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2007年05月19日
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「探偵狂想曲」

 #12 父、疑われる


 カランコロン、カラ~ン♪
「ありがとぉございましたぁー! また二人一緒に来なさいよぉ!」
 というアイリーンの全く余計な冷やかしを背に、海象亭で腹ごなしをしたオレとマリノは、事務所へ帰ることにした。

 その途中、忘れかけていた親父の失踪の話をすると、なぜかモーレツに怒られた。
「何だってぇ!? お前、そういうことは早く言えよ!」
「な、何を怒っているんだよ?」
「何を怒っているって? てめぇが、ろくに自分の父親のことを心配もせずに、のんびりしているのが、腹立たしいんだよー!」

「ま、待て! 別にのんびりしていたわけじゃないぞ・・・!」
「問答無用――!」
 こぶしを振り上げるマリノ。
 いつの間にか、腕をつかまれて逃げることも出来ない。
(やばい――! これはマジで殺られる!)

 が、救世主というものは現れるものだ。
「おーい、シャトル~!」
 という男の声に、マリノの手が止まった。
「ん・・・? ヒューか」
 声がしたほうを見ると、確かにヒューが切羽詰った様子でこちらに向かって走ってくる。
「ヒュー! た、助かったぁ~~!」

「イチャイチャなんかしてねぇー!」
 殺されかけていたというのに、一体、どこを見れば、そう見えるというのだ。
「ま、まぁ、そんなことはどうでも良い! とにかくお前、今すぐ事務所に戻れ!」
「あん? 事務所には今から戻るとこだったが・・・。お前、何そんなに切羽詰っているんだよ?」
「戻ればわかる! ファラさんが大変なんだ!」

「ファラが? わかった直ぐに戻る!」
 とりあえず命拾いしたことに感謝しつつ、事務所に向かって駆け出すオレ。
「あ、待てよ。オレも一緒に行く!」
「あ! ちょっと待て、アタシを置いていくなぁー!」
 と後から追いかけてくる二人を、オレはとりあえず無視することにした。

 シルバームーン探偵事務所に着くと、直ぐにいつもと違うその様子にオレは気がつき立ち止まる。
 大勢の自警団の連中が事務所に何度も出入りをしていて、その様子は博物館の前で見た様子にそっくりだった。
 そして、そんな自警団の連中を、事務所の外で不安そうな顔をして遠巻きに見ているファラが居た。
「ファラ! どうした?」
 声を掛けると、不安そうな彼女の表情がわずかに安堵をしたように変わる。
「あぁ、シャトルさん。大変なことになってしまいましたぁ!」
「一体、何が大変なんだ?」
「そ、それがその――」
 ファラが答えるようとしたその時、丁度、事務所の入り口からレイが出てきた。
と、オレを見つめるレイの目は、実に複雑そうな表情を浮かべていた。
「レイ! これは一体? なんでうちが自警団の手入れを受けなきゃなんないんだ?」
「・・・坊や。実は、非常に言い難いことなのだが。ジェイド所長に逮捕状が発行されたのだ」
「は? 逮捕状だって?」

 逮捕状とは、まぁ、特別な説明をするまでもなく。街で罪を犯した可能性のある人物を取り調べるため、その身柄を自警団が拘束するために、町議会や自警団の長などの手によって発行される書類のことである。
 しかし元々、逮捕状など発行を待つことなく、街から罪人を拘束する権利を与えられている自警団が、わざわざ逮捕状を用意してきたというのは、事態がかなりやばい状況であることを示しているようなものだ。

「い、一体、何の罪で逮捕状が!?」
「それは――・・・」
 口を濁すレイ。その後を引き継ぐように、また別の顔見知りが事務所から出てきた。
「それは君も知っている、博物館の盗難事件の容疑者として、だよ」
「ウィル!」
ヒューが目の前に現れたその人物の名を、驚いた声を出して呼ぶ。
 オレも、多少驚いた。
そいつは、ウィルフレッド・ライアンだった。
「やぁ、シャトル君。その様子だとあれからもずっと今まで父親探しのために、街を奔走していたようだね」
「あぁ・・・」
 相っ変わらず、嫌味な口ぶりのウィルを睨みつけながら、オレは頷く。
「ん? なんだ、シャトル。ジェイドさんのこと探していたのか?」
 と、後ろでマリノが気の抜けるようなことを言う。
「だから、そういったじゃないか」
「そー、だったか?」
 ますます気が抜けそうだ・・・。
 何度も首を傾げているマリノをよそに、オレはウィルに質問をぶつける。
「大体、何か証拠があってのことだろうな?」
「もちろんだよ」
ウィルは頷き、おもむろにコートのポケットから小さな紙包みを取りだす。
「・・・君も、こいつに見覚えがあるだろう?」
「何だよ――、・・・えっ、これは!?」

 広げられた紙包みの上に現れたもの、それは親父の愛用のパイプに間違いなかった――。






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最終更新日  2007年05月19日 09時43分54秒
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