カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2007年01月26日
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カテゴリ: BLEACHパラレル
(「彼女の現状。」の続き)

石田と鳴神は、帰りは途中まで一緒だが朝は別々だ。方向が違うので仕方ない。無理すれば同行できるが、どちらもツンデレなのでそこまでしようとは言い出せない。
登校時間は石田のほうが先なので、鳴神が3組まで出向いてくる。
ツンデレにしては拘束時間が長いような気がするが、話の都合なので気にしてはいけない。

その朝、教室には鞄を置いただけの鳴神が隣の教室に入ると、石田が難しい顔でなにやら読んでいるのが目に入った。
「何読んでるの?」
「ああ……今朝、父が送って来たんだよ。なんのつもりか知らないけど」
それは、どうもネットの記事をプリントしたもののようだった。「少女の死」なんたらという見出しが躍っている。
「それ、もう読んだわ」


「中国で、若い農民が女の赤ちゃんを拾った。二人は貧しくとも幸せに暮らしていたが、娘は小学校に入ってすぐ白血病に罹ってしまう。父は家を売って入院費に当てようとしたが、覚悟を決めた娘は病院を退院。この親子の話が新聞に載って、寄付金が集まり娘は遅ればせながら化学療法を受けられることになるが、既に体力が尽きており、結局死んでしまう、という話よ」

特に表情も変えず、一気に言い切る。アナウンサーかあんたは。
鳴神は微かに顔を歪めたが、何となく話を聞いていた周囲の連中は、
「うう、可哀想……」
「いい話ね」
などと涙腺を緩むに任せている。
その反応に、鳴神の元々短い堪忍袋の緒が切れた。
「ああ、可哀想?いい話?ちょっとあんた、それって泣き系の小説かなんかなの?」
「実話らしいわよ」
「実話?実際に七つかそこらの子供が死んだのがいい話?ざけんじゃないわよ!むしろこれは……ムカつく話よ!」
言いたいだけ言うと教室を飛び出した鳴神を、石田その他はぽかんと見送った。

「確かに、只の美談にしてしまってはいけないんでしょうね」
「……そうだね」
石田は強張った顔を隠すように眼鏡に指を当てる。
「石田の実家って病院だったっけ?医療関係者が何を考えてこれを子供に送りつけたのか、ちょっと興味があるわ」
「……」


(日経BPにあった話をほぼそのまま引用しています)





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最終更新日  2007年01月26日 21時41分45秒
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