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2003/09/12
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何事も心構えが大切だということですね。
健康が大事だと思わない人は健康を損なうのはいわば当然だと思います。

1. 生きがいをもつ
よく「病は気から」という言い方をします。身近な例でいえば、カゼがはやっているときに「今、カゼで寝込んだら、仕事が滞ってしまう。カゼなんか引いている場合じゃない」と思うと、不思議にカゼを引かないものです。その逆に、仕事が一段落すると気持ちが緩み、途端にカゼを引いてしまった、という経験はないでしょうか。
東洋医学では、体を巡る目で見ることのできないエネルギーを“気”と呼び、その気が少なくなったり、体のどこかに停滞してしまったときに病気になると考えています。こうした考えは、経験的には認められても科学的な根拠のないものとして片づけられてきました。しかし、最近では疫学的な調査や“やる気”の仕組みが解明され始めたことで、やる気と免疫系に深い関係があることが少しずつわかってきています。

岡山県倉敷市にある柴田病院では、がん患者に「生きがい療法」を行っています。名誉院長の柴田高志氏は自らも耳下腺がんを患った経験をもち、そのときに前向きな考え方をすることでがんを克服しました。その経験を生かし、がん患者に富士山登頂という常識では考えられない目標を持たせました。この試みは見事に成功し、ついにはがん患者によるモンブラン登頂まで成し遂げてしまったのです。そればかりでなく、がん病巣が小さくなったり、肺に8つあったがんが3つに減って職場復帰した人もいるそうです。
このように、前向きな考え方、言い換えればやる気が病気を治そうとする免疫力を高めて病を克服することもあるのです。

2. やる気はどこで作られるのかがわかってきた
やる気は、脳のどこでつくられているのでしょう。現在までの研究で、やる気は脳の側坐(ざ)核と呼ばれるところが関与していると考えられています。側坐核は脳の中を巡るさまざまな情報が交差する視床下部の近くにあります。論理的な思考や抽象的なイメージなどの人間らしい高次情報と、食欲や性欲などの動物的な生存本能にかかわる情報が行き交う場所に側坐核はあります。


アドレナリンやノルアドレナリンは、恐怖や驚きといったストレスを感じたときに分泌されます。ある場面で実力以上の能力を発揮することを「火事場の馬鹿力」といいますが、危機に直面する(ストレスがかかる)と、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されてやる気がつくり出され、脳や体が活性化するということのようです。また、ドーパミンとセロトニンは、何事も今以上にという発展性のある意欲をかきたたせる物質だといわれています。
このようにストレスや生存の危機から心と体を守る本能にかかわる情報と、よりよい自分を実現するための人間としての高次の情報が行き交うそばにある側坐核が、それらの情報をもとにやる気を生み出していると考えられています。

3. 免疫機能が内外の敵と戦って体を守るシステム
私たちは空気を吸ったり、食べ物などを口に入れることで、知らず知らずのうちにウイルスや細菌などの病原体を体内に取り込んでいます。病原体が体内に侵入したとしても、すぐに感染症などの病気になるとは限りません。私たちの体には、こうした病原体に立ち向かう免疫機能が備わっています。
例えば、カゼのウイルスは体内に侵入すると粘膜細胞内に入りますが、はじめにナチュラル・キラー(NK)細胞がその粘膜細胞の異変に気づき、ウイルスが感染した粘膜細胞を攻撃します。次にマクロファージが出動して細胞やウイルスの死骸(がい)を食べてくれます。ここまでが早期に働く生体の防御機構ですが、それと同時にマクロファージはサイトカインという物質を血液に送り出して、ウイルスの情報を全身に伝えます。マクロファージによって送られてきた情報を手がかりに、生体内のT細胞、B細胞が働き始め、より強力な病原体に対してはB細胞が「抗体」と呼ばれる病原体に特有のたんぱく質をつくり、攻撃をします。これらの一連のプロセスが「抗原抗体反応」といわれるもので、感染が治まった後でも、抗体の設計図は体内に記憶され、次回の感染やより強い攻撃に対して備えます。カゼのときに見られる発熱やせきなどの症状は、このような免疫の働きの現れなのです。
免疫系は病原体などの外からの侵入者だけを相手にしているわけではありません。人間の体内では何らかの原因で1日に数千個にのぼるがん細胞が発生していると考えられています。このがん細胞を退治するのも免疫系の仕事で、NK細胞はその役割も受けもっています。

4. 前向きな考え方が免疫によい影響を与えている
うつの人は健康な人に比べてドーパミンやセロトニンの量が少ないことがわかっています。また、うつ状態になると免疫機能が低下するという研究報告も数多く発表されています。つまり、この2つの事実を結びつけると、やる気にかかわるドーパミンやセロトニンの量が減るとうつ状態に陥る可能性があり、免疫力が低下するということになります。
イギリスの医学専門誌『ランセット』に次のような研究報告が発表されて話題を呼びました。夫や妻と死別するという悲しみの体験をした男女26人の免疫システムの働きを調べたところ、いずれも1年間にわたって免疫力が低下していたという結果が出たというのです。

また、日本旅行業協会(JATA)が、20~60歳代の男女を対象に旅の効果を調査したところ、幸福感とかかわるセロトニンの代謝物が増加していることがわかりました。さらに、ナチュラル・キラー(NK)細胞が活性化して免疫力が高まっていることがわかりました。また、進行した乳がん患者に対して不安を和らげる心理療法とリラクゼーション訓練を行った場合と、行わなかった場合の比較をした研究では、行ったほうが生存期間が2倍長かったという結果が出ています。
絶望や悲しみなど後ろ向きの心理状態では免疫力は低下し、物事を前向きに捉えて意欲的に生きようとするプラスの心理状態、つまりやる気に満ちているときには免疫力が上昇します。自分の人生を積極的に生きていこうとするやる気が免疫力を高め、病気から体を守ることにつながるのです。





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最終更新日  2003/09/14 05:51:12 PM
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