カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2006年11月22日
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カテゴリ: チャドウリ
「じゃあ、お鍋の用意をはじめよっか!」

気合の入りまくった井上の声に、今ひとつテンションの低い声が被さる。
浅野が100円ショップで購入したカセットコンロに鍋をかけ、とりあえず水をいれて電気を消す。
「……で、どうしてあたしがチャドと水色の間なわけ?」
「セクハラ防止」
「で、どうして足を縛られなくちゃいけないわけ?」
「五月蝿い。黙っとれ」
この会話が、誰と誰の間で交わされたかわからない?程度には暗いが。


「違う」
「好きなモンを何でもいいんだろ?」
「あってるけど違う」
「少々突飛なくらいが良いそうだが」
「その通りです師匠!」
「その通りだけど違う!つか黙ってろ啓吾!」
「騒ぐな、黒崎!」
思わず叫んだ一護を石田が窘める。小声で、
「今更仕方ないだろう。向こうには闇鍋なんてないだろうし……」
楽しそうだからいいじゃないか、と本日の主役に言われては仕様がない。
それに一護も、ラッキョウとか乾燥無花果とか、わざと外したものを持ってきている。

「はいはい、皆入れて入れて!」
小島がぱちぱちと手を叩き、石田と井上を除く全員が、次々と鍋にぶち込む。
とたんに広がる甘ったるい匂い。
間違いなく、白玉あんみつと鯛焼きが入っている。
……喰いたくない。

「ねえ、もう食べていい?あたしおなかすいちゃった」
「そだな」
菜ばしが回され、全員が一つずつ鍋の中身をつまんでいく。
「なにかどきどきするな!」
朽木さんが喜んでくれてよかった、と石田は闇の中で笑う。
……ただの現実逃避かもしれないが。
「そんじゃ、いっせーのせーで!」
浅野が音頭を取り、威勢良く獲物を口に入れる。

……次の瞬間、ほぼ全員が危うく吐きかかった。

「か、辛っ!」
「口が痛い……」
「何が入ってんだこれ!」
鍋の中からは甘ったるい匂いが確かにしているのに、舌は何故か辛味を伝えてくる。
一体何の味が移ったのか、自分の口に入っているのがなにかわからないほど辛い。
素材の味が完全に殺されている。
「びゃ、白哉……」
啓吾や水色はここまでしない。
となると、一護には一つの名前しか思いつかない。
「てめ、何入れた……?」
妹がよそってくれた食材を黙々と食していた男は、さらりと返した。
「ハバネロの酢漬け1瓶だ。このためにわざわざ、阿散井を東京まで買いに行かせたのだぞ」
「ありがたくねえ!」
赤い髪の部下は、辛い辛いと呟きながらせっせと食べている。
ルキアも井上も、甘党の筈だがもう立ち直って食べ始めている。
チャドも大丈夫だったようだ。
が、残りはかわるがわる台所で水を飲むばかり。

「慣れるとけっこういけるよね」
「うむ、趣があるな」
「……」
一口で逃げ出した主役は、鍋が空になるまで壁と向かい合ってひたすら耐えていた。





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最終更新日  2006年11月22日 23時09分24秒
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