのか?それとも…」イオンが心配そうに話した。住職は決断を強いられた。ドンからの刺客達は、更に輪を狭めて、一同の動きを封じ込み、選択肢を与えた。刺客:「降伏し、ドンの下で一生尽くすか、それとも、ここでジ・エンド?」全ての手段を失った一同には、もはや勝機がなかった。刺客達は、目の前一例を開けて、後ろから来ていたドンを前に通した。ドン:「サクだな、この前は助かったよ、最初はびびったんだけど、それ以上にびびってたあんたには本当に感謝するよ。あとは僕に任せておけばいいさ。」サク:「て、テメェ…」一同は、あっけなく完璧に手足を縛られ、大きめのワゴン車に乗せられた。更に目隠しまでされて、アジトが解らないようにしている。ドンは、サク達を牢に閉じ込めてから、すぐにキルの出荷に向かう。また新たな客との取引が待っているようだ。ドンは自らもキルを使い、キルを操り、世界の鈍さを利用して、麻薬とキルに支配される環境を構築することが目的である。サーヤが手がけた草木はまたもとの麻薬地帯に戻り、追い撃ちをかけるように、以前よりも念入りに薬漬けにした。空に舞う粒状の成分も、その草木から放たれる光合成に影響されて、量が増えていた。住人がますます無知な生き物となっていくのだ。全てが振り出しに戻っていた・・・。ドンが相手をする客は、幾度か重い罪を犯していたが、彼はまた違った目標があってこの世界に来た。キルの以前と現在のモデルを調べた上で、最悪のチップと究極のチップとの組み合わせを考えて、今まで長い間研究していたのだ。しかし、彼は素人であり、最初は金が目当てで始めたが、気持ちが変わり、今は、本気でチップの掛け合わせの研究まで考えていた。それを自分自身に装着するのがなによりの夢となった。「ここにあいつがいるんだな」人気blogランキングへ
2007.02.21
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外にいるキルを搭載した刺客が幅広く出回っている事が、サクとセータによってキャッチされた。注意することは、格闘が巧みであること、そして洗脳や、追従機能が高性能だということ。住職の勘と、サクやセータの能力が、刺客からの被害を受けにくくするはずだ。住職:「キャッチはあっちのほうが早いはずだ。こっちがキル狩りをしていることもな、まず攻撃してくるだろう」サク:「ああ、そうだな、イオンは、サーヤとウインを守るに徹してくれ、サーヤも、そのカプセルをいつでも使えるようにスタンバってくれよぉ」セータ:「OK!」頼もしくなったサクの変貌を歓迎するかのように、皆が信用し、納得する。これはチップを越えた輪が、忘れかけていた思いを一体感という形で甦っていた。セータが、セータ:「来る!」サク:「どっちだ!?」セータ:「後ろだ!」住職がすぐに後ろに回り、点火したブラックボックスを投げた。ちょっと古くさいやり方だったが、これが伝統というものか。刺客は、一瞬勢力を弱めたが、ウインの脚を掴み、離さない。ウイン:「サーヤ、頼む!」カプセルを刺客の前に投函すると、すぐに気を失い、横たわった。イオン:「なんだこりゃ、単純だなあ」効果はあった、キルを無効にする方法は、今後実用化に向けて、寺院の中で記録として残される事になる。刺客がやられたことで、キャッチした刺客が次々と来る事が予測される。時代を重ねてきた伝統の黒い箱がうなりはじめた。イオン:「束で来たらやばいんじゃあないかあ!?」住職:「うーむ、展開が変わってきたか・・・」珍しく不安を見せた住職。セータが、セータ:「前と左から3人ずついっぺんに来る!」住職もサーヤもスタンバるその瞬間、サクとセータに襲い掛かるものがあった。セータ:「うっ、なんだ、頭が割れそうに痛む!」サク:「わたしもだ、こりゃあ、刺客から、いや、キルから放たれている、超音波かなんかだ、すげぇ痛むぅ」撹乱していくサクとセータは、刺客のキャッチが出来なくなり、住職も何個も火を焚いたり、サーヤも薮から棒にカプセルを投入した。しかし、ヒットしなくなり、焦りを見せた。その焦りに付け込むように、サーヤの頭脳を洗脳してきたのだ。サーヤは気を失いかけた拍子で、よろめいた。サク:「住職、ヤバイぞ!」住職:「おのれ、時代とともに継承してきた黒い箱はもはやこの時代には通用しないのかもしれない。」住職は、1つだけだが、赤い箱を隠し持っていた。しかしこれは住職にとって最終のアイテムだった。住職:「これは広範囲に煙幕をしいて、複数の相手を吹き飛ばす威力を持っている。だが、今は使いたくなかったが…」サク:「それで住職もろともって考えてるな、どのみち死んでもうまくいかないさ。使うなよ、俺達が何とかするさ」セータ:「しかし、もう、とんでもない事になってる!」サク:「何!?」数は3人や6人では済まされない。イオン:「完全に囲まれた…」ドンの存在感を思い知るにはあまりにも壮絶な瞬間だった。その刺客の数、見ただけでも100人……。
2007.02.19
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動きが止まったこの世界で、どよめくように動き出す悪の気流。ドンの目指すものは、決して放っておけるものではない。少なくとも麻薬を用いた手口は、最悪の産物であり、それを堂々と使われているこの世界にも落ち度がある。住職には時間がなかった。10年という周期にあたる今、あの寺院を受け継ぐ者を選択しなければならないのだ。もしそれを怠るとどうなるのか?寺院にはいくつかの秘密がある。世界を支える秘密、情勢によってかわる空気、悩まされる人間と満足する人間との気の波、それらを位置と方位、地形の関係で、寺院があるこの場所は、そういったあらゆるバイオリズムが点で結ばれる唯一の鬼門となっているのだ。そのため、限られたよき心を持った者だけがここに訪れる傾向を作り出す気流を作り、黒い箱に用いた香の威力でその悩み事をえぐり出すように、駆け込み寺のような存在でもある。しかも、慣わしで、お金も差し入れなども一切求めてはいないため、自給自足の手段も心得なければならない。そんな対偶に住職が務まる人間を選ぶには、厳しい立場であり、選ばれる方も半端では済まされないのだ。自分の代で起きた事は自分自身で綺麗な状態にしてから受け渡す、それが住職の主義であった。ドンを捜すには、キルの流出をたどるのが近道だった。ビルにあるキルを絶滅させてから、今度は外で出回るキルを探る。住職は取引先にいたので、ある程度のドンの輪郭を知っている。サク:「でも、どうして、あの取引先で、あんな危険なことまでやれるんだ?しかも、私にまで存在を隠すとは」住職:「それは、仏に仕える身でありながら行う事ではなかったからだよ、しかし、私の代というのはもうとっくに過ぎているのだ」サク:「期日があるのか?」住職:「さよう。かれこれ三月は経っているかな」サク:「でもさっきは後継がいるって」住職:「ああ、いるとも、この中にな」サク:「!!」一同はびっくりした。このメンバーの中に、僧侶になる者がいるとは。出家となれば、生活感も何もかもが変わるのだ。普通に暮らしていたら、そうかんたんにはいかないはず。住職:「いるんだよ、相応しいのが、後で発表するから、それまでは私がやる事なのだよ」過去にも事件はあった、だが、これほど深刻で最悪な事件はなかっただろう。しかも、明るみに出ていない事件だけに、まだ起きてもいない事件を食い止めなければならないとは、異様である。イオンが言っていた、普通に考える事、チップのいらない自由な世界にするとなると、かなりの時間を要するわけで、もうそれを実現するものは、あの伝説しか残されていないだろう。人気blogランキングへ
2007.02.19
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政界も警察も不能、この世界でまともなのは仏界だけだった。だが、他の仏界もどうなっているかは定かではないが。政界と仏界。いまいちはっきりしないのが、やはりお金の件だろう。神聖な政界も仏界も、現代に至っては、かなり荒れてきているといっていいだろう。パソコンを使うようになった僧侶も存在し、もう神聖という境界はない。身近といえばそれまでだが、やはりそれなりの地位があってもよかった。その現代のウミとなる、陰謀・金・欲望・・それらの結集ともいえるのがこの世界での住職としての平和奪回をかけた最後の任務なのだ。しかも、今が過去最悪であると住職は語る。セータ:「ということは、次期住職のめぼしい人物はどこにいるの?」住職:「その件は後回しだ、今はやらねばならない事がある」住職の言葉に、セータが、セータ:「それでこの黒い箱ってわけかあ」イオン:「だから、この箱が何なんだ?」住職が用意したと思われる、謎の箱は、不燃性の特別な紙で出来ており、中には、お香のような粉が入っているだけだった。住職:「これを焚くと、キルの効果を狂わせ、ごく普通に近い状態とする。これはあの寺院に引き継がれる、経を唱える時に使う焼香から情勢に合った数々の木の皮を調合している。」サーヤ:「情勢に合わせた調合だってぇ?!」更に驚かされたサーヤは、自分が開発したボタンとかぶった事を気にしていたが、住職:「サーヤ殿、心配するな、ちゃんと役に立つから」サーヤ:「ホントに!?」住職:「ああ、本当だとも」これは気遣いではなく本当の事だった。住職の箱は、キルの勢力を抑える、そして、サーヤのボタンでキルの効果を消す。いわば、とてもマッチした組合せになっていた。住職:「ここにあるキルは全部で20あまりある。それをまず黒い箱に入れていくのだ」そういってすぐに黒い箱の中に火を点火していった。次々に煙がたちはじめ、住職は経を唱え始めた。サク:「これこそ、住職らしいやり方かあ」サーヤもボタンを用意し、住職の指示を待つ。香の香りが部屋全体に広がっていく。皆、その香りを嗅いで、とてつもない癒しを感じた。サクとセータは、チップを経由して、ノーマルとは違う反応を見せた。サクもセータも経を心の中で唱え始めたのだ。知らない宗派なのにだ。セータ:「こんな気持ちになれるなんて思ってもみなかった、何だかチップを付けていることを忘れるくらいに」サクもセータも同じ気持ちになっていた。そして、煙を焚かれたキルは、ただの無力な金属の破片と化した。ウインは、この黒い箱に興味を持ち、住職に研究資料として持ち帰りを許可してもらおうとしたが、住職はそれを拒み、住職:「この箱の詳細を伝えるのは、次期住職に限らせて戴く。申し訳ないが。」ウイン:「そう言うと思った。それでは、キルの残骸は?」住職:「その破片を持ち帰っても、何も生まれないだろう、おそらく、生まれたとしても、ただの絶望感だけだ。少なくとも、いいことはない」と断言している。黒い箱の驚異を確認出来た、次は、いよいよ、キルの創設者といわれる、ドンの身元を突き止め、キルそのものを打ち消す。
2007.02.15
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セータ達は、追い詰めた男を見て、ガク然としていた。しかも、追跡していた男を骨抜きにしている。セータは通信にようやく応答した。セータ:[…わかるよね、いやあ、ちょっとねえ…]サーヤ:[…何?意味がわかんないよぉ…]セータ:[…来ればわかる…]落ち着いて話すセータに少し安心したサーヤだが、イマイチ、ピンと来ないまま、例のビルに到着。ウイン:「ひどいなあ、地震来たら一発だな、サーヤ、後で地震予知しとけよ」サーヤ:「冗談言ってる場合じゃあないでしょ」追い詰められた男は、手にしていたチップをサクに渡した。男:「よくきたな、あなた達はやはり、私が見込んだだけはあったわけだ。」サク:「急にいなくなるなんておかしいでしょ、住職さんよぉ!」びっくりしたのは、後方から来たサーヤとウインだった。サーヤ:「な、なるほどねぇ、こりゃあ黙るわね」住職、いったい彼は何者だろうか?皆を集めて、この世界に疑問を持ちながら、対策を練りながら修業していた、白いリセットがもたらした出会い。サク:「いったい、何のつもりでこんなことやってるんだあ?しかも住職の身でありながら!」すると、男=住職:「住職だからだよ、サク殿。」サク:「!?」みんな、理解出来なかった。それもそのはず、仏に仕える人物が麻薬取引のような行為をする自体おかしいからだ。住職:「よく聞いて欲しい。今はあまり話している時間がないが、これだけは言っておく。キルは絶対に広めてはならない、壊滅させねばならない。最悪を止めない限り、私の任務ははたせないのだ。だから、やることをやってからみんなに出会うはずだったのだが・・・」サク:「それが住職の任務かあ」住職:「そう、歴史に残るかつての僧侶達は、平和、平穏を残して去っていったのだ、その歴史を絶やしてはならないからだ」引き継ぎは10年に1回とされているこの節々の意味。それこそ、世の中の風習そのものだった。過去から、歴史の流れには周期があり、その時代の全盛期があれば、衰退期もある。その流れは規則的な周期があるというのだ。仏界ではこの流れを分析すると、約10年だとよんでいたのだ。その10年間こそが、修業であり、いいときも悪いときも平常心を失わず多くの住人を支え、環境を見て、政界にも掛け合いながらも、最悪の発生を防いできた。ここで事件が起きると、継ぐための舞台には成り立たない。サク:「わかったけど、あんたがもっと住職やっていればいいことなんじゃないかなあ?」住職:「そういう気持ちがいけないのだ、誰かがやるからと思っているから先が見えない、だから私自身がこうしているのだよ。今の住人を見なさい、ここまで追い込んでしまったのは、我々仏の心が甘くなってきた証拠。一線を越えたら切り替えなければならない時期を見失ってしまっている。それを修正し、気付かせなければならないのだ」人気blogランキングへ
2007.02.15
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セータがキャッチした情報は、サクの目の前に起きていた。セータ:「サクッ、何がいたんだ!?」サク:[……]通信は繋がっていた、しかし、応答がない。セータ:「こりゃあ、何かあったというか、驚いてるか、怖がっているかだな」急いでサクの場所へ向かった。セータは、何だか変な予感を感じた。セータ:「どこかで感じたような…」イオンにも、ノーマルな頭脳でさえも、何かを感じた。今まで全くなかった気が、充満しているかのように、一気に吹き出していた。セータ:「こ、この気配は…!」イオン:「あ、ああ、あいつだ!」そして、サクの場所に来た2人は、突き止めた男の姿を見て、呆然となり、座り込んだ。研究所では、ある程度成果がでてきたところで、再び寺院に向かう事にした。あるアイテムを持って。それは、ウインとサーヤの力作でもあり、自信作でもある。麻薬で汚染された世界を清浄し、人間の心を浄化する、そして、ウインが唱えていた環境擬似効果を、チップであるキルに充てるための技術を盛り込んだのだ。地形、建物、進化、人間と平和を除く最悪な物といえば、チップと環境となれば、環境擬似効果の使う道は、環境にではなく、チップそのものしかなかった。車で寺院に向かい、殺風景となった寺院に誰もいないことを確認すると、まず、寺院の真ん中にあたる本堂に、丸い物体を置き、すぐにスイッチを入れた。すると、たちまち煙が噴き出し、本堂を白く染めていったのである。2人はすぐセータの居場所を通信回路で探り、突き止める。その間に、各地の森林にさっきの物体をセッティングしていった。その発明した物体とは、サクが持ち帰ったリセットのエイリアスがヒントとなっている。リセットボタンそのもので、その中には、麻薬を中和させる液と、環境擬似効果をもたらす薬剤が混じったものであるが、完成に時間がかかったのは、2つの液を混ぜなければ発揮しない化学反応があり、混ぜる割合が物凄く困難だった。通信回路は、セータに繋がり、反応はしているが、普通の状態ではない。サーヤは心配になって、急いでセータの場所に向かった。サーヤ:「何があったみたい、急がないと間に合わないんじゃない?」ウイン:「そうだね、だが、我々も取り乱さないようにしなければならないぞ、この先は、成功か失敗か全く予測出来ないからね」サーヤ:「わかってますって!」車を進めながら、大量に作ったカプセルをセットしていく。最悪と最良の狭間を今、科学者が切り開き、高知能者が実行し、そして、住人が流れを作っていくのだ。そのために今、再び、仲間は集結する。人気blogランキングへ
2007.02.14
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椅子に座っていたのは、何と、追い掛けていたドンの手下の方だった。しかも、この椅子は、あのマシンになっていた。サク:「まてよ、マシンに座らせただけでも手間なのに、どうやって…?」座っている男は死んではいなかったが、かなり衰弱しており、しかも、気が読めない。サク:「こいつ、記憶を消されている!」」いくら格闘家でも、記憶が無ければただの人。キルには、莫大な悪を詰め込んだ最悪のチップとされていたが、意外にも、記憶の消去には対抗出来ないようだ。サク:「じゃあ、逆にやられると思っていたあの男って、一体?」そこへ、セータとイオンが入って来た。イオン:「あっちにも黒い箱がいっぱいあった。ありゃあ何だ?」セータはマシンに座っている男を見て、セータ:「あ、こいつ、キルじゃなくなってる!」イオン:「どういう事だあ?」サク:「記憶がないのは、消去したんじゃない、チップを抜かれたままだ。キルは外にあるんだ」イオン:「何だかキモいな、抜いてどうするんだ?」サク:「まだなんとも言えないけど、多分、この部屋のどこかにキルがある、そしてそれに何かをしようとしていた。」イオン:「そこに俺達が来た、まずいと思ってキルを持ったまま身を隠している、そんなところかあ?」更に別の部屋へ行くと、何と山積みになった黒い箱が立ち並んでいる。あの男は何者か?そして、黒い箱は何を意味しているのか?他の部屋にも、また黒い箱が。サク:「ブラックボックスと呼んでやろうか、あの男わ!」サクは更に奥へと潜入して行った。セータ:「待って、キルを持ち歩いているなら、キルのある部屋があるんじゃない?」サク:「それもそうだな、ブラボは取引もしてるくらいだからな、コレクターかあ?」そう言って奥へ消えて行った。セータが言ったのは、キルのある部屋、即ち、何がしたいかがわかる部屋という事だ。それに黒い箱との関連もわかるだろう。無謀なサクとは違い、慎重なセータは、今一度、キルに集中した。これだけ痛んだビルなら、情報が貫通するかもしれない。イオンは、すっかりチップが板についたセータを見て、イオン:「お前、高校生やりたくなかったっけ?何だか淋しいよなあ」セータ:「こんなときに言わなくても…」集中が途切れ、セータはまた学校を思い出していた。セータ:「それをいうなら、あんときのセンコーがかっこよかったなあ」イオン:「…ルセェ…」イオンはそれを最後に高校生の話しをしなくなった。あの頃を捨てて、ここに集まり、そして、あの頃のような世界に戻す、それしかないのだ。セータはもう一度集中した、サクの居場所がキャッチ出来た、サクのすぐ近く…、いや、サクの目の前!?人気blogランキングへ
2007.02.13
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つかの間の安らぎだった。しかし、ここは紛れも無く危険地域のど真ん中。先ほどの男にしろ、キルの増発にしろ、いいネタはない。サクは、セータが言ったことを深く考えた。どういう風に人をとるかは人それぞれ。サク自身の悪かった部分が、ここでは通用する。でも今はサク自身が変わって、善の心を開いた。そう考えれば、セータの気持ちに通じるものが見えてくるように思えた。しかし、一度仕掛けたら、後には戻れないし、失敗も出来ない。厳しいことこの上ない。とにかく、取引元「ドン」からの使者ともいわれるあの男を追跡しなければならない。サク:「とりあえず、さっきの奴を追って見よう、そこで判断する」セータ:「…うん」イオンも、イオン:「使える時は言ってくれ、ノーマル男にさ」サク:「ああ、そうだな、その時が来たらなあ」追跡はたいしたことないが、問題は、あの男の早さだった。並の人間ではない早さで追い付く事は不可能だ。後は着いてから事が起きていないことを祈るだけだ。サク:「こんなときはキルの機能がうらやましいなあ、セータ」セータ:「俺は詮索は嫌いだ」サク:「ばかいえ、もうすでにやってるだろ」追従がないだけで、軽い詮索は勝手にしてしまうのがチップの性分。それだけでも普通ではないのだ。5キロ位走っただろうか、ようやく、男のいると思われる建物に着いた。古びた、今にも潰れそうなビルだ。イオン:「ふん、悪い奴が使いそうなビルだぜ、マンネリなんだよなあ」サク:「はいるぞ」サクが先頭に入って行った。サク:「ノーマルは真ん中だな」イオン:「名前を言えよ、クソチップがあ」サク:「それでもいいさあ」イオンは、サクが物凄く変わっていると悟り、以前とは比較にならない程、頼れる存在だった。でもやはり、口が悪いのは変わらないみたいだが。セータがビルに入った瞬間、扉がバタンと閉まったのである。サク:「気付いてやがる、しかも、攻略も考えてる」セータ:「そんな奴、相手になるのか?」サク:「さっき、おまえらに会う前に、会った事は会ったんだが、あれで半分以下だったんだなあ」セータ:「何が?」サク:「えっ、あの男の力量って言うの?能力か、なんかがなあ」セータ:「はっきりしろよ、サク」すると、天然に感じたイオンは、イオン:「お前、怯えてるんだろ?」サク:「…」図星だった。サクには得策がなく、格闘もおそらく下だ。セータの気持ちを知ろうという強いやけっぱちが、先走ってしまった。後先の事も考えず。セータ:「分かることは、こっちに来るかどうか、だな」廊下を進んでいくと、人の気配はする扉と、反対側は無反応な扉。2つ同時に一斉に開けた。セータとイオンは反応しない部屋を探り、奥へと入って行く。サクは、必ずいると思われる部屋の奥にはいると、目にしたのは、小さな黒い箱が散乱し、あの男の衣類が見つかった。黒い箱が気になるが、今は男の消息が優先。更に奥に行くと、外を向いている椅子に誰かが座っている。サク:「誰だ?」返事がない椅子に向かって手を伸ばした。サク:「……!」人気blogランキングへ
2007.02.09
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イオンが抱くチップへの疑問。おそらく、普通の考えでいえば、疑問は多く、自分自身の考えを捩伏せる物、自分の能力を倍増させる物、自分とは違う事を見出だす物と、いずれも、能力にはない能力、覚醒を意味するもの、それが本来のチップの持つ目的なのだ。しかし、それ自体に問題があるというのが、イオンが言う、ノーマルの純粋たる気持ちを持つという事なのだ。ノーマルは限界があるとか、スピードがないとか言われて、そのことが記憶に残れば、ノーマルの維持が困難になってくる。自分をよくしなければ、と勘違いする者も出てくる。その結果をチップにすることは、伝説の上では認められない理由の一つである。障害を持った者、地域に合った生活が不可能だとか、対象は比較的身体や心が弱い者に対しての補助的な位置にあったはずだった。しかし、全てが当たり前になった時が危険時期だったのだ。かつてショウが開発した頃、最悪を乗り越える手段として過去の記憶を消し去り、新たな気持ちと強さを兼ね備えた最終的な方法だった。だが、伝説は当たり前の手段として動いている今となっては、チップは仇となって表れてしまった。いつの間にか悪に加担するアイテムに変わり、逆にそれが平穏な住人に襲い掛かろうとしていた。孫からみたイオンの気持ちには、伝説を背負う重みは、セータにも伝わっていたし、サクも理解しようと努力している。栄光を引きずるのではなく、維持していく事のあらわれが、ノーマルでありつづけたいという願いであり、こだわりでもあるのだ。チップ搭載が理想ではなく手段であることを知ってほしかった、それだけなのである。サクは、強引な搭載で自分とは思惑の違う心理に悩まされ、人生を遠回りしてしまった。セータは、父親の陰謀でやはり無理矢理搭載されて、大切な高校生活を失った。どちらのケースも現代のイジメや虐待と同等であり、そういった行為がこれから始まるキル量産に当て嵌まって行く事を防がなければならない。チップ搭載の2人は、改めて、その気持ちを確認した。妹であるサーヤも同じ気持ちで研究に時間を費やし、いい意味でのチップの使い方を伝授する義務感に徹しているのだ。復活したイオンとの安らぎの時間は、サクとセータにとって、貴重なものとなった。人気blogランキングへ
2007.02.08
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記憶が戻って喜んでいたのもつかの間、外から誰かが侵入、セータはすぐにサクではないと分かり、違う部屋に移動した。侵入してきた男は、サクを錯乱させた者だった。この男にはかなりの経験値を積んだキルが搭載されており、セータがどこへ隠れようが関係なかった。セータ:「駄目だ、こっちに来る、キルにロックオンされている」イオン:「なんだかわからんが、ヤバそうだなあ」セータ:「ああ、ヤバイも何も、何をしてくるかわからないし、だいいち、いったい誰だろ?」どうしようと言っている間に、その男は目の前に現れた。男は無口にセータを見つめ、じっとしているだけだった。イオン:「何だ?あんた、何をしている?」イオンが尋ねると、男:「……解読中だ、黙ってろ」イオン:「そんな言われ方されて、黙るかって。失礼もほどがある!」セータ:「センコー、喋らないほうがいいよ、また、アレされちゃうよ」イオン:「……」どうやら、男は、セータから何やら解読しているようだ。男:「……大人しくしていれば危害は加えない、ドンの言う通りにしているだけだ」イオン:「ドン?」男:「喋りすぎた、もういいぞ」セータ:「ドンって、あのチップの取引元だよなあ、そのシモベか?」男:「……」男は自分については語らず、去って行った。セータは、さっきの男はキルを騙し盗ったあの男の居場所を知りたかった、最後に会ったセータに来て、場所を特定しようとしたのだ。セータはあの男がどうしても悪い人には見えなかった。気になって、イオンをそっちのけで後を追うと思った矢先、サクが戻ってきた。サク:「今、変な男が入ってきただろ」セータ:「ああ、たった今出て行った」サク:「何もしなかったんだあ」あのキルを騙し盗った男など、どうでもいいって思っていたサクに、セータが、セータ:「ねえ、助けた方がいいんじゃあないなかなあ」サク:「なんで?あいつたいしたことなかったじゃん!それに、助けてどうなるんだ?説明しなよ」サクは理解に困って、セータを説得するが、セータ:「いや、根拠がないから困っちゃうんだよなあ、なんかすごい事しそうな気がする」サク:「そんな理由もなく助けるなんて危険だ、信用出来ないし、本当にすごい事するにしても、それがいいことかどうかだ」こちらにはキルを予想出来る頭脳を持っていないだけに、期待と不安が同時に発生していた。ただひとりノーマルなイオンは、イオン:「本当に、めんどくさいなあ、チップってやつは、探り合うとか、騙し合ってんの、疲れるだけじゃねぇ!」サクがそれを聞いて、サク:「あんた、治ってんじゃん!?」イオン:「だからあ、そういうのが嫌だって!」セータが間に入り込んで、セータ:「そ、そうだよ、センコーが帰って来たんだ。」人気blogランキングへ
2007.02.07
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サクは、食料を調達すると、すぐにセータのもとに戻ろうとした時、チップは僅かな動きを逃さなかった。サク:「誰かが尾行してる?」悟られないように、普通に歩いていると、更に頭に情報が入ってきた。サク:「こいつは、あの時の、スパイか」取引先で成立しなかった事に腹を立てて、そこにいたサクやセータの場所を突き止めれば、あの男の手掛かりがわかるわけだ。サクは行きとは違う道を歩き、錯乱させようと考えた。しかし、不思議な事に、そのスパイは、行きのルートを知っていた。サクのとおりにはいかなかったのだ。サク:「あの男、キルでも付けてんだなあ、まずいな」急いで先回りするため、走ろうとしたが、食料が重く、うまく走れない。小走りでも必死で追い越した、はずだが、男の姿が無くなった。サク:「まずい、完全にキルに追尾されてる、ロックオンかも」キルを越えるのは騙す事だけ、まともに対抗出来ない。サク:「何処へ行ったあ!」しかし、錯乱していたのは、サクの方だった。男は、ひたすらサクの行きのルートを歩いて、確実にセータの場所に向かっている。サク:「クソッ、やるんだったら、あの男と直接やって欲しいなあ、巻き添えはゴメンだ」セータの場所にいけば、絶対にただでは済まないだろう。とにかく、セータの所に急ぐしかなかった。セータは、あれからずっと、イオンを見続けていた。すると、イオンのまぶたが、ヒクヒク動いたのをセータは見た。セータ:「せ、センコー、俺だあ、わかるかあ!」イオン:「うう…」イオンは意識を取り戻し、セータを見た。イオン:「セータ…か、元気だったかあ…」セータ:「何言ってるんだよ、覚えてないのぉ!?」イオン:「ああ?覚えてるさあ、忘れる訳がないだろう、俺はお前の教師だぞぉ…」セータは、胸がドキドキしていた、イオンの記憶が完全復活しているのだ。おそらく、マシンのフリーズの影響で無くなる寸前だった記憶がバックした段階で、全ての記憶も呼び覚まして戻ってきた、という説が相応しい。今のセータには理由などどうでもよかった。イオン:「俺は、いつからお前と会ってないんだろ?いや、会ってたけどどこの若造かと?」セータ:「そんなの忘れちゃったよ、登校してなかったし」イオン:「なんかいろいろあったみたいだが、寺院にいたような記憶もあるんだよなあ、作業とかなんか、いや、忘れてたのは、お前の事だけだあ」セータは、忘れられていたことは悲しかったが、ここでこうして無事でいられるのがなにより嬉しかった。そこへ、ある人影が。人気blogランキングへ
2007.02.06
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光はまたたくまに広がって、男を完全に取り囲み、そして、次第に薄れていった。床にうずくまりながら、男は、男:「やられたな、サクを甘く見ていた」借りを返すというのはなかった、ただ、キルというチップをどのくらい性能がいいのか試されただけだった。今、男は起き上がって、薄ら笑いを浮かべ、拳をにぎりしめた。男:「キルに勝るには、根本的に欺くしかなかったわけか」リセットが偽物だとわかった時、命拾いしたというより、逆に屈辱を味わった形となって、男を苦しめた。キルの最大の弱点は、屈辱だった。サクは既に、研究所へリセットボタンを届けた後だった。セータ:「なあサク、さっきのボタンは何だったの?」サク:「ああ、あれは本物を念じて作ったレプリカだ、しばらく本物を持ち歩いてたからなあ」セータ:「それってサクの才能?それとも、そのチップ?」サクは笑いながら、サク:「自分の才能とチップとの合作としかいいようがないでしょ、無知な頭脳から才能を引き出されたような」サクのチップは、学習を続けている。ところが、サクの連続的な知識の吸収が、チップを活性させ、そのうちに、サクの頭脳に入り込んで来ていた、その癖がついたのか、ひたすらサクの脳からあらゆる千恵や性格までを吸い取っていたのだ。無知に等しかったサクの脳は、チップによって引き出されたわけだ。経験を積めば積むほど、かつてのサクでは無くなっている。サク:「キルは最悪だが、騙すことは出来ても騙される事までは考えられなかったんだ。ま、自分勝手なチップって事だあな」セータ:「口調だけは変わってないね」サク:「それもそうだな、それより、イオンの様子が心配だな」マシンから担ぎだしたイオンは目を覚ましてはいるが、朦朧として、まだ把握していない。あたりはもう夜、近くの別の小さな倉庫に入り、朝を待つ事に。サクは食料を調達しに外へいくと、セータはずっとイオンの手を握っていた。セータ:「もう、あのセンコーじゃなくていいから、しっかりしてくれぇ…」問題なのは、イオンが座っている最中にマシンがフリーズしたという事。記憶が消えるだけでなく、意識までも奪う可能性があったからだ。助かる事だけを考えていたセータを前に、イオンに奇跡が起ころうとしていた。人気blogランキングへ
2007.02.05
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男のやるべき事、それは、この世界にいる全ての人間にキルを搭載し、仕事や学問、政治や社会を効率よくレベルアップさせようとしていた。しかし、キルを搭載した瞬間、人間は、ある程度の支配下に携わることになるのだ。チップ事態は確かにレベルアップに違いないが、方向性が違う。普通はよい生活、より良い政治など、平等に改革を進めるのだが、キルは違う。個人個人の持っている性格を引き出して、真っ向から意見し、政策を計る、いわば、独立性の高いものとなる。それはどういうことか?セータ:「あんたは、とてもいい人だと思ったけど、どうやら見当違いだったみたいだね」男:「どこか悪い所でも?これは画期的な政策だ、皆がそれぞれに活発に運動し、学習する。適材適所が自動的に備わる。そうすれば仕事をしないニートはいなくなり、生きるために無駄のない生活を送れるのではないかな」セータ:「あんたの言っていることはさっぱりだ、自動化すること自体、最大、最悪の生活だあ」男の狙いは、意外にも、自分では支配したがらなかった。支配するのは、もっぱら、普通の人、人の前には立ちそうにない人物が狙いだったのだ。無知な人間ほどビュアで天然である事を利用して、キルを搭載すれば、100%性能が引き出せるからだ。セータ:「これは、精密に出来た独裁だあ、人それぞれが独裁をやるって事だろぉ?」男:「聞こえの悪い事をいうなよ、絶対いいって、自分が切り開ける、実現できる、今足りないのはやる気、生き甲斐、進歩、全てを覆すのだよ。」「こいつ、いくら言っても、本当はノーマルのよさを知らない……」セータは、これ以上、男に言っても無駄である、というか、セータのレベルでは無理だと決めて、ここはひとまず降伏することに。しかし、イオンがこのままでは、キルを植え付けられてしまう。なぜか、男は、イオンにはまだ手をかけず、焦らしているのか、男は考えていた。男:「イオン君は記憶が欠けているわりには、いろいろ思った事を口にするから、このままキルを付けても、上手くいかないだろ?」セータ:「なにが言いたい?」男は、真面目な顔で、男:「全ての記憶を消す」セータは、何となく感じていた言葉だが、イオンの記憶を消すという事は、イオンらしさを失う事。ノーマル人生を消去することだった。依然、イオンを縛り付けているものは、物体ではなく、男から放った気のようなものが、イオンを取り巻いている。これもキルのなす業なのか?これこそ、自分自身で身を守る力、単独で実行できる世界とは、こういう事なのか?ここには、イオンのように、天然なノーマル頭脳を持った者は少ない。いや、もう既に成分で冒されているのかもしれない。強制なIQを持っても、何も生まれないのだ。天然こそ、ノーマルこそ、その人らしさ、というものがあるのだ。人気blogランキングへ
2007.02.02
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銃を構えたまま、びくとも動かない男、構えられて動けないセータ。セータ:「あんた、キル付けてんだな?俺にはそのチップの構造が読めるぞ」強気な発言に、男は、男:「少しはやるようだが、まだ子供同然だなあ、私がなにをしたいかわかるのか?」セータ:「いや、まだだ、でも、あんたはこの世界に生きるには、金がもう無理だろう!」男:「ああ、もう金ではない、別の世界を生きて来た事を忘れたことはない。だから、このチップを利用するんだ」セータ:「意味がわかんねえなあ、チップをどう悪用するか見届けてやるぞ。」男の過去は、どうやら記憶にあるらしい。男:「ここを見られたからには生きては返さないが、興味があるなら話しは別だ。」セータ:「まだ死ぬわけにはいかないが、説明は聞きたい」男:「ふん、言う事だけは大人臭いな、いいだろう、話しはしてやる、その代わり、条件がある」セータ:「条件!?」何を話し始めたのかさっぱりなイオンは、男が話しを進めていくと同時に、セータの方に向いて、ブツを置き去りにしたその間に、男の持っていた黒い箱に近づいていた。セータがブツから遠ざけようとしているところを狙って、イオンが手を伸ばした瞬間、男:「盗むならもっとまともにやるんだな、イオン君」イオン:「ばれてる!」甘すぎた、チップの中でも、キルにかかれば、手も足も出ない。男:「そういえば、さっき会った彼も私に近いチップらしかったが、キルではなかった、君達は何者なのかな?」セータ:「サクに会ったんだな、じゃあ、向こうで誰かと取引してきたんだな、そこで会った」男:「その通りだ、しかも、その彼には助けられている、借りを返さないとなあ」セータは、サクに助けられたという、この男の正体を見抜きたかった。しかし、今の力ではキルに対抗出来なかったのだ。男:「イオン君は、未だに記憶を失っているようだね、しかも、この場所でノーマルな頭脳ときている。教師かもしれないが、ここでは無知に等しい」イオン:「言わせておけばあ!」セータ:「センコー、無理だ、止めて!」[キューン]超音波を発して男は、イオンの動きを止めた。身動きがとれないイオンは、必死にもがいたが、力の限界だった。イオン:「畜生!ここじゃあ、無知かよぉ!」セータが眼力で解こうとしたが、目をやられてしまう、最大限の力を出すにも高校生並では対処出来なかったのだ。男:「どうだ、興味が沸いてきたかい、キルは、万能かつ無敵だ。」イオン:「ふざけんなあ、こんなもん…」イオンはみるみるうちに力を失い、気絶していた。セータ:「あんたの目論みがわかったぞ、センコーにキルを付けるのが条件だろぉ」人気blogランキングへ
2007.02.01
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他のリセットでは取りあげる事すらあり得ないが、物体的に横領ができるのは透明リセットボタンだけだ。パソコンでいう、もとのファイルから使いやすい場所に"エイリアス"を置くのと同じ仕組みで、発生場所にあって初めて動作するため、すんなり使えるようには出来ていなかったのだ。しかし、それが一番の利用防止であり、リセットされないうちは、複数が同時に現れることもない。サクは持ち帰ったリセットのエイリアスから探るために、サーヤのいる研究所に届ける事にした。イオンとセータ組は、結局何も起こらなかった。しかし、帰り道、たった1台のクルマが通り過ぎ、さっきの倉庫に向かって行った。イオンとセータは、急いで倉庫に戻り、先ほど隠れていた場所に腰掛けた。クルマが脇に止められ、1人の男が、何やらトランクケースを持っていた。男は、フタを開けて中身を確認した。セータが突然反応した。セータ:「うわっ、同じ物を鋭く感じる!」イオン:「何が、どうしたってぇ?」イオンは双眼鏡を取り出して、トランクの中を覗いてみたら、イオン:「ありゃあ、チップだなあ?」セータは、同じ物を感じると言って、その男に引き寄せられていく。イオンは急いで、イオン:「馬鹿、近寄るなよ、どういうつもりだあ!」すると、セータ:「いやあ、なんか、あの人、そんな悪いようには感じないんだよねえ」イオン:「!?」セータの発言に疑問を抱くイオンは、同じチップを持っているだけで何故いい人と思うのか、まったく理解出来なかった。イオン:「チップのせいで妨害されてるかもしれないぞ」セータ:「うーん、その発想、単純だけど、いいねえ」セータは馬鹿にした口調だったが、心の中はかなり的を得ていた。男は、トランクからチップを取り出し、あたりを気にしながら、また違った箱に移し替えた。イオン:「あの黒い箱は何だ?なあ、セータ……あ」イオンがあの黒い箱に見取れている間に、セータがいなくなった。あの男に近寄るために、自分の気を消していたため、イオンにはいなくなった瞬間がわからなかった。イオン:「馬鹿!あれに近づいてるんだな、どこから行ったあ?」すると、黒い箱の横に何かスイッチがあり、それを下に下げた。箱は何か唸りを挙げて、振るえだしたのだ。イオン:「なんかの機械だったのかあ、だとしたら、チップに何かをしているって事!?」見つからなかったセータが、ようやく姿を見せたのは、男の背後だった。イオン:「ああ、馬鹿!」男はいきなり後ろを向いて、銃を構えた。ビビる事なく落ち着いた表情のセータだった。男:「ははあ、君はあの男の仲間だね、何が目的かは読めるがねえ」セータ:「仲間だって?あんた、チップの男に会ったのか?」人気blogランキングへ
2007.01.31
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チップを搭載した幹部Bにはやはり、違法ともいえる裏機能のある[キル]。サクのチップよりも深くしつこい、追従方式のナビを無理矢理内蔵している。裏ならではの施工が施され、もはやサクの考えはお見通しだったのだ。追従方式というのは、見る、聞く内容に対して、解決するまで強制的に検索、誘導、実行までをサポートする。その機能は複数同時進行も出来るが、使う人の能力次第。複数が出来ないタイプがあるらしく、それはチップの値段によって様々だという。この業界では、高性能ほど悪という解釈だ。行動を読まれているサクを心で見ている、そんな状況でやりづらいが、どうやら騒ぎを起こして欲しいというニュアンスだ。騒ぎを起こせば、相手の幹部Bは持ち逃げするだろうし、それよりも、リセットが問題でもある。幹部B:[…どうする…]その囁きに、サクは、サク:[…知ってるのか、リセットを…]幹部B:[…もちろん…]サク:[危険を承知で…]幹部B:[私を心配している暇があるのかね、サク…]名前も読まれているという事は、個人情報は全て流れているという事だ。過去の事以外に、リセット前の事まで、追従されている。どうやら、この幹部Bには回避する秘策があるらしい。目をこらすと、相手側の幹部Bの脇に、ボタンらしき物体が見えるのだ。サク:「なるほどな、自信があるわけだあな」サクは、ふと、住職の事を思い出した。住職の心に備わっている、無の心。それは、即興で実行できる、修行の成果でもある。サクは元々、無の心を持っていたが、チップの異変から、自動的に思考するようになり、学習も出来るようになった代わりに、セキュリティが弱く、情報が漏れやすかったのだ。そこで、命懸けの作戦を即興で実行した。サク:[プツ…]幹部Bからサクの心が見えなくなった。その瞬間、元のクールなサクに戻った。幹部は驚きを隠せなかった。幹部B:「チップの供給回路を切るとは、助からんぞ」何を思ってもサクには伝わらない。落ち着いてはいるが、幹部Bにはサクの行動が見えなくなり、錯乱した。即興の動きが身を結び、あっというまに部下を救出し、ついでに脇にあったボタンも横取りした。幹部B:「取引成立という事で、よろしいかな」幹部A:「は、ああ」後を頼もうとした受け渡し側の無知な幹部Aは、部下が居ないことにようやく気付き、怒りをあらわにしていた時、幹部Bは、微笑みながら、ブツを手に持ち去って行った。残された幹部Aの怒りは、誰にも止められないが、そこにはもう、彼以外、従う者は誰もいなかった。人気blogランキングへ
2007.01.30
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サクは、男達に先に行っててもらい、1人で助けるつもりだ。サク:「いいか、私が行ったらすぐにここを走り去るんだ。あんたらは自由だ。」男2:「でも、あいつらは?」サク:「すぐに逃げられるから。」そう言うと、すぐにその場から離れた。サク:「あのリセットは、罪人の都合で出来た、まやかしのリセット。そして、禁断のチップ、キル、この2つはあいつらにとってビジネスであり、娯楽なんだ。この世界には必要ない、しかし、自分も言えた柄じゃない、あいつらと同類なんだ」サクは、今改めて、自分の罪の深さを悟っていた。そしてそれを噛み締めながら向かって行った。幹部のいる場所からすぐ近くまで寄ってきた、そして、部下達に気がつかせ、合流する。サク:[…今何の取引してる?…]気がついた部下達は、サクに目線を振らずに、男3:[…キルだ、早く逃げろ…]サク:[…そんなわけにはいかない、私のいうとおりにしろ…]サクの誘導に部下達が従うのか、それとも…。一方、逃げた男達は、疲れ気味な身体を癒すために草むらに寝転び、空を見上げていた。星のように舞っている成分を目で追っている。男1:「なあ、こいつが麻薬の粒子だって教えた方がよくねぇ?」男2:「今更遅いだろ、もう、これ無しには生きていけなくなっちまってるよ、だから逆に何も起きないんだろ」草むらに付着した粒子や、涌き水までもが、この世界を支配する手助けをしているのだ。まともに見れば、重度な環境汚染と判断されるも、ここでは天下となり、平穏な暮らしをしながら蝕んでいく世界。ビジネスとしている人間には、汚染されることがないように、特殊なワクチンを投与されているが、それは、幹部から配布されるため、逃亡した者は、もはや、住民と同様、身体の保証はない。それでも、逃げて、少しでもいいから、自由で、平和でありたいという気持ちが上回り、それが、人の身を按じる気持ちに変化していったのだ。説得を続けているサクの能力に限界が来ていた。サク:[このままだと、幹部にばれちまう]危険だが、幹部に悟られないように、幹部の能力を探っていた。すると、提供するこちら側の能力はノーマルなのに対して、相手の譲渡される幹部には、なんとチップが搭載されていた。サク:[相手側の方が、気付いている!でも何も感じないふりをしてやがる」ある意味、陰険だが、かなりのワルである証拠だ。サクの出方次第では、取引をぶち壊して、金を出さずに狙いの品を頂くという気持ちが伝わるのだ。相手の幹部が、心の中から、幹部B:[…さあ、どうする…]人気blogランキングへ
2007.01.29
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男達の希望のないいきざまを見てサクにも、過去があった。希望のないいきざまは、サク自身にも刻まれていた記憶だ。しかし、今は違う。ちゃんとした生き甲斐があるからだ。男達にもそれを味わせたいと考えていた。サク:「吹っ飛ぶとはどうすることなんだ?」男2:「そんなこと聞くのはまともじゃあねぇ、おまえ、何者だあ?」サク:「名乗るもんじゃあねぇよ、ただ、テメェらの生き方が気にいらねぇ」すると、男は、ナイフを突かれている男に対して、男2:「なあ、おまえ、本当に死んでもいいと思うかあ?」男1:「何でそんなこと聞くんだ?」男2:「この男、何だかわかんねぇが、凄い事言ってんぞ」男1:「どういう事だあ?」男2:「本当の生きざまってヤツ」なぜか、男達は、その言葉をずっと待っていたかのように、悟り始めていたのだ。サク:「他におまえらみたいなヤツはいるのか?」男2:「ああ、いるにはいるが、あそこにいる幹部についてるヤツが2人いる」サクは、その2人に、この男達が持っている気を増幅させて、彼らに転送させた、当然、チップによる能力だが、かなりの消費を伴う。少しすると、サクのチップに返事が来た。男3:[…何時からいたのか知らないが、俺達に構わずそこから逃げろ…」サク:[…思いはどうなんだ?…]男3:[…]しばらくしても返事がなかった。サクは悩んだ。人の為に動いている事すら初めての自分が、彼らにはすでに備わっており、しかも、人を助ける為に自分の命を投げ出している。誰も自分の幹部には感心を持っていないようだ。金に目がくらむような幹部には、指示する権利などないと感じている人間は、何のために悪を演じているのだろうか?サク:「こりゃあ、私より上手(うわて)だなあ」呆然としているサクに、男1:「おい、どうなんだ?」しばらく彼らの様子を見ていたサクに、彼らはサクのいる方には一切振り向くことのないまま、男4:[…あいつらの事はよく知ってる、だから一緒だ、俺達は無理だ、ばれたら一瞬だからだ…]サク:[…どうにもならないのかあ?…]男4:[…ああ、だから、行け…]サクは、その時、彼らの思いがかなりの濃度で伝わり、思いより深い部分までキャッチした。彼らのプライベートの事までが伝わってくる中、一瞬という事がようやく明らかになった。サク:「やはりそうか、この空気も、このリセットも、全ての世界も、平穏な世界だと思われたが、この世界を作り出したのは、罪人による幻に過ぎなかった!」空気中の白い成分は紛れも無い、麻薬そのものだ。しかも、植物にとっては宝の産物であるが、それを人間が口に入れた場合、ただでは済まないわけだ。さらにショッキングな事は、あの透明なリセットには、禁断の仕掛けがあった。サク:「あいつらを助けるぞ」男1.2:「そんな無茶なあ!」人気blogランキングへ
2007.01.26
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サクが来ているのは、海沿いにあるやはり倉庫だが、ここはまだ閉鎖されていない。おそらく貿易業界の手の持ち物で、そのなかで影の取引がなされているようだ。人の気配が漂っているここには、どうやら生々しい取引が今、行われようとしていたのだ。サク:「思いきりヤバイじゃん、成立しようがしまいが、世間には関係ないが、むしろ成立しない方が危険だあな、さてどうするか?」サクは奴らの出方を見る事に。その時、サクの頭上に事務所らしき部屋があり、人が2人、何やら話しをしている。サクは特殊な耳をすました。[・・・なあに、こんな面倒な取引制度にしなくてもばれねぇのに、オエライさんは古臭いよなあ・・・][・・・ああ、今まで不成立したことねぇし・・・][・・・万が一成立しなくても、ヤクで吹っ飛ばしゃあいいことさ・・・][・・・でもよぉ、そうなったら俺達も巻き添い喰らうんだぜ、めんどくさいなあ・・・]サクは、この言葉から予測していた。サク:「ヤクっていうのは火薬かあ…?」吹っ飛ぶというのが妙だ。いったい何がどう吹っ飛ぶというのか?サク:「爆弾でも仕掛けるのか?いや、待てよ、吹っ飛ばすのは火薬でももしかして吹っ飛ぶのは、麻薬?」サクのチップが威力を増していく。サク:「これは、とてもじゃあないが、まともじゃないなあ」何気に考えていると、1つの結論が出て来た。サク:「こ、これが、あの…!」呆然としていたサクは、上の事務所から駆け降りる人の気配を見失っていた。サク:「俺が以前やったあの件と同じだあ、間違いない!」身体が震えて来たサクの背後から、男達が迫って来た、震えが止まらないサクは異変にかすかな気を感じ、切り付けてきたナイフを瞬時にかわした。逆にかわした背後から男の首を締め、ナイフを取り上げて切り付け返した。サク:「さあ、説明してもらおうか、こりゃあ何の取引だあ?」もう1人の男に質問した。男2:「バカヤロウ、簡単に言うわきゃあねぇだろぉ!」サク:「じゃあ、こいつがどうなってもいいのかあ!?」すると、男は、意外な言葉を口にした。男1:「フン、好きにしろ、どうせこうやって不祥事がでりゃあ、取引もダメになる、そしたら、ここにいる全員、吹っ飛ぶだけだあな!」サク:「何ぃ、吹っ飛ぶ意味がわかんねぇ!」男1:「テメェに言ってもしょうがねぇ、やるならやっちまえぇ!」サクは、哀れな男達を見て、まるで将来を決め付けられている、がんじがらめの人生を送っていると知って、幹部というのは、下を見ようとせず、自分の立場ばかり見て都合のいいことだけを追っている、こういう体制が嫌いなサクに、怒りが込み上げる。サク:「おまえら、生きたくないんか!?」人気blogランキングへ
2007.01.25
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ウインとサーヤの研究が続く中、あのリセットの根源は何か、何が目的だったのか、改めて考えなければならない。最悪が起こった上での幹部の手によって降されるやり方だったかどうかだ。あの透明なリセットに関しては、降したのはサクだ。しかも、今、一緒に同じ部落にいる。そんな彼が、リセットを押す立場だったとするなら、幹部にあたる人間がそのほかにはいなかった事になる。実権は握ってはいたが、サクに幹部の資格はなかった。ではなぜ、サクのいる場所にあのリセットが現れたのか?サーヤは、透明リセットの出るタイミングが、他のリセットと違う方式を探り、そこから本当の意味を見つけた上で、あの成分の正体を知る近道だと感じた。その説にウインも納得し、幹部ではない別の理論で追ってみることにした。既に、計画を組み実行する段階になっていた、イオン達3人は、事件になりそうな場所を探り、しばらく様子を見ていた。あの植物が用いられるかもしれない、しかも、あの成分の特性を既に知っているのかもしれない、だが、むやみに聞くことはできなかった。まだ誰も知らないかもしれないからだ。チップにはかなりの負担をかけるが、ラーメン屋の主人の話しでは、そういった類のグループがいくつかあると言っていた場所に絞り込めば、負担は軽い。しかし、あまりにも範囲が狭すぎるので、サクがもう1カ所の場所に向かい、チップ同士のコンタクトをとりながら行動することにした。イオン:「サクは多少でも、格闘の経験があるから襲われても大丈夫だよな。」サク:「ああ、嗜む程度になあ、ここはイオン先生に任せたぜぇ」と言って、別の場所へ向かっていった。セータは、緊張する中、あたりを真剣に探っていた。セータの気持ちは、高まっていた。サクがいなくなって初めて感じた思いにプレッシャーを感じているのに気付いたからだ。セータ:「こんな俺が、まさか、怯えてるのかあ?何だ、この気持ちは」イオンが情けないくらい弱いと思うと余計にその思いが高ぶってきた。イオン:「この一帯は、倉庫だったそうだ。だいぶ前に潰れて、今は何かとヤバイ取引場所になってるって噂だ。」こんなヤバイ事に気が付かない程、この世界は、あまりにも鈍っているという事に、ここの奴らは見越している。だから、逆に、探られている事にも予想していないはずだ。現に、嘘のように入り口の警戒はなかった。セータは、セータ:「この警戒心のなさは、まるで罠みたいだよね」イオン:「あ、ああ、ひっくり返せばそうなるなあ」セータ:「相手は、まるで考えてないか、もしくは…」イオン:「なんだあ、変な事いうなよ、余計緊張すんだろ」セータは、少しでもイオンに緊張して欲しかった。人気blogランキングへ
2007.01.24
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人間は何かに取り組んでいる時が一番美しい。筆者の親のまた親である婆さんがいるが、娘に思いを込めて育てていたが今では100歳に到達する。それは、他でもない、生き甲斐をもっているからがんばれるのだ。ノルマや、目的、趣味、やり方は様々だが、それに向かっていく姿勢こそが、本来の生き方だと思う。駄目でも違う角度からやれば上手くいったり、客がたくさん来ていても、天狗にならず続けられるように工夫する、目的とは、達成するために努力することを、現代の人間に欠けて来ている。無理しない、しても犯罪から入っていく。考えない、全てパソコンがやってくれる。目的がない、もう家にあるから。助けない、病気にならないから。セータ達は、このリセットを理解することが出来なかった。怠けるためのリセットなど有り得ない現象なのだ。最悪を打ち消すためにあると思われたが、今、戸惑いを見せていた。セータ:「もしリセットが最悪に起こるとすれば、住職も言っていたが、今のスタイルで新たな犯罪が起こる可能性を考えていた。でもさ、今のままでも充分最悪だと思うんだけど」セータが発言したことに、イオンにも、サクにも同じ気持ちだった。何故、リセットがこれなのか?サクの案に、サク:「あのラーメン屋が言ってた、頑張っている連中が標的になるんじゃないかあ?」イオン:「そんなあ!それじゃあ逆だよー!」有り得ない事ではなかった。人間が幸せである以上、今では、努力が最悪に成り兼ねない。イオン:「じゃあ、禁断の植物を使った犯罪っていうケースはあるのか?」セータ:「考えられるとしたら、禁断の植物を、努力している人に何らかの理由で服用させ、苦しめるっていうのは?」サク:「有り得るなあ、今で充分と考えれば、余計な事は避けたいだろうからなあ」それでは、そういった事態をいつ、どこで見分けていくのか?余程、先を読まなければ必ず一件は犠牲者が出てしまう、すると、それが引き金となり、連続する可能性が高いのだ。不思議な事に、現代でも異様な現象として、一件の事件が明るみになると、必ず同じような形で連続する傾向があり、誰もが身の回りを気にするような事態、明日は我が身、的な、誰もが疑わしい気持ちになっていく。人間の心とは、いいことより悪い方を引っ張る習性があるから、その観念を消す事は、極めて困難なのだ。歴史を変えるほどではないが、時間単位で予想することが可能なのは、サクとセータしかいない。ただし、チップに負担がかかることは避けられない。セータ:「どのみち、放っておけば事件が起きちゃうんだよな、もう今からでもアンテナ立てた方がいいのかな」サク:「待て、少しでも引っ張らないと身体がもたない、きっかけを掴むんだ」人気blogランキングへ
2007.01.23
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あれから一週間が経った。イオンとセータ、そして、サクの3人は、かなりの疲れを見せていた。新たな進展はないまま、 住職を捜していたが、見つかるめどがつかない。まるで存在がなかったかのように、消えてしまった住職。チップを駆使しても発見できない理由を考えると、イオン:「こりゃあ、リセットかなあ?」サク:「個人的にかあ?」イオン:「有り得ないよなあ、やっぱり」やはり過去にはなかったリセットのパターンではあるが、そこまで考えつくサクのチップは、なおも進展し続けていた。疲れ切った3人は、歩く事も出来なくなり、仕方なく、近くの街に入り休暇できる場所を捜した。やはり人気(ひとけ)のない街。ある意味不気味な空気が漂う。事件がないことはいいことだが、何て言ったらいいのか、サプライズがないとでもいうのだろうか。何事も起きないからやることがない、やっても意味がない、やるだけ無駄、普通とは、じっと家でのんびり、朗らか家族。なにやら昔から言う、憧れの生活キャッチコピーを履き違えているようだ。ゆったりのんびりは、温泉でのんびりする時に使う言葉だし、朗らかは家を買う夢などに言う。しかし、ここでは、表現が違う。しない、動かない、協力しない、以前から開発されていたが、全てにおいてオートメーションな文化に人間はとうとう、何もしなくても生きていけるようになっていた。オートメーション化まではよかったが、ニートが急増し、仕事があっても手抜きが多い。人間から苦労を抜くと、目的や達成感がなくなり、給料をもらう気持ちも変わる。それを激化させたのは、この空気だった。この空気は、健康である代わりに、この世の中から、努力する気を吸い取っているようだ。セータ達は、スーパーを見つけ、そこで必要物資を手に入れようとしたが、既に倒産し、閉ざされていた。オンライン化が主流となり、外で買う事や、外食までもが無くなっていた。イオン:「なあ、パソコンがないと飯も食えないのかあ?」セータ:「ねえ、あれ見てよ!」3人が見たのは、陰気臭い路地裏にある古いラーメン屋だった。そこへ向かい、戸を開けてみると、何とそこは大盛況。イオン:「なんだあ?ここだけは昔のままだなあ」店主に聞いてみると、店主:「俺がこの制度に反発してラーメン屋をやり続けていたら、知らないうちに、マニア扱いにされて、逆に好きな客だけが集まってきた、うれしいけど、複雑だね」セータ:「という事は、おじさんみたいな人が他にもいるんだね?」店主は、うれしい顔で、店主:「そうともさ、こんな世の中だからこそ、逆に頑張らなきゃならないと誓った連中がいる、まだ少ないがなあ」人気blogランキングへ
2007.01.22
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ウインとサーヤが研究所に戻ってきたのは明け方だった。今日は深い眠りに着いて、少しでも専念できるように、身体を休める必要があった。一度研究に入れば今度はいつ休めるかわからないからだ。ウイン:「サーヤ君はあれをどう思う?」サーヤ:「いや、まだ何とも言えませんが、博士のおっしゃりたいのは、あれがいいか悪いかって事ですよね?」ウイン:「さすが、冴えてるね、どうも腑に落ちないんだよなあ、確証できないけど、まっ、適当に休みなさい。」そう言って奥の部屋に向かって行った。サーヤは、1人、寮に入って、部屋でいろいろ考えていた。歴史、住職、光、浮遊物、光合成、そして皆。リセットを巡り、様々な出来事が何かと起こり、消えゆくものや、誕生するものがはっきりしている。現実では有り得ない自分の考え通りに世の中が動いていく観念こそ、リセットを生み出す発端となった事を考えれば、今の世界は誰がどう動かしているのか、誰が支配しているのか全く想像がつかないところが、今回では初めての事。人間が作り出した欲望さえも見えて来ない。やはり、自然が起こしている事なのか?そして、イオンがあそこまで記憶復活が遅れているのは、明らかに、他の皆と体質が大きく異なっている可能性もあるし、山積みな謎がサーヤに襲い掛かる。サーヤ:「やっぱ寝られないなあ」考え過ぎも癖になっているが、それが研究の中で最も重要な事に繋がっているのも、サーヤのいい面でもあったが、逆に、睡眠不足から、免疫が薄れているのも事実だった。隠ぺいとか、自殺だとか、並べてみれば、最悪なニュースが毎日のように発生している現代。それは、咄嗟に考えつく人間の発想から来る行動による事件が殆どだ。時間を費やして、たどり着き行動することも中にはあるかもしれないが、我を忘れて一瞬でも頭に来れば、それが起爆する。落ち着いた時には後悔の波がどんどん押し寄せる。結局、波に乗れず、時間に追われ、まわりの人にも煽られるこの世の中で、最も世界に押し潰されて、最も悲鳴を挙げて訴えているのは、むしろ犯人側だったりするのだ。犯罪は2種類あるとしたら、極悪犯より、普通の人の方が大半だろう。そういう人間を作り出しているのは、今の世に生きる大人達、政治、技術、文化、そして、時間。そして、今、深刻なのは、陰険たる人の心理。何を考え、行動しているのか、同じ人間とは思えない発想。これこそ、サーヤが今考え悩んでいる事の結果になることに繋がっていく事を予感し、恐れていた。先を見すぎて心痛めるストレスから、気が付かないうちに、サーヤの身体は蝕まれていた。人気blogランキングへ
2007.01.19
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偶然を生むとは言うが、これほどまでに仕組まれた偶然はない。過去にもこのケースと同じ事が起こっていた。探索させておいて、僧侶がいなくなり、成分分析がまとまり、誰か1人が毒味をする。しかし、定期的に死んでしまったのか、ぼけてしまったのか、今日まで記録を残した物は全く見当たらなかった。ウイン:「これは推測だが、過去の歴史がもし本当なら、全く同じ事をしようとしているのではないのか?」「俺も冗談かと思って言わなかった」薄々感じていた気持ちが一致していた。この出来事は繰り返されていた?繰り返されているとは断定出来なかったが、今は重要視されているのは毒素の存在であり、浮遊した成分がいかにしてそういった現象を作り出しているのかが課題だった。ここまで詳しく調べるにはやはり研究所へ移動するしかなかった。ウインとサーヤはひとまず、資料を持ち帰り、しばらくは研究に没頭することに。残りのメンバーは引き続き、作業を続けた。だが、ここまででわかったことは、あまりいい内容ではなく、むしろ、最悪を臭わせる状態であり、空気中の浮遊物もいいのか悪いのか謎のままだ。サク:「なんか、このまま作業してても無駄じゃあないかなあ、あれがわかんないうちはさ」イオン:「それはそうだが、また違った切り口だって見つかるかもしれないし」サク:「そんな確信のない事やるより、あのじいさん捜した方がいいんじゃあないかなあ」イオン:「怠けたいだけじゃあないのかあ?!」サク:「何だとぉ!」そこへ、セータが仲介に入って、セータ:「センコー、こりゃあ、サクの言っている事が一利あるかも。だって、消滅する理由がわからないし、歴史に乗っかってるだけじゃん。捜した方が先に進めるし、歴史の流れも変えられるんだあ」イオン:「でも、それが間違っているとは限らないんだぜ、どうにもならないだろぉ」セータは黙ってしまった、イオンが頑固なのは承知だったが、こんな時に固い者がここにいてもしょうがないと感じていたが、ウインはきっと、イオンの記憶を戻させてやるつもりでここへ連れてきたのだ。辛いのは、本当はイオンの方なのかもしれない。思い出せないのに元気で明るく振る舞っている姿はまさにあの教室の時のようだ。サクとセータは住職を究極チップを駆使して捜せば、まだそう遠くへは行ってないと予想している。平穏とされたこの空気に、新たな流れが吹き込まれようとしていた。人気blogランキングへ
2007.01.18
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未確認な成分と、寺院の書物には、密接な関係があった。ウインは更に追跡すると、太陽を浴びた方がいくらかの栄養素と空気中の成分と似ている。空気中の成分は、あの光から放たれた浮遊物で、何も起こらない限り、長い時間でも空気中に依存し続け、流れに任せて植物、食物などに付着する。光合成をたくさん浴びた植物に付いた瞬間、化学変化と共に栄養素が通常の3倍、耐久性も2倍増していると断定。これを人間が食べる事で、身体にいい影響を与え、健康であり、ストレスもない、平穏な世界を作り出したのだ。一方、陰で生えていた植物に関しては、もっと意外な結果が出た。「出来れば間違って欲しい結果だな」ウインは、深刻な顔で皆を見回した。セータもこの時点で判った。サクとサーヤは、不思議がり、イオンは、至って普通にしていた。ウイン:「あの陰にあった花には物凄い毒素を持っている、日向のと同じ種類でだ、しかも隣り合わせでお互いに共存しあっていることが不思議な位だ。これがどういうことかわかるか?」一同は、沈黙し、その花を見つめていた。陰の植物の事を、この世界の人間はおそらく知っている、そして、それらは、物凄く恐ろしい犯罪に繋がる事も承知だった。だから、新しい植物に関しては、絶対に太陽が当たる場所にしか栽培していない。これが知っているからこそ、誰もが犯罪者に成り兼ねないのだ。ウイン:「毒素があることは判ったが、どんな事になるかはまだ不明だ、解っていることは、いいも悪いも共存できる気候にあるらしい。まだ誰も使ってないし、食べる勇気もないからなあ」イオン:「政府上では採取、食用を禁止としているらしい。寺院の書物にも書いてあったな。」ウイン:「セータ、なんか深刻な顔してるけど、知ってることあるのか?」セータ:「いや、でも、さっき、センコーが見ていた歴史書にあった事が気になってるんだけど、10年周期でリセットされているという仮説がどうも不自然なんだよなあ」それが本当なら、今年のリセットがその節目の10年であり、引き継がれる時。しかし、住職はいなくなり、後継ぎもいない。これはただの偶然か?ウインがとりあえず、一同の中軸として、このブロジェクトを仕切る。しかし、これは仕組まれた偶然であることがわかるのは、もう少し後の事だった。人気blogランキングへ
2007.01.17
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イオンが見つけた書物は、ここに存在したであろう、先代寺院管理者の記録が載っていた。寺院の落成から、今日までの建物についての記録のようだ。この寺院の歴史は、やはり30年と浅く、戦後に造ったもの、先代は3人の僧侶が管理しており、いずれも10年で引き継いでいる。現在の僧侶、則ち、消息を絶った住職は今年で10年目にあたり、引き継ぎをすると思われるが、後継者は現れていない。しかも、引き継ぎする話題も資料もなかったし、どうやって引き継ぐかも記録されていない。イオン:「一番気になるのは、ほら、リセットの時期の記録も載ってないぞ」セータ:「でも、ここがやはり新しいって事が判ったけど、何かきっかけがあったんじゃあないかな?」イオン:「そんなに勘が当たったからって先走った言い方すんなよぉ」セータ:「うるせー、悔しいんだろ?」セータはイオンのツッコミが、懐かしく思っていた。セータ:「ホントにこいつ、記憶ないのかよ」知らない人に対しても遠慮しない性格なイオンがセータにとっては逆に長所となっていた。サーヤとウインは、寺院の中に戻り、事務室のような部屋で、簡易研究アイテムを取り出した。簡単なものしか調べられないが、成分の分析程度なら問題なく調査できる。簡易顕微鏡によると、ウイン:「空気中の酸素の他に、なんかみたこともない成分が混じってるが、これがあの光から発生したものかもしれないな」しかし、見たこともない成分としか判断できない簡易的なアイテムでは完全に解析不可能とみたウインは、違った成分が混じっていることは事実なため、簡易だが、空気をボンベに圧縮して採取し、研究所に持ち帰る必要があった。一方、音沙汰のないサクは、植物の分析を続行していた。前回と比べて違うのはやはり進化したチップによる、植物にたいしての接し方だ。全く興味を示さなかった性格が裏を返したように、花一輪一輪丁寧に見ている、そして、進化したチップの中に新たな機能が生まれていた、成分分析機能だ。これを研究すれば習得できる学習型であり、花の分野では強い反応を示すようになる。そうしている間に、サクはあるものを見つけた。この空気中で育った植物に、太陽のあたる場所と影となる場所とでは、成分の付き方が違う事が判った。サンプルを持ってウインの元へ向かったサクは朧げに喜んでいた。持ち帰ったサンプルに違いがあった。太陽を浴びている方がより光合成を付けているのに加え、全く見たこともない成分が検出されたのだ。人気blogランキングへ
2007.01.16
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セータとサクが帰還、イオンもサーヤもそして、ウインも皆喜び合い、2人を招いた。セータは、セータ:「センコー、まだ思い出さないのかあ?」心配そうに見つめると、イオンは、イオン:「な、なあに、大丈夫だ、そのうちになんとかなるよ」イオンだけ、なぜかこの気候に馴染んでいないようだ。ウインが、ウイン:「個人差があるようだね、また皆で作業を再開しよう、でないと、今後の事が不安だし」セータ:「あとぉ、センコーもね!」セータが付け加えた。皆から笑顔が戻っていた時、一人の人物が消えていた。後ろにいたサクが気が付き、サク:「浮かれてる場合じゃあなさそうだなあ」ウイン:「何?」いつの間にか、いなくなっていたのは住職だ。サーヤが、サーヤ:「さっきまでいたのに、いったいどうしちゃったの?」イオン:「寺院に戻ったのかなあ?」すると、セータが、セータ:「いや、違う、居なくなったんじゃあない、身を引いたと言った方がいいかも」サーヤ:「まさか、修業に出かけたっていうこと?」一同の姿を見た瞬間から、住職の気持ちが固まったのか、それとも、自分のおこなったことによって、蟇目を感じ、自立した新しい気持ちを育むのに障害になると判断したのか?気になるところだが、今はやりかけた作業を進ませる必要がある。イオンの回復のめどがつかないまま、イオンと共に作業を再開したセータは楽しかった学校生活を思い出していた。寺院にある書物はどれも仏法や法律書ばかりで、これといった珍しい資料はなかった。イオンは、イオン:「こんなことしていていいのかなあ、せめて、寺院の歴史書くらいあってもいいだろう!」すると、セータが、セータ:「なんか、ここにある本ってさあ、新しくない?」イオン:「どうしてそれが判る?」セータ:「たいがい、お寺の本なんてあるだけでみることが少ないんだ、だからかび臭いはずなんだが、ここにあるのは、そんな臭いしないし、色も変わってない」イオン:「それは空気がいいからじゃないのかあ、湿気すら感じないんだぜ、こんな暗がりで窓もないのに」チップが働いたはずだが、セータの知識は、イオンに年齢と教師の頭脳にしてやられた。セータはその時、やはり経験がモノを言うということを痛感した。しばらくして、イオンは気になる本を手に取った。それは、ある偉大なる僧侶が書き綴ったものだが、崩した筆の書き方が一見、題目かと思うようなくせ字だったたが、よくみると、年号が記されていた。イオン:「これって、ここの創立者が書いたんじゃあないだろうなあ!」人気blogランキングへ
2007.01.15
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住職が管理していた当時の政府には、独裁を望んでいた上官がいた。リセット後の世界はその上官の気持ちが練り込まれたとも言われていたが、そこで仕切っていたのは、元ショウの師匠であるスヴェンだった。ではスヴェンが上官だったのかといえばそうではなく、独裁していたのは、単なる偶然であり、上官がこの世界に移ってきたという事実はなかった。ということは、生きて現在に存在する可能性がある。問題は、白のリセットで記憶を失っているはずだが、自らリセットを知っている事から、それを防御している事も考えられるのだ。住職の考えは、この気候を利用した新たな陰謀は、その男にかかっている説を唱えた。何故なら、後先の行程を知り尽くす能力をもっているとしか言いようがなかったからだ。サーヤ:「つまり、チップ使いって事かしら?!」住職:「ああ、可能性があるって事です、だが、上官が入手しているならば、極上のチップだったと思うがのう」サーヤ:「それって、違う意味の極上なんでしょ」住職:「さよう、判っているようだね、サーヤさん」チップ作成の特許は研究所が独占する。それ以外は作る事は禁じられ、偽装、違法コピーとなる。それが上官でさえもだ。住職は更に、住職:「まず狙われる根源がここにある」イオン:「それって!?」住職の目の前には、人を背負った人物が見えていた。住職:「カギを握る男が、ここにある」紛れもなく、サクとセータのことだ。あの2人には、将来がかかった、究極のチップを持っておる、しかも、今度はバージョンアップと同等の試練を受けて帰ってきた。サーヤ:「同等というのは、上がり下がりだけではない、身体に合った最適化って事ね」住職:「サーヤさん、冴えてきたのう、もう大丈夫でしょう」住職は、自分が手を下す事はもうすでにないと感じていた。サクの独創たるバージョンアップと、セータの完全最適化が物語っている。イオン:「セータ君は大丈夫なのかあ?」イオンが心配そうに言った。住職:「多分な、いまはまだ安定してないと思うがなあ、それより、いい加減、イオン殿の復活を願いますよ」イオン:「俺、めっちゃ知ってなきゃあいけないんだよな」イオンは、未だにセータの記憶が薄いままで、回復がかなり遅れていた。一同が目にしたその2人の姿、しかも、サクが人を背負っている自体、奇跡に近い。全てをバージョンアップさせたサクと、最年少対応の究極頭脳を持つセータが、新たな展開を開いていく。人気blogランキングへ
2007.01.12
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セータを支えていたサクの心理には、あらゆる変化が生じていた。まずは人を考える事、自身自分とは思えない行動に驚くが、自然体でいることの喜びの方が大きかった。セータはやはり若すぎた。チップの判断はやはり最適化するに至った。いわゆる、"退化"だ。しかし、ただの退化ではなく、今までの知識を踏まえた退化だった。この最適化は、人がだれもが羨む機能だ。無駄に過ごしていた高校時代をやり直したいと思ったことはないだろうか?しかも、今の知識そのままでだ。まさにその機能だ。しかし、退化である以上、それなりのリスクもある。体力が減り、今後の思考力も範囲が狭くなる。容量自体は高校生並と判断される。体がついていけるようになるには時間を要した。サクはセータの退化を認め、背負いながら、一同のもとへと向かった。サクの進化は、セータの真逆となり、更にサクの中にあった、邪悪な心は排除されていた。考えるチップは、後にも先にもこの2人だけ、今の気候に対応し、判断するというチップの将来はあるのか?そして、これを量産する意味が出てくるのか、今後の課題となるのだ。この澄んだ世界がどこまで続くのか、平和な世界はどこまで保たれるのか、それがこのチップの運命を暗示していた。サーヤが生み出した史上最高のチップに設計図など存在せず、しかも、計算されたものでもない、偶然の産物といっても過言ではないくらい絶妙なのだ。住職:「再び悪のない世界を創るのはあの2人、しかし、支えが必要だのう。」再び作業に戻るウインとサーヤに住職の言葉の意味がすぐに理解出来た。この分析結果が大きなきっかけとなること、それに付随するかもしれない同等なるチップ量産への可能性を踏まえて、サクとセータの将来を見つめ続けること。住職は感じていた、この世界独特の悪がきっと発生するときが来るだろう。だが、その独特さが判らないため、何も判断はできないが、おそらく、この気候を利用した新たな事件が待ち受けていると考えられる。指揮をとっていたあの頃には考え付かなかった気持ちで、今、改めてあの立場を見つめ直すと、出世街道ばかりたどっていた自分が恥ずかしくなる、あの2人をみているとそんな気持ちになった住職の目には涙が溢れていた、その目の前にあの2人の姿が写ってきた、それぞれの成長した容姿を期待して。人気blogランキングへ
2007.01.11
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伝説を知っている住職の存在は、イオン、サーヤ、そして、ウインの記憶をより確実なものとした。この環境と、伝説の内容とが、消えかけた記憶に刺激を与えたほど重要だったのだ。住職:「私がこの道を選んだのは、紛れも無い、出世することばかり考えていた事で人を危ぶんだ罪は償いきれん。心が痛むがそれが定めだと思い、リセット後は山篭もりをしたのが始まりだった。」イオン:「出世の果てには出家って事かあ」住職:「ああ、山篭もりしたころには、自分も記憶がなかった事に気付いたのだが、不思議と違和感がなかった。多分、頭が真っ白になっていた矢先だったのだ、都合がいいと言われても仕方ないがなあ」確かに都合がいい話だった。しかし、誰一人、住職を恨む者はいなかった。人事だと思うのは勝手だが、いつ自分に降り注ぐかわからない。住職に起きた派遣疑惑には、上からの圧力があり、それが出世ではなく罠だった事に気付いた時にはもうすでに遅かった。住職はすぐに、「後になって思い出したら、あの伝説に出て来た名前と一致したことに驚いた。派遣三人の名は、ショウ、カイ、そしてマリアだったからだ。」イオンは衝撃が走った。そして、イオンの両親がいたあの時代、独裁と麻薬が渦巻いた世界によって更なるリセットを余儀なくされた、あの伝説の意味とはなんだったのか?サーヤにも心辺りが僅かだが、荒れた時代に生まれた事だけは、記憶を貫くほど判っている。サーヤ:「一体何のための派遣だったの?侵略者を突き止める為だったんじゃなかったの?」その言葉に住職は何も答える権利がなかった。派遣追跡はしたものの、再びリセットされた自体、全く意味を無くしていたのだ。すると、ウインが、ウイン:「いや、無駄とはいえない、現にそこでイオンとサーヤは産まれたんだ、逆に無駄のままにしてはいけないと思うんだが!」その言葉にイオンもサーヤも認めるしかなかった。そして、一番救われたのは住職だろう。ウインは更に、「それよりも重要なのは、住職を重圧していた上の者とは誰かという事だ、この者こそ、全ての記憶を牛耳る、そして全ての世界を知り尽くしていたと思われるからだ。」住職:「何でそんなことまで言える?」ウイン:「答えは簡単だ。リセット前に派遣を送ると指示したのは、リセットを知っているという事だ、言っちゃあ悪いが、住職さんはただの駒、自分は既にその世界からおさらばしていたんだ、でなければ、その者が指示した意味がないし、そのほうが自然だ。」住職:「自分だけがんばってたって事?」人気blogランキングへ
2007.01.10
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サクに近寄るセータ。震えているサクは、何か呟いている、聞こえるまで近寄ったセータは、セータ:「何が起きた、進化か退化か?」サクは、震えながら、サク:「あんたに、希望のある若いあんたに、言っていいのかどうかあ」セータ:「その言い草は退化かあ?」チップにとって進化とは、学習能力や判断力を発展させるものだが、逆に退化するということは、普通の人間の持つ能力に戻ることになる。だが、サクの場合は深刻だった。サクのチップが無知だったからだ。失うものがないと安心していたサクは、たった1つだけ、失うものがあった、それは、本心全ての記憶。最悪だと死に至るのだ。サク:「私はもうすぐ失うものに、関しては、悔いるものは、ない、記憶なんか、くだらないこと、ばかりだ、ただ…」セータ:「どうした?」震える中で、サクは涙を流していた。サク:「死ぬのだけが、なにより恐怖だあ…」死ぬのか、記憶喪失か、どちらに転んでも、死んだも同然と思っているサクに、セータ:「お前らしくないなあ、記憶ならまた始められるだろ」サクはどちらに転ぶかわからない極地に立たされながら、サク:「あんた、学生のくせに、いいこと言うなあ」サクはそのまま倒れた。セータは、この先どうなるのか見えなくなっていた。まるで現代の社会現象に近い。完全に記憶がなくなる前に新たな記憶を吹き込むしかないが、サクの人格に適合しない、まったく関係のない記憶を植え付ける事は不可能だ。セータ:「いったいどうすればいいんだ、こんなときは!」セータがサクに何かをしようと懸命になっていた。すると、セータのチップにも異変が生じていた。セータ:「お、俺も、退化するのかあ」考えれば考えるほど、頭痛がするようになり、サクのように体が震えてきた。セータも段々立っていられなくなり、サクの横でうずくまった。セータ:「こんなところで終わっちゃうのかよお、ついてないなあ、無知になる位なら死んだ方がマシだなあ」セータはそう呟いた後に気を失った。そんな体を支えていたのは、立ち上がったサクだった。サク:「チクショウ、無知、無知って言いやがって、死にたくない?無知な私はしっかり生きてるんだけどなあ」と言いながらも、セータの体を摩っていた。サク自身、まだ気付いていないが、無知を感知した空間がくだした判断は、人間として最低、基本となるベースがなにもかも持っていないサクに、"命を粗末にしない"、たったこれだけでも、この男にとっては大きな進化を遂げていたのだ。人気blogランキングへ
2007.01.09
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住職が、セータを止めないで、サクを探させたのは、チップ搭載である運命を背負う者同士でなら出来ないことはない、そう思っていた。しかし、チップを認めていたわけではなかった。チップを利用してまで人間を抑制した所に何があるというのか?だがそれが定めなら、それに従った道を貫くのが筋道なのだ。住職:「あの2人は、ここにいてはならない、本来、チップというのは、浄化された場所には適していないのだよ、ウイン殿」ウイン:「なるほど、対応できなくなったから使うって事だな。」住職:「さよう」最悪な気候に生活していく上での最終手段として開発が始まったのは事実である。空間が汚れなく、平和な世界、浄化された本来の気候では必要性のない、いや、使用不可能になる可能性だってあるのだ。「お坊さん、どうしてそんなにお詳しいの?」サーヤが切り出した。住職は少し笑みを浮かべながら、住職:「かなり昔、わたしはある団体の幹部として、とてもきつい地位にいたのです、人に命令するのは向いているわけではなかった。しかし、内部紛争が起きて、何人かは犠牲者となった。反逆が始まり、私もそれを止めるために、政府の人間として参戦した。政府が立ち向かうのに力不足だとふんだ私は、政府の中でも、一番気になっていたものがあった。軍事機密とされていた軍用の隠れ部隊を用意していた、そのものたちこそ、チップを積んだ始まりとされた者だった」開発当時は軍用として動いていた。住職は司令塔の地位にあり、最悪の時の非常事態の権力を持っていた。住職:「その後はイオン殿の先代の話しに繋がっていくのですよ。」先代?ショウの伝説!イオン:「それってまさか!?」イオンは急に顔が青ざめた。そしてその瞬間、全ての記憶が甦ったのだ。イオン:「あの伝説のリセットボタンを押したのは、あんただったのかあ!」住職:「私もなぜそんな記憶が甦ったのか知りたくていろいろ確認した、長年かけて、いつの間にかこの寺社に身を委ねるようになった。」あの当時の政府の幹部だったとすれば、リセット間際に起こったスパイ捜査疑惑についても知っているはずだったのだ。イオン:「ショウがずっと解読出来なかった謎の部隊、あんたはそれが誰だったか判っているでしょう?」すると、住職は眉をしかめながら、住職:「それは私が決定を下したわけではないのだ、今更言い訳するわけではないが、まだ上がいたのだ。でも派遣された人間だけは知っている。」イオン、サーヤは、住職の言葉一つ一つに記憶の重みを感じるようになった。人気blogランキングへ
2007.01.05
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それぞれの作業がある程度時間が経ち、皆は、一息つこうと集まって来た。ウイン:「あれ、彼はどうした?」サクがいなかった。イオン:「花に見取れてるんじゃないよなあ」サーヤ:「まさか」セータに何かを感じ、セータ:「俺が見てくる」イオン:「おい!」呼び止めるのも構わずセータは草原の方向へ駆けて行った。それを見ていた住職が、「いいから、見ていなさい」戸惑いながらも住職の言う通りにした一同。セータは、サクに何が起きているのかがわかりかけた。わかりかけたのは実は殆ど知っているはずなのに信じようとしていなかったからである。セータ:「そんなこと、あってたまるかあ!」あった方がいいと思っているはずだった。でも、知りたいとは思いたくなかった。でも放っておける情況ではなかった、今の場合は。ウインは、空気の分析の途中段階だったが、ウイン:「今時点でわかった事は、単純明快なことだ、綺麗だって事だ。公害もなく、水が澄んでいる、いまいる人間にも食生活の変化もあり、身体にも本来の体質となって清い反応を吸収しやすいようになった。こんなとこかな」サーヤ:「すごいな、ある意味。人間の変化は花のようになったってこと?」ウイン:「そういっても過言ではなさそうだ、本来の身体と言ったのは、人間はなんでも食べる。しかしその背景では様々な病気を引き起こすきっかけでもある。根本的に清い食物だけを捕っていれば、自然体となり、機械を使わなくても充分自分自身で回復できる。」サーヤ:「それって、免疫力って事?」ウイン:「その通り!」最近目まぐるしくウイルスやBSEとか、訳のわからない病気を受けて入院、そして、死に至るケースも増えてきた。これらも実は環境の変化、食生活の変化によって生物にも変化によって免疫が低下している所から、これらを受け入れやすい体質になっていると言われていた。セータがサクを見つけた時、頭を抱えているその姿はあきらかにチップに変化が起こっている事がわかった。浄化された空気になんらかの動きを見せている。「いいのかわるいのかが読めない、どのみち危険な状態みたいだ」セータは助けるかどうか迷っていた。あの事が頭から離れないから、許せない、それとも、浄化のきっかけになった恩人?サクは更に苦しみだし、セータがいることに気付いた。「何とかしてくれえ、頭が割れそうだあ」セータの気持ちはどちらに傾くのか?[2007年へ、To Be Continuation!]
2006.12.29
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同情されるのが嫌いだったサクは、いつの間にかこのメンバーに溶け込んでいた。リセット前、あんな最悪なことをしていたとは思えないほど、協力する気持ちが増していた。しかし、リセットしたことはそうそう許される事ではなかった。サクは後に引けなくなると突っ走るタイプ、いわば、こうみえても照れ隠しからくる行動だった。だから友人にも嫌われ、勘違いされやすい、哀れで損な人生を送ってきた。それをカバーするために、悪ぶる自分ができた。そんなサクに悪い友人が出来、暢気な平和に釘を刺す計画を企てた。考えるのはサクではなく、シンが担当、自分が頭が悪い事を悟ったシンは、影のチップの存在を知り、一攫千金と世界征服めいたことを思い描いた。サクにそのチップの話しをしたが、最初は全く興味がなかった。しかし、ある事件が起きた。サクには無口でよく似た弟が居た。その弟が大学でエリートで卒業し、一流を約束された。その後、普段無口だった弟が急に態度を変え、弟:「こんなクソみたいな兄はとことんクソだね」とはきたて、家を出た。信じられないサクは頭に血が上り、殺してやりたいと考えたが、踏み止まり、そこで影のチップの事を思い出した。チップを載せる事によって、弟を越える事を狙った。ところが、その影のチップとは、思考能力ゼロ、天国のような清らかさを擬似的に引き起こす麻薬的タイプの内訳は、通称・最悪のチップ、[キル]という名の、裏の世界で実験台になる人間を提供すれば大金が転がり込むというヤクザ御用達の金づるだったのだ。シンは自分に搭載するのをあきらめ、サクにその話を持ちかけた。ただ持ちかけても拒否されるのは目に見えていた。シンは多大なる嘘の仕様をサクに吹き込んで[キル]を搭載させた。その後、[キル]が出回りはじめ、世の中は平和そのもの、一見暢気な世界観だったが、政治や警察までも暢気な仕事ぶりで、いつのまにか、その間に裏の世界が大きく膨らんでいったのだ。サクが気が付いた時にはもう手遅れで、一度装着すると、新しいチップには更新出来ない、生涯タイプだった。悔しさと憎しみだけで今日まで生きてきたサクにとって、今の時間が、自分にとって、有意義に思えるようになった。「私も変われるのかなあ」皆が記憶を取り戻した時、サクの事に気付き、何らかの問題が出てくる可能性は十分にある。サクは、それを乗り越えて行く決心をしなければ、たちまち元の姿に戻されてしまうだろう。「ここで発揮しとかないと、こいつらに殺されるかもなあ」花を見つめながら、無知なチップは、何らかの反応を見せ始めていた。人気blogランキングへ
2006.12.28
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