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2007年04月22日
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「探偵狂想曲」

 #7 魔女っこ、暴走する


 ジオとペットのパピーを家まで送る途中。
 オレたちは、噂の博物館の前を通りかかった。
 その敷地を囲む鉄柵の周りには、大勢の自警団団員や、事件を聞きつけてやってきた人間が溢れていて、普段の落ち着いた雰囲気に比べると随分と騒々しい雰囲気だった。

 これでは話を聞くわけにも行かないな、などと思っていると。
「シャトルさん、知ってる?」
 パピーの上からジオが声を掛けてきた。
「ん? 盗難事件のことか?」

「ああ、レイからは、魔法アイテムだとは聞いたけどな」
「レイチェルさんから?」
「うん、でも何かまでは本人も知らないらしいぞ」
「そうなんだ。う~ん、なんか気になるね」
「まぁな」
「だれか知っている人いないかなぁ?」
「んー、知っていそうなのはいないが・・・。こういう時、何が何でも知ろうとする奴はいるかもな」
 オレは、ふと知人の一人のことを思い浮かべた。
「え? だれの事?」
 そう、ジオが言いかけたときだった。

「イヤーッ! はなしてぇ! はなしてったら! 服が伸びちゃうじゃないのよぉ~!!」

 あれだけ大勢いる自警団の人間のほとんどが足を止め、オレたち同様に声がしたほうを一斉に向いた。

 見れば、博物館の入り口から、がっしりした体格の自警団団員に、後ろエリをつかまれてネコのように運ばれながら、手足をばたばたと動かしている少女の姿が見えた。
「・・・噂をすれば、だね」
 ジオが言い、オレは頷く。
 まったく、噂をすればとはこのことである。

 ジオと同じウェルト地区に住む、大金持ちのお嬢様で名前は、プリシラ・ローズマリー。
「プリシラちゃんだ・・・」
「大方、盗まれたのが魔法アイテムと聞いて、いても他ってもいられずに忍び込んだところを掴まったんだろう」
 オレが冷静な推理を披露してやると、ジオは苦笑した。
「あー、やっぱりそうなのかな? 魔法のこととなると、プリシラちゃん無茶するからなぁ~」
「あぁ・・・」
 うなずくオレ。

 プリシラは、早い話が魔法マニアである。
 彼女の部屋に一度遊びに行ったことがあるが、そのコレクションである魔導書や魔法アイテムの数には驚かされた。何より家が大金持ちであるから、その資金力に物を言わせて目新しいものがあれば直ぐに買っているようだ。
 ジオと言い、プリシラと言い。金持ちの金の使い方は貧乏人のオレにはよくわからない。まぁ、それでもジオの方がずっとマシではあるが・・・。

「もー! あったま、来ちゃうわ~!」
 声に振り向くと、プリシラがこっちに向かってやってきた。怒りのあまり、まだオレたちのことに気づく様子はない。
 正直、プリシラの相手をするのは面倒なので、やり過ごそうかと悩んだが。
 もたもたしているうちに、直にむこうがこちらに気づいた。
「あー! シャトルじゃない!」
 オレの姿を確認するなり、トタタタッ! と駆け寄ってくる。
「おはようプリシラちゃん」
「おはよぉ、ジオ! それに犬!」
「・・・プリシラちゃん、犬じゃなくてパピーだよ」
 ジオがムッとした顔でいう。
 こいつがこういう顔をするのは実は結構珍しい。大切なパピーをバカにされたような気がしたからかもしれないが、どうもプリシラとジオはあんまり相性がよくないみたいだ。
 二人はプリシラが一つ年上なだけで、ほぼ同い年といえるのだが。同い年だからといって仲がいいとは限らないというのは、少し面白い。
「犬は、犬でしょ? ちょっと大きいけど」
「だからパピーだって・・・」
「ガウガウ!」
 飼い主の思いを受けてか、パピーも吠え出した。
「な、なによぉ!? プリシラとやる気、犬!?」
 一瞬、怯えた表情を見せるも、プリシラは毅然とした態度でパピーと向き合う。
 博物館に忍び込む行動力といい、結構、度胸はあるなぁと傍で見ていて少し感心するオレ。
「ガルル・・・!」
「ダ、ダメだよ。パピー!」
 うなるパピーを宥めるジオ。
「プリシラ、今、すごく機嫌悪いんだから! そっちから来ないなら、こっちから行くわよぉー!」
 と、本当に気が立っているらしくプリシラはいきなり呪文を唱え始めた。

 ――て、おいおい。街中で攻撃呪文使う気かよ!

「プリシラ、さすがにそれは――!」
 止めに入ろうとするオレだったが、それよりも早く。
「パピー、家までダッシュ!」
「ワォン!」
 機転を利かせたジオの掛け声とともに、パピーが駆け出した。
「な!? ちょっとぉ、待ちなさいよぉ~!」
 と、慌ててそれを追うプリシラ。

 無論、いかにも運動が苦手そうで、動き難い衣装のプリシラが走って追いつくことなどできるわけがない。
 直に彼女は、疲れ果てた様子でその場に座り込んでしまった。
 が、直に再び立ち上がると走り出した。

 ――元気だなぁ・・・。

 取り残されたオレは、なんとなく微笑ましい心境で若い二人と一匹を見送った。





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最終更新日  2007年04月30日 02時46分33秒
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