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『バカとテストと召喚獣』井上堅二 、第8回えんため大賞編集部特別賞受賞、ファミ通文庫 文月学園は、クラス編成を進級前に行うテストの結果によって決めている。定数は各クラス50人で、上位50人がAクラス、次の50人がBクラス、そしてFまでだ。これを世間一般に差別・選別の教育と呼んでいる。 こういうことをやって、子どもが健全に成長するはずがない。わかっていても受験のためなら子どもが傷ついても仕方がない、というのがいまの日本の教育の現状である。 クラスによって、教室の設備まで違ってくる。AクラスはFクラスの6倍の広さの教室に、黒板でなく大型プラズマディスプレイを使う。各自に個人エアコン、個人冷蔵庫が付き、椅子はリクライニングシートだ。 Fクラスはどうか。薄汚れた旧館の教室に畳を敷き、そこにちゃぶ台を置き、各自が勉強している。しかも老朽化し、ところどころ壊れている。 これに不満を抱いたFクラスの代表・坂本雄二は、Aクラスに「試験召喚戦争」を仕掛けようと思う、とみんなに提案した。もし勝てば、Aクラスの教室に移ることができる。 教室は騒然となった。坂本は「絶対に勝てる」と、その根拠をみんなに説明した。 試験召喚戦争とは、各自が「召喚獣」という80センチくらいの身長の幾何学的人形で、対決するのだ。召喚獣はそれを操作する生徒にそっくりで、各自の成績に強さが正比例している。だからAクラスの召喚獣はすごく強い。 しかし、今年は姫路瑞希という学年2位の生徒がいる。本来ならAクラスだが、クラス編成試験中に熱を出し、途中で退席したのだ。そのため試験放棄とみなされた。 この試合は、クラス代表が負けた時点で、そのクラスの負けになるので、クラス代表に姫路をぶつければいいのだ。 まず、手始めにDクラスに挑戦した。いろいろな場所で、局地戦があったものの姫路が、Dクラス代表の平賀源二を一瞬にして倒した。 次はBクラス。Fクラスは苦戦しながらも、何とかBクラスに勝つことができた。 いよいよAクラスだ。クラス代表は霧島翔子という坂本雄二の幼なじみだ。坂本はクラス代表5人による一騎打ちを申し込んだ。 さて、勝負はどうなるか...。 もちろん、青春ものにつきものの恋の話もあるよ。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.31
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『粘膜蜥蜴』飴村行 、2010年「このミステリーがすごい」第6位、角川文庫 時代背景は多分、太平洋戦争が始まる直前。日本の架空の町を主舞台に、マレー半島の中ほどにあるナムールという架空の国も登場する。 主人公は月ノ森雪麻呂。国民学校初等科の最終学年。父親が町で唯一の月ノ森総合病院の院長で富豪。町の実質的な支配者だ。中央の政界や軍にも強力なコネを持っている。 雪麻呂は月に数回しか学校に行かない。行っても授業中にトランプをやったりして勉強はしない。それでも教師はとがめない。月ノ森家の人間だからだ。 富蔵という下男が、雪麻呂の世話係だ。爬虫人で、首から上がトカゲの恰好をしている。ナムールのある地域に棲息しているのを、日本に連れてこられたのだ。 この日は、友人の堀川真樹夫と中沢大吉を家に招待した。 地下に部屋がいくつかあり、そこは特別病棟と呼ばれていた。大吉がそこの精神疾患の患者に殺されるという事故がおこった。 困った雪麻呂は、牛刀を持ってきて、真樹夫に翌朝までに、大吉の体をばらすよう命じた。真樹夫が抵抗すると銃を出して脅した。 何もしなければ自分が殺される。進退きわまった真樹夫は、仕方なく大吉の手首に牛刀を入れたが、途中でやめた。できない。 極度の緊張状態で疲れたのか、うとうとしていると夢を見た。唯一の肉親である兄・美樹夫が出てきて、大吉は生き返ると言った。 朝になった。本当に大吉が生き返った。 ちょうど同じ時間、兄の美樹夫は陸軍少尉として、ナムールの爬虫人の村にいた。爬虫人の子どもを助けたので、お礼として、長老から願い事を一つかなえてやると言われた。美樹夫は弟の真樹夫に会いたい、と言った。 そして、夢の中で真樹夫と交信し、弟の危急を知った。 これからさらに物語はつづく…。 本書は題を見ればわかる通り、ホラー作品である。病院の地下にある死体置場が出てきたり、頭が蜥蜴の爬虫人が登場したりする。 父親の大蔵は猿の脳を使って脳移植の研究をしている。本書の最後で、人間で移植をやったことが明らかになる。 ナムールのジャングルを美樹夫たちが行く場面があるが、読んでいると本当に自分が、ジャングルを行っているような気になってくる。飴村氏のプロの作家としての力量を感じる。飴村氏は、実際にジャングルの中を歩いたことがあるのではないだろうか。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.29
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『十八の夏』光原百合 、第55回日本推理作家協会賞、講談社 三浦信也は大学受験に失敗し、4月から浪人することになっていた。毎日だらけた生活になっていたので、ジョギングを始めた。 ある日、橋の上から20代ぐらいの女性が、写生をしているのを目撃した。そこに、風が吹いてきて絵が飛ばされた。 信也はその絵を追った。無事、絵を拾うことができた。それがきっかけだった。 彼女のアパートにあがりこんだ。最近、引っ越してきたらしい。彼女の名前は蘇芳紅美子(すおう・くみこ)といった。25才。そして、なぜか信也もそこに引っ越した。 ちょうど姉がお産で、実家に帰ってきており、受験勉強をするには環境が良くなかったので、すぐに親の許可が出た。ただ、食事と寝るときは実家に帰った。徒歩3分だ。 毎日、紅美子の部屋に行った。 ところが、ある日、紅美子の部屋に愛人らしきおじさんが、夜にやってきたあたりから状況が変わってきた。 このアパートは木造2階建てで、かなり老朽化していた。信也の部屋はちょうど紅美子の部屋の真下になる。紅美子が部屋で何をしているか雰囲気でわかった。 ここから推理小説が始まる。さて、どういう展開になるか...。 本書『十八の夏』は、中頃までは恋愛小説ではないかと錯覚する。急に、推理小説に変わってゆく。こういう推理小説もあるんだと思わせてくれる作品です。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.28
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『アバター』山田悠介、角川書店 ひと昔前に、「たまごっち」というゲームがはやったことを覚えているだろうか。当時、社会現象といわれるほど広がった。 「アバター」とは、携帯電話のウェブサイトにある着せ替え人形のこと。これが女子高校生を中心に、社会現象になるほどはやっている。 高校2年生の女子・阿武隈川道子もこのゲームにはまる。携帯のSNSサイト・アバQにアクセスし、ハンドルネーム「ミチコ」、年齢「16」、血液型「A」...と必要事項を入力した。 メインページを開けると、白いTシャツにピンクの短パンの女の子が手を広げている、これが「アバター」だ。アバGというバーチャルマネーで、着せ替えに必要なアイテムを手に入れる。全部で5000種類以上のアイテムがある。 アイテムには☆1から☆5までグレードがあり、高いグレードのアイテムを持っていると人気者になれる。学級委員もそうだ。 ミチコは、アバGを手に入れるために、西園寺という女友達に勧められて、援助交際にまで手を出す。手に入れたお金で、アイテムをゲットし、アバターを進化させていった。 そして、「アバターベストドレッサーコンテスト」に出場し、何と優勝してしまう。翌朝、学校に行くと校門からミチコを取り囲んで人だかりができ、教室に入るころには100人ほどに増えていた。この日から、ミチコが女王様になった。 西園寺の甘言にのって、アバターサークルを作った。2日で150人を組織した。これで日本を支配するのだ、と西園寺にミチコはのせられた。 この組織を利用し、金を集め何と750万円かけて整形手術をし、美人に変身した。気に食わない奴はリンチにした。 そして、☆5の超激レアアイテムを手に入れるために、ついに殺人にまで手を染めてしまう。それほどアバターが大事なのか。 本書「アバター」は、控えめで目立つことを嫌ったミチコが、アバターに熱中することによって、殺人にまで及ぶという女子高校生の心理を描いている。でも、女子高校生を登場させて、ちょっとやりすぎではないかと、思う面はある。 現代の女子高校生の健全さを見逃しているのではないだろうか。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.26
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『都市伝説パズル』法月綸太郎、第55回日本推理作家協会賞受賞、講談社『法月綸太郎の功績』に収録。 本書は法月綸太郎氏の短編である。 都市伝説というのは、都市で口コミで広がり伝わる話だ。こういう有名な都市伝説がある。 女子大生のAさんは、サークルの仲間たちとB先輩のアパートに遊びに行った。飲み会になり深夜にお開きとなって、みんなB先輩のアパートを出た。しばらくしてAさんがバッグを忘れたことに気付き、B先輩の部屋に戻った。 部屋は真っ暗で、B先輩はもう寝ているようだった。ドアノブを握ると回ったので、Aさんは小声で「バッグを取りに来ました」と言って、バッグを取り、そのまま帰った。 次の日、Aさんは学内でB先輩に会わなかったので、帰りにアパートに寄って見るとパトカーが止まっていた。昨夜、B先輩が何者かによって殺されたというのだ。 Aさんをはじめ昨夜一緒だったサークルの仲間は、警察で事情聴取を受けた。その時、壁に「電気をつけないで命拾いをしたな」と血で書かれてあった犯人のメッセージを写した写真を見せられた。つまり、AさんがB先輩の部屋に入った時、犯人はまだそこにいたということだ。 この模倣犯がおこった。大学のサークルはボウリング同好会で、B先輩というのが松永俊樹。B先輩の部屋に集まったのが男4人、女3人だった。Aさんは広谷亜紀さん。 都市伝説と少し違うのは、飲み会の途中で三好という学生が帰ったこと。広谷さんが忘れたのはバッグでなく携帯電話だった。 そして、都市伝説と同じことが起こる。 推理作家の法月綸太郎の父親は警視庁に勤める警視で、彼が綸太郎にこの事件について、意見を聞くという形式で話は進む。 最初、父の警視は途中で帰った三好が犯人はないかと言った。綸太郎はそうではなく、広谷だと警視の説が間違っていることを証明した。ところが、警視も負けてはおらず、広谷は犯人でないことを証明した。 それではいったい誰が犯人だ...。 謎を解くカギは「電気をつけないで命拾いをしたな」というメッセージを残すことによって、どういうメリットが犯人にあるのかだ。 短編で紙数が少ない中で、よくこれだけの中身を盛り込んだものだと思う。また、綸太郎の最初の推理が間違っていて、さらに推理を進めてくところが、法月氏のうまいところだ。さすがはプロの作家である。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.23
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『ごろごろ』伊集院 静、第36回吉川英治文学賞、講談社 この物語は昭和40年代初め(1960年代後半)の横浜から始まる。主人公は岩倉忠男。東京でヤクザ関係とトラぶって横浜に逃げてきた。 仕事は早朝、日雇労働者が集まる所で、送り出した人数と送り先を確認し、口入れ札を日雇労働者に渡すことだ。これが終わると夕方まで仕事はない。 近くに「いこい」という銀鱈定食が評判の食堂があった。そこで、保険の代理店をしている佐久間、時計職人の富永、中古車のディーラーをしている木地の3人と知り合った。 「類は友を呼ぶという」のはこのことだ。まったく同じわけではないが、4人とも適当に悪い。しかし根っからの悪ではない。 この4人でマージャンをよくした。4人で飯を食った...。 しかし、いつの間にか木地が死に、富永が死に、佐久間も死んだみたいだ。最後、岩倉が死ぬ。死因はすべて殺しだ。 本書は、彼らが知り合い、一人もこの世からいなくなるまでのことを描いている。時代も1960年代後半から1990年代までと長い。 私は、自分の住む世界と別の所に住む人たちの物語だ、と読みながら思った。 ただ、死んだ富永の遺骨を持って、佐久間と岩倉がわざわざ富永の故郷である島根県の益田市まで行く人情あふれる記述もある。 3人から最も信用されているのは岩倉で、3人の愚痴が集まってくる。 佐久間はいろんなところに顔が利き、またいろんなところで恩を売っている。面倒見がいいのだ。 彼らはいったい、どういう人生を送ってきたのか...。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.21
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『アナザー Another 上』綾辻行人 2010年「このミステリーがすごい」第3位、角川書店 榊原恒一は東京から、夜見山市にある夜見山北中学校に転校してきた。恒一は肺の病気のため、学校に通い始めたのは5月の連休明けからだった。 入院中に、ひょんなことで夜見山北中学校のミサキメイという女子と知り合いになった。 恒一が入ったのは3年3組で、たまたまそこに見崎鳴(ミサキメイ)がいた。休憩時間に早速、話しかけた。ところが、鳴から「私に近寄らない方がいいよ」と言われた。 恒一は、3組が「呪われた3年3組」といわれていることを知った。26年前に3年3組にミサキという生徒がいた。勉強もスポーツもでき性格もよく、人望も厚かった。 ところが卒業を前に事故で死んでしまう。みんなは当然、悲しんだ。 そこで、担任がミサキはまだ生きている、生きていることにしよう、という提案をして受け入れられた。 卒業式の日、みんなでクラス写真を撮った。プリントしたら何とミサキが写っていたのだ。 翌年から、夜見山北中学校3年3組では、2年に1回以上の割合で、月に一人以上クラスの生徒か家族が死んだ。 もう一つ、3組は3月のクラス編成で決めた人数より、4月になると一人増えている。だから予定していた机が一つ足らなくなる。しかし、誰が増えたのかはわからない。ここに「アナザー Another」という題のいわれが潜んでいる。 これではたまらないので、回避する一つの方法がとられた。一人増えたので、一人いないことにしようということだ。そして、今年、いないことにされたのが見崎鳴だった。 教員を含め、誰も鳴に話しかけない。教師は授業で当てない、出欠もとらないという徹底ぶりだ。これは本人も承知の上で決まる。 ところが5月に2人、6月も2人死に、7月は何と担任の久保寺先生が、教室で包丁を自分の首に刺し、自殺した。その前日には、家で年老いた母を絞め殺していた、という事件がおこった。 これを止める方法はないのか。いろいろ調べたら、過去に1度だけ止まった年があった。夏休みに夜見山で合宿をしたというのだ。 そして、今年も藁にもすがる思いで、夜見山で合宿を行うことになった。 合宿はいったいどうなるのか...。 これはホラーものであり、推理小説でもある。表紙はホラーものであることを表わしている。しかし、そんなに怖くない。推理小説的要素の方が比重は高い。 学校の怪談というのはよくある話だが、これは別格。現実には絶対あり得ない話だが面白い。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.19
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『のぼうの城(上)』和田竜 、2009年本屋大賞第2位、小学館 かつて、羽柴秀吉は備中高松城(岡山市)を、世に名高い水攻めという方法で落とした。それを見ていた石田三成は、いつか自分も戦を指揮して、水攻めを行いたいと思っていた。そして、そのチャンスがついに来た。 秀吉にとって最後の強敵になった小田原の北条攻めのとき、その支城である武州(今のさいたま県)忍城を攻めたときである。 北条氏の命令で、忍城の当主・成田氏は家来500人を引き連れて、小田原城に入った。残る500人が留守を守ることになった。 しかし、当主・成田氏長は秀吉に内通していた。だから、秀吉軍が攻めてきたら忍城も開場する手はずになっていた。 そして、石田三成が2万3千の兵を率いて忍城を包囲した。しかし、三成は秀吉から内通していることを聞かされていなかった。一応、軍使を忍城に送ることにした。当主がいない間の城代は成田長親だった。 この男、百姓から「のぼう様」と呼ばれていた。「でくのぼう」を略したのだ。百姓仕事をこよなく愛していて、百姓から親しまれている。同時にバカにされていた。 軍使を迎えた本丸の大広間では、降伏することを長親が伝えればそれでよかった。ところが、軍使の態度があまりにも無礼だった。そこで、堪忍袋の緒が切れた長親は、開場をやめて戦うと言ってしまった。 別室で、家老たちが説得するが、ミイラ取りがミイラになった。決戦で話が一致した。 ただちに百姓も動員した。最初、戦は嫌だと言っていたが、のぼう様が言うのだったら戦う、とみながみな忍城に入った。 緒戦は、何と2万3千の三成軍に対し、女子どもも入れて3700人の忍城方が勝った。 そこで、三成は水攻めを行うと宣言した。三成は利根川と荒川から水を引くとして、百姓を金の力で動員し、高松城の時の倍の7里(28キロ)にわたる堤をわずか4日間で築いた。そして、利根川と荒川の土手を決壊させた。一瞬で本丸は湖に浮いた。 このことにより、百姓の士気も下がった。そこで、長親はある作戦をとった。 そのことが契機になって水攻めを封じ、なんと三成軍に実質的に勝ってしまう。いったい長親のとった作戦とは...。 三成が水攻めを行ったとは、さすがの私も知らなかった。しかも、それが破られるとは。また、破ったのがのぼう様と呼ばれる何のとりえもないような総大将だったとは。 歴史ずきの人にはたまらない一冊です。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.16
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私は山口県の岩国市に住んでいます。東側は小瀬川を挟んで広島県です。 岩国市は玖珂郡7町と合併し、県下でもっとも面積の広い市となりました。南は瀬戸内海に面し、北は島根県と接しています。 今日は、仕事でいちばん北側に位置する錦町に行ってきました。全国的に寒波がやってきて低温が昨日まで続きましたが、錦町は写真の通り、雪にすっぽり覆われていました。 幹線道路は何とか通れるのですが、少しそれると雪が積もっています。特に橋の上はかちかちに凍って車のハンドルを握る手も慎重になります。 私が住んでいるのは岩国市の南部、瀬戸内海が見えるところです。生まれたのも岡山県の瀬戸内海に面した所で、温暖な気候でした。 どちらも年に1回、雪が積もるかどうか、という気候です。 私は暑いのには何とたたえることができるのですが、寒いのはだめです。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.15
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『再生 密命・恐山地吹雪 巻之二十二』佐伯泰英 、詳伝社文庫 佐伯泰英氏の作品を読むのは、これが初めてだ。全体は五章からなっているが、それぞれに決闘シーンなどの山場があり、手に汗を握る。まるで時代劇版インディージョーンズだ。 本書はシリーズものの一部だ。八代将軍吉宗が、11月に上覧大試合という剣術大会を開催する。前回は決勝で、尾張柳生の当主・柳生六郎兵衛が、金杉清之助と対戦し、判定勝ちをおさめた。その日の夜、柳生六郎兵衛は何者かに暗殺された。 吉宗は清之介を気に入り、ただ一人将軍推薦で、次の大会へ出場する権利を得た。また、吉宗の宗をもらい、清之介宗忠となった。 金杉惣三郎は11月の試合で、息子・清之介を倒すべく神保桂次郎に望みを託すことにした。そして、それぞれが修行の旅に出た。 本書『再生 密命地吹雪』は、惣三郎と桂次郎が出羽三山に籠って、修業を始めるところ。また、清之介は仙台藩で修行していたが、藩士の八戸譚五郎に誘われ、八戸に一緒に出発するところから始まる。 青葉丸という船に二人は乗せてもらった。船でホンボトジ頭という強盗集団が、三陸地方を荒らしまわっていることを聞いた。青葉丸はまだ彼らに襲われたことはなかった。 その日、青葉丸は最初の寄港地・気仙沼に着いた。上陸するとホンボトジ頭の一味が、羽黒屋に子ども数人を人質に立てこもっていた。ただちに清之介と譚五郎は、番屋の関根彦兵衛らと対策を練り、子どもを救出し、一味を捕らえた。 夜にホンボトジ頭の本体が、街を襲う計画があることをつかんだ清之助と譚五郎らは、彼らの上陸を待ち伏せし、撃退した。ところが、羽黒屋で一味の取り調べを行っている最中に、番屋にいた関根彦兵衛が誘拐された。 翌日、ホンボトジ頭と捕虜交換をすることになった。その交換場所で、清之助はホンボトジ頭の首領が柳生左門という人物で、柳生六郎兵衛の弟子であったことを知る。そして、左門と清之助の決闘が始まった...。 最後の章では、陸奥の国(現青森県)の恐山を追放になった闇巫女と対決する。全体として清之助中心で、神保桂次郎はあまり出てこない。 シリーズものだが、前作を呼んでいなくても十分満足できる内容になっている。佐伯泰英文学にはまってしまう一冊だ。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.14
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『海霧(上)』原田康子、第37回吉川英治文学賞受賞、講談社 幕末、別々の場所から箱館に行き、同じ商店で働くようになって知り合い、結婚した夫婦の物語である。単行本で上下2冊のかなりの長編である。 幸吉は九州の佐賀藩で生まれ、育った。14才で領内の炭鉱で働き始め、20才のころには優れた坑夫になっていた。 その頃、佐賀藩では蝦夷(北海道)に移住者を募った。幸吉はその先発隊の一人として、北海道に行き、移住者を受け入れるための準備をした。佐賀藩の支配地となったのは、釧路地方だった。 ところが、明治政府が廃藩置県を行ったため、藩が無くなった。つまり移住もなくなったのだ。幸吉は、もう佐賀に帰る気はなかったので、つてを頼って函館の田之倉商店で雇ってもらった。 そして、そこに女中奉公していたおさよという女と結婚した。 幸吉は佐賀で炭鉱を2つ掘り当てたこともあり、将来は炭鉱を発掘して、経営したいという夢があった。そのためには金がかかるので、当面は金づくりとして田之倉商店で働いた。 幸吉は仕事ができた。店の主人から頼られ、釧路に支店を出すので、その準備にいくよう命じられた。そして、おさよと一緒に釧路に移住した。ここから本当の意味での夫婦一心同体での物語が始まる。 結局、幸吉は炭鉱を経営する夢がかなわないまま死に、おさよが79才になるまでのことを描いている。幸吉は死ぬまでに、初孫と一緒に遊ぶことができたが、おさよはひ孫の顔も見ることができた。 このあいだに、日本は戊辰戦争、明治維新、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦、関東大震災を経験する。このすべてに幸吉とおさよは、翻弄される。 ただ本書は、こうした事件はあまり詳しく書かず、この夫婦と家族、その周りの人たちの人生模様を中心に描いている。まるで、テレビの長期放映のシリーズものみたいな感を受けた。 なかなかのものです。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.12
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『僕僕先生』仁木英之 、第18回日本ファンタジーノベル大賞、新潮社 仁木英之「僕僕先生」は、中国が唐と呼ばれた玄宗皇帝の時代の物語である。 光州の楽安県に王弁という24才の青年が住んでいた。父親が一生暮らすに余りある金を持っていると知ってから、勉学も武術もやる気をなくした。つまり、毎日だらだらと何もせず、自堕落な生活を送っていた。 父親は何回も説教したが効き目はなく、ある日こう言った。「おまえを本当の仙人に会わせてやろう」と。黄土山に仙人が住んでいるらしいので、供物を持っていってほしい、と頼まれた。 王弁はおとなしく父親の言うことをきいた。黄土山に着くと本当に仙人がいた。ただ想像と違って、年下の女の子だった。姓を「僕」、名も「僕」と名乗った。この出会いを契機に、王弁は僕僕の弟子になり、自堕落な生活をやめた。 二人は北の方に旅に出た。途中で首都・長安に寄った。玄宗皇帝の側近の仙人・司馬承禎に会い、玄宗皇帝に会わせてもらった。 また、皇帝専用の温泉につかり、太原府というところを目指した。そこで、仙界の商品を人間界で売る仙人の夫婦に会い、馬を譲ってもらった。その馬で人間界を抜けて仙界に入った...、と旅を続けて黄土山に帰ってきた。 故郷に帰ると王弁も黄土山に住み、僕僕が病人を治す手伝いをした。僕僕が作った薬丹は効き目があるので、評判が評判を呼び、毎日、黄土山のふもとは病人で列をなした。 しかし、よくあるように、こういう生活は長くは続かなかった‥‥。 ここまで書いたら、王弁と僕僕の間に恋が芽生えたことは容易に想像がつくはず。 また、人面鳥身の女や首のない大男など、いろいろな形をした生きものが出てきたりして、映画になったらヒットするような作品です。 さらに、インディ―ジョーンズなみの冒険小説でもある。 あとは読んでみてのお楽しみということで...。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.10
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『しょっぱいドライブ』大道珠貴、第128回芥川賞受賞、文芸春秋 本書の主人公はミホ、34才、独身。 ミホは、九十九さんとドライブをしている。九十九さんは61~62才、元役場の職員。九十九さんはひとがいい、謙虚で、恩を着せない。 九十九さんは、すぐにお金を貸してくれる。5千円、1万円とか、いやな顔せず。しかも出世しそうにない相手に、出世払いでいいという。ミホは、2年前から5万円単位で借りたり返したりで、結局30万ぐらい得をしている。 ミホには、遊さん(38才)という憧れの人がいる。遊さんは、この町で劇団を主宰している。自らも男優でバツ1。遊さんはミホが処女をあげた人。2回寝てからミホに冷たくなった。ミホは、遊さんの演技をうまいと思ったことは一度もない。 遊さんには取り巻きがいた。そのうちの何人かとは寝ている。ミホは遊さんから泊まるところを探してくれないか、と頼まれたことがある。次の日から探し始めたが、遊さんはいつの間にか、どこかの女の所に転がり込んでいた。 遊は「なにをされても結局、女が寄ってくる。女はおれをほうっておかない」としっかり自覚しているみたいだ。 本書の特徴は、九十九という男と、遊という男を対比させながら話をすすめていることである。九十九は腹が立つくらい人がいい。遊は腹が立つほど自信家で、自己中心。 私はどちらのタイプも嫌だ。 また、ミホのような女も嫌だ。 ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.07
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『生首に聞いてみろ』法月綸太郎 、2005年「このミステリーがすごい大賞」第1位、角川書店 本書「生首に聞いてみろ」は、この題で誰もが、首が切断される話だと想像するのではないでしょうか。 そうです、二つの首が切断されます。一つは石膏でできた像の首、もう一つは生身の人間の首です。作者の法月綸太郎氏が、作家として登場し事件を解決します。 有名な彫刻家・川島伊作は、胃癌で余命いくばくもない状況の中、最後の力を振り絞って石膏像を完成させました。そして、完成させると倒れ、そのまま死んでしまいました。 この石膏像は直取りといって、生身の人間から直に型を取る方法で作ります。最初に伊作が直取りを行ったのは妻・律子がモデルでした。ちょうど娘・江知佳を身ごもっていた時で、それを「母子像1」と呼んでいます。 石膏直取りの特徴の一つは、だれがやっても眼だけは閉じたものになります。もし開けばモデルの眼球を傷つけ失明するからです。 今回、直取りで作った石膏像も題が「母子像」で、娘・江知佳をモデルにしています。 伊作が死んで、伊作のアトリエに入って見ると、なんと母子像の首が切り取られていたのです。 これは江知佳の殺人予告ではないか、という声もあったものの、警察には届けずにいました。これがそもそもの間違いでした。 そして数日後、江知佳の頭部が、伊作の追悼展の行われる予定の名古屋市立美術館に宅急便で送られてきたのです。 本書は前置きが長く、半分くらい読まないと、ここまでたどり着きません。本書の特徴は、縦から横から斜めから、いろんなことが絡み合っていることです。 まず、16年前に律子の妹・結子が自殺をします。その原因が姉・律子の夫の伊作との不倫でした。それがもとで、伊作と律子は離婚します。その律子は何と妹・結子の夫だった男・各務と結婚しました。これが尾を引いていたのです。 また、堂本といういかがわしいカメラマンが登場し、母子像の首を返してほしければ500万円出せと、美術評論家・宇佐美をゆするということも起こります。 警察は最初、堂本を犯人と断定し、捜査を始めました。 同時に伊作が死ぬ前に、ただ一人首がつながっている石膏像を見た江知佳は、自分の出生に疑問を持ち、それを調べ始めます。そして自分と血のつながった母・律子とその夫に会いにゆきました。 かなりの長編ですが、物語がすすむにつれて目が離せないようになり、一気に読めます。 いろんなことが絡み合う、その絡み合いを綸太郎が一つ一つ解いてゆきます。ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp
2010.01.06
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『釣りバカ日誌 20 ファイナル』 今日、「釣りバカ日誌20」を観ました。「男はつらいよ」が無くなった後、「釣りバカ日誌」がその替わりで、いつも楽しく観ていました。 今回はスーさんが突然、重役会議で役員報酬はいらない、つまりこれからはただで働くと宣言します。重役会議では不況のためどこも大変で、鈴木建設も業績が落ちていることなどが報告されていたところでした。 その日、みち子さんは浜ちゃんに、スーさんのためにも仕事をもっと頑張れと叱咤激励。そして、なんと浜ちゃんが、釣りのつながりで一部上場企業の常務と会い、その会社の新社屋建設・200憶円の仕事をとってきたのです。 そのため会長賞をもらうことになりました。会長室で役員が居並ぶ中、表彰状をもらい、その夜、料亭に食事に連れて行ってもらいました。そこは、スーさんの亡くなった親友の娘が経営している店で、浜ちゃんは女将の沢村葉子(松坂慶子)とその娘・裕美(吹石一恵)を紹介してもらいます。 裕美が北海道で獣医をしていることから、スーさんと浜ちゃんは葉子と一緒に北海道に行きます。着いたら早速、二人は釣りに。葉子は裕美の住んでいる部屋に行きました。 葉子は裕美の住んでいる部屋を見て、男と同棲していることがわかり、ショックを受けます。その上、裕美は同棲している青年・久保俊介(塚本高史)と結婚の約束をしていることを知り、葉子は帰ると言って、出て行きました。 しかし、何とか旅館まで裕美が連れてゆきます。 葉子は夜、旅館で昼間あったことをスーさんと浜ちゃんに打ち明けました。そこに裕美が現れ、俊介とその両親が来たと知らせます。 葉子は合わないと言い張りますが、スーさんの命令で浜ちゃんが使者として双方の間を取り持つことになりました。 はたして今後の行方は...。映画を見てのお楽しみです。 今回の映画はたくさんのことを盛り込んでいると私は観ました。 まず、いまの経済情勢です。現実には大手ゼネコンが倒産するということはないですが、中堅の建設会社は危ない状況になっています。また、その中で名前こそ仮名にしていましたが、業績を確実に伸ばしている上場企業があることも示していました。だからといってその会社で働く人の給料がいいわけではありません。 また、会社は経営者のものではなく、社員みんなのものであるというスーさんの演説は溜飲を下げました。 いつも重要な役割を果たしているのが運転手の前原さんです。今回は定年後、どうするのかとスーさんに聞かれて、個人タクシーの免許を持っているのでいつ首になっても大丈夫だと思わず言ってしまいます。現実の世界でありそうな話です。 特筆すべきは、労働組合のことです。一般の社員は組合に守られているという場面が数回出てきます。本来の組合はこうあるべきです。 しかし、大企業の組合のほとんどが御用組合になっていて、労働者の権利を守るものではなく、管理するものになっています。これをアメリカ型の労務管理といいます。戦前は、軍隊や警察が労働組合を弾圧していました。 それから、環境問題です。北海道の川で今回、釣りを楽しみますが、浜ちゃんがイトウを釣りたいと言うと、旅館の主人は何ということを言うのか、と怒ります。いまのままではイトウは絶滅してしまう、というのです。 結局、浜ちゃんはイトウを釣り上げるのですが、リリースしました。 「釣りバカ日誌」が終わるというのは、多分、三国連太郎氏が高齢のためだと私は理解しています。スーさん=三国連太郎というイメージが定着して、余人をもって代えがたいのだとは思いますが、いちファンとしては残念でなりません。
2010.01.04
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みなさんは、初詣に行ったでしょうか。 我が家は毎年、家族そろって正月2日に、兵庫県赤穂市にある大石神社に初詣に行っています。車で20分ぐらいでつきます。 いうまでもなく赤穂市は元浅野匠の城下町、忠臣蔵で全国的に有名です。大石神社の大石は大石内蔵助の大石です。 この写真は大石神社の参道です。両側に松の木があって、その外側に人の像らしきものが、立っているのがわかるでしょうか。四十七士の石像です。一番奥の右側に大石内蔵助像が、左側に息子の大石主税像が立っています。 石の鳥居の向こうに正面の門があります。左右には仁王像があり、50メートルほど行った突当りが本殿です。正月三が日は両側に露店が並び、朝から参拝客でにぎわいます。 本殿の左側には義士資料館があり、討ち入りで使った四十七士の装束や陣太鼓などが展示されています。 大石神社には、日本一大きい物があります。写真に写っている巨大な絵馬です。いつもは干支が描かれているのですが、今年はなぜか大石内蔵助の像でした。 絵馬の前はステージのように少し高く、写真を撮ればいいようになっています。 歴史を感じる初詣を毎年、体験しています。
2010.01.03
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