カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2006年09月29日
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カテゴリ: チャドウリ
石田は朝から機嫌が悪い。どうも、また父親とやりあったらしい。

「石田君のお父さんってどんな人?」
水色が軽い調子で尋ね、一護は少し仰け反った。
気持ちはわかる。……怖いからな。
「象牙みたいな奴」
石田は文庫本を片手にむっつりと答えた。
「象牙?」
「白くて硬くて冷たくて若作り。僕が子供の頃と殆ど変わらないんだよ。古参の看護婦さんたちに、「人魚の肉でも食べたんじゃないか」って噂されてる」
「あたしお兄さんだと思ったもん」

「石田君も歳取らないの?」
「いや、取るんじゃないかな……?」
「えーっ、勿体無い、あやかろうよ!」
「いや、僕は人間だから」
「……石田の親父は人間じゃないのか?」
啓吾はなんだか冷や汗をかいている。

象牙か。
何度か対面した(してしまった、が正しい)冷ややかな面を思い出す。
顔の造作は石田にそっくりなのに、石田のような体温や感情が感じられなくて、石田の白い顔の中に赤い血が巡っていることを逆に意識した。
石田も、何時かこんな風に何かを凍りつかせてしまうのかと怖くなった。
俺があの人に感じたのは、そういう意味での恐ろしさだった。

そうか、象牙か。

「石田は、父親を嫌っているわけじゃなかったんだな」
「はあ?」
石田は眉を顰めた。
「今の話を聞いてどうしてそう思うんだ」

「……わからないな」
白くて硬くて冷たくて、でもそれは確かに体温を残している。
不変のわけもない。
「にぶいなあ茶渡君は!あたしずっと前からそう思ってたよ?」
「「ええ?」」
石田と一護が同時に叫んだ。
「そうなのか石田?」
「違う違う断じて違う!」
石田は真っ赤になって否定する。
その様子がおかしいと啓吾と水色が笑う。
俺も笑った。

お前はあの象牙のような父親とは違う。
その証しを眼にすることが出来て、幸いだと思った。
たとえ何時か石田が冷たい象牙になっても、この色を忘れまいと思った。





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最終更新日  2006年09月29日 19時56分08秒
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