カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2006年10月28日
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カテゴリ: チャドウリ
(「これも一種の恐怖政治」の続き)

「井上さん、何かいい案ない?」
石田雨竜は迷っていた。自業自得といえないことも無いが困っていた。
「キューピットさんでいくんじゃなかったの?」
井上織姫は可愛らしく小首を傾げたが、怯える五人の男たちには可愛い女悪魔にしか見えない。
「鍵根先生が、男のスカート姿は公衆に晒すもんじゃないって」
(ありがとう鍵根先生!)
どちらかというと嫌われ者の体育教師、鍵根の決して短くない教員生活の中で、これほど真摯な感謝の念を抱かれたことはいまだ無かったに違いない。
「そうだね、もっと草葉の陰の花のようにひっそりと楽しむもんだよね」

「半ズボンとか……提灯ブルマ?全身タイツとか……それくらいしかないよね」
「タイツは苦情がこない?」
有沢たつきが心配そうに突っ込む。流石に、手芸部だけに任せるのには不安を感じるらしい。
「じゃあ南瓜パンツの王子様スタイルで行こうよ!」
「布地が多すぎるよ。やっぱり半袖でないと」
「これって、チアガール服の話じゃなかったっけ?」
浅野啓吾が恐る恐る突っ込んだが、当然無視された。

「水兵さん、ボーイスカウト、お坊ちゃまスタイル……なんだか今ひとつだよね……」
「うーん、捻りが無いっていうか、パンチが足りないっていうか」
「執事さんはどうかな」
「小川さん、半袖半ズボンでは執事さんの魅力が一割も出ないよ!ガクランと色が被るし!」

(何でもいいから早く決めてくれ)
会議に出席を求められたものの、発言権を与えられなかった面々はもうとっくにダレている。
水兵さんやボーイスカウトなら、比較的まともに思えるせいもある。
「あ、いいの見っけ!」
怪しげな図鑑と睨めっこしていた井上が大声をあげ、黒崎一護は全身が汗で濡れるのを感じた。

「幼稚園児スモック!」
「流石だよ井上さん!」
「フザケんなあ!」
石田の賞賛にかぶせる様に黒崎は叫んだ。
「絶対御免だ、それにするならもうお前らとは一生口きかねえぞ!」
「どうして、可愛いのに!」
「恥ずかしいから嫌だ!」
魂からの叫びに、井上も一瞬困ったように眉を寄せたが、すぐに
「じゃああたしも一緒に着る!だったらいいよね?」
「嫌だってんだろうが!」
相変わらず会話が成立しない。話せば話すほど袋小路に入るような気がする。
「水兵で決まりだ!」
「え、水兵さんがいいの?」
いや、ベストというよりベターだが。
「ガクランと対になるのは、セーラー(水兵)に決まってるだろうか!」
「ああ、なるほど!」
ちょっと微妙な理屈だが、井上は素直に手を叩いた。
「流石黒崎君、論理的な意見だね!じゃあ水兵さんに決定!」
「……まあ、井上さんがそういうんならいいよ」
「材料費も安く上がるしね」
「うん、いいと思う」
「良かった良かった、これで視界の暴力は免れた」

……GJ俺。
黒崎は久々に、確かな満足感を感じていた。





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最終更新日  2006年10月28日 23時58分11秒
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